―千葉県習志野市の豆腐店におけるアンケート調査をもとに―
第 1 節 課題
前章では、大豆加工品の高級化および嗜好品化ニーズへの対応を通じた需要創出の可能 性を、消費者へのアンケート調査の結果をもとに導出した。すなわち、調査事例では輸入 大豆使用品と比較して割高な国産大豆使用品の価格帯を消費者が受容しており、価格競争 力に劣る国産大豆が輸入大豆との競合に対応する可能性が明らかになった。しかしながら 先の研究では、ニッチ市場を戦略上の対象とするメーカーを事例としており、より波及効 果を有する事例に基づく研究が求められる。したがって本章では消費者が多く居住する都 市部においてアンケート調査を実施し、都市部在住の消費者が輸入大豆使用品と比較して 割高な価格帯を前提とした国産大豆使用品を支持する要因を整理するとともに、その消費 者像を明らかにする。
第 2 節 調査方法とデータ (1)調査概要
千葉県は作付面積および生産量において大豆の主要産地とはいえないものの、その品質 が多くの実需者から高く評価される在来品種「小糸在来」のほか、希少とされる青大豆が 一部地域で栽培されるなど、特色豊かな大豆の産地として業界関係者に認識されている。
こうした原料を使用して他店との差別化を試みる実需者が県内には多く存在することから、
本章では千葉県内の豆腐店を対象事例とした。特に、都市部の消費者ニーズを解明する目 的から、本研究では習志野市の宍倉豆腐店(以下、宍倉)と三河屋豆腐店(以下、三河屋)
の2店を選定した。
両店は零細規模の豆腐製造・販売業者で、店頭販売が多くを占める。習志野市には都心 のベットタウンとして約16.5万人が居住し、調査対象の両店はそれぞれ新興住宅地に位置 する。また両店は大手小売業者と競合し、大豆加工品の総菜や菓子類の販売、県産大豆使 用品の季節限定販売などで他社との差別化に取り組んでいる。
両店は共通の卸売業者から原料や資材を調達する一方で、それぞれ独自の販売戦略も展 開している。宍倉はすべての原料に国産大豆を使用し、昔ながらの絹ごし豆腐の製法にこ だわった「伝承豆腐」をはじめ、木綿豆腐、寄せ豆腐、揚げものといった定番商品を販売
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度数 割合 度数 割合 度数 割合 習志野市内 17 68.0% 41 95.3% 58 85.3%
市外 8 32.0% 2 4.7% 10 14.7%
男性 2 8.0% 14 32.6% 16 23.5%
女性 23 92.0% 29 67.4% 52 76.5%
10代 0 0.0% 1 2.3% 1 1.5%
20代 0 0.0% 1 2.3% 1 1.5%
30代 4 16.0% 1 2.3% 5 7.4%
40代 1 4.0% 1 2.3% 2 2.9%
50代 7 28.0% 7 16.3% 14 20.6%
60代 10 40.0% 12 27.9% 22 32.4%
70代以上 3 12.0% 20 46.5% 23 33.8%
200万円未満 3 15.8% 7 25.0% 10 24.4%
200万円以上-400万円未満 8 42.1% 11 39.3% 19 46.3%
400万円以上-600万円未満 5 26.3% 4 14.3% 9 22.0%
600万円以上-800万円未満 2 10.5% 5 17.9% 7 17.1%
800万円以上-1000万円未満 1 5.3% 0 0.0% 1 2.4%
1000万円以上 0 0.0% 1 3.6% 1 2.4%
居 住 地 性 別
年 齢
所 得
資料:アンケート調査の結果に基づき作成 属性/項目
宍倉 三河屋 合計
表1 サンプル属性
している。各製品には原料の「産地名」および「品種名」を付しており、具体的には「北 海道産ユキホマレ」や「佐賀県産フクユタカ」の使用を強調し、自社のブランド・イメー ジを培っている。
一方の三河屋は定番商品に輸入原料を使用する一方で、季節毎に国産原料を選定して複 数品種をブレンドした豆腐を製造し、「国産大豆使用品」独自の食味を打ち出して他の製品 と区別して販売している。また厚揚げやがんもどき等の揚げ物のほか種類豊富な製品が消 費者に広く親しまれている。
