第 6 章 総合分析・提言
第 1 節 市場展開・普及促進に関する提言
【提言 1-1】産業用途の要件に応じた開発の推進
パワーアシストスーツについては、既に一定の特許が出願されており、特許技術の製品開 発への活用や、市場展開の余地があると思われる。今後、現状以上にユーザーのニーズに合 った製品を開発することで、市場開拓が期待される。特に、パワーアシストスーツは物理的 な身体機能の支援を行うことができる点に特徴があり、活用先となる用途について要件を見 定め、要件に応じた技術開発を推進することが重要である。
製造業、建設業、運輸・保管業を中心とした産業用途は想定される市場規模は大きいもの の、当該用途を想定した特許出願は(他の介護、医療分野と比較して)少ない。
その中で、日本国籍の出願人による出願件数は比較的多く、現時点では日本が特許出願の フロントランナーであるといえ、日本の競争優位を確立することが望ましい。
他方、既にプレゼンスを高めつつある韓国企業をはじめ、上半身のアシストに強みを持つ 米国企業、欧州機関などの動向にも注視すべきである。
技術面では、上半身のアシスト、持つ・運ぶ・姿勢維持の動作が重要技術になり得るが、
産業用途は幅広く、用途やニーズに応じて、求められる機能や性能、タイプが大きく異なっ てくることが予想される。これらを早期に見定め、特に必要な技術をブラッシュアップして いくべきである。
また、シーズとニーズの適切なマッチングも重要である。すでにパワーアシスト技術の開 発を開始している企業・大学にあっては、保有するシーズ(技術)に適合する用途(ニーズ)
を見定めるとともに、その用途(ニーズ)向けの製品開発において、現状のシーズでは不足 する要素を明らかにし、不足要素について追加開発あるいは他企業等との連携(マッチング)
を図ることが重要である。他方でこれからパワーアシスト分野に参入する企業等にあって は、まず用途(ニーズ)を見定め、その用途(ニーズ)で必要となるシーズ(技術)を明確 化した上で、研究開発に着手、あるいはそのシーズを有する大学・企業等と連携することが 望ましい。産業用途でのニーズには効果的であること、装着・操作が簡易であること、安価 であること等があることから、これらの要件に資する技術を活用し、特定の業種・職種の業 務上必須となる製品の開発・提供が重要である。
≪提言詳細及び経緯≫
1. 市場動向と製品開発
パワーアシストスーツは一定の規模の市場を形成しているものの、現在なお、成長過程に あり、各種産業用途での利用増加に伴い、市場規模は今後も拡大していくことが見込まれて いる。
作業支援製品については、日本企業は作業支援製品の開発に取り組む企業が多く、具体的 な製品として上市をしていることから、他国に先行していると考えられる(前掲の図 6-1-4 および第 2 部第 2 章)。ただし、一部の海外企業は日本市場向けに作業支援製品を展開してお
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り15、海外市場の獲得と併せて国内での製品展開も重要である。
パワーアシストスーツの普及にあたっては、産業用途でのニーズ(効果的、簡易、安価)
に応じた製品を上市する必要がある。この点、パワーアシストスーツの製品開発に携わる有 識者からは、ユーザーが購買を決めるポイントして、効果(作業の負担が少なくなる等)、装 着や操作において簡易であること、安価であることが重要であるという旨の意見があがって いる。日本国籍の出願人から当該要件に関する特許自体は一定の件数が出願されており、例 えばユーザビリティ向上について、着脱性向上や装着時不快感低減に関する特許は他国と比 較して多く出願されている。このように開発されている技術を活用し、ニッチでも特定業種・
職種の業務遂行において必須となる製品を開発・提供することが重要である。
2. 政策動向
産業用途に関する政策動向としては、日本と欧州において過酷環境下での労働補助を目的 とした研究開発のプロジェクトが行われている状態である。このようなプロジェクトが実施 されていることを踏まえると、国として工場等の過酷環境下での労働補助について社会課題 の意識を有しており、市場としても一定のニーズがあることが拝察される。
作業内容によっては産業用ロボットのような完全な機械化が難しい工程も存在しうる。そ のような作業は熟練された技能が必要であることから就業者も高齢であるケースが多く、人 の手の介在が不可欠な作業においては、パワーアシストスーツによる作業負荷・作業者の負 担軽減が重要であると考えられる。
3.出願動向、研究開発動向
上記用途を想定した市場展開において、産業用途での活用を想定した特許出願は、医療用 途と比較して件数が少ないが、世界的に直近で増加傾向にある。また、一口に産業用途とい ってもその用途は幅広く、産業用途のすそ野が徐々に広がりつつあることが垣間見える。例 えば、2015 年から 2016 年にかけて、「その他製造業」、「建設」、「農業・林業」、「運輸、倉庫」
が、絶対的な件数は少ないながらも着実にその件数を増やしているが、まだ手探りの段階が 続いているという見方もできる。
出願人国籍別の比較でみると、産業用途に関しては、日本国籍の出願人による出願件数は、
