第3章 無菌発芽および茎頂培養により得られたライブ−ムの形態の比較
第1節 ライゾームの増殖
本節では主として培地に添加する天然物質がライゾ・一ムの生長と発達に及ぼす影響について検討した.
第1項 カンランのライゾームの生長に及ぼす天然物質と培養中の
光の影響(実験りランの種子発芽やプロトコームの増殖あるいは器官形成に対し,天然物質が効果的に作用することが多くの種 績で明らかにされている(73,76,83).シンビジウムにおいて,プロトコ・−・ムからの器官形成と器官の発達に対
しトリプトンは促進的に作用するが,酵母抽出物は器官形成を抑制し,プロ†コ1−ムの増殖を促進する(76).
ライゾ・−・ムの増殖用培地にはしはしはトリプトソが加えられる(44,97,137)が,他の天然物賀との比較例は少な く,その効果がライゾ・−・ムに対し普遍的であるか香かは不明である.本実験では,生長が比較的緩慢なカソラン のライゾ・−ムの生長に対する天然物質の影響と,培養中の光の影響について検討した.
材料および方法
Table24に示した5種類の培地をそれぞれ30ml分注した100mトェ・・−レンマイヤー・フラスコに,約2cmに切っ たカソランのライゾ、−rムの先端を1フラスコ当たり5本植え付けた.1外施体の生体盈は約40mgであった.1 培地当たり12フラスコとし,その半黎を25℃,16時間照明(約5001Ⅹ)条件下で,残りを25℃,暗条件下で培養した・
結 果
培養開始後300日目の結果をFig.19に示した.ライゾ・−ムの生体垂と分枝数はすべての天然物質添加培地に おいて,暗培養よりも明培養ですぐれた.これに対し,ライゾ・−ムの直径ほ暗培養でやや太く,その長さも明ら かに長かった.この結果から,増殖の観点からは,分枝が多く,やや細くて短く,重いライゾ・−ムが形成される 明培養が有利であると考えられる.
天然物質の影響庭ついて見ると,ライゾ・−ムの分枝数や生体重増加に対する促進効果は,カゼイソ加水分解物
+イノシッ†が最も大きく,トリプtソーイノシット,トリプトソ+イノシット,ペプトン+イノシット,酵母
Table24.Composition of media for rhizome multiplicationin q′TnbidiuTnkanran.
Medium Constituent
T T−1 P Y
g g ml 喝 喝 g g g m1 3 一 t ■ 3 2 0 5 2 0 0 0 0 ◆ 2 1 0
Hyponex(N:P:Ⅹ=6.5:6:19)
3g 3g 3g 3g
3g 3g
3g
3 g 2m1 2m1 2m1 2 ml lOO喝 100喝 100Ⅰ喝
0.5 喝 0.5 叫g O.5【喝 0.5 喝 2 g 2 g 2g 2 g 20g 20g
20g
20 g lO g lO g lO g lO g lOOOInl lOOO ml lOOO ml lOOO mlBacto tryptOne Bacto peptone Bacto yeast extract Casein hydr01ysate White,s vitamine sol.、
Inosite NA A
ChaIcoal activated SlユCrOSe
Agar Water
pH of each medium was adjusted to5nO−5.1before autoclavlng.
Fresh weight of r・hizome,
Ligbt
Fresh weight of rhizome,
Dark
No..of ramifications of rllizome
N〇.〇r ramificatiOnS O︻rhiNOme
︵如︶む∈OZ3h JO芸如届き占S巴h
Media☆ T T−1 P Y
む∈ONエーJO ︵∈∈︶hβ①己d竃pロd 盲0︶享ぎ3 6 8 0 2
1 1
Figl19・Effect of complex organic substances andlight on rhizome multiplication in qγmと〉£diαm ゐα花rα花.
