青年期のCKD患者に対し,感染予防のために生ワクチン(再)接種は推奨されるか?
CQ 8 思春期・青年期のCKD患者において,使用に際して注意すべき薬剤にはどんなものがあるか?
催奇形性のあると考えられる免疫抑制薬および
RAS
阻害薬は,妊娠の可能性のある時期には避 けるべきである。推奨 1B
ビスホスホネート製剤は骨に残留し,妊娠中に胎児に移行して骨形成異常を発症させる危険性 があることから,思春期・青年期の女性
CKD
患者には慎重に投与する。推奨 2D
背景・目的
移行プログラムにおいては,
6
領域の1
つであ る「性的管理」に関連して指導教育する内容として,妊娠出産時に注意すべき薬剤について説明する ことが必要である。大きく分けると胎盤形成前に 影響(胎芽病)し催奇形性のある薬剤と胎盤形成 後に影響(胎児病)する薬剤がある。
CKD
におい て使用される薬剤で,胎芽病や胎児病を引き起こ す薬剤を整理してみる。また,本ガイドは移行医 療に特化したものであり,CKD
患者において投与 方法を調節する必要のある薬剤については他の 成書を参照していただきたい。よび腹壁破裂などが報告されている。
EBPG
でも,妊娠中の禁忌薬としているa)。
◆ mTOR 阻害薬 ◆
エベロリムス
シロリムス(別名ラパマイシン)の誘導体である。動 物実験(ラットおよびウサギ)で胚・胎児毒性を含む生 殖発生毒性が認められたとの報告がある。
EBPG
では,類似薬のシロリムスについて禁忌薬としているa)。
◆ カルシニューリン阻害薬 ◆
△シクロスポリン
動物実験で催奇形作用,また,難産および周産期 死亡が報告されている。しかし,先天異常発生率は一 般集団と比べて差はなく,実際には移植後の妊娠で は服用を継続するのが一般的である。
EBPG
では,催 奇形性や変異原性は報告されていないとしているa)。△タクロリムス
動物実験で催奇形作用,胎仔毒性が報告されてい る。しかし,先天異常発生率は一般集団と比べて差 はなく,実際には移植後の妊娠では服用を継続する のが一般的である2)。
EBPG
でも,シクロスポリン ほどの経験はないがさまざまな移植の妊娠例に安全 に使用されているとしているa)。◆ 生物学的製剤 ◆
×リツキシマブ
本剤を動物に用いた生殖・催奇形性試験は実施さ れていないが,ヒト
IgG
は胎盤関門を通過すること が知られている。◆ 抗凝固薬 ◆
× ワルファリン
催奇形作用(胎芽病)として軟骨発育不全,胎児病 として中枢神経系の異常(出血後の
Dandy Warker
症候群)などが報告されている。◆ 利尿薬 ◆
× トルバプタン
動物実験で催奇形性および胚・胎児死亡が報告さ
れている。
◆ 降圧薬 ◆
× RAS 阻害薬すべて
妊娠中期および末期に
ACE
Ⅰを投与された高血 圧症の患者で羊水過少症,胎児・新生児の死亡,新 生児の低血圧,腎不全,高カリウム血症,頭蓋の形 成不全および羊水過少症によると推測される四肢の 拘縮,頭蓋顔面の変形などがあらわれたとの報告が ある3)。また,海外で実施された後ろ向き疫学調査 で,妊娠初期にACEI
を投与された患者群において,胎児奇形の相対リスクは降圧薬が投与されていない 患者群に比べ高かったとの報告がある4)。
ARB
の妊娠後半の妊婦への投与は,塩類喪失を伴 う腎性尿崩症(多尿)を引き起こすとの報告もある5)。△β遮断薬;アテノロール
高血圧症の妊婦への投与により,胎児の発育遅延 が認められたとの報告がある。
◆ Ca 受容体作動薬 ◆
×シナカルセト
動物実験で母体の低カルシウム血症,体重増加抑 制および摂餌量減少,胎仔重量の減少が観察されて いる。
◆ 活性型ビタミン D ◆
△カルシトリオール
動物実験で,胎仔の化骨遅延,新生仔の骨格異常,
骨格変異が,また臍ヘルニア,四肢異常などの複合 奇形が報告されている。
◆ 高脂血症治療薬 ◆
× HMG CoA 還元酵素阻害薬
動物実験では,ロスバスタチンなどの
HMG CoA
還元酵素阻害薬を大量投与した場合に,胎仔の骨格 奇形が報告されている。さらにヒトでは,HMG
CoA
還元酵素阻害薬を妊娠3
カ月までの間に服用し た場合に胎児に先天性奇形があらわれたとの報告が ある。◆ 骨粗鬆症予防薬 ◆
△ビスホスホネート製剤
動物実験(ラット)でパシドロネートなどのビスホ スホネート製剤を器官形成期または器官形成期以降 の母体に静脈内投与した場合,妊娠末期に血中カル シウム低下に起因すると考えられる母体の死亡が報 告されている。本剤投与後に妊娠した場合,母体を 通して本剤が胎仔骨へ取り込まれ,胎仔骨における 障害のリスクが考えられる。また,妊娠とは関係な いが,ビスホスホネート関連顎骨壊死(
BRONJ
)に 注意が必要で,注射用ビスホスホネート製剤投与患 者におけるBRONJ
発生は,経口ビスホスホネート 製剤投与患者に比べて頻度が高いことが欧米の調査 報告により知られている。なお,妊娠時の薬剤投与については,国立成育医 療センターが「妊娠と薬情報センター」を設置し,
「妊婦・胎児に対する服薬の影響」に関する相談を 行っているので,その利用を勧めてもよいb)
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データベース:PubMed 医中誌 期間:1990年〜2015年8月まで
キーワード: fetopathy, embryopathy, ACE I, ARB, MMF, calci-neurin inhibitor
a) EBPG Expert Group on Renal Transplantation:European best practice guidelines for renal transplantation. Section IV:Long-term management of the transplant recipient.
