4耐3
第3節 教育的アナロジーを利用した具体的指導の提案
1.代数和の理解
第1学年で学習する,正負の数の加法・減法において生徒が混乱を起こしやすいと 思われる学習内容の一つに,代数和の計算がある。
例えば,一3+7,一10−4,といった計算は,
一3+7=(一3)十(十7)=4 −10−4=(一!0)十(一4)=一14
といったように,二数の和を表している。ところが,それぞれ,一10,一6と答える 誤りが多く見られる。これは,小学校から馴染みのある3+7,王O−4が目に留まるこ
とで,
一3+7=一(3+7)
一!0−4=一(10−4)
といった誤った解釈をしているためであると思われる。
また,代数和の理解によって,三つ以上の数の代数和の計算において,例えば,次 のような工夫が可能になる。
一13+2−6+18=(一13)十(十2)十(一6)十(十18)
=(十18)十(十2)十(一6)十(一13)
={(十18)十(十2)}十{(一6)十(一13)}
=(十20)十(一19)
=20−19 =1
このように,交換法則や結合法則を用いて,計算の工夫ができるという,代数和の 良さにも生徒に気付かせることも大切であると考える。
そこで,トランプカードをソース,代数和をターゲットとして,教育的アナロジー を利用した学習指導を考えた。これは,第1節で挙げた二つのアナロジー利用のタイ プとしては「理解のためのアナロジー利用」に該当する。
トランプカードは,スペード・クラブの黒とハート・ダイヤの赤があり,黒を正,
赤を負として,例えばハートの4は「一4」,スペードの7は「十7」とみることがで きる。そして,この二枚のカードの合計は「十3」と考えることは,比較的理解しや すいように思われる。一4+7という表示を二枚のカードの合言十と対比させることで,
代数和の理解につながると考えられる。
授業の流れ
導
入
開
学習活動 トランプゲームを行う。
<トランプゲームのルール>
トランプカードの得点を,次のように決める。
クローバー,スペード(黒色)→正の数の得点 ダイヤ,ハート(赤色)→負の数の得点 例えば,
□、.、点團⇒十、点
・隣同士で二人ずつのペアをつくり,ゲームをする。
・52枚のカードからそれぞれが2枚すっ引き2枚の 合計得点を二人で勝負する。
く1> クラス全員の中で,2枚のカードの合計得点 が最大・最小だった人とその得点及びカード を全員で確認する。
く2> クラス全員の中で,2枚のカードの合豆ヒ鉱
幽曇∠Lだった人とその得点及びカ
ードを全員で確認する。
<3> 同様にして,3枚を引いてく1〉,〈2>を行う。
①カードの合計得点を考える過程を式で表す。
(1)
團
(/)
菇レ
(ウ)
国
⇒ ( 2)十(十5) =十3
=≒ (・2)十(・7) = ・9
團圃⇒帖)舳)=イ
(一)
レロー㈹)1㈹)一・
指導上の留意点
掲示用の大きなカー
ドで示す。
ジョーカーは除いて
考える。
楽しみながら,行わ せ,二つの数の和を求 めようとする意欲を高
める。
自分たち以外のカー ドについても得点を計 算させる。
得点が0になる場合
も考えさせる。
時間があれば4枚の
場合も行う。
(ア)を全体で行い,残
りは生徒にワークシー トを配布して記入させ
る。
カードの横に既習の 十()を用いた式を示 して答え(合計得点)を
書く。
掲示用の大きなトラ ンプカードで赤黒の色 を付けたものを用意し て掲示する。(視覚的に 分かりやすいソース)
開
学 活動
(オ)
図團團
=÷(・3)十(・8)十(一5)=0
(1)
}團圃團
⇒ ( 3)十(十6)十( 13)十(十8)=.2
②代数和の式表現
記号「十」と「()」を省いた式で表す。
(ア)
口国一舳二胡
岬
王
=弄 一2 +5 =十3
(イ)(ウ)(工)についても同様に代数和の式で表す。
③加法と減法の混じった計算を考える。
(カ)
□回1=1□⇒練;1㌃8
(並びかえて考える)
=一
P0+8
=一Q
□□日1]⇒二〃・
=一2
(注)
一3+6−13+8
=(・3)十(十6)十(・13)十(十8) ≡
=(一3)十(・13)十(斗6)十(十8)
={(.3)十(一13)}十{(十6)十(十8)}
=・16+14
: ・2
指導上の留意点 3枚,4枚の場合も同 様に行う。
カードを置く順番に 関係なく同じ得点にな
ることにも気付かせ
る。
黒板上及びワークシ ートにおいて,①の右
側に並列に書いてい
く。(ターゲットの指導 中にソースが見えるこ と)(ソースとターゲッ トの視覚的な配置の工
夫)
丸で囲むことで代数 和の見方を理解しやす
くする。
代数和の表示の丸で 囲んだ数と一致するト ランプカードを指し示 す。(比較のための教師 のジェスチャー)
交換法則,結合法則 といった計算法則を用 いることにより,工夫 した計算が行えること にも触れる。また,そ
の仕組みが,(注)のよう
に表現されることを確 認させる。
展
ま
と
め
学習活動
⑤代数和で表された計算問題を解く。
〈1〉一3−8 〈2〉5−10 〈3〉 2−8+10 〈4〉一3+6−17+4 <5〉 一25+17+23−15
代数和の計算問題を解く(25間)。
〈1〉一4+6
〈2〉一7+2
<3〉5−10 く4〉2−8 く5〉一3−7
〈6〉 一2−15
〈7〉 19−35
〈8〉 一28+28
〈9〉 一15+24
〈10〉 一29−16
〈11〉 一6+8−4
〈12〉 一5−17−2
〈13〉 15−28−6
〈14〉 2−8+10−4
〈15〉 一3+6−7+4
〈16〉 5−7−6−8
〈!7〉 一12−7+3−2 .
