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都市部と農村部

第 5 章 改革開放以降の中国社会と社会制度

5.2 改革開放以降の中国社会が直面している格差問題

5.2.1 都市部と農村部

改革開放前においても、都市部と農村部の経済格差は存在していたが、改革開放以降、

都市住民と農民との間の所得格差が変動しており、格差問題は根本的に改善されていると は言えない状況である。このような格差が起こる過程は、改革開放政策が実施された1978 年から2016年までの、農民と都市住民の収入を比較した、図5.4から理解可能である。

図5.4が示す通り、全体的に見れば、農民の1人当りの年平均純所得58は、1978年の133

元から2016年の12363元にまで増加しており、都市住民の1人あたりの年平均実質可処

分所得59は、1978年の343元から2016年の33616元にまで増えている。都市部と農村部

の所得は、ほぼ同じ割合で増加しており、国民の収入は、全体的に増加したと見ることが できる。

ただし、1978年と2016年を比較すると、農民の年平均純所得は、都市住民の年平均可 処分所得のわずか5分の2という割合になっており、両年の比率は変わっていない。改革 開放が実施されてから 2016 年までの 38 年の間に、都市部と農村部の実質収入の差は、

210 元から21253 元にまで拡大されている。すなわち、38年に渡って農民と都市住民の

所得格差は改善されておらず、その実質収入の格差は拡大されているのである。

58 年平均純所得とは、税金や必要支出が控除されていない所得を指す(于2007:75)。

59 個人所得の総額から支払い義務のある税金や保険料などを除いた後、個人が自由に使える 分を指す(于2007:75)。

102 図5.4 中国における農民と都市住民の所得格差(1978年から2016年まで)

資料:中国国家統計局のデータをもとに筆者制作、中国国家統計局HP

(http://data.stats.gov.cn/easyquery.htm?cn=C01)

第1段階第2段階第3段階第4段階

103 一方で、農民と都市住民の所得の比率は、改革開放の段階ごとに変化が現れている。ま ず、1978年から1984年までの第1段階では、農民の年平均収入は、都市住民の年平均収 入の3分の1から、2分の1にまで縮小された。その理由は、5.1.2節で言及したように、

改革開放以降の経済体制改革が、最初に実施されたのは農村地域であり、生産責任制の導 入により農民の収入が増加したことによる。それに対して、この期間の都市部における改 革開放は農村部に比べて遅れていたため、都市部における経済成長と都市住民の収入は、

相対的に停滞していた。

その後、改革開放が第2段階に入り、都市部において遅れていた経済改革の促進により、

都市部の住民収入は急速に増加した。そのため、1985年から1992年までは、農村部と都 市部の収入格差が拡大された。1989年から1992年までの改革開放の停滞期、または混乱 期とも呼ばれる第3段階において、政府は市場経済の導入や都市部の経済改革に慎重な態 度を示し、経済成長自体が一時的にその速度を緩めたため、都市部と農村部の所得格差は、

若干の縮小を見せた。しかしながら、1992年以降、特に1997年の東南沿海部を対象とす る開放政策の推進により、経済特区や対外開放都市を初めとする、都市部の経済成長が加 速されたのに対して、農村部における経済改革は、ほぼ停滞していた。このため、農村部 と都市部の所得の格差は再び拡大され始め、2004年の農民の年間平均純収入は、都市住民 の可処分所得の30%に留まっている。

このように、図 5.4を概観することにより、農村部と都市部との経済格差のおおよそを 把握することは可能であるが、中国における農村部と都市部の所得格差の実態は、統計デ ータの数値に見られるより、深刻であると考えられる。その理由は、第1に、中国国家統 計局により公開された調査データは、農民の純収入を対象とするものであり、農民の純収 入の中には、翌年度の農業生産に必要な種子や肥料などに対する支出が含まれているとい うことがある(于2007:75)。第2に、同調査には、戸籍に基づいて都市部と農村部を分 けて実施されたものであり、戸籍の変更が行わずに都市での出稼ぎ労働に従事する農民の 所得が、農民収入として捉えられていることがある(佐藤2000:159)。第3に、この調査 は賃金所得を対象として実施されているため、都市部と農村部における社会保障制度の違 いにより生じる経済格差は、この調査データには反映されていないという問題が存在する

(佐藤2000:160)。結果として、農民の可処分所得はさらに低くなり、社会保障などを含

めて考えると、農村部と都市部の経済格差は、中国国家統計局の数値で見るよりも、はる かに大きいことが推測される。

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