多くの植物で斑入りが認められる.その表現型ほ千差万別であるが,原因や遺伝様式については詳細に研究さ れている(61,98).斑入り植物ほ,日本では古くから観賞対象として重要であり,非常に発達している.′なかで
も東洋ランの世界ではその傾向が強い.東洋ランの中で重要な位置を占める意蘭と称される−・群やシュンラソ
(99)には,多様な斑があり,これらの斑入り品種は柄物(135)と称され,花を観賞対象とする花物(72)とは区 別して取扱われている.斑の美しさは,花色の多様性,芳香,草贅の美しさとともに.東洋ランの重要な特色とな
っている.東洋ラソの柄物は日本が世界に誇ることのできる花井の分野である.その中心をなすのが東洋系シン ビジウムである.地生シソビジウムのシヱ.ソラン,ホウサイラン,スルガラ1カソランなど,着生種のホウラン,
そして半着生種のキンリョウへソに.斑入り品種がある.範囲を東洋ランに広めると,セッコク,■7ウラソにも斑 入りが多い(135).これらの斑入りのラソは現在でも株分けやバック吹かし(芋吹き)で繁殖されるため,母植 物の斑ほ安定して子孫に伝わることが多い▲ しかし,斑の種類に.より斑が伝わらず緑色菓に.先祖返りする場合や,
斑が強調されたり,他の斑へ変化することがある.
斑入り品種を組俄培養により繁殖サる場合,繁殖された植物に.親と同じ斑が入るかどうかが大きな問題となる.
組織培養により斑入り植物の繁殖が可能であることはセントポ・−リア(128)やギボウシ(84)で確認されてトおり,
ラン科植物ではキンリコウへソの覆輪種で認められて−いる(59).しかし,前述のように,シュンラン,キンリ ョウへソ,その他柄物として扱われる東洋系シソビジウムには斑の種類が多く(135),また,植物の斑の起源は 多様である(61,98)ため,これら東洋系シンビジウムの柄物において,斑の種類と組織培養に皐り得られる子孫 における斑の発現との関係を明らかにしておくことは,実用面でも植物組織学的な面でも意義あることと考えら れる.また,東洋ランの中には消滅しつつある品種が多い.近年,遺伝形質の確保とその蓄着の重要性が認識さ れ,ラン科植物でも種子(108)ばかりでなく,茎頂あるいはプロトコ・−・ムの低温貯蔵の研究も行われている(26,
27,143)が,斑入り品種では,茎頂部起源の植物体に斑が伝わることが確認できなければ,この方法による遺伝 形質の長期保存の意味がなくなる.以上の観点から,斑の種類が多く,増殖形磯の異なるシュンラン(ライゾ・−
ムにより増穂)とキソリョウへソ(ブローコ・−・ムにより増殖)を材料とし,茎頂培養により繁殖した植物体にお ける斑の発現について検討した.
第1節 シュンランの斑入り品種
材料および方法
シュソランには多くの種類の斑がある(122)が,その中から代表的な覆輪(品種 帝冠),中速け縞(品種 鳳風殿)および虎斑(品種安積猛虎)の3種炉を選び,1983年4月15日に各種燐の2本の新茎を材料とし,常法
により殺菌後,すべての腋芽と頂芽を1〜2mmの大きさに切り取り,RM培地を基本とし,b当りNAAlmg,
Kinetin0.1mg,Sucrose30g・,AgarlOgを加えた培地を10ml注入した150mmx20mmの試験管に植え付け た.培養は25℃の暗条件下で行った.
形成されたライゾ・−ムは分割して,b当たりHyponex3g,Bacto−Tryptone3g,White s Vitamin So−
1ution2ml,NAA O.5mg,Sucrose30g・,活性炭素2g・,寒天15g(pH5.0−5.1)からなる培地を 100mi注入し た300mlあるいは500mlのエ・−・レンマイヤ・−■フラスコに移植し,25℃,16時間人工照明(約5001Ⅹ)の条件下で
−82一
継代培養を行った.継代培衰ほ1983年7月1日(1代目),1984年3月30日(2代目),1984年12月15日(3代 目),1985年6月29日(4代目)に行った.
結 果
茎頂培養後96日目におけるライゾ叫・ム形成率は品種間に多少の差ほあるが,どの品種からもライゾ・−・ムが形成
された(Table34).ライブ・−・ムは腋芽からはかりでなく,頂穿からも形成された.また,腋芽の節位の違いに よるライゾ−・ム形成率の差ほほとんど認められなかった.
ライブームを継代培養して増殖する過程で,ライゾ・一ムの先端からシュ.・−・トが形成された.3代目および4代 目の継代培養時に,形成されたシ㌧L−トをライブ・−・ムから切り離し,シコ.・一・トの大きさおよび斑の発現状態を調査 した鹿果をそれぞれTable35とTable36に示した.
斑の発現率ほ斑の種類により大きく異なった.覆輪の 帝冠 ではすべて■のシュ、−トに.親植物と同じ覆輪が現 れた(Table35).しかし,3代目の継代培養中に,8本の初生ライゾ・一・ム(Table34参照)に由来するすべて
35−d 35−b
Fig。35pa:Analbino shoot(AS)developed fr・Om Chlor・Ophylト1ess rhizomes(AR)in
subculture ofrhizomes ofcv..Teikan..Normalvariegatedshoots(NS)weredeveloped from green rhizomes(GR).Fig.35−b:Alongitudinalsection of the chlorophylト Iess rhizomes小 None of the cells contains chlorophy11
Fig.35−C:Chimeralrhizomes formed from the normalgreen rhizomes of cv.
