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帰還モジュールカプセルをモスクワに回収

ドキュメント内 油井宇宙飛行士 ISS長期滞在プレスキット (ページ 173-178)

帰還モジュールは再突入の約 23 分後に着陸します。再突入から着陸までの流 れは以下のとおりです。

⑦ 帰還モジュールカプセルをモスクワに回収

回収部隊によるソユーズ宇宙船の捜索・回収は以下の流れで実施されます。

① ヘリコプター等による捜索/着陸地の確認

付録3-36

図3.6-3 ソユーズ宇宙船から搭乗クルーを引き出している様子

(カプセルが横倒しにならなかったときは、このように梯子を使って引き上げる)

図3.6-4 回収部隊に運ばれる搭乗クルー

帰還したクルーは、リクライニングシートに運ばれてしばらく重力に慣らした後、

医療用テントへ運ばれます。その後は、ヘリコプターで空港まで運ばれます。

【帰還直後の転倒の危険性について】

スペースシャトルでの帰還でも同様ですが、長期滞在を終えたクルーが帰還直 後にすぐに立ち上がると、頭から下半身への血流のシフトが起きて貧血を起こした 時のような状態になって転倒し、怪我をする可能性があります。このため、クルー には医者から許可が出るまでじっとしているように指示されています。

ミール時代や ISS の初期の頃に比べると、クルーは軌道上でのエクササイズや 帰還に備えた医学的な指示が充実してきたお陰で遙かに元気な状態で帰還でき るようになりましたが、それでも着陸後数時間は、体を重力に慣らす必要がありま す。また、立ちくらみの危険性だけでなく、バランス感覚が戻るまではかなりの日 数がかかるため、最近のリハビリテーションではバランス感覚を戻すことに重点が 置かれています。

コラム付録3-2

図3.6-5 医学検査用エアテント(inflatable medical tent)

図3.6-6 帰還モジュールに搭載して持ち帰った物品の取出し

【帰還後の体の変化・回復状況】

ISSに長期滞在して帰還したクルーの様子は、プライバシーの問題があるため通常は公表 されません。しかし、20135月に帰還したカナダのクリス・ハドフィールドの回復状況は CSAのホームページで(本人が同意の上で)公開されているので以下にその貴重な情報を紹介 します。彼が地上に帰還したのは5月14日で、その日のうちにヒューストンに戻っています。

5/15:歩くときに時々脚をもつれさせている。背中に痛みがあり、歩いて角を曲がるのが困 難な状態で、角にぶつかってしまう。めまいを感じており、階段を上り下りするのは かなり困難。彼が今回の飛行で喪失した骨密度の回復には約1年あるいはそれ以上かか る見込み。彼をうまくリハビリさせていくことで、シニア層へ役立てる重要な知見を 得ていく。

5/16:既に彼の歩行能力と平衡感覚は飛躍的に改善してきた。とはいえ、彼が車を運転でき る状態に戻るまでには、まだ約3週間かかるとみている。

5/17:重力への適応は日々進んでおり、めまいも消えて歩行もしっかりしてきた。心電図や 脳波の測定、MRI検査を実施。

5/31:ジムで毎日2時間のエクササイズを継続している。昨日初めてランニングを実施。重 力に完全に慣れると感じるまでおそらく3-4か月かかるだろう。

コラム付録3-3

付録3-38

3.7 帰還後のリハビリテーション

帰還後のリハビリテーションは、任務を終了し帰還した ISS クルーの最優先実施 事項として実施します。帰還後のリハビリテーションプログラムは、帰還直後の転 倒による骨折・捻挫の予防と、飛行前の体力復帰を目標として、宇宙飛行士ごと に個別に計画、実施されます。

ソユーズ宇宙船で帰還したロシア人宇宙飛行士以外の宇宙飛行士は、母国や 居住地のある国に帰国してリハビリプログラムを実施します(母国に帰る時期は、

宇宙飛行士の体調の回復状況などを担当のフライトサージャンや計画マネージャ などが判断します)

。(注:野口宇宙飛行士が帰還した2010年6月より、NASA, ESA,

JAXAの宇宙飛行士はNASAの専用機でその日のうちに米国ヒューストンへ直接移動す

るようになりました。)

