3.1 緒言
フィ ルムや シー ト 等,光 沢面 を有す る 薄物製 品の表 面に 発 生する 微小起 伏欠 陥の自 動検出 1)-4)は,次の
2
つの 理由 に より容 易では ない .(1) 被検査体の 面 積 が 欠 陥 の 寸 法 に 比 し て 非 常 に 広 い た め に 高 空 間 分 解 能 の ラ イ ン セ ン サ を 使 用し た 高速 な 検査 が 要求 さ れる .(2)
被検査 体 が易 変 形素 材 であ る ため , 被検 査体は 搬送中 に緩 や かなゆ がみが 生じ る が,こ れに よる誤 検 出は避 けなけ れば ならな い.特に,本 研究で 検出対 象と し ている 欠陥は ,幅 方 向には 数mm
の広 がりを もち高 さ変 化 は数μm とい う非 常 に緩や かな表 面起 伏 欠陥で あるた め,通常の 正反射 を利 用 した検 出方法 では 高 速な検 出は困 難で あ った 5).
前章 では ,この よ うな微 小起伏 欠陥 の 検出に 対して ,明 暗 の繰返 しパタ ーン からな るパタ ーン 照 明を使 用し ,被検 査 体表面 を介し て観 察 される 照明の パタ ーンが 欠陥の 存在 に よって 局所的 にぼ け る現象 を見出 した .そして ,こ のぼけ が 生 じ て い る 領 域 を 欠 陥 領 域 と し て 自 動 抽 出 す る 画 像 処 理 ア ル ゴ リ ズ ム を 提 案し,実際 の欠陥 サ ンプル を用い て検 出 能力の 評価を 行っ た
(
欠陥サン プル に は重大 欠陥か ら良 品 と見な せる限 度の も のまで を用意 した .それら の幅方 向の 大きさ はいず れも 数mm
であり, 高さ 変 化は数 十μm から2,3μm
であ る).
その結 果,本手法 が 照明変 動に対 する ロ バスト 性に優 れ,被 検査体 が動的 な反 りや うね りを 有す る 素材 であ って もこ れ らと 欠陥 との 識別 が 可能 であ るこ と , な ら び に 本 手 法 で は 通 常 使 用 さ れ る 照 明 を 用 い て 非 常 に 少 な い 計 算 量 に て 実 現でき るため ,コ ス トおよ び処理 時間 の 面で実 用性が 高い こ とを述 べた .しか し,実 際に 本手法 を 製造ラ インに 導入 す る際に は,以下の 項 目につ いて検 討し なけ れ ばな ら ない .
(1)
本手 法で 検 出さ れる 領 域と , 実際 の 欠陥 の 大き さ と凹 凸 の 程 度 との 関 係 .(2)
検 出 可 能な 欠 陥 寸 法 .(3)
最適 な パ タ ー ン 形 状.(4)
撮 影装置,被検査 体,パター ン照明 の最 適 な空間 配置.し かし ながら,これら の 項目を 実験的 に明 ら かにす ること は,欠 陥サン プルが 限ら れ ること 並びに パラ メータ の多さ によ り 容易で はない .一 方 , 欠 陥 の 存 在 に よ っ て 照 明 パ タ ー ン が ぼ け る 現 象 に つ い て は , 楜 澤 ら
6)は自動 車用ガ ラス に対し て報告 して い る.すなわ ち ,ガラ ス表面 に局所 的な 凹 凸 が あ る 場 合 に ガ ラ ス 越 し に そ の 箇 所 の チ ェ ッ カ パ タ ー ン を 観 察 す る と チ ェッカ パター ンが ぼ けるこ とを見 出し ,その原 因を光 線経 路 の光学 的なゆ がみ による ものと 説明 し ている .し かし ,本 研究に おいて は ,パ ターン 照明か らの 光線は 被検査 面上 で 鏡面反 射する こと か ら,パ ター ンのぼ け は別の 原因に よる ものと 思われ る.
そこ で,本 章では ,照明パ ターン が局 所 的にぼ ける原 因を 明 確にす るため に,
照明パ ターン から 撮 影面ま での光 線追 跡 を行う .そ して,様 々な寸 法の微 小起 伏欠陥 が存在 する と きの撮 影画像 をシ ミ ュレー ション によ り 生成し ,本 手法を 製造ラ インに 導入 す る際に 検討す べき 項 目の評 価を行 う.
