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旋回滑空遊泳シミュレーション

ドキュメント内 絶滅した長頸竜類の遊泳性能に関する研究 (ページ 102-105)

第4章 滑空遊泳シミュレーション

4.8 旋回滑空遊泳シミュレーション

4.8.1 ヨー角変更(ステップ入力)シミュレーション

被制御変数を(4.10)式とし,𝜃 = −20deg を保ったままで,ヨー角ステップ入 力指令値𝜓𝐶を10秒で20degに切り替え,110秒で0degに戻すシミュレーショ ンを行う.この時のL型と S型の応答をFig. 4.25に示す.横軸は時間であり,

縦軸は左側に示している.黒色の実線は L 型の応答を,灰色の破線は S 型の応 答を示している.Fig 4.26には指令値を40degとした結果を,Fig 4.27には指令

値を60degとした結果を示す.どちらも指令値には追従しているが,L型とS型

を比較すると,L 型に比べて,S 型の方が俊敏にヨー角指令値に追従している.

ヨー角指令値が大きくなればなるほどこの違いは顕著である.

指令値として𝜓𝐶 = 360deg のステップ入力を行えば,長頸竜類は旋回を行う 可能性がある.そこで,L型にヨー角ステップ入力𝜓𝐶 = 170, 200, 360degを与え て旋回を行うかどうかを確認した.L型の応答をFig. 4.28に示す.横軸は時間で あり,縦軸は軸の左側に説明している.黒色の実線は指令値が170degの時であ り,灰色の破線は200degの時であり,灰色の一点鎖線は360deg の時である.

ヨー角ステップ指令が 170deg と 200deg の時は L 型は指令値に追従している

が,360degになると制御は破綻する.制御が破綻に至るまでは鰭角が飽和して

いないので,アクチュエータの飽和が原因とは考えにくく,コントローラのチュ ーニングをステップ指令値60degまでの角度で行ったことが原因と考えられる.

LQIコントローラはロバスト性を有するため(オーバーシュートが大きくなるな ど)制御性能は劣化するが 60deg 以上のステップ指令にも対応することができ

たが,360degになるとロバスト性の限界を超えたと思われる.360degのステッ

プ指令でコントローラーのチューニングを行うことも可能であるが,コントロ ールゲインが小さくなってしまうため,小角度のステップ指令に対する応答が 非常に鈍くなってしまう.

同様のシミュレーションを S 型でも行う.S 型にヨー角ステップ指令𝜓𝐶 = 170, 200, 360degを与えた場合の応答をFig. 4.29に示す.横軸は時間であり,縦 軸は軸の左側に説明している.黒色の実線は指令値が170degの時であり,灰色

の破線は200degの時であり,灰色の一点鎖線は360degの時である.結果から,

指令値が 170deg の時にはなんとか指令に追従しているがオーバーシュートが

大きくアクチュエータも飽和してしまっている.180deg と 360deg の時には制 御が破綻している.S 型では制御が破綻する前に鰭角が 15deg の飽和に達して いるが,制御破綻の原因はL型の場合と同じであると考えられる.

このことから,ヨー角ステップ指令で旋回させるためには 60deg 程度のステ ップ指令を連続して使用(60deg回頭したところで次のステップ指令を与え,こ の手順を繰り返すことにより旋回を行う)するか,指令値(旋回角度)の大きさ によってコントローラを変更しなければならず,生物がこのような煩雑な制御 方式を採用していたとは考えにくい.そこで次節ではランプ指令に対する応答 を検討する.

4.8.2 ヨー角(ランプ入力)シミュレーション

4.8.1節で明らかになったように,L 型とS 型はヨー角ステップ入力では旋回

できない.そこでヨー角指令としてランプ入力を与える.ランプ入力(𝜓̇𝐶)毎秒 40度としたものを,Fig. 4.30に示す.毎秒80度としたものをFig. 4.31に示す.

Fig. 4.30とFig. 4.31ともに黒色の実線はL型であり,灰色の破線はS型である.

横軸は時間であり,縦軸は左側に示している.この結果から,ランプ入力であれ ば,L型とS型ともに旋回が可能であると分かる.

Fig. 4.32に横軸にランプ入力指令の傾斜(角速度)を,縦軸に旋回半径とロー

ル角𝜙の関係を示す.旋回半径が同じであるにも関わらず,L 型の𝜙は S 型の約 1.3倍であることが分かる.これは同じロール角指令値𝜙𝐶を与えたとき,S型の 方が旋回半径が小さくなることを示唆している.

4.8.3 ロール角変更(ステップ入力)シミュレーション

ロール角ステップ入力をL型とS型に与える.Fig. 4.33では,𝜙𝐶 = 4degの時 の応答を示し,Fig. 4.34では,𝜙𝐶 = 8degの時の応答を示す.ともに黒色の実線 は L 型であり,灰色の破線は S 型である.横軸は時間であり,縦軸は軸の左側 に説明している.L 型・S 型ともに指令値に追従して旋回を行うが,𝜙𝐶 = 4deg の場合はS型の旋回半径や旋回角速度が L型の約 70%,76%,𝜙𝐶 = 8deg の場 合は60%,80%と小さくなることが分かる.

次に,長頸竜類が-20deg より少し頭部を上げて,より小さな旋回を試みた時 を考える.Fig. 4.35では L 型を,Fig. 4.36 では S 型をシミュレーションしてい る.𝜃𝐶は共通して-10degとした.黒色の実線は𝜙𝐶 = 4degの時であり,灰色の破 線は𝜙𝐶 = 8degの時である.L型では𝜙𝐶 = 4degで指令値には従うものの,𝜙𝐶 = 8degでは定常的な旋回には至っていない.S型ではどれも計算が破綻している.

これは,4.1 節で示したように,𝜃𝐶 = −10deg の時,すなわち頭を-20deg から 10deg 上げた時の2m/sec の条件下での S型の平衡状態が存在しない (Fig. 4.1) ことが原因である.このことから,頭部を過度に上げると,LQI制御器が平衡状 態を見つけられないため,長頸竜類は旋回できないと考えられる.L 型が𝜙𝐶 = 4deg の場合旋回できたのは,平衡点が存在するぎりぎりの境界点で,バンク角 を小さく設定したためと思われる.

Fig. 4.37に𝜙𝐶と旋回半径の関係をまとめた.上段は𝜃𝐶 = −20degの時であり,

下段は𝜃𝐶 = −15deg の時である.同じロール角に対して S 型の方が旋回半径が

小さく,S型が機動性に優れることが分かる.また,頭部を5deg上げることで,

L型・S型ともに旋回半径が最大で約20%小さくなることが分かる.

最後に長頸竜類の旋回の平面軌跡をFig. 4.38に示す.S型の方が旋回半径は小

さいことは明らかである.

ドキュメント内 絶滅した長頸竜類の遊泳性能に関する研究 (ページ 102-105)

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