Teikan.Green stripes(GS)appear・edinthe chlorophylト1ess rhizomes.
Fig.35−d:Alongitudinalsection of chimeralrhizomes.Chlorophyll−COntained cells(CC)ar・e reCOgnizedin a sectorialform from outer ceulayer to theinner
most celllayer of cor・teX.EDindicates endodermis.
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Fig.36.Relationships of the var・1egation type and expression of the va.rlegationin Shoots of q′mbidiuTn gOermg乙乙prOpagated with shoot tip culture.
Le董t column(1a−1e)shows cv..Teikan.This cultivar has yellowish white marginalleaves(1b),and this var・iegation typeis called Fukurin,Chlorophylト 1ess cells(CLC)localizedin the mesophyllat the mar・gin ofleaves(1c).A
−86−
longitudinal$eCtion of the rhi2:Ome ShowlngCOrteX COmpOSed by cells containingabundant chlorophylland metaplasm(1d).A11shoots developed from the nomalgreen rhizomes were true to type(1e).
Middle column(2a−2e)shows cv.Ho−0−den.This cultivar has white stripesin the middle ofleaves(2b).and this varieg・ation typeis called Nakasuke−Shima.Chlor・Ophyll−1ess cells(CIJC)localizedin the mesophyllat the middle ofleaves(2c)..Chlorophyll−COntained cells are restrictedin the Outer Cel11ayersofcortexoftherhizome(2d).Allshootslost their variegation
(2e)..
Right column(3a−ae)shows cv.Asaka−mOuko.This cultivar has crossed wide yellowish stripes(3b),and this variegation typeis cal1ed Torafu.
Chlorophylトpoor ce11s(CPC)locatedin thelower side(abaxial)ofleaves
(3c).The cellslocatinginthestripescontainednoor・Onlyalittlechlorophyll..
Alongitudinalsection of the rhizome showing COrteX COmpOSed by cells
containing・abundant chlor・Ophylland metaplasm(3d).Some shoots expressed their variegation(3e),and Tor・afu became clear in thelater・branching shoots.
のライゾ・−ム塊から上薬緑体を持たない黄白色のライゾ・−・ムが発生した.正常な緑色ライゾームは培地中に貫入
し培地内で増殖するのに対し,それらほ主に培地表面より上部で増殖し,緑色のライブ1−ムに比べやや細く,多 数分枝する傾向が認められた.そのうちの1塊から黄白色のシュ.・−†が1本形成された(Table36).その後,
このような黄白色のライブ・−・ムを継代培養したところ,それから形成されたシユ・−・†はすべて黄白色のシュ・−ト であった.緑色のライゾ・−ムから形成された31本のシュー・トはすべて親植物と同じ斑であった.線色の正常ライ ゾ1−・ムと,そこから生じた黄白色ライゾ・一・ムとの接続部分に認められたキメラ型ライゾ・−ムの横断切片をみると,
葉緑体が含まれた細胞は,皮層の最外層から内皮外側の皮内層まで存在しているが,黄白色ライゾ−・ムには葉緑 体が含まれた細胞ほまったく認められなかった(Fig.35).
中透け縞の1鳳風殿,では,3代目,4代目の継代培養時に得られたすべてのシュ.1−・トは緑色莫で斑を発現し なかった.この品種では完全な先祖返りが起こ・つたものと考えられる.
虎斑の−安積猛虎,では,2回の継代培養を通じ合計205本のシュ.・−・トが得られたが,親植物と同じ斑を発現 したシュ・−†は,3代目は25%そして4代目は37%であった.一・般に虎斑の場合,斑の発現ほ生育環境に大きく 左右され,特に照度不足やチッ索過多では斑が発現しないことがあるとされている(6).そこで,室内の低照 度の培養条件下で形成されたこ.れらのシュ・−・トにおける虎斑の発現率が,果たして正確なものであるか否かを確
認するために,3代目の継代培養時に調査したシュ・−トを鉢上げし,50%遮光の無加温ガラス室で10か月間栽培 した.その結果,新たに発生した1次および2次シュ・−トには親植物と同じ虎斑がそれぞれ98.3%と100%の割 合で発現し,虎斑ほ安定して子孫に伝わることが確かめられた(Table37).本実験に・用いた3種炉の斑入り品 種と,茎頂培養の結果形成されたライゾ・−ムの横断切片・およびライゾー・ムから形成されたシュ・−=こおける斑の 発現との関係をFig.36に示した.
以上の結果から,斑入りシュ/ランの茎頂培養由来のシュ1−・トに,親と同じ斑が入るか否かは,斑の種炉に左 右されることが明らかとなった.本実験では斑の種類ごとに1品種を用いただけであるため,斑の種績と茎項培 養由来のシュ・−一における斑の発現率との関係を結論づけることほできない.しかし,今後さらに品種数をふや
して追試することによりその関係が明確になれば,茎頂培養により繁殖ができる斑の種類の範囲が明らかとなり,
同様にライゾ・−・ムを形成するホウサイラン,スルガラソ,ギョッカラン,カソラソなどの斑入り品種についても敷 術できると考え.られる.