3.2 欠陥検出のシミュレーション
3.2.1
光学系 の配置シミ ュレー ショ ン には 図
3.1
に示す よ うな座 標系を 用い る .ライ ンセ ンサの 受光面 を光軸( z
軸)
の原点 にとり ,被 検 査面(
フィルム)
は,z = L
1 を切片と しx-z
平面に 対して45 degree
の傾 きを も つ平面 とする .パ タ ーン照 明の出 射 面は,x-z
平面 に平 行に,y = L2の平面 とする .これ によ り ,ライ ンセンサと パター ン照明 とが 被 検査面 に対し てそ れ ぞれ45 degree
の 角 度で対 向する 配置 となる .パ ターン 照 明から 出射さ れた 光 は被検 査面で 正反 射 し,ラ イン センサ の手前 に配置 した 開 口d,主点 位 置 H,H'のレン ズを介 して ラ インセ ンサの 受光
面に結 像され る.実験 では一 眼レ フ カメラ 用の組 合わ せ レンズ を使用 した が ,シミ ュレ ーショ ンに おい ては これ と 等価 な厚 肉単 レン ズ を用 いた .被 検査 面 が平 面で あれ ば , 受光面 からレ ンズ の 像空間 主点
H'ま での 距離 s
2,物空 間主 点H
から 被検査 面 を介し てパタ ーン 照 明まで の距 離s
1,レ ンズの 焦点距 離f
の 間には ,次 の結 像 の関係 が成り 立 つ 7).f s s
1 1 1
2 1
=
+
(3.1)
2 1
/ s s
M = (3.2)
ここで ,焦点 距 離
f
は既知 であり ,レ ン ズの横 倍 率M
は 画 像取得 時の拡 大率{ (パターン 照明 上で の実寸 法 ) / (対応 す るライ ンセン サの 受 光面上 での寸 法) }
から実 測可能 であ る ので,式(3.1), (3.2)
よりs
1, s
2を求め る ことが できる .レ ンズの 開口d
と絞 りF
値と の間 には 図3.2
に示す よう に,d f / number
-F =
(3.3)
の関係 があり,例え ば焦点 距離
f = 55mm
のレン ズを用 いて 絞 りをF4
とし た場 合,開 口の大 きさ(直 径)は d = 13.75mm
と なる.かる.
3.2.2
受光面 で観測 される 光強度 分布 の 計算ラ イ ン セ ン サ の 各 画 素 が 受 光 す る 光 強 度 の 計 算 に あ た り , あ る 一 画 素
P (x
p,y
p,z
p)
に注目する.レンズの有効開口範囲を多数の微小領域に分割し,その 一つの微小領域をQ (x
q,y
q,z
q)
とする.微小領域Q
の中心を通り画素P
に入射 する光線の強度は,光線の経路を遡り,パターン照明の出射点を求めることに よって得られる.さて,図
3.1
に破線で示すように,受光面から光学距離がL
0となる位置に,パターン照明の鏡面反射像を考える.被検査面が平面であれば,各微小領域を 通って画素
P
に入射する光線の出射点は,レンズの収差を無視すると微小領域Q
の位置に関係せずに,パターン照明上の一点S ( x
s, y
s, z
s)
であり,鏡面反射像 上では,S' ( x
s,y
s,z
s)
である.点S'
はz
s= L
0, y
s= 0
で表されるx
軸に平行な直線 上にあることから,x
sは点P
と主点H , H'
から容易に求めることができる.次に,微小領域
Q
を通り画素P
に入射する光線の被検査面での反射を考える.欠陥近傍の被検査面の形状を
z' = g(x , y')
とすれば,反射点R ( x
r, y
r, z
r)
は,直線Q S'
と被検査面との交点であり,二分法 8)を使って求めることができる.なお,被検査面形状の計算においては図
3.1
に示す局所座標系xy'z'
を用いた.一方,点
R
の外向きの法線ベクトルをn,反射ベクトルを v
とすれば,入射ベクトルu
は,次式で与えられる.( ) v n n
v
u = − 2 ⋅ (3.5)
したがって,入射ベクトル
u
より,パターン照明の出射点S ( x
s, y
s, z
s)
が計算さ れ,その点の照明強度(
本論文中では,明部を1,暗部を 0
とした)
を得ること ができる.以上の計算をレンズの有効開口範囲の全微小領域について行い,その総和を 画素
P
での照明強度として評価した.同様の計算を各画素に行うことによって,ラインセンサで撮像される
1
ラインの画像を得ることができる.さらに,欠陥 モデル関数をy'方向 (
生産ラインの流れ方向に相当)
に順次平行移動しながら 上記の計算を繰り返し行うことにより,2
次元画像を生成することができる.このときの移動量は実際の生産ライン速度とラインセンサの駆動条件とによっ て決まるラインの流れ方向の空間分解能に一致させる.
3.2.3
欠陥形 状モデ ルの作 成図
3.3
は実際の欠陥サンプルの表面形状を測定した例である.同図(b)
には欠 陥の頂点付近を通る2
方向の断面形状を実線で示している.欠陥は緩やかな凹,凸あるいは凹凸複合の形状をしている.そこで,欠陥形状のモデルとして,欠 陥の断面形状に類似しているガウス型関数およびその
1
次導関数を使用する.まず,凹欠陥および凸欠陥のモデルとして次式を使用する.