〈18〉 3−18+12−9
〈19〉 一5+14+6−10
〈20〉 10−24−13+26
〈21)一3.3+2.6
〈22〉 一2.8+2.3−1.7+1.2
1 1
〈23〉一一一 5 2 2 1 3
〈24〉 一一 十一一一
5 3 10 5 3 2
〈25〉 一一寺1一一十一
6 4 3
指導上の留意点 全体で行い,代数和 の理解の定着を図る。
黒板の対比と共に,
丸で囲む数を意識させ
る。
〈3〉〜〈5〉について は工夫した解法も考え
させる。
プリントを準備して おき,各自で解かせた 後,答え合わせをする。
机間指導を行い,必
要に応じて助言をす
る。
小数や分数の場合も 考えさせる。
時間内に解けなかっ た問題は課題とする。
2.標準的な平均(相加平均)と調和平均
前節第2項の(2)で挙げた平均の問題について,1時間の授業としての指導を提 案する。ソースとなる「標準的な平均(相加平均)」を求める解法は,提示した問題に おいては誤った解法となる。このことを,生徒自身に考えさせて,例えば,既習事項 の距離・速さ・時間の関係式を利用して具体的数字を代入して確かめて,誤りである 理由を説明させるなど,数学的活動を取り入れた展開を考えた。
授業の流れ
導
入
展
学習活動 標準的な平均の問題を考える。
問題
自転車レースの練習で400m走を2回行い,タイ ムを計った。1回目は47.5秒,2回目は45.1秒で あった。A君の2回の平均タイムを求めよ。
(47.5+45.1) ÷2 = 46.3
盟
①誤りを起こしやすい平均の問題を考える。
問題
自転車でA地点からB地点を往復するのに,行き
は時速40km,帰りは時速10kmで走った。平均
往復の平均時速は何kmか。Aミ数時速40km
。誤った解法。 帰り時速い
(40+10)÷2=25
平均 時速25㎞
どこが間違っているかを考える。
例えば,A,B間の距離が40kmとすると
指導上の留意点 単純に二つの数を加
えて,2で割るといった 標準的な平均の問題を
扱う。
あまり考える時間を とらずに発表させて答
え合わせを行う。
図を提示して題意を 理解しやすくする。
加えて2で割るといっ た相加平均を求める解 法を提示する。(視覚的 に分かりやすいソース)
気付いたことを発表
させる。
具体的な距離で考え て上記の解法が誤りで あることを確認する。
展
学習活動
<正しい解法>
A地点からB地点の距離をαkmとする。
A αkm
B Aαkm
時速40km
2αkm
時速10km
全体でかかった時間 (一L+一L)時間
40 1.O
全体の平均時速ご(全体σ)距離)÷(全体でかかった時間)
=2α÷(」」十」二)
40 ユ0
5a
=2α÷一 40
a =2α ÷一8
=16 平均 時速16㎞
②速さに関する文脈の問題で標準的な平均の問題を
解く。
練習間題
自転車でP地点からQ地点を通ってR地点へ行 くのにPからQは時速40km,QからRは時速 10kmで走った。PからQ,QからRにかかった
時間が全く同じであるとき,全体の平均時速は何 kmか。
<解法>
PからQ,QからRにかかった時間をα時間とする
P
α時間
Q R
α時間時速40km
日、
時速10km
全体の距離 (40α斗10α)krn
指導上の留意点 距離・速さ・時間の関 係については苦手とす る生徒が多いことが予 想されるため,丁寧に全 体で確認をしながら線 分図を完成させていく。
誤った解法は黒板上 に残したままにして,土 しい解法を書いていく。
(ターゲットの指導中1こ ソースが見えること)
問題文が書かれたワ ークシートを配布し,し ばらく時間をとって考
えさせる。
①を解いた時と同じ ような線分図を利用し
て考えさせる。
解けた生徒に発表さ せ,解法の構造が①の誤 った解法と同じである
ことに気付かせる。
線分図・解法が黒板上 で①と同じ配列になる ようにする。(ソースと ターゲットの視覚的な
配置の工夫)
ま
と
め
学習活動
全体の平均時速=(全体の距離)÷(全体でかかった時間)
=(40α十10α)÷2α =(40+10)÷2
=50÷2 =25
(答)時速25km
練習問題を解く。
問題
自転車でP地点からQ地点を往復するのに,
行きは時速30km,帰りは時速10kmで走った。
全体の平均時速は何kmか。
指導上の留意点 二つの線分図と解法 の違いを指で指し示し ながら比較をする。(比 較のための教師のジェ
スチャー)
調和平均の問題を行
う。
解けた生徒に解法を 板書させて二つの解法 の対比を利用しながら
説明させる。