最も大きな選択肢としては、トリガーにかかわらず全てのヒットをデータ収集系で取得するか、
否かである。この新しいエレクトロニクスのインストールの日程としては、次期長基線ニュートリ ノ振動実験T2K 実験が始まる 2009年の一年前である 2008年の始めに行う予定である。そのと きにどういったシステムを選択するかは、今後の開発の進み具合で決定されるのだが、ここでは、
その両方の場合のシステムについてその概念図を示す。
4.2.1 最小限の改良: ATMだけを新しくした場合
まずは、ATM だけを新しくした場合の全体図を図4.3に示す。この場合はシステムとしては現 状と殆ど変わりは無く、ATM→ SCH →SMP → Online Computerというデータの流れは同じ である。ただし、大きな変更点としてはシステム全体を一つのクロックで動かすということがあ る。これは新しいシステムを動作させるにはなくてはならないものとなっている。他には、トリ ガーの生成を現在のHITSUM信号のアナログ和をとるシステムからデジタルで処理するシステム へと変更することも考えられている。このトリガーの改良については4.5で述べる。さらに、小さ な変更としてはTRG モジュールを新しくすることにより、これまで 16 ビットだったイベント番 号が32 ビットまで拡張されるといった変更点もある。
システム全体を一つのクロックで動かすのは次のような理由がある。
• 異なる TDC間、ATMボード間でのチャンネル間の相対時間差を最も良い精度で測定する ため
– もし、ATMがそれぞれ独自のクロック持っていた場合、異なるボード間でのヒットの 相対時間差は、TDC から出力される生のカウントからは分からないことになる。トリ ガーの入力は全ての TDC に同時に入力されることになるから、この時間を同時に各 TDC で測定すれば良いのだが、そうした場合の相対時間差の測定精度には、次の式の ようにトリガー時間の測定精度の項が入ってきてしまう。例えば、独立したクロックで 測定された t1 と t2 の相対時間差をトリガー時間 ttrg を基準として測ろうとすると、
その測定精度は次のようになる。
∆(t1−ttrg) = q
∆t21+ ∆t2trg
∆(t2−ttrg) = q
∆t21+ ∆t2trg
∆(t1−t2) = ∆{(t1−ttrg)−(t2−ttrg)}= q
∆t21+ ∆t22+ 2∆t2trg (4.1) 一方、全てのTDCを同一のクロックで動かせば、相対時間差はTDC の出力される 生のカウンタの値を比較することで測定が出来るので、トリガー時間の測定精度の項は は行ってこない。
ただし、このためには、全てのTDC の内部のカウンタを同時にリセットし、同期化 することも必要となる。
• 一つのクロックで全ての TDC を動作させれば、TDC のカウント値→ 実時間のキャリブ レーションを全てのチャンネルで行う必要が無くなり、もとのマスタークロックの周波数を
精度良く測定しておけば良いことになる
• モジュール間で情報をシリアル転送*9できるようにするため。
– これまでのトリガーでは、トリガー生成時には HE や LE といった種類があったもの の ATM へはトリガーの種類の情報は伝えられていなかった。新しいATM ではその トリガーの種類によって動作を変える必要がある。したがって、トリガーの種類の情報 も全ての ATM へと伝えることが必要となった。それらの情報をパラレル転送しても 本質的に問題は無いが、信号線の本数を減らすため、シリアル転送を採用した。イベン ト番号に関しても、同様にシリアルで転送し、32 ビットのイベント番号を 4本の信号 線で転送する。全てのボードが同じクロックで動いていることで、データのシリアル転 送は容易になる。
– さらに、新しいシステムではトリガー生成のための HITSUM をデジタルで処理する ことを考えている。それは、1 クロックの間に何ヒットがあったかをボードごとに出力 し、その和でトリガー生成の判断をするものである。このシステムが動くためにも全て のボードが同一のクロックで動作している必要がある。
クロックやトリガー、イベント番号、TDC のリセットの分配のためには新しいモジュール (Master Clock Moduleと呼ぶ)が必要となるが、その開発を現在進めているところである。詳し くは6 章にて述べる。
4.2.2 常時全てのデータをとり続ける場合
次にトリガーにかかわらず、常時全てのヒットをとり続ける場合のシステムについて説明する。
図4.4が全てのヒットをとるために考えられたシステムの概略である。図にもあるように現在の ところ二つの選択肢があり、一つはSCH を新しく開発すること、もう一つは各ATMに拡張ボー ドを付け、そこから直接イーサネット読み出しでオンライン計算機へとつなぐ方式である。
どちらの方式の場合でも最早 SMP は使われないことになる。また、この場合には膨大なデー タ量を処理するオンライン計算機の大幅な拡充とソフトウェアの改良が必要となり、それらの検 討はまだこれからという段階である。図4.4中の “Front-end computer” はおよそ1 クレート(=
ATMボード10 枚 = 240チャンネル) につき1 台程度となり、各ヒットの並べ替えなどを行う。
“event builder”も同程度の台数で、各ハットからのデータを組み合わせて、“Intelligent Trigger”
に転送する。さらに “Intelligent Trigger” でデータの選別を行うことになる。ここでどの程度
“Intelligent”な選別を行うかによって、ここに必要な計算機の数は決まってくる。
システム全体としてのデータ処理速度に関してはまた4.4 で詳しく扱うこととする。
*9一本の信号線を使って1クロック毎に1ビットずつデータを転送する方式。対してパラレル転送とは、複数の信号 線を使って並行にデータを転送する方式のこと。
ATM SCH
PMT x 240
ATM x 10
Online (slave)
ATM SCH
PMT x 240
ATM x 10
Minimum Change
PMT
~ 13000 ATM
~ 500
SMP
~ 48 GONG
GONG
SMP bit 3
SMP x 6
Online (host)
Online (slave) Online (slave) Online (slave) Online (slave) Online (slave) Online (slave) Online (slave)
Trigger Processor TRG Master
Clock Module
HITSUM from All ATM (Digital HITSUM ?)
Global Trigger Trigger
Clock TDC reset Event # to All ATM
Distributor
Distributor
Distributor
図4.3 ATMだけを改良した場合のデータ収集システム。殆ど現行のシステムと変わらない が、トリガーやイベント番号、クロックの分配のために新しいモジュールが加わる。
ATM SCH
PMT x 240
ATM x 10
Front-end
computer event builder
ATM SCH
PMT x 240
ATM x 10
Front-end computer
event builder
ATM
PMT x 240
Front-end computer
New SCH
Ethernet Readout
ATM ATM ATM ATM ATM ATM ATM ATM
ATM 100BASE-T Ethernet
event builder
event builder
ATM ATM ATM ATM ATM ATM ATM ATM ATM ATM
Front-end computer
PMT x 240
PMT
~ 13000 ATM
~ 500
Front-end computer ~ 50
event builder ~ 50
Intelligent Trigger
Intelligent Trigger
Intelligent Trigger
Intelligent Trigger 10Gb Ethernet ??
Intelligent Trigger ~ ??
Online Computer System
図4.4 全てのヒットを常時取得する場合のシステムの全体図。二つの大きな選択肢について それぞれ示した。オンライン計算機の数などの見積りは概算であり、詳細な見積りはまだこれ からである。