The rhizomes were cultured at 25℃ with orIWithoutillumination of16 hours for300 days
キ Refer to Table 24
−53一
抽出物+イノシットの順に減少した.−・方,ライゾームの長さは,他に比べ酵母抽出物+イノツッ†添加区で劣 ったが,その他の4培地間には明瞭な差は認められなかった.本実験ではトリプトン以外にはイノシットを添加 しない培地を設定しなかったので断言はできないが,少なくともトリプトン培地では,ライゾ1−ムの生長に対し イノシッ十は効果がないと考えられる.
以上の結果から,以降のライゾ・−ムの増殖は明培養で行い, また培地にほイノシットを加えないこととした.
第2項 カンランおよびイッケイキュウカのライゾームの生長 に及ぼす天然物質の影響(実験2)
実験1の結果からカソラソのライゾー・ムの生長には,カゼイソ加水分解物,トリブナソ,ペプトンが効果があ ることが明らかとなった.この結果についての追試と,この結果が他の種についてもあてはまるか香かについて 検討した.
材料および方法
カソランおよびイッケイキュウカの3交雑囁(金喚素×閑頂,老上海梅×金喚素,温州素×大−・品)のライゾ・−
ムの先端を2cmに切り,Table25に示した増殖用Hyponex培地に天然物質を添加した培地を30ml分注した エ・−レンハマイヤー・フラスコに5本ずつ植え付けた.25℃,16時間照明の条件下で培養し,1区4フラスコとした.
結 果
培養開始後300日目の結果をFig.20およびFig..21に示した.ライゾー・ムの長さおよびその分枝数は,2mm 以上のものについてのみ数えた.ライゾ・−・ムの総長は種塀により異なったが,天然物質の影響についてみると,
温州素×大一・晶以外はトリプトンで最も長く,酵母抽出物では短かった.ライゾー・ムの分枝数もライゾ・−ムの総 長と同様な傾向が認められた.生体蛮ほ同一・材料内でみると,ライブ・−ムの総長の長い培地で塞かった.これを
供試材料間でみると,カソランに比べイッケイキュウカが重く,ライゾー・ムの総長と合わせ考えると,カソラン のライブ・一ムはイッケイキュウカのそれよりも細いことが分かる.形成されたシュー・ト数は老上海梅×金喚素の
カゼイン加水分解物を添加した培地での2.3が最多であり,そのはかはすべて1以下であった.いずれにせよ,
300日間の長い培養期間であるにもかかわらず,シュ・一卜形成数は少なかった.
Table25.Composition of media for rhizome multiplicationin qγmbidium hanran and q′mわidiαmノdわeri.
Medium Constituent
Y C
3 g 3 g
3 − 3 一
Hyponex(N:P:Ⅹ=6.5:6:19) 3g g g Bacto tr・yptOne 3g
Bacto peptone Bacto yeast extract Casein hydrolysate White,s vitamine sol.
N A A
CharトCOalactivated Sucrose
Agar Water・
3 g
3 g 2m1 2m1 2m1 2 ml
O..5喝 0い5喝 0。.5喝 0…5 喝
2g 2g 2g 2g 20g
20g
20g 20 g lO g lO g lO g lO g lOOO ml lOOO ml lOOO ml lOOO ml pH of each medium was adjusted to5.0−5.1before autoclavlng・︵己己︶①已ON叫占h葛 雲如宕J 0 擦 a di e M
T P Y C T P Y C T P Y C T P Y C
¢百ON小月h−○ のuOぷdO−ヒ∈dh−〇.〇N
24
Kancho, Kin−0−SO Dai−ippln
Fig.201・Effect ofcomplex orgranic substances onlength and r・amificationsofrhizome
in勒mわi血m如几rα几and砂mわ適わ戒ノdむe′−i・
The r・hizomes were cultured at25℃,16hoursillumination forI300days・
☆Refer to Table25.
−55−
0
0
2
1 0 0 0
1 ︵如己︶¢百○鳶占h︼○ 芸菅夢上牒責
MediaJX. T P Y C T P Y C T P Y C T P Y C
盲虎ld崇\00ち○ぷS
q′mルゐα花rαれ q′m.ノdわer£ qγm../dわer£
Kin−0−SO Ro−Shanghai−bai
× ×
q′m./dわeri Onshu−SO,
×
Kancho Kin−0−SO Dai−ippln
Fig..21..Effect of complex or・ganic substances on grOWth of rhizome and shoot formationin(フγmbidium hanran and q′mbidium fdberi.