参考として、米国宇宙飛行士の場合の、長期滞在帰還後のリハビリテーション プログラムの概要を表 3.7-1 に示します。

長期滞在ミッション終了後のリハビリテーションプログラム

宇宙での長期間任務を終了し地上に帰還した宇宙飛行士は、転倒による怪我の 予防や体力復帰に向けたリハビリを実施します。約1ヶ月半にわたり毎日、体調に あわせてリハビリテーションを行い、地球の重力環境に少しずつ身体を慣らしてい きます。

宇宙滞在中は、微小重力環境で生活することにより、宇宙飛行士の身体には 様々な生理的変化が起こります。宇宙酔いや、体液シフト、骨密度の減少、筋肉の 萎縮と筋力低下などがあげられます。1週間~2週間の宇宙飛行では宇宙酔いや 体液シフトが生じますが、これらの変化は帰還後早期に回復します。約6ヶ月間に わたる宇宙滞在では、骨量減少(大腿骨頚部で約-10%)や筋力低下(膝伸筋で 約-30%)の影響が顕在化し、これらの回復には時間がかかります。身体のコンデ ィションを飛行前の状態へと、早期に効果的に回復させるためには、計画的なリハ ビリテーションプログラムが必要となります。

ISS長期滞在クルーは、これらの健康上の問題に対処するため、宇宙滞在中は 1日2時間の運動を毎日行なっていますが、骨や筋機能、感覚機能の維持には十

分とはいえないのが現状です。

ISS長期滞在クルーの帰還後のリハビリは、3段階(フェーズ1、2、3)から構成さ

れます(次頁の「表3.7-1:(米国の)ISS長期滞在クルー帰還後のリハビリテーショ ンプログラム概要」を参照ください)。身体機能の低下と体力の回復は、年齢、飛行 期間などにより、個人差が出るため、担当のフライトサージャンとリハビリテーション プログラム担当職員が、個人の体力に応じて、個別のリハビリテーションプログラム を作成します。

このリハビリテーションプログラム中、定期的に医学検査と体力機能検査を行い ます。これらの医学的な検査結果は、当該宇宙飛行士の健康管理に役立てるのみ ならず、ISSや月、火星ミッションに向けた有人宇宙開発の基礎データとして役立て ることが期待されます。

コラム付録3-4

3.7-1

(米国の)ISS長期滞在クルー帰還後のリハビリテーションプログラム概要

目的

帰還後のリハビリテーションプログラムは、帰還直後の転倒による骨折・捻挫 を予防し、飛行前体力への回復を目標として、宇宙飛行士ごとに個別に計画 する。

パラメータ 筋力、最大酸素摂取量、体力機能検査

対象 ISS長期滞在ミッション(30日以上滞在)に参加した宇宙飛行士

プログラムの構成

以下のフェーズ1、フェーズ2、フェーズ3で構成される。

担当のフライトサージャンの安全管理のもと、リハビリテーションプログラム担 当職員の立会いの下で実施する。必要に応じて、NASAなどの運動プログラ ム担当者の支援を得て実施する。

フェーズ1 帰還当日~

帰還後3日目 1日120分

介助付き歩行、立位訓練、ストレッチング、マ ッサージ、有酸素運動、筋力トレーニング、

軽度な抵抗運動など。

フェーズ2 帰還後4日目~

帰還後14日目 1日120分

ストレッチング、有酸素運動、筋力トレーニン グ、敏捷性やバランスを高める運動、マッサ ージ、十分な休養など。

フェーズ3 帰還後15日目~

帰還後45日目 1日120分

フェーズ2と同様のプログラムを実施。

敏捷性、バランス能力、協調運動、温泉や保 養所での療養。

使用する施設 自転車エルゴメーター、エリプスマシーン、トレッドミル、筋力トレーニングマシ ーン、ゴムバンド、バランスディスク、投的、メディシンボール

備考

帰還から45日目まで就業中2時間のリハビリプログラムを計画する。

定期的に医学検査と体力機能検査を行う。

45日間のリハビリテーション後も延長して実施するかどうかについては、リ ハビリテーション担当職員の評価のもとに、担当フライトサージャンが決定 する。

【参考文献】MR026L Postflight Rehabilitation(NASA JSC)、「宇宙飛行による骨・筋への影 響と宇宙飛行士の運動プログラム」大島博、他(JAXA 有人宇宙技術部 宇宙医学グループ)

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ドキュメント内 油井宇宙飛行士 ISS長期滞在プレスキット (ページ 173-178)