第 5 章 地上デジタル放送における 長遅延波の影響
5.2. 提案手法 A のシステムモデル
図 5.4 system model
図5.4はシステムモデルを示す.送信信号はs(n) = [s0(n), ..., sM−1(n)]T と表 す.ガードインターバルを加えた後の信号はs,(n)サイズ(M +K)×1の行列に なる.Kはガードインターバルの長さを表す.
s,(n) =Tcps(n) (5.3)
Tcpはサイズ(M +K)×MのCP 行列を表す.
Tcp=
[ 0K×(M−K) IK×K IM×M
]
(5.4) ここで,0K×(M−K)はサイズK×(M −K)の零行列で,IM×M はサイズM×M の単位行列を表す.よって,受信信号r,(n)は次の式になる.
r,(n) =H0s,(n) +H1s,(n−1) +n,(n) (5.5) n,はサイズ(M +K)×1のチャンネル雑音を表し,H0及びH1はサイズ(M + K)×(M +K)のチャンネル行列になる.次の式で定義する.
H0 =
h0 0 · · · · 0 ... . .. ... ... hL . .. ... ... 0 . .. . .. ... ...
... . .. ... . .. 0 0 · · · 0 hL · · · h0
H1 =
hL · · · h1 0 . .. ... 0(M+K) ×(M−L+K) ... . .. HL
... 0 ... ... 0 · · · 0
信号は最大遅延Lの伝搬路を通過し,チャンネルインパルス応答はh= [h0, h1, ..., hL] で表す.受信された信号r,のCP を消した後にr(n)になる.
r(n) = Rcpr,(n)
= RcpH0Tcps(n) +RcpH1Tcps(n−1) +n(n) Rcpはガードインタバールを消すための行列,次の式になる.
Rcp = [
0M×K IM×M ]
(5.6) もし,K > L−1ならば,RcpH1Tcpのすべての成分は0になる.n番目の信号は (n−1)番目信号からの符号間干渉(ISI)を受けない.つまり,RcpH0TcpはM×M の巡回行列になる.従来手法では,one-tap FDEの情報を用いて,ICIを等化す る.しかしながら,もしガードインタバールの長さ(K ≤L−1)なら,RcpH1Tcp は0行列ならず,次の式で表す.
RcpH1Tcp =
hL · · · hK+1 0 . .. ... 0M ×(M−L+K) ... . .. HL
... 0
... ... 0 · · · 0
(n−1)番目信号からの干渉が生じてしまうので,RcpH0Tcpは次の式になる.
RcpH0Tcp= (5.7)
h0 0 · · · · 0 hk · · · h1 ... . .. ... ... ... ...
... . .. ... 0 hL ...
... . .. ... . .. ... ...
hL . .. ... . .. hL
0 . .. . .. ... 0
... . .. ... . .. ... ...
... . .. ... . .. 0
0 · · · · 0 hL · · · · h0
式5.7により,RcpH0Tcpは巡回行列ではないことが明らかである.したがって,
one-tap FDEを用いてICIを等化できなくなる.しかしながら,RcpH0Tcpは巡回 行列の形に近いため,二つの行列に分離することが出来る.そのうちの一つは巡 回行列の形になる.
RcpH0Tcp=C−CICI (5.8) Cは巡回行列で,一列目はRcpH0Tcpと同様ため,次の式で表すことができる.
C =
h0 0 · · · 0 hL · · · h1
... . .. ... . .. ... ... ... . .. ... . .. hL
hL . .. ... 0
0 . .. . .. ... ... ... . .. ... . .. 0 0 · · · 0 hL · · · · h0
その時,CICIの成分は次の式になる.
CICI =
hL · · · hK+1 0 . .. ...
0M×(M−L) ... . .. HL 0M×K
... 0
... ... 0 · · · 0
CP 消した後のn番目の信号は次の式で表す.
r(n) = Cs(n)−CICIs(n) +CISIs(n−1) +n(n) (5.9) CISI は次の式になる.
CISI =RcpH1Tcp (5.10)
符号間干渉の補償法
ここでは,ISIを除去する方法を新たに提案する.送信信号を再構造すること により,ISIの影響を軽減することを実現する.行列CICI とCISI の形は似てい るため,時間シフトすることで
CICIs(n) =CISIs(n−1) (5.11) が成立であれば,干渉の消去ができる.その時の受信信号を次の式になる.
r(n) = Cs(n) +n(n) (5.12)
CICI とCISI は異なるが,同じ成分が存在するため,CICI の成分を右にK単位 シフトすることで,CISIが得られる.したがって,二つの行列の間に相関性があ ることが分かる.よって,
CICISK =CISI (5.13)
Sは次の式で表す.
S =
0 1 0 · · · 0 ... . .. ... ... ...
... . .. ... 0
0 . .. 1
1 0 · · · · 0
CICIs(n) =CICISKs(n−1) (5.14) 送信された信号の中に(n−1)番目とn番目の信号の相関特性は次の式になる.
sm(n) = sm+K(n−1), m=M −L, ..., M −K−1 (5.15) 上の式から,先行シンボルからの干渉部分のレプリカを複製し,現シンボルの同 じ場所に挿入することで,符号間干渉を除去できることがわかる.しかしながら,
同じ信号を二回ほど伝送するため,転送率を低下させてしまう問題が生じる.提 案手法の信号伝送率は(M−L+K)/Mである.図5.5は提案された送信信号の 構造図を示す.図5.6はISIキャンセラのブロックダイヤグラムを示す.
従来手法に比べ,提案手法ではISIを消去するため,送信機側がチャンネル状 態を分かる必要がなくなる.例えばチャンネルのインパルス応答を挙げられる.
受信機から遅延の長さだけ分かれば,干渉を除去する可能である.そして,精度 高いチャンネル推定はキャンセラの性能に影響を与えるため,これも検討する必 要があると考えられる.
図 5.5 Transmitted signal format for interfernce cancellation
図 5.6 ISI Canceller