未踏ソフトに採択されて
• 開発に専念できる
細かいことを言われない上に、最初から書類整理のための管理会社がついてく れます。一番面倒な会計書類の整理などを全部やってくれるため、採択者は開 発だけに集中できます。
• 成果物にIPAは権利を主張しない
成果物は、その全ての権利が開発者に帰属します。そのため、フリーソフトと して公開したり、成果物を元に事業を起こしたりすることも可能です。
• 開発者の義務は成果報告書のみ
成果報告書の提出は義務ですが、それ以外のものはいっさい要求されません。極 端な話、「お金もらったけど、ものは出来ませんでした。ごめんなさい」もアリ
です(個人的にはそれはどうかと思いますが)。
最近、IPAの別のプロジェクトに採択頂いたのですが、未踏に比べてこちらの煩雑 なことと言ったら...。もちろん未踏が特殊なだけではあるのですが、比べずにはおれ ません。
1 年目
そもそもの始まりは、京都大学の上林弥彦先生との出会いからでした。上林先生は 以前九大にもいらっしゃったこともあり、PMをされるに当って「九州からも1件く らい採用したい」と、九大で未踏の説明会を開催してくださいました。当時、博士課 程の1年生として九大に在学していました私は、研究室経由でその告知を知りました。
さっそく説明会に参加し、当時バイト先で作成していたプログラムとそのビジネスへ の応用例について相談してみましたところ、非常に興味を持っていただけ、そのまま スルスルと採択まで進んでしまいました。
この時作成していたものは携帯電話向けのコンテンツ配信を行うプログラムだった のですが、テーマ自体が非常に分かりやすく、ビジネスにも直結していたためあちこち で話題になり、しまいには雑誌やTVの取材までやってくるという大騒ぎになってし まいました。また、商談を進めるに当って、当時のバイト先のベンチャー企業「(株) コム・アンド・コム」に、取締役の一人として迎えて頂くということになりました。
学生ベンチャーなんて遠い世界の出来事と思っていたら、気が付けば自分が当事者に なっていた...ということで大変困惑しております。
また、同じ上林PMに採択された1年目のグループの人たちとは、現在でも親しい 付き合いが続いています。
2 年目
さて、1年目に味を占めた(笑)私は、弊社の社長と組んで、新しいプロジェクトを 上林PMに提案しました。すると、こちらも無事採択され、私の未踏生活も2年目に 突入することになりました。
2年目は、1年目に作ったシステムの実応用例の1つとして、危機管理システムを 提案しました。これは、構想としては弊社の設立当時から暖めていたアイデアで、営 業展開は既に数年間行ってきていたものです。実際に物を作る段階に至り、未踏の力 を借りようということになったわけです。
2年目終了時点で、PMから成果報告がIPAにされるわけですが、なんとこの中で 私は「11名の天才プログラマー/スーパークリエータ」という枠に選ばれてしまいま した。正直に申し上げて、2年目はアイデア(営業)の力による部分がほとんどであっ たので、私がクリエータとして評価されるのはなんとも気恥かしい思いでした。
ここで作成したシステムは、今年の10月にいよいよ「LifeMail」という名前で商 用サービスがスタートしました。
3 年目以降
その後、この未踏で作ったものを元に実際に営業展開ならびに商用サービスの運用 を行っています。会社の運営と実際の物作りに時間がかかるため、私は3年目以降の 未踏には応募していません(また、今年度になって『これまでに2回採択された人は もう採択しない』といった制限が設けられたようです)。しかし、私がうまい思いを してると思われたのか(いや、実際そうなんですが)、私の周囲でも何人か未踏に応募 して、実際に採択されたという人が出てきました。
未踏に採択されて
順調に進めば学位を取得して博士課程を卒業し、どこかの企業か研究室に入って...
と思っていた私の人生設計は未踏によってあっさり崩壊し、気が付けば学生ベンチャー というなかなか体験の出来ない世界に足を踏み入れてしまいました。講演依頼が来た り、寄稿依頼が来たり、ビジネスの世界を勉強する機会に恵まれたりと忙しくも充実 した日々を送りながらも、私の学位取得は徐々に先送りになってしまって未だに博士 課程在学中。先生方を始め、関係各位にご迷惑をお掛けしてしまい申し訳なく思って
おります(もちろん学位がちゃんと取れるよう頑張るつもりです)。
未踏に採択されて色々と私の人生は変わったのですが、その中でも一番大きかった のは「物作りの楽しさ」を再認識できたということではないかと思っています。工学
という学問は、学術的な部分はもちろん多くありますが、やはり実際に世の役に立つ 物を作らなければならないという側面が大きいのではないかと個人的には思っており ます。未踏を契機として、実際に世の中で使ってもらえるものを作ることができたと いうことで、私はこの思いをさらに強めました。
ともすれば税金の無駄遣いとの謗を受けかねない未踏ですが(また、実際にそのよ うに言われる方が多いのも確かです)、私は非常に大きなものを得ることができ、また そこから少しでも世に成果を還元できたのではないかと思っています。未踏自体は残 念ながら来年度で終わってしまいますが、是非これからも国にはこのような制度を検 討してもらいたいと思います。また、その機会にはどんどんチャレンジする若い人が 出てきてくれることを期待して筆を置かせていただきます。