他国籍の出願人とも比較して多い。また、最近5年間(2012-2016)に限ってみても、全体動 向では中国籍出願人の伸びが著しい一方で、産業用途に関しては、日本国籍の出願件数が大 幅に伸びているのに対して、中国籍出願人は増加傾向にはあるものの、まだ少数にとどまっ ている。
出願人別の比較でみると、産業用途に関しては、日本国籍の出願人に加えて、韓国籍出願 人が上位に名を連ねている。ランク内の三星電子、大宇造船海洋(DSME)、ポスコに加え、現 代自動車も産業用途の開発を行っており、産業用途に関しては、韓国企業が今後の競争相手 になることは想像に難くない。また、三星電子やランク内の米国の Ekso Bionics 社は、産業 用途のみならず、医療や防衛用途の出願も見られるのが特徴的であり、医療や防衛用途の技
15 日本の住宅メーカの施工作業において Ekso Vest が使用されている。
<https://www.sekisuihouse.co.jp/company/topics/datail/__icsFiles/afieldfile/2018/0 5/16/20180516_3.pdf>(2018 年 12 月アクセス)
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術の転用などが強みとなる可能性もある。
欧州に目を向けると、特許出願はまだ少ないものの、産業用途の論文発表に関しては、イ タリアの2つの機関がランク内に入っている。また、特に産業用途での利用が見込まれる上 半身のアシストは、特に欧州国籍の機関の論文発表が多い。さらに、Ottobock SE & Co. KGaA
(独)社のような実用化の例もあり、今後欧州企業等が産業用途で強みを発揮してくる可能 性も考えられる。
全体としてみれば、産業用途におけるプレーヤーは現時点ではまだ少ないといえる。市場 立ち上げの段階にある現在、過当競争に巻き込まれる前に、市場におけるプレゼンスをさら に高め、特許出願や標準化活動等を通じて、フロントランナーとしての地位を確立すべきで ある。
技術面で検討すると、持つ・運ぶ・姿勢維持の動作に関しては、日本国籍出願人の出願割 合が高くなっているが、上半身(特に肩、肘、手首、指)のアシストについてみると、2016 年に特許出願件数が急増している中で、日本国籍出願人の優位性がやや小さくなっている。
仮にこれらが産業用途におけるキーテクノロジーであるとすれば、今後さらに注力すること も一案である。
他方で、産業用途は、様々な用途やニーズが想定され、用途やニーズに応じて、求められ る機能や性能、タイプが大きく異なってくることが予想される。これらを早期に見定め、特 に必要な技術をブラッシュアップしていくべきである。
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【提言 1-2】リハビリテーション、機能改善・機能再生治療用途の市場獲得に向けた継続的 な技術開発・製品展開
リハビリテーション、機能改善・機能再生治療の用途は、日本国内および海外各国でも今 後増加が見込まれる。
日本企業においてもリハビリテーション、機能改善・機能再生治療用途の歩行支援製品は 複数企業において製品開発・上市を行っているが、海外企業においても当該用途の製品の開 発は行われている。また、一部の海外企業においては歩行支援用途と関連する特許について、
日本国内で出願しており、日本企業としては海外展開にも目を向けながら、同時に国内市場 の確保に向けた技術開発・製品展開が必要と思われる。海外展開にあたっては、場合によっ ては医療機器水準の国際規格などへの対応も配慮しておく必要もある。
≪提言詳細及び経緯≫
1.市場動向と製品開発
パワーアシストスーツの用途において、リハビリテーション、機能改善・機能再生治療の 用途は人口動態変化に応じて、今後も日本国内・海外の双方で継続的に増加することが見込 まれている。
歩行支援製品については、複数企業において開発・上市がされており、日本国内の製品展 開はすでに行われている状態にある。
他方、海外企業においても歩行支援製品は各国で開発がされており、自国での試験運用・
製品展開がなされている。
2. 政策動向
リハビリテーション、機能改善・機能再生治療に関する政策動向としては、各国ともにリハ ビリテーション、機能改善・機能再生治療を目的とした政策が行われている。
そのため、わが国以外の各国においてもリハビリテーション、機能改善・機能再生治療にお いてパワーアシストスーツの活用が注目されており、一定の市場ニーズの存在が期待される。
他方、政策において示されているということは、各国企業・機関においてもリハビリテーショ ン、機能改善・機能再生治療用途の開発を促すことになっており、競争環境としては決して容 易ではないことが伺える。
なお、介護支援については、ペースメーカなどの医療機器を日常的に使用している要介護者 もいるため、ISO13482 だけではなく場合によっては医療機器水準の国際規格などへの対応も配 慮しておく必要がある。
3.出願動向、研究開発動向
特許出願においても、各国ともに医療用途を想定した特許出願は他の用途と比較して多い状 況である。
日本国籍の出願人による医療用途での出願は他国と比較して多い状況であるが、一方で論文