• 検索結果がありません。

民法第488条から第491条までの規律を次のように改めるものとする。

(1) 次に掲げるいずれかの場合に該当し、かつ、履行をする者がその債務の全 部を消滅させるのに足りない給付をした場合において、当事者間に充当の順 序に関する合意があるときは、その順序に従い充当するものとする。

ア 債務者が同一の債権者に対して同種の給付を内容とする数個の債務を負 担する場合(下記ウに該当する場合を除く。 )

イ 債務者が一個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合

(下記ウに該当する場合を除く。 )

ウ 債務者が同一の債権者に対して同種の給付を内容とする数個の債務を負 担する場合において、そのうち一個又は数個の債務について元本のほか利 息及び費用を支払うべきとき

(2) 上記(1)アに該当する場合において、上記(1)の合意がないときは、民法第 488条及び第489条の規律によるものとする。

(3) 上記(1)イに該当する場合において、上記(1)の合意がないときは、民法第 491条の規律によるものとする。

(4) 上記(1)ウに該当する場合において、上記(1)の合意がないときは、まず民 法第491条の規律によるものとする。この場合において、数個の債務の費 用、利息又は元本のうちいずれかの全部を消滅させるのに足りないときは、

民法第488条及び第489条の規律によるものとする。

(5) 民法第490条を削除するものとする。

(6) 民事執行手続における配当についても、上記(1)から(4)までの規律(民法 第488条による指定充当の規律を除く。 )が適用されるものとする。

(注)上記(6)については、規定を設けないという考え方がある。

(1)について

【賛成】

沖縄弁法制委、東弁、平田総合、日弁連消費者委、サービサー協、大分弁、日大、クレ 協、クレカ協、親和会、愛知弁司法制度調査委、日弁連、大阪弁、裁判所(多数)、一弁、

横浜弁、東弁倒産法、堂島、札幌弁、二弁、個人3名

・ 合意による充当が広く活用されているので、充当合意が第1順位であることを示 して規律を整備することが望ましい。

・ クレジットカード会社、クレジット会社は、複数の契約に基づき複数の金銭債権 を有することが少なからず存し、かつ、これらを預貯金口座などへの払込や口座振 替により、まとめて収受することが一般的である。これらの取引に基づく債権はい ずれも小口でありかつ大量取引であるため、電算システムにより定型処理をせざる を得ない。そこで、クレジットカード会社、クレジット会社においては、顧客と充 当の順序方法につき合意し、これに従ってシステムを構築し処理することとしてい る。充当合意の内容は、取引の性質などを勘案しつつ定められているものであり取 引の実情に即したものであるから尊重されるべきものであり、充当合意の優先が明 確化されることは重要と考える。

【反対】

個人1名

(2)について

【賛成】

沖縄弁法制委、東弁、平田総合、日弁連消費者委、サービサー協、大分弁、日大、親和 会、愛知弁司法制度調査委、日弁連、裁判所(多数)、一弁、横浜弁、東弁倒産法、堂島、

札幌弁、二弁、個人3名

【反対】

個人1名

(3)について

【賛成】

沖縄弁法制委、東弁、平田総合、日弁連消費者委、サービサー協、大分弁、日大、親和 会、愛知弁司法制度調査委、日弁連、裁判所(多数)、一弁、横浜弁、東弁倒産法、堂島、

札幌弁、慶大、二弁、個人3名

【反対】

個人1名

(4)について

【賛成】

沖縄弁法制委、東弁、平田総合、日弁連消費者委、サービサー協、大分弁、日大、親和 会、愛知弁司法制度調査委、日弁連、裁判所(多数)、一弁、横浜弁、東弁倒産法、堂島、

札幌弁、二弁、個人3名

・ 第1文は、判例法理を明確化するものである。第2文は、費目相互間における指 定充当を認めるものであるが、費目相互間における指定充当を排除する合理的理由 はなく、試案の内容は相当である。

【反対】

大阪弁、個人1名

・ (4)の債務者が同一の債権者に対し同種の給付を内容とする数個の債務を負担して

おり、そのうち一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき ときに、当事者間に充当の合意がない場合において、どの債権から充当するかを債 務者又は債権者に指定できるようにすることの方が債権の管理上も便利であるし、

債務者としても分かりやすいものである。その上で、債務者が指定したときは、費 用、利息及び元本の順で、債権者が指定したときは、元本、利息及び費用の順で充 当することとすべきである。実務においてはこのような処理を多数行っており、簡 便な処理が可能となる。

(5)について

【賛成】

沖縄弁法制委、東弁、平田総合、日弁連消費者委、サービサー協、大分弁、日大、親和 会、愛知弁司法制度調査委、日弁連、大阪弁、裁判所(多数)、一弁、横浜弁、東弁倒産 法、堂島、札幌弁、慶大、二弁、個人3名

