第 5 章 地上デジタル放送における 長遅延波の影響
5.3. 提案手法 B の概要
送信信号がxにして,そして,ガードインターバルの付加あるいは除去,窓関 数,FFT,IFFT処理,チャンネル推定,チャンネル雑音,及び受信信号をそれ ぞれTcp, Rcp, M, F, FH, H, N, yで表す.受信信号の計算は次の式で表す.
y = F RcpM HnTcpFHx
= Ωx (5.16)
Nn = N+Nawgn (5.17)
遅延波の長さはガードインタバールを超えるとき,ISIが生じるため,受信信 号を次の式で表す.
yk =F RcpM HnTcpFHxk+F RcpHISIM HnTcpFHxk−1 (5.18)
Ω =
F RcpM HnTcpFH (L≤GI)
F RcpM HnTcpFH +F RcpHISIM HnTcpFH (L≥GI)
(5.19) 式5.16の送信シンボルベクトルxを得るためには,行列Ωを求め,その逆行列 を受信シンボルベクトルΩ−1に乗ずれば良い.しかし,ICIはすべてのキャリア から生じるため,Ωの次元は大きく,逆行列演算に膨大な時間がかかってしまう.
そこで,キャリア間干渉の特徴を利用して演算量の削減を行う.特定の搬送波に 対する干渉成分の電力がそのキャリアに近いものほど大きく,離れるにつれて急 速に減衰すると考えられる.したがって,干渉の影響の主要な成分は隣接キャリ アで伝送されるシンボルの干渉であり,これらの影響を除去するだけでも特性の 改善を期待できる.そこで,注目されたシンボルの両側のシンボルからの干渉だ け考慮する.よって,行列Ωは次の式で表す.
Ω =
γ α 0
β γ . ..
. .. ... ...
. .. ... α
0 β γ
x
k-1x
kx
k+1y
k-1y
k= α x
k-1+ γ x
k+ β x
k-1+z
ky
k+1a
β γ
図 5.8 受信信号の計算
数値計算の結果により,行列Ωは上のように帯行列の形になる.したがって,
式5.18は次の式に変形できる.そして,受信信号の計算は図5.8に示す.
yk =αxk−1+γxk+βxk+1 (5.20) 式5.20から分かるように,受信シンボルは行列Ωの対角線成分α, γ, βで決定す る.得られた受信シンボルを用いて,ベイズの定理により送信シンボルの確率を 求める.これから,提案されたベイズ定理を述べる.
5.3.1 ベイズ定理
ベイズ定理により,ある試行の結果において,ある事象が起こったことが分かっ た時,それに先行する事象の確率を評価することが可能である.その定義は次の 式で表す.
P(B|A) = P(A|B)P(B)
P(A) (5.21)
y
k-1y
ky
k+1p(x
(1)k-1) p(x
(1)k) p(x
(1)k+1)
x
(2)kx
(2)k+1x
(2)k-1x
(3)kx
(3)k+1x
(3)k-14
3図 5.9 送信シンボルの推定するアルゴリズム
従って,ベイズの定理を用いて,行列 Ωの係数α, γ, β 及び隣接の受信信号 xk−1, xk+1により,k番目の送信シンボルxkを判定する.その手順は次に示す.
• (xk−1, xk, xk+1)を送信したときに,ykを受信する確率を求める.
p(yk|xk−1, xk, xk+1) = 1
2πσ2exp(−|yk−yˆk(x)|2 2σ2 )
• ykを受信したときに,それは(xk−1, xk, xk+1)を送信した時起こる確率を求 める.
p(yk) =∑
p(yk|xk−1, xk, xk+1)p(xk−1, xk, xk+1) p(xk−1, xk, xk+1|yk) = p(yk|xk−1, xk, xk+1)p(xk−1, xk, xk+1)
p(yk)
• (xk−1, xk, xk+1)確率の中から,それぞれ1 + 1i,1−1i,−1 + 1i,−1−1iの確 率を求め,そしてサブキャリアごとに一番高い確率を求め,それは送信シ ンボルだと判定する.
• 推定された送信信号の信用性を確かめるため,ベイズ定理で推定された値 を同一なチャンネルを通過させ,新たな受信信号を得る.この受信信号と 最初受信された信号を比較する.もし,この二つの受信信号の差分はゼロ であれば,初回のベイズ定理で推定された送信信号は正確だと考える.但 し,その差分はゼロではなければ,推定されたシンボルが正しくないと認 められ,次の処理を行う.
• 初回のベイズ定理で得られた送信シンボルの確率情報を用いて,隣接キャ リアシンボルの発生する確率により,繰り返し処理を行い,推定精度を向 上させる.