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幡豆に生息するメソ動物プランクトン

ドキュメント内 幡豆の海と人びと (ページ 75-78)

さまざまな動物プランクトンたち

筆者らが調査を行なった三河湾北部の東幡豆沿岸(前島・沖島の周辺海域)からは、メソ動物プランクトンは枝角類、カイアシ類、尾虫類、刺胞動物、毛顎動物、多毛類の幼生、十脚類の幼生、腹足類の幼生、二枚貝類の幼生、有櫛動物、タリア類が出現した。

重要視されている。尾虫類は脊索動物門尾索動物亜門に属するグループで、オタマボヤとも呼ばれる。この尾索動物にはホヤ類(食用になるマボヤなど)も含まれているが、尾虫類は卵形の体(躯幹部)と長い尾部で構成され、体形がオタマジャクシに似ていることから、オタマボヤと呼ばれる(写真

に細長い体形をしているためである( arrowworm毛顎動物はヤムシ(矢虫)とも呼ばれ、英語でもである。弓矢のように直線状 割が近年再認識されている。 いハウスがデトリタスとなってほかの動物の餌になることから、海洋生態系における尾虫類の役 の動物が利用できない小さなサイズの有機粒子を食べることができること、頻繁に捨てられる古 尾虫類はこのような変わった摂餌を行うが、この摂餌フィルターの網目が非常に細かく、ほか 粒子で目詰まりすると、そのハウスを捨てて新しいハウスを作り直す。 を起こすことで、フィルターでろ過・凝集された有機粒子を摂餌している。このフィルターが餌 もぐり込んで生活する。このハウス内には網目の細かいフィルターが備わっていて、内部で水流 尾虫類はハウスと呼ばれるタンパク質とセルロースできた袋状の構造物を作り出し、その中に 仲間で、遠い親戚なのである。 は尾部にこの脊索を備えている。つまり、尾虫類とヒトは、分類学上では同じ動物門に所属する いる。脊椎の中には脊髄(神経の幹)が存在しており、その原始的なものが脊索である。尾虫類 私たちヒトは脊索動物門脊椎動物亜門に属しており、脊椎(背骨)をもつグループに含まれて 1c)

1d)。体は柔らかく半透明で、側面には透明な側鰭、 くの種類が いる。浮遊性のカイアシ類は多 の形態、生態は多様性に富んで クトン、寄生性まで存在し、そ ら陸水域、ベントスからプラン る微小な甲殻類である。海洋か

2~

全個体数の ンクトンネットを曳網すると、 シ類の生物量が最も多く、プラ 動物プランクトンのうちカイア 海洋の外洋域や沿岸域では、 る。 枝角類より小型の種類も存在す 10㎜程度だが、

70~

80%を占めるほ

どである。主に植物プランクトンなどの基礎生産者、あるいはそれに近い栄養段階の動物を摂餌することと、その個体数の多さから、海洋食物連鎖において

写真 1 主要な動物プランクトン

(撮影:松浦)

a:枝角類 b:カイアシ類  c:尾虫類 d:毛顎動物 e :刺胞動物

a

c

b

d

e

第 2 部 幡豆の海と生き物 2 プランクトン

ような手法で小型の動物プランクトンを捕らえている。

動物プランクトンの季節変化

動物プランクトンの総個体数は、

4~

5月

が最も低く、その後急激に増加して、

6~

9

月に高密度になる1)。毎年この時期には

/m1万個体を超すことになり、3

20

12

6月には

/m9万個体にまで達した。3

1

㎥の海水中に

9万個体のプランクトンという

ことは、

㎥=1

10

00ℓなので、つまり

1

ℓの海水に

90個体のプランクトンが生息して

いるのである。普段は目に付かずに気がつかないが、数的にはかなりウジャウジャとしている。夏が過ぎると冬に向かって総個体数は減少して、

20

00~

30

00個

体/m 3で推移した後に、さらに減少するが、

20

10

1月や 12月、

20

12年

3月のようにひと

図 1 東幡豆沿岸における動物プランクトン総個体数(上)と 主要動物群組成(下)の季節変化

カイアシ類

0 11 20 40 60 80 100

2010 2011 2012

102 103 104 105

1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9

枝角類 尾虫類毛顎動物 刺胞動物 その他 総個体数(ind./m3出現率(

%

2010 2011

年 月

2012

後端には尾鰭を持つ。泳ぐ時には体と鰭を使って、弓から放たれた矢のように素早く直進する。体の先端に頭部があり、頭部側面の顎にあたる箇所に毛が生えていることから毛顎動物と呼ばれている。この頭部の毛は「顎毛」といい、毛とはいうもののキチン質で硬くなっており、餌を捕らえるためのキバとして用いる。このキバを用いて、周辺を泳いでいるカイアシ類や時には稚仔魚をも捕食する強い肉食性を示す。海域によっては個体数が多く、小型生物の捕食者としてだけでなく、魚類の餌料にもなるため海洋生態系で重要な動物であり、また水塊の指標種としても古くから重要視されている。刺胞動物は、刺胞と呼ばれる細胞内小器官をもつグループで、クラゲやイソギンチャク、サンゴが含まれる。今回の調査では小型のプランクトンネットを用いたため、採集された主な刺胞動物はミズクラゲやアカクラゲなど大型の鉢虫綱ではなく、ヒドロ虫綱に含まれる管クラゲ類という小型の仲間である(写真

ト型の遊泳個虫(泳鐘)をひとつ持つ種類である。泳鐘の大きさが Muggiaea atlantica東幡豆沿岸の調査で多く採集されたのは、ヒトツクラゲ()で、透明なロケッ 管状の幹によって繋がっている。 管クラゲは遊泳、餌の捕獲、繁殖といった役割をもった個虫が集まった群体であり、それぞれが 1e)。よく知られる丸いお椀型の傘をもつクラゲ(鉢虫綱)とは異なり、

4㎜ほどのクラゲで、泳鐘が

律動することで内部に水を吸い込み、排出することを繰り返して遊泳する。泳鐘の後方内側には幹室という凹みがあり、その中に小さく縮まった多数の個虫(栄養個虫)を収納することができる。遊泳時には泳鐘の外に幹が伸び、そこから栄養個虫が触手を伸ばすことで、まるで延縄漁の

過去の東幡豆沿岸や三河湾の他海域のデータは持ち合わせていないので、近年になって枝角類が増加したのか、それとも以前から枝角類が多いのかは不明であるが、調査を行った

20

10~

20

12年の

3年間は、

初夏から秋期は枝角類が数的に支配的な海域であり、彼らが減少すると、カイアシ類を中心とした群集構造に変化する特徴があった。(松浦弘行)

ドキュメント内 幡豆の海と人びと (ページ 75-78)

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