第7章 むら欠陥の官能検査の自動化に関する検討
7.4 回折パターンを用いた濃淡むら検査の基礎理論
本手法の原理となる回折理論を簡単に説明し,格子形状不良による回折パタ ーンを理論的に求め,検査原理を説明する.
7.4.1
フーリエ光学 12),13)ある既知の電界分布をもつレーザ光が開口面を通過した後,衝立面で観測さ れる回折パターンは開口面における電界分布のフーリエ変換で与えられること
が知られている 12),13).図
7.7
は開口面と衝立面との配置を示す.光軸をz
軸に とり,z= 0
の面に開口面を配置する.本研究の場合,開口面とは被検査フィル ムを指す.開口面における電界分布をg ( x
0, y
0)
とする.一般に,g( x
0, y
0)
は複 素関数である.このとき,z= z
iの面に配置された衝立面における電界分布u ( x
i, y
i)
は次式で与えられる.0 0 0
0
, ) 1 (
) ,
( dx dy
r y e x j g
y x u
jkr i
i
= λ ∫∫
−∞∞⋅
(7.2)ここで ,
2 0 2 0
2
(
i) (
i)
i
x x y y
z
r = + − + −
(7.3)である.近軸近似
( {(x
i-x
0)
2+ (y
i-y
0)
2}/z
i2<< 1 )
のもとで式(7.3)
を変形すると次式 が得られる.・・・
・・・
3
2 2 0 2 0 2 0 2 0 0 0 2 2
3
2 2 0 2 0 2 0 2 0
2
2 0 2 0
8
} ) (
) {(
2 2
8
} ) (
) {(
2
) (
) (
) (
) 1 (
i
i i
i i
i i i
i i i
i
i i
i
i i
i
i
i i
i
z
y y x
x z
y x z
y y x x z
y z x
z
y y x
x z
y y x
z x
z
y y x
z x r
− +
− − + +
− + + +
=
− +
− −
− + + −
=
− + + −
=
(7.4)
式
(7.4)
の第4
項まで採用しなければならないz
iの領域を近方領域(
フレネル領域
)
,第3
項までの近似でよい領域を遠方領域(
フラウンホーファ領域)
と呼 ぶ.通常,第4
項の値がλ
/4となる距離z
iより遠い領域をフラウンホーファ領 域とする.例えば,1
辺の長さがD
の正方形開口面の場合,λ D
2z
i= (7.5)
となる
z
i以遠がフラウンホーファ領域とされる.近軸近似およびフラウンホーファ近似の下で式
(7.2)
を変形することにより,次式を得る.
0 0 0) ( 0
2 0 2 0
2 2
) , 1 (
) ,
( g x y dx dy
z y j
x
u e e
ziiy y zi ix j x zi
yi xi zi jk i i
i
=
∞⋅
− +⋅
∞
− + +
∫∫
π λ λλ
〕
〔
yi xi z
jk + +
=
2
1 〔 2 〕
)
2, ( ) ,
( x
iy
iG x
iy
iP = (7.7)
ここでは振幅の絶対値は重要ではないため係数を省略した.これらの式から,
開口面形状と開口面におけるレーザの電界分布が既知であれば,衝立面で観測 される回折パターンを計算することができる.
7.4.2
格子構 造フィ ルムに よる回 折パ タ ーン式
(7.6) , (7.7)
を用いて,格子構造フィルムによる回折パターンを求める.本節では,簡単のため
1
次元で計算する.格子構造フィルムは,図7.8 (b)
に示す ように,1
次元では一定周期で配置されたスリット列として表される.開口面 における電界分布は次のように表すことができる.⎟ ⎠
⎜ ⎞
⎝
⎛
⎭ ⎬
⎫
⎩ ⎨
⎧ ⎥
⎦
⎢ ⎤
⎣
⎡ ⎟
⎠
⎜ ⎞
⎝
∗ ⎛
⎟ ⎠
⎜ ⎞
⎝
− ⎛
= c
x b
x a
x x b
g 1 rect comb rect
0 . 1 )
(
0(7.8)
ここで,
a
は格子の線幅,b
は格子の繰り返し周期, c
は開口幅をそれぞれ表す.記号∗はたたみ込みを表す.また,rect 関数は矩形波を,comb 関数は周期的に 存在するデルタ関数列をそれぞれ意味しており,次のように定義される 9).
( )
⎪⎩
⎪⎨
⎧
=
<
=
otherwise 0
|
|
|
| 1
rect 21 12
2 1
x x
x
(7.9)
( )
( )comb x x n
n
−
=
∑
∞−∞
=
δ (7.10)
開口面における電界分布を,簡単のため等位相かつ一様振幅とすると,式
(7.8)
はそのまま電界分布を表す式となり,これのフーリエ変換によって回折パター ンは次式で求められる.( )
fx c( )
cfx ac[ ( )
afx( )
bfx] ( )
cfxG = sinc − sinc comb ∗sinc
(7.11)
式
(7.11)
から得られるパワー分布は図7.9
のようになる.回折パターンは一定周期のスポット列となり,各スポットの強度が
sinc
2( af
x)
を包絡線とするよう に変化して観測される.7.4.3
欠陥検 査原理式
(7.11)
をみると,スポット強度の包絡線は格子の線幅a
のみによって決まり,スポット間隔は格子間隔
b
のみによって決まることが分かる.これを利用 して,回折パターンの各スポットの強度に基づいて格子の線幅不良を,スポット間隔に基づいて格子間隔不良を,それぞれ独立に検査することが可能である.
格子構造フィルムにおいては,その製法上,格子間隔が変動することは稀であ るので,本論文では以後,線幅の変動に起因するむら欠陥のみを取扱う.