豆腐を例に両店の製品の価格帯を比較すると、すべての原料に国産大豆を使用する宍倉 では独自商品の「伝承豆腐」が140 円、その他の豆腐が 200~230 円、小糸在来等を用い た季節限定品が 250~300 円で販売されている。また三河屋では輸入大豆使用品が 130 円 前後、国産大豆使用品が200~230円、季節限定品が250~300円で販売されている。吉田
(2012)は豆腐の平均価格について、国産大豆使用品を120 円、輸入大豆使用品を 60円 と試算しており、両店はスーパー等と比較して割高な価格で製品を販売していることがわ かる。したがって、両店来店者を調査対象とすることで、都市部において割高な価格帯を 前提としながらも国産大豆使用品を支持する消費者の動向や、同品が支持される要因の解 明が期待される。
(2) サ ン プ ル の 属 性
そ こ で 本 研 究 で は 両 店 の 来 店 者 に 対 し て 書 面 で の ア ン ケ ー ト 調 査 を 実 施し、消費者による 各 店 製 品 の 支 持 要 因 お よ び 製 品 の 原 料 と し て の 国 産 大 豆 に 対 す る 評 価 を 解析した。宍倉では 2013年7月29日か
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度数 割合 度数 割合 度数 割合 ほとんど毎日 0 0.0% 6 14.0% 6 9.0%
週4,5回 0 0.0% 1 2.3% 1 1.5%
週2,3回 5 20.8% 14 32.6% 19 28.4%
週1回 8 33.3% 8 18.6% 16 23.9%
月2,3回 5 20.8% 8 18.6% 13 19.4%
月1回 2 8.3% 5 11.6% 7 10.4%
2,3か月に1回かそれ未満 4 16.7% 1 2.3% 5 7.5%
木綿豆腐 7 28.0% 18 41.9% 25 36.8%
絹ごし豆腐 20 80.0% 23 53.5% 43 63.2%
寄せ豆腐 1 4.0% 3 7.0% 4 5.9%
油揚げ 5 20.0% 19 44.2% 24 35.3%
厚揚げ 8 32.0% 21 48.8% 29 42.6%
がんもどき 3 12.0% 8 18.6% 11 16.2%
その他 4 16.0% 2 4.7% 6 8.8%
甘みがある 15 34.1% 25 58.1% 40 58.8%
香りが良い 8 18.2% 17 39.5% 25 36.8%
食感が良い 18 40.9% 29 67.4% 47 69.1%
後味が良い 3 6.8% 9 20.9% 12 17.6%
高級感がある 1 2.3% 3 7.0% 4 5.9%
安心感がある 20 45.5% 36 83.7% 56 82.4%
珍しい商品がある 5 11.4% 3 7.0% 8 11.8%
国産の原料を使用している 10 22.7% 10 23.3% 20 29.4%
このお店が扱う商品の味や
品質に信頼を寄せている 9 20.5% 10 23.3% 19 27.9%
社員や店員の人柄が好き 3 6.8% 20 46.5% 23 33.8%
店内がきれい(清潔感がある) 8 18.2% 2 4.7% 10 14.7%
高い 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0%
割高 4 16.7% 2 4.7% 6 9.0%
普通 20 83.3% 37 86.0% 57 85.1%
割安 0 0.0% 2 4.7% 2 3.0%
安い 0 0.0% 2 4.7% 2 3.0%
9 37.5% 9 20.9% 18 26.9%
注: ※の設問は複数回答可
合計 表2 各豆腐店の利用について
資料:アンケート調査の結果に基づき作成 来
店 頻 度
よく 購入 する もの
※
食味に ついて
※
製品
・ 店舗に ついて
