2.7.3 臨床的有効性
2.7.3.5 推奨用法・用量に関する臨床情報の解析
2.7.3.5.1 用法・用量(案)
通常、成人にはメマンチン塩酸塩として1日1回5 mgから開始し、1週間に5 mgずつ 増量し、維持量として1日1回20 mgを経口投与する。
2.7.3.5.1.1 用法 (1日の投与回数)について
海外で承認されているメマンチン塩酸塩の用法は l日2回(朝・昼)投与であったが、 本邦で臨床試験を実施するにあたり、メマンチン塩酸塩の薬物動態学的特徴(最高血築中 濃度到達時間:約 6時間、血摂中消失半減期:約 70時間)から1日l回(朝)投与と l
日2回(朝・昼)投与とでは、長期投与時の血摂中メマンチン濃度推移に大きな相違はな いと推察され、 l日1回投与が可能であると考えた。薬物動態面では、単回経口投与時の 血摂中濃度を基に 20mgを1日l回投与したときと10mgを1日2回投与したときの血摂 中メマンチン濃度をシミュレーションした結果、両者の血摂中メマンチン濃度推移はほぼ 閉じであることが示されている [2.7.2.3.2項参照]。また、患者の服薬と介護者による服薬 管理のコンブライアンス維持を考慮、しでも、 1日l回投与はより望ましい用法であると判 断した。 この考えに基づき、本邦の前期第II相試験 (IE2901)はl日l回投与にて実施し、
安全性に大きな問題は認められず、有効性を示唆する成績が得られた。 そのため、以降の 本邦の臨床試験ではすべてこの方法で実施し、その結果、用法に起因する問題は特に認め られていなし¥。な お 、 こ の 前 期 第 同 試 験 (IE2901)開始前の 19̲年.月には、医薬品 副 作 用 被 害 救 済 ・ 研 究 振 興 調 査 機 構 と の ‑ 相 談 を 行 い 、
以上より、本邦における用法については1日l回投与と設定することにした。なお、海 外ではAD患者を対象とした 20mgのl日1回投与と 10mgの1日2回投与の2群による比 較試験が行われており、安全性及び有効性において両群に差は認められなかったとされて いる24)。また、上述のように当初海外で承認された用法は1日2回投与であったが、欧州、│ においては、 1日l回投与と 1日2回投与とは薬物動態学的特徴や臨床試験における安全 性においてほとんど相違がないとされ、 2008年5月に1日l回投与が追加承認されている
[2.7.3.1.1.3.3項参照]。
2.7.3.5.1.2 投与開始初期の用量について
投与開始初期の用量については、先行する海外での開発の経緯を考慮して、安全性の観 点から検討を行った。
海外における初期の臨床試験では、メマンチン塩酸塩の用量は投与開始(開始時用量 :5 mg/日)から 1週間以内に維持用量 (20~30mg/日)まで増量する方法で実施され、投与開 始初期の血摂中メマンチン濃度の上昇時に有害事象の発現率が高かった。 すなわち、メマ ンチンの血摂中濃度が急激に上昇した場合に有害事象の発現する可能性が高まることが示 唆されたため、 ラトピアで実施された第四相 試 験 (民主RZ90001‑9403)では、 5mg/日から 投与を開始して 1週間後に5mg増量する漸増法(維持用量 :10 mg/日)が採用された。そ して、当該試験以降、海外のADを対象とした臨床試験では、開始時のメマンチン塩酸塩 の用量を5mg/日とし、その後 1週間ごとに5mg/日ずつ漸増して維持用量の20mg/日とす る漸増法により実施された。その結果、第III相 試 験 (1vfRZ9000l‑9605三重盲検期)では、
有 害 事 象の発現率はメマンチン塩酸塩 群と プ ラ セ ポ群と で ほ ぼ同 様 の 値であった
[2.7.3.1.1.3.3 項参照]。