The rhizomes were cultured at 25℃,16hoursillumination for300 days.
碁 Refer to Table 25
ー56一
第3項 ライゾームの生長に及ぼすジャガイモ培地の影響(実験3)
培地に添加される未加工の天然物賀として,しばしばココ・ナッツ・ウォ−・タ・−やリソゴ汁などの胚乳あるいは
果実汁が使用される(13,14,19,31,32,62,76,77,78,碍,104,113,131).さらに,シラカバの樹液(171)やバ ナナの果肉(19,75,76,77)も使用される.ランの培養でほジャガイモ汁を主成分とする培地が使用されること がある.ジャガイモ抽出物添加培地では,加花dr・0むi混mの種子発芽率は高いが,実生の生長はおくれる(17).
同様に伽r・如d孟ひmでも種子発芽率は高まる(41).本実験でほ,ジャガイモ汁添加培地がライゾ・−ムの生長と シュート形成におよぼす影響について検討した.
材料および方法
イッケイキュウカの2交雑種(老上海梅×金喚素,南陽梅×温州素)とカソランのライゾ・−・ムの先端を2cm に切り,Table26に示した7種類の培地を30ml注入した100mトニーレソマイヤー・フラスコに植え付けた.ライゾ
−ム1本の生体垂ほそれぞれ,57.2±36.2mg,96.2±27.3mg,30±14mgであった.供試数は材料により異なり,
1フラスコ当たりの植え付け数およびフラスコ数は,老上海梅×金喚素ほ3本・3フラスコ,南陽梅×温州素は
3本・2フラスコ,カソランは4本・5フラスコとした.培養条件は実験2に準じた.
結 果
培養開始後300日目の結果をFig.22に示した.ライゾ・−・ムの生長は3種類のいずれに・おいてもトリプトン添 加培地で優れ,次いでカゼイン加水分解物添加培地であった.これに対し,ジャガイ1モ汁を主成分とするすべて の培地でライゾ・−・ムの生長が抑えられた.またジャガイモ汁にHyponexを加えた培地(F培地)でもライブ・−
ムの生長が抑えられ,ライゾームの増殖に対するジャガイモ汁の効果はないことが明らかとなった.
ライゾ・−ムの乾物率はジャガイモ汁としょ糖を加えた培地で高く,供試材料の点からみると,老上海梅×金喚 素,南陽梅×温州素,カソランの順に減少した.イッケイキュウカでは培地によりシュ・−トが形成された.特に
カゼイン加水分解物添加培地の老上海梅×金喚素でほ,植え付けた9本のすべてのライゾ・−ムで形成された.
以上の結果からジャガイモ汁はライゾーームの増殖に対し効果ほなく,増殖用培地の主成分としては利用できな いと考えられる.
Table26.Composition of media for・rhizome multiplicationin q′mbidiuTn hanran and Cγmむ最孟㍑mノdわeri.
Medium Constituent
A B C D E F G Hyponex(N:P:K=6.5:6:19) 3g 3g lg lg
3 g
3g
200g 200g 200g 200g 200g
2m1 2m1 2m1 2m1 2 ml O..5喝 0..5喝 0..5喝 0.5喝 0。5Ⅰ喝 0..5喝 0.5喝
− 27..8血g 27.8Ⅰ喝 27,.8喝 27.8喝 27.8昭 一 37.3喝 37.3喝 37u3喝 37.3喝 37.3喝 20 g 20 g 20 g 20 g 20 g 20 g 20 g
lO g lO g lO g lO g lO g lO g lO g
lOOO mllOOO【nllOOO mllOOO mllOOO mllOOO mllOOO ml
Bacto t工・yptOne Casein hydrolysate Potato extract
White,s vitamine sol.
