富山大学1),奈良県立医科大学附属病院2)
山本 善裕1)笠原 敬2)
「感染症と教育」のテーマで公募したところ,多数の応 募があった.そのため今回はテーマを「感染症医の教育」
に絞り 8 演題に発表頂くこととした.
感染症医の教育に関するシンポジウムは,ここ数年本学 会総会にて企画されている.昨年は,感染症診療と感染制 御をバランスよく両立できる「病院感染症医(Infectious Disease Hospitalist)」という新たな概念を提唱し,議論し た.今年は医学教育・臨床現場の最前線で活躍されている 先生方に多角的視点から講演頂き,さらに総合討論で議論 を深めていき,次に繋げたい.
感染症医の教育において重要なことの一つは,いかにし て質の高い感染症専門医数を増加させていくかである.平 成 25 年 4 月のデータでは,特定・第一種感染症指定医療 機関の中で感染症専門医が勤務している施設は 66.7% であ り,第二種感染症医療機関においてはわずか 22.9% という 低さである.将来のためには,現在行われている教育のあ り方を検証し,必要であれば新しい取り組みを積極的に 行っていかなければならないと考える.
本シンポジウムにおいて卒前教育では,微生物学と感染 症学の連携,感染症学と感染制御学の充実,臨床実習体制 の構築などについて議論したい.卒後教育では,初期研修 期間の教育,感染症診療と感染制御のバランス,主科とし ての診療とコンサルテーション対応,内科系・小児科・外 科系からの専門医修得への道筋などについて議論したい.
各々の施設による努力には限界があると考える.可能で あれば,感染症学会主導の多施設共同教育プログラムを構 築し,感染症専門医ロールモデルを確立していく提案をし ていきたい.
1.インドネシアにおける医学生教育―福井大学での取 り組みについて―
福井大学医学部ゲノム科学・微生物学領域1),神 戸大学医学研究科感染症センター2),同 保健学 研究科経口ワクチン創薬研究開発講座3)
定 清直1)内海 孝子2)堀田 博3)
【目的】福井大学医学部では医学科 3 年次生の研究室配属 のカリキュラムを用いて,海外での医学研修を推奨してい る.当ゲノム科学・微生物学領域では,医学生に熱帯にお ける感染症学・微生物学の臨床と基礎研究の最前線の体験 を目的としたプログラムを実施している.
【方法】2011 年度よりのべ 5 名の医学生をインドネシア共 和国スラバヤ市にあるアイルランガ大学に派遣した.現地 でのスケジュールは,最初の 1 週間がアイルランガ大学医 学部のストモ病院熱帯医学病棟にて感染症学の臨床実習 を,続いてアイルランガ大学 ITD(熱帯病研究所 Institute of Tropical Disease)内に設置された感染症研究国際ネッ トワーク(J-GRID)神戸大学インドネシア拠点(Collabora-tive Research Center for Emerging and Re-emerging In-fectious Diseases:CRC-ERID)にて,基礎 研 究 に 2 週 間 参加した.
【結果】臨床実習では現地医師の指導の下,同世代のイン ドネシア人医学生(ヤングドクターと呼ばれ,日本とは教 育制度が異なる),あるいは世界各国から集まった医学生 とともに回診やカンファレンスへの参加,さらに検査業務
の見学を体験した.特にマラリアやデング熱,原因不明の 貧血患者の診断の過程をベットサイドで指導を受けた.2 週目以降の基礎研究では,肝炎ウイルス,デングウイルス,
インフルエンザウイルス,HIV,感染性下痢症の各研究チー ムをローテーションしながら,現地のスタッフと共に研究 を体験した.また期間中,医学生は現地医学生とルームシェ アしながら学生寮に滞在し公私ともに交流を深めた.福井 大学医学部では医学生の海外研修に単位を付与するととも に,様々な奨学金制度を準備している.
【結論】本教育プログラムを通じて,医学生は海外(イン ドネシア)における感染症の現状と問題点,さらに研究マ インドに触れることができた.教育の成果は福井大学広報 を通じて,ホームページや広報誌(福井大学大学案内,ふ くだいプレス)に掲載されたほか,MD 研究者養成・四大 学コンソーシアムリトリート(福井大学,神戸大学,滋賀 医科大学,京都大学の学生教職員約 80 名が集い,現在取 り組んでいる研究内容や将来のキャリアパスについての意 見など交流を深めるもので,2011 年より実施されている)
にて発表された.現在は福井大学とアイルランガ大学の医 学部間の協定の締結を目指しており,将来的には両国の医 学生の交換留学を実現させたいと考えている.
