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年輪年代 測定法 による出土木製 品の年代

ドキュメント内 1  条坊遺構 と地 割 (ページ 35-38)

︹   SE2700︶

4  年輪年代 測定法 による出土木製 品の年代

遺跡の発掘調査で出土す る各種木製品のなかで

,年

輪数がお よそ

100以

上あるヒノキ材のも のであれば年輪年代測定法に よる年代測定が可能である。 ヒノキは年代を

1年

単位で割 り出す ことのできる物差 し (これを暦年標準パターンと呼ぶ

)は ,BoC.206年

か ら

A.D.1986年

まで が完成 している。現在

これを使 って多 くの遺跡出土木材の年輸年代を明 らかにし考古学上の 成果を得ている。

今回の平城京右京八条一坊十三・ 十四坪の発掘調査では

,年

輸年代測定法に適用で きるヒノ キ材の木製品 として井戸枠材や井戸枠内の堆積土か ら出上 した曲物容器類がある。 これ らのな かか ら樹皮付 きの井戸枠材

1点 ,曲

物容器類

3点 ,こ

の他にスギ材で作 った大型の折敷断片

1

点の総数

5点

について年代測定を行なった。 これ らの年輪年代が判 明す ると井戸の築造年代や 廃絶年代を推定す る手がか りが得 られ る。 また

ヒノキの暦年標準パターンがスギにも適用で きるか どうか粥 らかになれば

ヒノキの暦年標準パターンを使 った年代測定が より幅広い木製 品に適用できるようになる。 ちなみに 現生木の ヒノキ とスギの 年輪変動パターンのあいだに は

,距

離が近い と高い相関関係にあることが判切 している。1)

今回は

ヒノキの暦年標準パターンを用いて上記

5点

の木製品の年輪年代を測定 し

,井

戸の 築造年代や廃絶年代についてある程度の知見が得 られた ことと

ヒノキの暦年標準パターンを 使 った年代測定がスギ材 の木製品にも適用できる見通 しが得 られた ことについて報告す る。

A  試料 と方法

年 代測定 を行 な った試料 は

ヒノキ材 と判 明 した ものの 中か ら

SE 1365の

井戸枠板 のなかか ら樹皮が一部 に 残存 して い る板 を

1枚 ,SE 1335の

堆積土 か ら出上 した 曲物容器 の底板

1点 (PL.47‑38),SE 1867出

土 曲物容器の底板

1点 (PL.47‑43),SE 2020の

枠 内か ら出上 した 柄 杓

1点 (PL.47‑36), 

この他 にSE 1870の粋 材 に 再利用 されて いた スギ材 の折敷断片

1点 (PL.48‑55)を

加 えた総数

5点

であ る。 これ らは

,す

べ て柾 目板 に木取 りした ものばか りであ る。年輸幅の計測 は

,木

製 品 の柾 目面 か ら年輪 幅読取器を使 って10ミ ク ロンまで読 み取 った。

読 み取 った年輸 幅 デ ータは

,直

ちに コン ピュータに入力 し

,試

1点

ご との年輪変動 パ ター ン グラフの作成 を行 な った。年輪変動 パ ターンの照合 にあた っては

,暦

年 標準 パ ター ンを構成 す る年輸 幅デ ータか ら求めた年輪指標値 を 自然対数値 に変換 した もの と

これ と同様 に して求 めた試料

1点

ご との 自然対数変換値 とを使 って

,さ

きの 自然対数 変換値 を基本 に し

,試

1点

ご との 自然対数変換値 を

1層

ず つず らしなが らその度 ご との相関係数

rを

求 め

,つ

ぎに

t検

を行 なって

,t≧ 3.5に

な る箇所 を すべて検 出 し

,そ

の なかで も最大 の

t値

に着 目す る方法を

とった。最終決定 は

コ ンピュータで検 出 した箇所 を もとに

日視 で もって双方 の年輸変動 パ ター ングラフを透視台上 に重ね あわせて

,年

輪変動 パ ター ン全体 を詳細 に検討す る とともに,

暦年標準 パターンのなか の指標年輪 の位置 で試料 の年輸変動 パ ター ンが一致す るか ど うかを確

1)光

谷拓実「わが国における年輪年代研究法の現状 と展望」『考古学 と自然科学』20,1988。

7J

井戸枠材 曲物

(底

板)

曲物

(底

板)

柄杓

(身

)

折敷 (断片)

