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患者・家族指導の重要性

「痛み」は主観的なものであり、症状マネジメントの考え方からもマネジメントの主体は患 者自身であるため、痛みのマネジメントに必要な知識や技術を患者に提供することは重要で ある。

日本緩和医療学会の『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2010年版』10)では、「がん疼

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苦痛緩和

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症状マネジメントの実際

痛マネジメントについて患者に教育を行うことで痛みは緩和する」としており、「がん疼痛マ ネジメントについて患者に教育を行う」ことを強く推奨している。また、がん患者の家族は、

患者の疼痛マネジメントへの不安を持っていることから、がん疼痛マネジメントについての 患者教育においては、可能な限り、家族も含め行うことが望ましいとも述べている10)。 がん疼痛のマネジメントについて、患者教育をどのように行うべきかについては、「その患者 が実際に心配していることを明らかにし、患者個別に応じた教育を行うこと」と「がん疼痛 マネジメントについての患者教育は、継続して行うこと」が重要であるとしている10)

患者・家族指導の内容

がん疼痛マネジメントについての患者教育に含まれるべき教育内容としては、痛みとオピオ

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がん疼痛マネジメントについての患者教育の内容 4

痛みを感じた初期の段階で行う指導 痛みとオピオイドに

対する正しい知識

以下の誤った認識がないかを確認する。

①精神依存になる。

②徐々に効果がなくなる。

③副作用が強い。

④痛みは病気の進行を示す。

⑤注射がこわい。

⑥痛みの治療をしても緩和することができない。

⑦痛みを訴えない患者は「良い患者」であり、良い患者でいたい。

⑧医療従事者は痛みの話をすることを好まない。

痛みの治療計画と 鎮痛薬の具体的な使 用方法

①患者の痛みの原因

②痛み治療の目標

③痛みの治療計画(化学療法、薬物療法、神経ブロックなど)

④鎮痛薬の具体的な使用方法

・定期的な鎮痛薬の服薬方法

・レスキュー・ドーズの使用

・副作用の出現と対策(嘔気・嘔吐、便秘、眠気、精神症状)

医療従事者への痛み の伝え方

①痛みを医療従事者に伝えることの意義

②痛みを医療従事者に伝える方法(NRS、痛み日記など)

③疼痛マネジメントがうまくいかなかったときの連絡先

ある程度痛みのコントロールが付いた段階で行う指導    

非薬物療法と生活の 工夫

①患者や家族が行っている薬物以外の有効な疼痛緩和方法の確認

②疼痛緩和につながる薬物療法以外の方法をみつけて行うように促す  (温める、移動の仕方など)。

※日常生活を送る中で痛みが悪化する要因や警戒する要因を、患者・家族とと もに見出し、生活に取り入れられるようともに考えていく。

セルフコントロール

①自分で痛みを観察し、コントロールするように促す。

②患者自身が痛みをコントロールしている実感を持てるように関わる。

③患者の病状悪化に伴い、患者に代わって家族が痛みのコントロールをする場 合、患者の病状や家族の理解に合わせて、痛みの緩和方法を具体的に教育し、

家族の不安を軽減するように努力める。

日本緩和医療学会緩和医療ガイドライン作成委員会( 2010).がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2010 年版.およ び ELNEC-J コアカリキュラム指導者用ガイド(2011).モジュール2:痛みのマネジメント.より改変引用

イドに関する正しい知識、痛みの治療計画と具体的な鎮痛薬の使用方法、医療従事者への痛 みの伝え方、非薬物療法と生活の工夫、セルフコントロールを含める(表 4)8)

OPTIMプロジェクトが作成している、患者・家族のためのツールとして痛みのパンフレッ ト14)や、厚生労働省委託事業の緩和ケア普及事業であるオレンジバルーンプロジェクトの Webサイト上で公開されている、がんの症状と「緩和ケア」、「医療用麻薬」の誤解、なども 患者・家族教育の有用なツールになっている15)。これらの教育ツールを使用する際には、そ の患者が実際に心配していることや患者のセルフケア能力も考慮し、患者個々に適したツー ルを選択する必要がある。

患者自身が記入する自己記入式のツールを使用する際には、使用方法について丁寧に説明す ることや使用開始後も効果的に使用できているのかを継続的に評価していくことが重要であ る。