医学生によるレポートとインタビューのリンクは以下の 通り.
http://www.u-fukui.ac.jp/cont̲life/face/051/index.html http://www.u-fukui.ac.jp/cont̲life/face/054/index.html http://www.u-fukui.ac.jp/cont̲life/face/055/index.html http://www.u-fukui.ac.jp/cont̲life/face/066/index.html http://www.u-fukui.ac.jp/juken/page̲cross/vol15.html 2.卒前卒後にわたる感染症・感染制御教育への取り組 み
鳥取大学医学部附属病院感染制御部1),高次感染 症センター2),感染症内科3)
千酌 浩樹1)2)3)
感染症専門医について,平成 22 年本学会より「感染症 に関する一定以上の診療経験を有することに加え,輸入感 染症にも対応できるとともに,適正な抗菌薬使用ができ,
施設内感染対策にも高い見識」(一部略)を有する医師像 が示されている.このためには感染症診療と感染制御を一 体として教育するシステムが有用であろう.加えて卒前か ら研修医,専門医取得まで一貫した教育行えればさらに効 果的であると考えられる.私達は感染制御部運営に加え,
平成 25 年に 2 類感染症・輸入感染症等に対応する高次感 染症センター,各科に横断的に介入する感染症内科の開設 を契機に,上記のような一貫した教育システム構築に取り 組んできた.現在卒前教育として,学部 2 年生の生体反応 学,学部 3 年生の基礎感染症学の一部担当から始まり,4 年生で臨床感染症学全 23 コマの運営,5 年生,6 年生では 感染症科臨床実習を行っている.卒後は研修医ローテート を受け入れる一方で,研修医の自発的要望で 6 カ月間 12 回にわたる感染症セミナーを開催するなど,本領域への学
生・研修医の興味に応える努力を続けている.その結果と して,6 年生が臨床実習先として高倍率で当科を希望し,
研修医ローテート希望者が増加するなど強い手ごたえを感 じている.新専門医制度への対応等,今後解決していくべ き課題はあるものの,より多くの若者に感染症・感染制御 の魅力を感じてもらえるよう努力していきたい.
3.卒後初期研修における感染症教育が病院全体の感染 症診療の質に与える良い影響
佐賀大学医学部附属病院感染制御部1),総合病院 鹿児島生協病院2),伊万里有田共立病院3),佐賀大 学医学部附属病院検査部4),医療法人ひらまつ病 院5),佐賀県医療センター好生館感染制御部6),国 際医療福祉大学医学検査学科7)
濱田 洋平1)小松 千夏4)橋本 優佑4)
山口 浩樹2)曲渕 裕樹3)浦上 宗治1)
於保 恵4)永田 正喜5)草場 耕二4)
福岡 麻美6)永沢 善三7)青木 洋介1)
当院では 2006 年から初期臨床研修において 2 年次研修 医に対して感染制御部選択コースを設けており,2014 年 度まで計 241 名の研修医が研修を終えた.初期研修での感 染症教育が感染症診療の質に与える影響について検討し た.各研修医は,3 年次以降後期研修医として各診療科へ 所属するが,小児科が 20 名,肝臓・代謝内科 19 名,麻酔 科 16 名,消化器外科 15 名の順となっていた.院内の感染 症診療に与えた影響として,年間血液培養採取数が 2000 年代前半の 2,000 セット弱から 5,000 セット前後まで経時 的に増加し,2 セット以上採取率が 40% から 80% 以上へ 上昇している.1,000 patient days あたりの菌血症診断数 は 1997 年から 2014 年にかけて 0.26 から 1.27 まで増加し,
血液培養採取時に敗血症性ショックである患者の割合は 31.5% から 16.9% へ低下した.菌血症患者全体の 28 日死 亡 率 は 1997 年,2014 年 で そ れ ぞ れ 34.2%,14.4% で,早 期の積極的な血液培養採取による確実な菌血症診断が患者 予後改善に寄与していると考えられた.また,当院ではカ ルバペネム系抗菌薬の AUD は 0.38 100 bed days と低値 であり,これは各診療科における抗菌薬適正使用が広く浸 透しており,感染症教育の一つの成果であると考えられた.
初期研修において感染症教育を終えた研修医が各診療科に 所属することは,院内全体における感染症診療の質向上を もたらす重要な因子と考えられた.発表の際には 2014 年 度までのデータを加えて報告する.
4.小児感染症教育における成人感染症プログラムとの 連携の必要性
東京都立小児総合医療センター感染症科1),国立 成育医療研究センター感染症科2)
堀越 裕歩1)宮入 烈2)
【目的】小児病院の小児感染症教育では,各診療科からコ ンサルテーションにより経験できる症例を集約化させるこ とが望ましい.小児病院のコンサルテーションによる教育 プログラムを評価し,改善点と今後の方向性を検討する.