海外での経緯を踏まえ、本邦における臨床試験においてもメマンチン塩酸塩の開始用量 は5 mg/日とし、1週間ごとに5 mg/日ずつ維持用量(10 mg/日又は20 mg/日)まで増量す る漸増法を採用した[2.7.3.1.1.3.3 項参照]。その結果、国内主要2試験において、漸増期 の有害事象発現率はメマンチン塩酸塩群(10 mg/日群又は20 mg/日群)とプラセボ群とで 差は認められなかった[2.7.6.19, 2.7.6.20 項参照]ものの、浮動性めまい等の副作用は投与 開始初期に発現していることを踏まえ、投与開始初期に発現する有害事象を回避するため、
メマンチン塩酸塩を5 mg/日から開始し、維持用量までは1週間ごとに5 mg/日ずつ増量す る漸増法を採用した。
2.7.3.5.1.3 維持用量について
後期第II相試験(IE2101二重盲検期)では推奨用量の検討を目的として、メマンチン塩
酸塩の10 mg/日群と20 mg/日群及びプラセボ群を設定した。試験の結果、有効性について
以下の知見が得られている。
- 主要評価項目に関して、SIB-Jによる認知機能評価では投与24週後の評価で用量反 応性が認められ、プラセボ群に比べて 20 mg/日群が有意に優っていた[表 2.7.3.2
-1, 図 2.7.3.2-1参照]。しかし、もう1つのADCS ADL-Jによる日常生活動作で は、投与 24 週後評価で用量反応性並びに群間に有意差は認められなかった[表 2.7.3.2-2, 図 2.7.3.2-2参照]。
- 副次評価項目では、CIBIC plus-Jによる全般的臨床症状評価において、投与24週後 評価に用量反応性は認められなかったものの[表 2.7.3.2-3, 図 2.7.3.2-3参照]、
追加解析として行った混合効果モデルを用いた全評価時点を通じた解析で用量反応 性が認められた[表 2.7.3.2-4参照]。またMMSEとFASTにおいて、投与24週後 評価で用量反応性が認められ、プラセボ群に比べ20 mg/日群が有意に優っていた[表 2.7.3.2-5参照]。
以上より、有効性については用量反応性が認められ、安全性については有害事象及び副 作用発現率に3群間に差が認められなかったことから、メマンチン塩酸塩の推奨用量(維 持用量)は20 mg/日であると判断した。
第III相試験(IE3501)では、後期第II相試験(IE2101二重盲検期)の結果に基づき、
メマンチン塩酸塩の20 mg/日群及びプラセボ群を設定した。試験の結果、有効性について 以下の知見が得られている。
- 主要評価項目の1つであるSIB-Jによる認知機能評価では、投与24週後評価でメマ ンチン塩酸塩群のプラセボ群に対する有意差が認められた[表 2.7.3.2-6, 図 2.7.3.2-4参照]。
- もう1つの主要評価項目であるModified CIBIC plus-Jによる全般的臨床症状評価で
は、両群間に有意差は認められなかったものの、メマンチン塩酸塩群はプラセボ群 に比べて悪化の程度は小さく、プラセボ群を上回った[表 2.7.3.2-7, 図 2.7.3.2-5 参照]。本試験ではデイケア・デイサービスの利用率が高かったため、Modified CIBIC
plus-Jの評価がその影響を受け、有意差を検出できなかったと考えられた。
また、当該試験についても、安全性に関しては両群間に差は認められていない。
以上より、メマンチン塩酸塩の維持用量は20 mg/日とした。
2.7.3.5.1.4 腎機能障害患者での薬物動態並びに他の試験結果から得られた情報
1日1回20 mgの維持用量について、内因性変動要因、PPK(母集団薬物動態解析)で
の検討結果などから[2.7.2.3 項参照]、被験者の体重、尿pHなど、血漿中濃度に多少影響 を与える要因があるものの、血漿中濃度別の安全性を検討した結果[2.7.4.2.1.1.5 項参照]、
試験対象集団においての安全性上の問題はないものと判断した。ただし、腎機能障害を有 する患者の場合、メマンチン塩酸塩の排泄速度は腎機能の低下の程度に応じて低下し、メ マンチンの薬物動態は影響を受けることが確認された[2.7.2.2.2.2.3 項参照]。したがって、
添付文書(案)の「用法・用量に関連する使用上の注意」、「慎重投与」において腎機能障 害を有する患者に投与する際の規定を記載し、注意喚起を図ることとした。