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復帰変異試験を用いたグリオキサール の誘発する変異スペクトルの検索

変異原性の検出法として数多くの短期検索法が報告されているが、そのなか で比較的容易かつ経済的に行える方法として知られるのが微生物復帰変異試験 法であるo なかでも Amesらにより開発されたサルモネラ菌を用いた復帰変異 試験 (Ames試験)は、広く用いられている方法である。この方法は、ヒスチジ ン生合成酵素系を支配している DNA上に塩基置換型変異もしくはフレームシ フト型変異の起こった変異株が、培地中に被検物質を加えることによりヒスチ ジン要求性から非要求性に戻る復帰突然変異を検出する方法である九

これまでに、サルモネラ菌TA100、TA102、TA104株を用いた Ames試験 において、グリオキサールが変異原性を有することが報告されている 31340本章 では、 7種のサルモネラ菌を用いた Ames試験 Hによりグリオキサールの変異 スペクトルを調べた実験について述べる官。

1 Ames試験 Eによるグリオキサールの変異原性の検出

Ames試験立は、サ

l

レモネラ商TA7001TA7006株及びTA98株を用いるこ とにより、 6種の塩基置換型変異及び G:C塩基対の欠失変異の検出を可能にし た方法である九各々の変異株の遺伝子型及び検出される変異を表3‑1に示した。

試験を行う際、コントロールとしてグリオキサールの溶媒である滅菌水のみを 加えて自然に起こる復帰突然変異のコロニー数を調べた。一般に、被検物質の 変異原性の有無の判定は、被検物質によるコロニー数がコントロールのコロニ ー数の 2倍以上あれば陽性とされるO また、各菌株はそれぞれ表 32に示した 標準変異原物質を用いて向時に変異原性試験を行い、揚性に出ることを確認し た。尚、時乳類の肝臓ミクロソーム分画 (89mix)の添加による代謝活性化は 行わなかった。

29 

表31 本実験において用いたサルモネラ菌の遺伝子型及び検出される変異 Strain  Mutation  Type  Target 

TA7001 

h i s  

G1775  b.p. substitution k A:T→G:C  了A7002

h i s  

C9138  b.p. substitution t A:T→T:A  TA7003 

h i s  

G9074  b.p. substitution  A:T→C:G  TA7004 

h i s  

G9133  b.p. substitution  G:C→A:T  TA7005 

h i s  

G9130  b.p. substitution  G:C‑→T:A  TA7006  hおC9070 b.p. substitution  G:C→C:G  TA98 

h i s  03052 

frameshift  G:C 

*b.p.2base pair 

表 3‑2 標準変異原物質

Strain  Chemical  Dose  Solvent  Revertants  /plate  TA7001  N

Aminocytidine 10 μg/plate  HzO  1085  TA7002  Streptonigrin  0.1μg/plate  DMSO  77  TA7003  Streptonigrin  0.1μg/plate  DMSO  78  TA7004  4‑Nitroquinoline‑loxide 1μg/plate  DMSO  1001  TA7005  4‑Nitroquinoline‑l ‑oxide  1μg/plate  DMSO  2488  TA7006  4‑Nitroquinoline‑l‑oxide  1μg/plate  DMSO  425  TA98  2‑Nitrofluorene  1μg/plate  DMSO  490 

30 

ウヌ芯ウウ

一一寸一ー‑

GC

CG 

~玄ででで

GCτA 

. . . 式 . . .

‑由寸町一一一

GC

AT  ATCG 

ATGC 

250 

200 

100  150 

50 

ω

F m

¥

ωH Cm wH

ωω

Type of Mutation 

グリオキサールによる復帰突然変異 図3‑1

1プレート当り 20100μgのグリオキサールを用いたところ、 TA7004、 TA7005、TA7006株及びTA98株(それぞれG:C→A:T、G:C→T:A、G:C→C:G の変異及び G:C塩基対の欠失変異を検出する株である)では変異原性が検出さ れたが、 TA7001、TA7002、TA7003株では検出されなかった。また、 1プレ ート当り 100‑500μgのグリオキサールを用いた条件で、も、 TA7001、TA7002、 TA7003株における変異原性は認められなかった。尚、 1プレート り500μg のグリオキサールを加えた場合には、全ての変異株で細胞死が起こり、復帰変 異コロニーは形成されなかった。グリオキサール濃度 100

! J .

g/フ。レートにおけ る復帰変異コロニー数を図 31に示した。従って、グリオキサールは DNA中の G:C塩基対に特異的に変異を誘発することが示唆された。

但し、Ames試験で得られた結果は変異原性の有無を表わしているに過ぎない。

すなわち、各々の菌株の感受性が異なること、また、変異を検出する DNA配列

31 

が限定されていること、さらに標的配列以外の配列に生じた変異によっても復 帰突然変異が起こり得る等の理由により、検出された変異間に優先住を見い出 すことは困難であるD

グリオキサールの誘発する変異に関して、より多くの知見を得るために行っ た他の系を用いた実験について第 3章以下で述べる。

32 

第 4 章大腸菌におけるグリオキサールの変異