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プラスミドを用いた大腸菌におけるグ リオキサールの変異誘発能の解析につ

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第 6 章 プラスミドを用いた大腸菌におけるグ

supF 

pMY189 

E. coli AB1157  (Survival rate) 

Glyoxal  treatment 

Recovery  01 plasmid 

glyoxal 

臨 盤 翻 盟 翠b

E. coli 

KS40/pKY241~・d・--­

(Mutant isolation) 

normal 

mutant 

図61 大腸菌ABl157株におけるグリオキサールの変異誘発能の解析 64 

グリオキサ‑}レのモル比は、各々、 1: 0、540、810、1080、1620、2160であ る)とした。これらのグリオキサール処理条件で、はプラスミド DNAの切断はみ られなかった。また、

s o s

修復機構の影響についても検討するために、予め、

s o s

修復機構誘導型と非誘導型の大腸菌を調製した。尚、ここで、は大腸菌への 紫外線照射により

s o s

修復機構を誘導した。

通常、生体内で

s o s

修復機構は作動しないが、紫外線や化学物質により DNA に損傷が生じた場合には、それが修復される過程で誘導されてくる。損傷を受 けた DNAを鋳型として複製を行うと、損傷部位での複製阻害、あるいは損傷部 位を乗り越えて複製フォークが進行し対応する相補鎖にギャップが生じる。こ の様な細胞生存の危機に対応して、「間違い」を覚悟の上でDNA合成を行わせ る修復機構が

s o s

修復機構である。

まず、グリオキサール処理したプラスミドを塩化カルシウム法により大腸菌 ABl157株にトランスフェクションし、フラスミドを含有する大腸菌の生存率 を調べた。プラスミドのグリオキサール処理による大腸菌の生存率の変化を図

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62に示した。グリオキサール処理濃度の上昇に伴い生存率が低下したことから、

プラスミドのグリオキサール処理を行った場合にも、大腸菌においてグリオキ サールが毒'控を有することは明らかである。尚、大腸菌の生存率においては、

s o s  

修復機構の有無による相違はみられなかった。また、より多くのトランス フォーマントを得るために、 DNA取り込み効率の高い方法であるエレクトロポ レーション法により、グリオキサ

‑ J

レ処理したフラスミドを大腸菌ABl157株 にトランスフェクションした。アンピシリンを含む

LB

培地を用いて培養した後、

アルカリ法により大腸菌内で複製されたプラスミドを回収した。

100 

, 固h

75 

、旬回〆

〉 50 

ω  25  0‑

O  20  40  60  80 

g l y o x a l  ( μ g )  

図6・2 大腸菌 ABl157株へのトランスフェクション実験における大腸菌の生 存率。グリオキサール処理したプラスミド pMY189を大腸額 ABl157 株にトランスフェクションした。トランスフォーマントのコロニー数か

ら大腸菌の生存率を算出したD

続いて、大腸菌ABl157株より回収したフラスミドを塩化カルシウム法によ り大腸菌KS40/pKY241株にトランスフェクションし、第 5章の第 3節で述べ た方法により supF遺伝子に変異が生じた変異体を選別した。その結果、

s o s

修復機構誘導型の大腸菌においてのみ、幾つかの変異体が得られた。但し、変

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異体のコロニーは高濃度のグリオキサール処理条件(プラスミド 400ng当り 160μgのグリオキサールを使用)でのみ形成され、それ以下のグリオキサール 処理濃度では形成されなかった。この 160!igのグリオキサール処理条件下で、の 変異率は1.55x 106と極めて低かったD 未処理群(グリオキサール0μg)では、

変異体のコロニーが形成されなかったため正確な変異率を算出することは不可 能であるが、一連の実験において 1クローンの変異体が得られたと仮定した場 合、その変異率は 2.75x 107となる。従って、 160問のグリオキサール処理条 件下での変異率は未処理群の 5.6倍以上であるD また、プラスミド400ng当り

180及び200μgのグリオキサールを用いてのク、リオキサール処理実験について も検討したが、これらの場合には大腸菌 AB1157株の生存率が 0%に等しくな り、大腸菌よりプラスミドを回収することが函難であるため、本実験白的には 不適当であった。

次に、 160μgのグリオキサール処理実験から得られた 9クローンの変異体に ついて supF遺伝子の解析を行った。解析を行うに当り、第 5章の第 4節で述 べた方法に従い

PCR

による supF遺伝子領域の増幅を試みたが、自的とする

PCR

産物が得られなかった。そこで、変異体の大腸菌より回収したプラスミド をアガロースゲル電気泳動により分析したところ、全ての変異体において比較 的長鎖のDNA断片の欠失が生じていた。 supF遺伝子配列あるいは supF遺伝 子領域を増幅する

PCR

で用いるプライマー配列を含む領域において欠失変異 が誘発されたと予想される。

以上の結果から、グリオキサールが欠失変異を誘発する可能性が示唆された。

グリオキサー

l

レ処理によるプラスミド DNAのinvitroにおける切断はみられな いことから、この欠失変異は大腸菌内で誘発された変異であると考えられるD

これは、グリオキサールが培養細胞中で DNA鎖を切断するという報告と一致す るの。グリオキサールは DNA鎖の切断反応の機構については未だ不明であるが、

グリオキサールは DNA中の G残基に対して結合する 4142ことから、まず、グ リオキサ‑}レ‑dG付加体を形成すると予想される。続いて、グリオキサ‑}レ‑dG 付加体を認識する DNAグリコシラーゼの作用により塩基部が脱離して abasic siteを生成した後、 APエンドヌクレアーゼの作用により鎖切断が生じると考え