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がん疼痛のマネジメントにおける看護師の役割

 痛みのマネジメントでは、痛みのアセスメントを行った上で、個々の患者にとって最大の効 果が得られ、副作用を最小にとどめることができるように鎮痛薬の選択を行うことが大切であ る。鎮痛薬使用のタイミングや効果、副作用の出現は患者の日常生活に大きく影響するため、

看護師は患者の生活が安全で安楽になるように支援していくことが重要である(表 5)

がん疼痛のマネジメントにおける看護師の役割 5

・痛みのアセスメント

・適切な薬剤の使用

  薬物選択(オピオイドスイッチング)

  使用経路(経口、経直腸、舌下、皮下、硬膜外、経皮など)

  投与時間や量の使用

  突出痛に対する適切なレスキュー・ドーズの使用

・効果の継続的なアセスメント

・患者、家族教育

  痛みとオピオイドに対する正しい知識   痛みの治療計画と鎮痛薬の具体的な使用方法   医療従事者への痛みの伝え方

  非薬物療法と生活の工夫   日常生活上の工夫

・患者とのコミュニケーション

・医療チームのコミュニケーション

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苦痛緩和

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症状マネジメントの実際 引用・参考文献

1) McCaffery, M. et al. 季羽倭文子監訳(1997).痛みの看護マニュアル.東京,メジカルフレンド社.

2) Dodd, M. et al(2001). Advancing the science of symptom management. J Adv Nurs. 33(5), 668-676.

3) Larson, P. 和泉成子訳(1998).Symptom Management 看護師の役割と責任.別冊ナーシングトゥデイ.12,

32-45.

4) Eaton, LH. et al(2009&2011).鈴木志津枝,小松浩子監訳(2013).がん看護PEPリソース 患者アウトカム を高めるケアのエビデンス.東京,医学書院,14.

5) The University of California San Francisco School of Nursing Symptom Management Faculty Group(1994).

A Model for Symptom Management. IMAGE. 26(4), 272-276.

6) 荒尾晴惠(2010).がん看護の症状の理解と症状マネジメント.看護の役割とチームアプローチ.田村恵子編.

がんの症状緩和ベストナーシング.東京,学研,19.

7) OPTIM:緩和ケア普及のための地域プロジェクト(厚生労働科学研究 がん対策のための戦略研究))パンフ レット等:評価ツール:1.生活のしやすさに関する質問票,2.生活のしやすさに関する質問票の記入の仕 方,3.生活のしやすさに関する質問票をもとにした疼痛治療マニュアル

8) 高橋美賀子ほか(2007).第4章痛みのアセスメント.がん患者のペインマネジメント新版.東京,日本看護協 会出版会,29-40.

9) 恒藤 暁(2007).がん性疼痛.緩和ケア.東京,医学書院,127-148,(系統看護学講座 別巻10).

10) 日本緩和医療学会緩和医療ガイドライン作成委員会(2010).がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン.2010 年版.第3章推奨.3がん疼痛マネジメントにおける患者教育.東京,金原出版.

11) 片田範子ほか訳(2000).第2章 痛みのアセスメント,子供の痛み その予防とコントロール.東京,日本看護 協会出版会,13-19.

12) 片田範子ほか訳(2000).痛みのアセスメント,がんをもつ子供の痛みからの解放とパリアティブ・ケア.東 京,日本看護協会出版会,31-34.

13) 荒尾晴恵ほか(2003).Ⅵ.看護実践.オピオイドを使用したがん疼痛マネジメントにおける外来看護指針(案)

(厚生科学研究費補助金 医療技術評価総合研究事業),20-37.

14) OPTIM:緩和ケア普及のための地域プロジェクト(厚生労働科学研究 がん対策のための戦略研究))パンフ レット等:1.患者・家族のためのツール:1.がんの痛みが心配なとき,2.医療用麻薬(モルヒネなど)を 初めて使用するとき,3.定期使用の鎮痛薬を使っても痛みがあるとき.http://gankanwa.umin.jp/pamph.html

(アクセス:2013年11月)

15) 厚生労働省委託事業の緩和ケア普及事業であるオレンジバルーンプロジェクト.がまんしない,がん治療 緩 和ケア.Net.緩和ケアとは.がんの症状と「緩和ケア」,「医療用麻薬」の誤解.http://www.kanwacare.net/

formedical/materials/smartbrief2013.php

菅野かおり,遠藤久美

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