Tab.28 

年代測定結果

1

2

3

4 5

ヒ ノ キ ヒ ノ キ ヒ ノ キ ヒ ノ キ ス   ギ

SE1365 SE1335 SE1867 SE2020 SE1870

10。2 9,6 10.4 11,0 6.1 275

261 204 186 179

737 740 730 716 638

未加工 (樹皮有)

外周を加工

めた後

,暦

年標 準 パ ター ンの暦年 を試 料 の年輪変動 パ ター ンにあてて

,試

料 の残 存最 外年輸年 代 を求 め る こととした。

B 結果 と考察

試 料

5点

の計測年輸数 と年輪変動 パ ターンの照合 を行 な った結果

,そ

れ ぞれ の年輪年代を明 らかに で きた。判 明 した試 料 の残 存最 外年輪 測定年 代 お よび

t値

につ いて は

, Tab.28に

示 し

た とお りであ る。表中の

t値

この

t値

が高 いほ ど双方 の年輪変動 パター ンが酷似 してい る こ とを示す。 これをみ る と

, 5点

の数値 が

,一

応 の基本 としたt≧ 3.5よ りもは るかに高 い数 値 を示 してお り

これ らの年輪変動 パ ターンが暦年標準パ ターン とよ く重複 してい ることを示

してい る。以下

, 5点

の年輪年代 につ いて若千の考察 をす る。

l SE 1365の

築 造 年 代 に つ い て

SE1365の

井 戸枠 材 に使 われ て いた板 は一 部 に樹皮 を とどめて いた。 これ の最 外 年輪 測定年 代 は

737年

であ った。 さ らに

737年

に形成 された年輪 を顕微鏡下 で観察す る と

,春

材 につづ く 夏材 はほ とん ど形成 され て いない と判断 で きたので

この原材 は

737年

の夏か ら秋 に伐採 され た可能性 が極 めて高い (も

,夏

材 が完全 に形成 され ておれば

この原材 の伐採年 は

737年

の 秋 か ら

738年

4月頃 まで の

2年

に またが る 時期 を 想定 し なければ な らない)。 つ ぎに

,井

戸 SE 1365の築造年代 につ いてで あ るが

この板材 の伐採年 を もって即

,井

戸 の築造年代 とみ な す こ とはで きない。 た とえば

この板 が転用材 であ る とす る と井戸 の築造年代 よ り古 い年代 を 示 す こ とも考 え られ るが

,こ

の板材 を見 るか ぎ り

,以

前何 かに使 われ ていた こ とを示 す痕 跡 は 全 く認 め られ ない。 とす る と

この板材 は当初 か らこの井戸枠用材 として使わ れた とみて よか ろ う。残 るは

,こ

の板材 が

SE1365の

井 戸枠材 として伐採後

,す

ぐ使われた ものであれば問題 は ないが

,伐

採後

,何

年 間 か寝 かせ てか ら使 用 した ものであれ ば

,伐

採年 と築造年 代 とのあい だ に 時間的 ズ ンを 生 じる。 したが って

この板材が 何年 間寝 か されていたかは 不 明であ るか ら

,SE 1365の

築造年 代 を正確 に求 め る ことは で きない。

 

したが って

この場合 は

,少

な くと も伐 採 後数年 以内に築造 した ことが推定 され る。

2 SE 1335,SE 1867,SE 2020の

廃 絶 年 代 に つ い て

SE1335,SE1867,SE2020か

ら出土 した 曲物 (底板

)2点

と柄 杓 (身

)1点

はそれぞれ井戸 内の埋 土 か ら出土 した ものであ るか ら

これの年輪年代が判 明すれば

,井

戸廃絶 の年代 の手が

r夕b

か りが得 られ る。 これ ら

3点

の形状 をみてみ る と

,原

材 の中心部分 を使 って作 った ものかあ る いは樹皮 に近 い部分 を使 って作 った ものか不 粥であ る。 その上

,曲

物 製 品 として仕上げた とき に周辺 を どの程度削 って加工 した ものか も推定 しがたい。 したが って

これ ら

3点

の残存最外

年輪測定年代 は

,原

材 の伐採年 よ り古 い年代値 を示 してい る。 しか し

この遺跡 は

8世

紀末 を

下 限 とす る点 を考 え る と

これ らの年代値 はいずれ も

8世

紀代 を示 した ことか ら

,か

な り原材 の外周に近 い部分 で木取 りしてい ることが推定 で きる。 しか し

これ らは曲物製 品に加工 され てか らどの程度 の期 間使用 した後

, 3基

の井戸に投棄 され た ものか不 明であ る。 これ らの点を 考慮 に入れ る と

3基

の井戸 の廃絶年代 は

,そ

れぞれ の残存最外年輪 測定年代が示す年代を上限 とし

,こ

れ よ りかな り後 になってか らの ことが 推定 され る。

 