IV.10. Pregnancy in renal transplant recipients. Nephrol Dial Transplant 17(Suppl 4):50 55, 2002
b) http://www.ncchd.go.jp/kusuri/
1) Perez-Aytes A, et al.:In utero exposure to mycophenolate mofetil:a characteristic phenotype? Am J Med Genet A 146A:1 7, 2008
2) 萩原大二郎.:プログラフの妊娠時使用経験.今日の移植 17: 451 453,2004
3) Pryde PG, et al.:Angiotensin-converting enzyme inhibitor fetopathy. J Am Soc Nephrol 3:1575 1582, 1993
4) Cooper WO, et al.:Major congenital malformations after first-trimester exposure to ACE inhibitors. N Engl J Med 354:2443 2451, 2006
5) Miura K, et al.:Salt-losing nephrogenic diabetes insipidus caused by fetal exposure to angiotensin receptor blocker.
Pediatr Nephrol 24:1235 1238, 2009
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文献検索
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参考にした二次資料
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引用文献
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著者発表年
Perez-Aytes 2008
研究デザインCase report
P MMF
投与された腎移植妊婦I
なしC
なしO
過去の報告同様,口唇口蓋裂あり.コメント その他,小耳症,外耳孔閉鎖,小顎症,眼間乖離,網脈絡膜欠損
文献番号 2
著者発表年 萩原
2004
研究デザイン
Cross-sectional study
P
タクロリムス投与の腎移植妊婦と,腎移植者の妊娠した配偶者I
なしC
なしO
先天奇形発生率は,腎移植妊婦で3.9%
,腎移植者の妊娠した配偶者で6.9%
コメント シクロスポリンと比較して.また,一般の妊娠と比較してタクロリムス投与下の腎移植患者の妊 娠出産の催奇形性率は高くない.
文献番号 3
著者発表年
Pryde 1993
研究デザインCase series
P ACEI
投与(①カプトプリル,②リシノプリル,③エナラプリル)された妊婦I
なしC
なしO
①1,440g
無尿で出生日に死亡.②8
日齢に腹膜透析開始,22
カ月で腎移植.③5
日齢に腹膜透析開始,
9
日齢に死亡コメント 第
2
,3
トリメスターに投与してはならない.
文献番号 4
著者発表年
Cooper 2006
研究デザインCohort study
P 29,507
出生中のACEI
使用:209
例,他の降圧薬使用:202
例I
なしC
なしO
第1
トリメスターでのACEI
の使用は,大きな先天奇形のリスクを2.71
倍増加.心奇形は3.72
倍,中枢神経奇形は
4.39
倍の増加であったが,他の降圧薬ではリスク増加はなかった.コメント 第
1
トリメスターでのACEI
は避けるべきである.文献番号 5
著者発表年
Miura 2009
研究デザインCase series
P
腎移植後妊婦で①妊娠前から継続してARB
投与(カンデサルタン)もしくは②妊娠33
週からARB
投 与(カンデサルタン)I
なしC
なしO
①1,384g
肺低形成,乏尿,腹膜透析開始(急性腎不全),その後腎機能回復,希釈尿,多尿②
2,438g
,乏尿,腹膜透析開始(急性腎不全),その後腎機能回復,希釈尿,多尿コメント 妊婦への
ARB
投与は塩類喪失を伴う腎性尿崩症(多尿)を引き起こす.解 説
◆ 腎生検の適応 ◆
小児
CKD
患者における腎生検の適応について「エ ビデンスに基づくCKD
診療ガイドライン2013
」a)で は,尿蛋白クレアチニン比が0.5 g
/gCr
以上,およ び蛋白尿(0.2 g
/gCr
以上)と血尿が3
カ月以上持続 する症例に腎生検の適応があるとされており,原疾 患として想定されているのは,IgA
腎症・紫斑病性 腎炎,ループス腎炎とFSGS
である。表に示した成 人CKD
患者における腎生検の適応は,「エビデンス に基づくCKD
診療ガイドライン2013
」で示された適 応から,尿潜血のみの症例を削除したものである。これは「血尿診断ガイドライン
2013
」b)で示された,蛋白尿を伴わない無症候性顕微鏡的血尿の患者には
腎生検を推奨せず,健診を利用して検尿所見をフォ ローするというステートメントに沿ったためである。
腎生検の結果が患者管理に影響を与える割合は,ネ フローゼ症候群で
86
%,慢性腎不全で45
%,血尿お よび蛋白尿で32
%,蛋白尿のみで12
%であったが,血尿のみでは
3
%に過ぎず4),また無症候性顕微鏡的 血尿のESKD
への進展リスクは蛋白尿に比較して低 いことからb),腎生検という侵襲的な検査は推奨さ れないこととなった。その結果,小児CKD
患者と成 人CKD
患者における腎生検の適応はほぼ同一であり,思春期・青年期の