※
属性/項目 三河屋
製品に使用している国産大豆の 品種名を認知している 価格につ
いて
宍倉
ら31日までに調査票を配付し、8月末までに25通が回収された。三河屋では同年9月12 日、17日に店頭で調査票への記入を呼びかけ、計43通の回答を得た。
表1は回答者の属性を表している。習志野市内居住者(85.3%)が大半を占め、各店とも性 別は女性(76.5%)が多く、年齢層は宍倉が60代(40.0%)、三河屋は70代以上(46.5%)が多い。
年 収 は と も に
200-400 万 円
(46.3%)が 最 も 多 いが、専業主婦や 年 金 受 給 者 も 多 数含まれていた。
(3)店舗評価と製 品評価
表2は各店の店 舗 お よ び 製 品 の 利 用 に か か わ る 調 査 項 目 の 結 果 を示した。まず顧 客の来店頻度は、
両店とも週 2、3 回から月 2、3 回 の 間 に 集 中 し て いるが、三河屋は ほ と ん ど 毎 日 (14.0%)であり、来 店 頻 度 が 高 い 顧 客も存在する。次 に 両 店 と も 絹 ご し 豆 腐(63.2%)が 最も購入され、厚
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度数 割合 度数 割合 度数 割合 ほとんど毎日 5 20.0% 7 16.3% 12 17.6%
週4,5回 1 4.0% 8 18.6% 9 13.2%
週2,3回 14 56.0% 19 44.2% 33 48.5%
週1回 4 16.0% 8 18.6% 12 17.6%
月2,3回かそれ未満 1 4.0% 1 2.3% 2 2.9%
70円以下 1 4.5% 0 0.0% 1 1.9%
70~90円 1 4.5% 3 10.0% 4 7.7%
90~110円 12 54.5% 10 33.3% 22 42.3%
110~130円 3 13.6% 6 20.0% 9 17.3%
130~150円 2 9.1% 7 23.3% 9 17.3%
150~200円 3 13.6% 2 6.7% 5 9.6%
200~300円 0 0.0% 1 3.3% 1 1.9%
300円以上 0 0.0% 1 3.3% 1 1.9%
表3 日常での豆腐消費について 属性/項目 三河屋
消費 回数
平均 購入 単価
資料:アンケート調査の結果に基づき作成
宍倉 合計
揚げ (42.6%)が次いでい る。絹ごし豆腐について は 季 節 性 を 考 慮 す る 必 要があるが、定番商品を 有 す る 宍 倉 の 絹 ご し 豆 腐の割合(80.0%)が特に 大きい。厚揚げはスーパ ー 等 他 店 で の 取 り 扱 い が少ないほか、揚げたて を 求 め る ニ ー ズ も 存 在 する。続いて各店の製品 の食味への評価は、食感 が良い(69.1%)や、甘みが
ある(58.8%)が多く、製法および原料に由来する項目の評価が高い。また各店の製品および 店舗について、安心感がある(82.4%)、社員や店員の人柄が好き(33.8%)、などと評価されて いた。さらに製品の価格については、両店とも普通(85.1%)が大半を占めた。なお原料の品 種名を認知している消費者は、各店とも一部に限定されていた(26.9%)が、宍倉はその割合 (37。5%)が比較的大きい。
表 3 は、アンケート回答者の日常における豆腐消費に関する設問の結果である。まず消 費回数について宍倉は週2、3回(56.0%)が最も多く、ほとんど毎日(20.0%)が、これに次い でいる。これらの回答者は、宍倉以外での豆腐購入の機会が多いことが想定される。一方 三河屋も週2、3回(44.2%)が最も多いが、表2から一部消費者が日常的に三河屋の豆腐を 消費している様子がうかがえる。次に平均購入単価は、両店とも 90~110円(42.3%)が最も 多く、両店の商品価格以下である。
(4)国産大豆に対する消費者評価 1)国産大豆に対するイメージ
次に本調査では国産大豆使用品を支持する消費者像を明らかにすることを目的として、
