• 検索結果がありません。

彦根❻

ドキュメント内 彦 根 長 浜 (ページ 32-35)

 また,各所で戦国大名の家紋の旗やそれをモチーフ にしたもの,戦国大名をデフォルメしたキャラクター を目にすることができるなど「戦国商店街」の色を出 していることは事前調査通りであると確認ができたが,

商店街全体が一体となって展開しているという印象は 薄く,あくまで付帯プロジェクトの域を出ないといっ た様であった.

 自動車の通過交通は歩道整備のされていない道路に しては多いという印象であったが,対して人通りは決 して多い方ではなかった.地元民らしき人の動きはみ られたものの,店でお買い物をする人々で賑わってい るとはいい難い状態であった.

 花しょうぶ商店街の周辺を含めた地域(以下,便宜 上「花しょうぶ地域」と称す)の特徴として古い建物 がよく残っていることがあげられる.江戸時代のこの 地域には武家屋敷や町人の住宅が並んでいたとされて おり(2),ファサードの方が「古民家風」となっているが,

本物の「古民家」もいくつか残っているのである.こ れらは序論で述べた町人や,下級武士の家がそのまま のこっているものと考えられ,間口が狭く,奥行きが あるという特徴を有している.このため,メインスト リートのファサードが整備された建物でもファサード の奥は古民家の構造がそのまま残っているような奥行 きの深い建物もみられた.また,遊廓がこの付近一体 にあったとされており(3),外に赤い格子が見られるな ど,その雰囲気を残している建物も散見された.

 しかしながら,遊廓があったとされる地域には現在 スナック街が広がっており,花しょうぶ地域でも現代 的な雰囲気をみせる場所となっている.メインスト リートと比較してもこれらの周辺地域の道路幅は決し

て広くはないが,古民家の集中する地域は道も非常に 狭く,木が生い茂るなど,全体的に薄暗い雰囲気があ るのに対し,スナック街の方の道は建物が密集してい る点では変わりはなく,狭い道もあったものの,平均 的には道幅が若干広く,塀もなくフラットな建物が並 んでいるため比較的開けた印象を受けた.

 また,江戸時代から残る特徴として十字路の少なさ がある.どんつきと呼ばれる

T

字路が大半で,全体 的に入り組んだ構造となっている.

Ⅲ.花しょうぶ商店街のまちづくり・実態

 実際に商店街内のいくつかの店舗を訪れ聞き取りを 行った.まず「商店街のまちづくり」の点だが,事前 調査の時点では「住民が主体となって」という話であっ た(4)が,少なくとも聞き取りを行った店舗に関しては それに積極的に関わったなどという回答は得られな かった.協力を得られた店主は年配の方が中心で「若 い人たちが引っ張っていった」などといった話もあっ た.

 また,閉店しまった店も散見されたが,それについ ては子供が他地方の大学に行き,企業へ就職するなど 安定指向となったことで,後継者がいなくなり営業が 困難となって閉店となってしまったケースが多いとの 説明もいただいた.かつて城下町地域は一等地であっ たが,彦根駅前,さらなる郊外といった風に人々の足 がどんどん遠くへと移動してしまい,現在では駅前を 含めた市の中心地域から活気が失われてしまったとい う.

 当初の予定ではまちづくり事業の中核となっている

写真1 ファサード整備された建物

(資料)山内和繁撮影.

写真2 古民家―遊郭の趣を残す格子

(資料)筆者撮影.

「町の駅 寺子屋力石」にも聞き取り調査を行うつもり であったが,閉まっており,それは諦めることとした.

Ⅳ.考察・花しょうぶ商店街の特色,課題

 以上が花しょうぶ地域を実際に調査して得られた情 報である.ではその花しょうぶ地域には具体的にどの よう個性がみられるのか探ってみよう.