この よ うに

, SE 1365の

場合 と 違 って

,加

工 した木製 品の年輪年代 は一 つの時間的定点を与 える ものの

,遺

構 の年代観 とは直 接結 び付 か ない場 合 が多 い。 したが って

,こ

の よ うな木製 品か ら得 られ る年輪年 代を もとに し て

,井

3基

の廃絶 年代 を推定す るにあた っては

これ らの測定年 代ばか りで な く井戸掘形や 井 戸 内の埋土か ら出土す る土器や瓦 あ るいは木筒等 の年代 を勘案 して総合的に半J断しなければ

な らない。

+3 SE 1870出

上 の ス ギ製 折 敷 の年 代 測 定 に つ い て

この折敷の断片は

もとの形状か らす るとはぼ中央付近で左右対称に割れてお り

,樹

心に近 い方の左半分が井戸枠材に転用 されていた ものである。 ヒノキの暦年標準パターンとこのスギ 材折敷の年輪変動パターンの照合の結果

,459年

〜 638年 の ところで最大の

t値 (6.1)を

検出 した。

 

この

t値

,有

意な相関関係があるか どうかを検定す る時に一応の基準 としたt≧ 3.5

Fig.88 

ヒノキの暦年標準パターングラフ

(下

)と井戸部材 (樹皮つ き

)の

年輪変動パターングラフ (■)

Fig.89  ヒノキの暦年標準パターングラフ(下)と折敷

(ス

ギ材

)の

年輪変動パター ングラフ(上)

八 ハ

ハ 却 潤 氏 ハ 凡 ヽ

Wr γ V々

ど 。 sBcly

守 だ 年 鋼

 .̲̲̲̲̲…

よりもかな り高い数値である。 この結果を もとに

日視でもって双方 の年輪変動パターングラ フを重ね合わせてみても

,両

者 はほぼパランルな形で変動変化 してお り

,正

しく重複 している ことを確認 した。

Fig.89に

は ヒノキの暦年標準パケーングラフ(下

)と

スギ材折敷の年輪変動 パターングラフ(上)とを示 した。 ここで ヒノキの暦年標準パターンを構成す る試料が主に平城 官跡出土の柱根類であることを考 えると

このスギ材の産地 は これ らの柱根類が伐採 された産 地 と近いことが推定 され る。 この結果か ら

,地

域的な問題は残 るものの ヒノキの暦年標準パタ ーンを使 った年代測定がスギ材のものにも適用できるとの見通 しを得 ることができた。なお,

今回の場合

,完

形品でなか った ことと

,転

用材であることを考 え合わせ ると

,原

材の伐採年 よ りかな り古い年代を示 していることが考えられ るため

,こ

の年代値を もってただちに丼戸の築 造年代 とみなす ことはできない。

C

今回

ヒノキの暦年標準パターンを使 って

,井

戸枠材

1点 ,井

戸埋土か ら出上 した曲物容器 類

3点

の年代測定をお こない

,そ

れぞれの年輪年代を求めることができた。その結果

,SE1365

については築造年代を

,SE1335,SE1867,SE2020に

ついては曲物類を井戸に投棄 した年代の 上限すなわち

,廃

絶年代を考察す る上で大変有効 な年代値を提供できた。 また

,SE1870の

井 戸枠に転用 されていたスギ製の折敷 (断片

)の

年輪年代を求めることができた ことに よ り

,地

域的な適用範囲の問題は残 るものの

ヒノキの暦年標準パターンを使 った年代測定汝がスギ材 の木製品に も応用できる見通 しが得 られた。

と め ま

・奈良 川 野 野 森 手 日

朗 石 長 長 青 岩 秋

木 知 野 良 畿

″ 栃 高 長 奈 近

なお

,最

後に ヒノキ

,ス

ギを含めた

6樹

種を用いた暦年標準パターンの作成状況をかかげて1)

お く

(Tab.29)。

採 取 地 作 成 年 代 試料の年代

   

   

ドキュメント内 1  条坊遺構 と地 割 (ページ 35-38)

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