N A A FeSO4・7H20 Na2−EDTA Sucrose
Ag・ar
Water
pH of each medium was adjusted to5.0−5.1befor・e autOClavlng.
−57−
4
︵餌︶三悪む巨 億巴h
Media・汁 A
︵彗こ崖霊百∵ごp℃01葛銘
Fig。22。Effect of complex organic substances and potatoJulCe On grOWth of rhizomein qymむ最iumノdわerノよand qγmわidi比mたα花rα花.
The rhizomes were cultured at 25℃,16 hour・Sillumination for 300 days.
擦 Refer to Table 26
−58一
第4項 ライゾームの増殖に及ぼす液体静置培養の影響(実験4)
プロトコ・−ムの増殖は液体振とう培養で促進される(礼169).また,培地中に無菌の空気を送気する方法ほ より効果的である(68,69).これに対し,第2章,第1節,第1項の3および6では,茎頂培養によるライゾ ーム形成に対し,液体培養の効果は全く認められなかった.しかし,ライゾー・ムの増殖に対し液体静置培養の効 果が確認されている(162).そこで,本実験ではこの液体静置培養の追試を行った.
材料および方法
1cmに切ったシュンラン,カソランおよびタイミソランのライゾームを,増殖用Hyponex培地と,それから
寒天を除いた液体培地を50ml分注したDur・an社製の250ml耐熱瓶に5本植え付けた.外植体の平均重畳はそれ ぞれ36−.7,20.a38.7mgであった.培養条件は実験2に準じ,液体培地の場合は毎日1回培養瓶を手で軽く振り,
培地内への空気の供給を図った.なお,1区5瓶とした.
結 果
培養開始後約4か月目の調査結果をTable27に示した.液体培地でほシュンランおよびカソランの完全な生 存個体はなかった.シュンランのライゾームほ,2週目頃から褐色となった.またカソランでは,僅かながら生 長と分枝の発達をしたのち,3−4週日から褐変が進んだ.一・方,タイミソランの場合は液体培地でもすべての外 植体が生存し,分枝数,総長および生体患は固体培地と差がなかった.以上のように,ライゾ・−・ムの増殖に対す
る液体静置培養の効果は確認できなかった.
Table27.Effect of medium conditions on rhizome multiplication of q′Tnbidia.
Species Medium No.0董 No。0董 No。Of Totallength TotalfreshIncreaslng rate condition explants explants ramifications o董Ihizome weight per of fresh weight
cultured suIVived per explant peIeXplant(cm)explant(mg) (%)
25 24 163 11.3 349.6 952
25 0
25 12 41.4 1.1 99い1 496
25 0
25 25 6 4.9 235 607
25 25 7.1 5.0 211.4 546
NS NS NS
q肌抽萌踊 AgaI
goer乙乃g乙乙 Liquid q冊沌出払刑 Agar
ゐα花rα花 Liquid
q′mむidiαm AgaT
ぷl花e几Se Liquid
(/brm.んαゐurα可
Data were recorded 4months afths the explanting oflcm ofIhizome−bips.
NS:Means within verticalcolumn are not significantly different from one anotheIat5%1evel,aCCOrding
to analysIS OfvaTiance..
第5項 考
察天然物賀の効果については,多くの植物の培養で確認されている.洋種系シンビジウムをはじめとするラソの 営利的苗生産の場では,天然物質はごく一腰的に使用されている.本節での実験を通じ,種あるいは品種によっ て天然物質に対する反応は多少異なることが確認された.全体的にみて,トリプトンは汎用性があり,カゼイン 加水分解物とペプトンも効果が高いが,酵母抽出物は効果が低いと判断できる.
未加工の天然物質としてのジャガイモ汁のライブームの生長に対する効果は全く認められなかった・この結果 は,種子発芽に対してほ効果があるが,実生の発達を抑制したとするChamad(17)の結果と一・致する・
液体培地で静置培養したシュンランとカソランの外植体はすべて枯死した.しかし,タイミソランではすべて