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られるO しかし、本実験で、は解析を行った変異体の数が 9クローンと少ないこ とから、グリオキサールによって誘発される変異の大部分が欠失変異であると 断定することは不可能であろうo 実際に、第 4章の大腸菌の系及び第 5章の晴 乳動物細胞の系においては、グリオキサールにより塩基置換変異等の変異も誘 発されている。これらの疑問点、を解明する手段は、唯一、数多くの変異体につ いて解析を行うことであるo著者は、 1クローンでも多くの変異体を得るべく実 験を重ねたが、先にも述べた様に、本実験系においては大腸菌の生存率に比較 して変異率が極めて低いことから、変異体を得ることは非常に困難であった。

尚、上記9クローンの変異体は、合計62回のトランスフェクション実験におい て得られた変異体の総数である。同じ宿主(大腸菌)を用いて異なる結果が得 られたが、この理由についての詳細は不明である。一つの可能性としては、第4 章で用いた系は大腸菌の処理であり DNAのみならずDNA前駆体の修飾も生じ る。グリオキサールにより修飾されたヂオキシヌクレオチド (dNTP)が点変異 を誘発した可能性がある。また、第 4章で観察したのは染色体上での変異であ るのに対し、本章で観察したのはフラスミド DNA上での変異である。大湯菌の 染色体 DNAとプラスミド DNA(ここではpBR327複製起点による)の複製機 構が完全に同一ではないことも考えられる。さらに染色体DNAの場合には欠失 を回避するメカニズムが存在し、その結果、点変異等が生じた可能性が考えら れる。以上のことは現時点では推測に過ぎないが、今後さらに検討することが DNA複製・修復機構を詳細に知る上で重要になると思われる。

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結 一 語

( 1 )  

活性酸素

( F e

2

EDTA‑0

2)の作用により、

DNA

及びその関連物質(ヌ クレオシド、ヌクレオチド)からグリオキサ‑}レが生成することを見い出 した。

( 2 )  

ヌクレオシドの

F e

2

EDTA

処理、

F e

2

NTA

処理、及び、γ線照射を行つ た結果、生成する修飾ヌクレオシドの優先願位は活性酸素産生系により異 なることを明らかにした。

(3)  サルモネラ習を用いた復帰変異試験 (Ames試験的において、グリオキ サールは G:C塩基対特異的に変異を誘発することを見い出した。

(4)  グリオキサールは大腸諸において変異を誘発することを明らかにした。

誘発された塩基置換変異の大部分がG:C塩基対における変異であり、誘発 頻度の序列は

G : C

→A:

T

変異、次いで、

G : C

T : A

変異であった。

(5)  グリオキサールは璃乳動物細胞において変異を誘発することを明らかに した。誘発された塩基置換変異の大部分がG:C塩基対における変異であり、

誘発頻度の序列は

G : C

T : A

変異、次いで

G : C

C : G

及び

G : C

A : T

変異

であった。

(6)  以上のことから、グリオキサールが活性酸素による変異や発癌に関わっ ている可能性が示唆された。

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謝辞

本研究を遂行するにあたり、御指導御鞭撞下さいました、産業医科大学産業 生態科学研究所教授葛西宏先生に深く感謝いたします。

本研究を行う機会を与えて下さいました、産業医科大学産業生態科学研究所 教授加地浩先生に厚く御礼申し上げます。

大腸菌の lacI遺伝子を標的遺伝子とした変異解析実験について、適切な御助言 を頂きましたウィスコンシン大学小野哲義博士に御礼申し上げます。

8‑0H‑dAを御供与下さいました、北海道大学薬学部教授大塚栄子先生並びに 助教授井上英夫先生、また、 5‑0H‑dCを御供与下さいました、日本女子大学 理学部教授村岡全子先生に感謝いたします。

プラスミド pMY189及びプラスミド pKY241を保有する大腸菌KS40株を 御供与下さいました、京都大学環境質制御研究センター松田知成博士に感謝 いたします。

1997年

紙 谷 尚 子

70 

実験の部

室墜埜主主

くDNA及びヌクレオシド、ヌクレオチド>

Calf‑thymus DNA及び9種のモノヌクレオチド (5'‑AMP、5'‑GMP、5三CMP、 ιUMP、5'‑dAMP、5にdGMP、5'‑dCMP、3にAMP、3にGMP)はSigmaChemical  社より購入した。 5'‑dTMPはヤマサ醤油株式会社より購入した。デオキシアデ

ノシン、デオキシシチジン塩酸塩、チミジンは有機合成工業薬品株式会社より 購入した。デオキシグアノシンは和光純薬工業株式会社より購入した。

8‑0H‑dAは、北海道大学薬学部の大塚栄子、井上英夫両博士より分与して頂 いたo 5.OH‑dCは、日本女子大学理学部の村岡全子博士より分与して頂いた。

2‑0H‑dA、 8OH‑dG、5‑CHO‑dUは、産業医科大学産業生態、科学研究所の葛西 宏博士により合成されたものを用いた。

くフ。ラスミド>

プラスミドpMY189は、京都大学環境質制御研究センターの松田知成博士よ り分与して頂いた。

く電気泳動関係>

Agarose Type 

(Medium EEO)はSigmaChemical社より購入した。過硫酸 アンモニウム及び N,N,N',N'‑テトラメチルエチレンジアミンはナカライテスク 株式会社より購入した。

く酵素>

制限酵素DpnIはNewEngland Biolabs社より購入した。 RnaseA及び酸性 ホスファターゼは SigmaChemical社より購入した。