 まず大きな特徴としてあげられるのが,タイトルに もある通り「多様な建物の共存」である.これまでみ てきたように,ファサード整備された建物,洋風の重 厚な建物,歴史の重みを感じさせる古民家,スナック 街といった風である.実際,同じようなファサード整 備を行った夢京橋キャッスルロードは旧来の建物をリ ニューアルする形で新しくできた建物で統一されてお り,様々な種類の建物があるとはいい難く,対照的で あるといえる.また,古い建物が多数現存している花 しょうぶ地域と異なり,キャッスルロード周辺にはそ ういった類の建築物はほとんど残っていない.銀座商 店街はいわば現代的な商店街であり,ビルが並んでい る形式のものであるため,必然的に「多様な建物が共 存」しているとはいえないということになる.したがっ て,新旧含めた多種多様な建物が共存しているという のは他の商店街にはない花しょうぶ地域独自の特色と して挙げることができよう.この地域一帯を歩くだけ で様々な表情を見せてくれる商店街のすがたは非常に 面白いものだと筆者は感じている.実際,洋風の建物 に関しては有形文化財として登録されているが,それ らが申請されたということはそれだけ数少ない洋風の 建物がこの地域に存在し続けることに価値を感じ,保

存の必要性が認識されたということの表れであると考 えられる.それ以外の人々はこの花しょうぶ地域の景 観についてどうとらえているかは定かではないが,花 しょうぶ地区全体の建物の多様性の保存は必要なこと であると私は思う.

 第二に,地元密着型の商店街であることがあげられ る.観光客向けの店が中心である夢京橋キャッスル ロードと比較すると食料品店など地元向の店が目立つ.

またそれは,毎月「ナイトバザール」が開催され,に ぎわいを見せている(残念ながら,ナイトバザールの 様子については調査を行うことができなかった)とい うことからも読みとれる.

 花しょうぶ地域が抱える一番大きな問題は「活気の なさ」であろう.土曜の昼間であるにもかかわらず,

人通りが少ないというのは商店街にとって決してよい 状況とはいえない.それは店側の後継者問題であり,

郊外化による都心の空洞化であるなど様々であるが,

いずれにせよ人がいないというのは問題である.少子 高齢化の中で,至近の住民だけではなく,少し離れた 地域の住民にも足を運んでもらえるようにするぐらい でないと十分ではないのかもしれない.

 また,活気がないという点では銀座商店街とも問題 としては同じものを抱えているといえるため,隣同士 の商店街として,協力して活気を取り戻す取り組みを 行っていくことも必要となるだろう.

 先述の通り,地元民向けとはいえ,花しょうぶ商店 街は賑わっている「元気な商店街」とはおよそ言い難 く,「まちづくり」に成功しているとはあまり言えな いかもしれない.それに対する対策としては夢京橋 キャッスルロードがとったような積極的な観光客呼び

写真3 古民家地域・どんつき

高い塀と植木で全体的に薄暗い.(資料)筆者撮影.

写真4 登録有形文化財の宇水理髪館(左)および郵便局跡の

逓信舎(右)

(資料)筆者撮影.

こみと彼ら向けの商店街編成が考えられるかもしれな い.しかし,それは現在ある商店街のすがたを破壊す ることにもつながり,それは周辺の景観にも少なから ず影響を与えるだろう.

 安易な方向性変更は簡単だが,失うものも大きい.

地元密着型の商店街を必要とする人も一定数存在する だろう.したがって,現在の特色を損なわない形での 方向性を打ちだしていくほうがよりよいと筆者は思う.

実際,地元民向けの商店街とみえるにもかかわらず,

戦国をアピールするというのはいささか空回りしてい る感が否めないように見えた.実際,グッズ販売を行 う「戦国丸」を訪れる観光客らしき人はほとんどいな かった.

 したがって,私は無理なアピール戦略や方針変更な どではなく,現在ある商店街と周辺地域をできる限り 維持しつつ,その魅力を発信していくといったような 方向性で商店街運営を行って行ったほうが良いと思っ ている.ナイトバザールなどといった試みは活気をと りもどそうという点では悪くないアイディアなのでは ないかと思う.このような試みから,いまある商店街 のすがたを生かしつつも,「より活気のある,より面 白い商店街」を目指してほしいと思う.

 そのためには,ファサード整備が終わっているいま,

どのような姿にするかというハードウェア的議論より も,商店街の利用実態の綿密な調査や,現在以上に,

すなわちより広い範囲での近隣住民や,商店街の店主 全員を巻き込んだ方針の話し合いといった住民がより 積極的に「まちづくり」に関われるような場を設ける など,むしろソフトウェア的な面で戦略が進められて いくことが必要となるであろう.また,空洞化対策も 商店街の活気と密接に結びついているだろうし,人を 集めるためには通過交通の多い現在の状況への対策を 講じる必要性もあるだろうから,市・行政への積極的 な働きかけなども必要となる場面も出てくるだろう.

ドキュメント内 彦 根 長 浜 (ページ 32-35)

関連したドキュメント