回答者が加工原料として国産大豆に対して抱くイメージに関する設問も実施した。
表4はその集計結果を示している。まず『安全性が高い』や『美味しい』という評価に
48 属性/項目 とても
そう思う そう思う どちら でもない
あまりそう 思わない
全くそう 思わない
8 38 12 5 2
12.3% 58.5% 18.5% 7.7% 3.1%
25 35 3 2 0
38.5% 53.8% 4.6% 3.1% 0.0%
17 45 3 0 0
26.2% 69.2% 4.6% 0.0% 0.0%
11 50 4 0 0
16.9% 76.9% 6.2% 0.0% 0.0%
資料:アンケート調査の結果に基づき作成
表4 国産大豆に対するイメージについて
高級感がある
安心感がある
安全性が高い
美味しい
属性/項目 とても
そう思う そう思う どちら でもない
あまりそう 思わない
全くそう 思わない
20 37 3 1 1
32.3% 59.7% 4.8% 1.6% 1.6%
22 33 3 1 4
34.9% 52.4% 4.8% 1.6% 6.3%
19 40 0 4 1
29.7% 62.5% 0.0% 6.3% 1.6%
13 30 13 4 0
21.7% 50.0% 21.7% 6.7% 0.0%
7 28 18 8 1
11.3% 45.2% 29.0% 12.9% 1.6%
8 40 10 4 1
12.7% 63.5% 15.9% 6.3% 1.6%
資料:アンケート調査の結果に基づき作成
表5 各情報を踏まえた国産大豆使用品の購入意欲
放射性物質の吸着が懸念されても国産 農薬使用量が多くても国産
サラダ油のGM大豆使用に抵抗感 米国産(GMO)より国産
中国産より国産
米国産(水質汚染)より国産 つい 11 ては、「とて もそう思う」がそれぞ れ26.2%、16.9%、「そ う思う」がそれぞれ 69.2%、76.9%であり、
合計95.4%、93.8%が そう思うと回答した。
それに対して『高級感 がある』と回答する消
費者は「とてもそう思う」が 12.3%、「そう思う」が 58.5%と合計 70.8%に止まり、「どち らでもない」が18.5%であった。
2)外国産大豆と国産大豆の比較
次に、外国産大豆との比較における評価では、外国産大豆の産地における実態を踏まえ た国産大豆の支持強度について、5段階のうちから回答を得た。具体的には、米国(主に豆 腐用)における亜硝酸態窒素による土壌水質汚染および GM 品種の普及、中国(主に納豆 用)におけるPM2.5等の環境汚染を挙げた。またGM品種であるブラジル産大豆のサラダ 油への使用に対する抵抗感を質問したほか、国産大豆についても外国産と比較して農薬使 用回数が多い事例や大豆が放射性物質を吸着しやすい実態を挙げ、国産大豆の支持強度へ
49 の影響を検証した。
表5はその結果を示している。まず、『米国産(GMO)より国産』が「とてもそう思う」と
「そう思う」の合計が92.2%と最も多く、『米国産(水質汚染)より国産』と『中国産より 国産』もそれぞれ 91.9%、87.3%であった。これに対して『サラダ油の GM 大豆使用に抵 抗感』は「どちらでもない」が 21.7%で、他の外国産よりも回答が分散した。また『農薬 使用量が多くても国産』に対して「どちらでもない」が 29.0%となり、国産大豆もネガテ ィブな情報が提供されると支持強度が幾分弱まっていた。
第 3 節 国産大豆の消費者評価に関する推計 (1)大豆製品と店舗評価の関連性
本節では各項目間および回答者の属性との関連性について推計する。図1では、対象事 例両店の製品および店舗評価の関連性について、表 2 の複数回答を得ている項目から度数 が小さい項目を予め除外し、数量化理論Ⅲ類分析により推計した結果を示している。まず 第1象限において『木綿豆腐』の購入者が、「国産の原料使用」、「香りが良い」、「後味が良 い」といったイメージを抱いていることが判明する。木綿豆腐は製法上原料の特徴が
図1 大豆製品と店舗評価の関連性―数量化理論Ⅲ類分析推計結果―