・ 「定期債権にもとづいて支分権である数個の債務が発生する場合」等は数個の債 務の成立と見ることができ、不要な規定である。

【反対】

個人1名

(6)について

【賛成】

平田総合、信託協、日弁連消費者委、サービサー協、早大、大分弁、貸金業協、JCF A、クレ協、クレカ協、親和会、日司連、全銀協、日弁連、一弁、西村あさひ、堂島、

慶大、二弁、個人1名

・ ①裁判所が配当表を作成する際に、債権者・債務者間の合意充当があればこの合 意に従って配当表を作成しなければならないのか、②当事者、保証人等の利害関係 人は、配当手続外において配当表と異なった合意充当を主張することができるか、

といった2つの場面において検討を要する。

①の配当表作成の場面であるが、配当手続においても私的自治が尊重されるべき であり、法定充当しか許容されないと考えるべきではない。②の当事者間での充当 の場面であるが、配当手続は金銭を分配する手続に過ぎず、受け取った配当をどの 債権に充当するかは当事者が自由に決定することができると考えるべきである(最 判平成9年1月20日民集51巻1号1頁も同趣旨と思われる)。

仮に、①において裁判所の配当手続の簡略化・画一性を重視して法定充当しか認 めないとしても、配当手続外における当事者間においては、配当表と異なった合意 充当を認めるべきである。

・ 競売配当金を当事者の合意で元本充当する取扱いは、債務者にも、保証人にも、

債権者(金融機関等)にも利益がある。最判昭和62年12月18日の判示内容で は、当事者が競売配当金を元本充当する機会や利益が強制的に奪われる形となって おり、事案によっては、利害関係人の全ての意向に反する結果となる。遅延損害金

への優先充当を強制する上記最判や現在の執行実務は、執行手続の利用者や利害関 係人の意向や利益よりも執行裁判所の処理の便宜を優先している。少なくとも執行 手続の便宜を理由として、当事者間の権利義務関係についてまで常に法定充当によ る処理以外の処理を認めないとする必然性もない。

・ 法定充当の方法で充当すればもう少し多く弁済を受けることができたという他の 債権者の利益(期待)は、法的に保護すべき利益(期待)ではないと考えられる上 に、民事執行手続においても、当事者自治が完全に排除されているわけではなく(民 事執行法第85条第1項ただし書参照)、合意充当を認めない現在の民事執行実務は、

手続上の手間等を理由にするものにすぎないと考えられる。

・ 担保権信託に関して、信託契約に担保権実行の場合の配当について受益権に優先 劣後構造を設けることも考えられるが、現状では民事執行手続における配当につい て合意充当等の法定充当以外の充当方法は認められないとされているため、投資家

(受益者)のニーズに必ずしも応えられないことになる。

・ 小口大量取引などの場面において決済処理のシステム化が進んでいる状況に鑑み ると、当事者間の合意により配当の充当順序を定めることができるようにすること の社会経済的なニーズは高いものと考えられ、民事執行手続における配当について 法定充当によるとする判例上の取扱いを変更し、弁済の充当の規定が民事執行手続 における配当にも適用されるものとする提案に賛成である。

・ 民事執行手続による配当も、金銭債権債務関係の消滅をもたらすという点で、実 質的に債務の弁済と類似するものであるところ、この場合にも、合意による充当が 優先されると扱われれば、今後のシステム構築が簡便となり、取引に要するコスト の低減が図られることになる。

・ 民事執行手続において、債権者も元本から先に充当したいと考えるケースは確か に想定され、このような場合に債権者・債務者双方の意思に反してまで法定充当を 行うのは適当ではない。もっとも、補足説明では、法定充当しか認められないこと によって担保付きの債権が先に消滅することが「不都合」であるとされているが、

債務者のために弁済の利益が多いものに先に充当するという法定充当のルールは債 務者の利益に配慮した妥当なものであり、この「不都合」を解消するために合意充 当を認めるとするならば債権者の利益に偏するおそれがある(このような場合に真 の合意があり得るかも疑問である。)。したがって、執行手続において合意充当を認 めるべき正当なニーズがどこにあるかを見極めた上で、たとえば、民法第491条 と異なる合意充当は有効とするが、同法第489条と異なる合意充当は認めないと すること等も検討すべきと考える。

・ 民事執行手続における配当について合意による充当を認めることは、包括的執行 手続と評し得る倒産手続においては、弁済充当特約の有効性が原則として肯定され ることを前提とする最判平成22年3月16日とも整合すると考えられる。

執行実務への影響について

・ 法制審議会での議論をみる限り、合意充当を認めたとしても執行手続に大きな支 障は生じないと思われる。