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巨大豪雨災害に対する評価、修正行動と成果

第 4 章 防災―雪害 事例研究 新潟県、秋田県

5.3 巨大豪雨災害に対する評価、修正行動と成果

国(国土交通省)は、平成26年豪雨災害(2014年)、平成30年豪雨(2018年)災害において、

次のように評価している。

(1) 平成26年8月豪雨災害

「消防庁災害情報 平成26年8月20日 『8月19日からの大雨等による広島県における 被害状況及び消防の活動等について(第47報平成28年6月24日更新)』」によると、被害 状況は次の通りとなっている。

① 災害の被害実態 a. 被災場所等

出所:国土交通省 平成29全国の土砂災害発生状況

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被害発生場所は、広島市安佐南区(八木地区、緑井地区、山本地区等)、安佐北区(可部 東地区、可部町地区、三入地区等) で、166 箇所にわたり土砂災害が発生(消防把握 8月 20日)した。

b. 被害状況

人的被害(死者77名((災害関連死含む))、重傷46名、軽傷22名)、物的被害(住宅被害((全 壊179棟、半壊217棟、一部破損190棟、床上浸水1,086棟、床下浸水3,097棟))、公 共建物2棟、その他466棟) となっている。

② 評価

a. 土砂災害防止法に基づく基礎調査や警戒区域等の指定が完了していなかった地域が多く、

住民に土砂災害の危険性が十分に伝わっていなかった。

b. 直接的な避難勧告等の基準に整合した土砂災害警戒情報になっていなかった。

c. 避難場所や避難経路が危険な区域内に存在するなど、土砂災害からの避難体制が不十分 な場合があった。

③ 修正行動

a. 土砂災害の危険性のある区域を明らかにする。

b. 円滑な避難勧告等の発令に資する情報を確実に提供する。

c. 土砂災害に対する安全な避難場所の確保等、避難体制を充実・強化する。

(2) 修正行動の実施状況

図5.3の通り、土砂災害の危険性のある区域を明らかにするための前提となる警戒区域等 になりうる地域に対する土砂災害防止法に基づく基礎調査の進展が進んだ。

出所: 国土交通省「基礎調査の完了に向けてラストスパート」

図5.3 土砂災害防止法に基づく基礎調査完了区域数の推移(2013年以降)

H30広島災害

76 (3) 平成30年7月豪雨土砂災害

「国土交通省 平成30年7月豪雨災害の概要と被害の特徴」は、本災害被災状況を次の ように伝えている。

① 被害

平成30 年台風第7号及び前線等による大雨(平成30年7月豪雨)により、西日本を中 心に、広域的かつ同時多発的に、河川の氾濫、崖崩れ等が発生した。避難指示(緊急)は

最大で915,849世帯・2,007,849名に発令され、その際の避難勧告の発令は985,555世帯・

2,304,296名に上った。しかし、死者223名、行方不明者8名、家屋の全半壊等20,663棟、

家屋浸水29,766棟および断水が最大262,322戸発生するなど、ライフラインにも甚大な被

害が広範囲で発生した。

土砂災害警戒区域や土砂災害特別警戒区域などの指定に不可欠の基礎調査の完了は進捗 しているにも関わらず、2018年の土砂災害(注1)発生件数は、図5.4の通り、1道2府41

県で3,459件にのぼり、従来最多件数であった2004年の2,537件を900件強超える、1983

年の集計開始以降最多件数を記録した(国土交通省、平成30年の土砂災害発生件数が確定し ました)。

これは、集計開始以降の平均発生件数(1,015件)の約3.4倍であり、死者・行方不明者は 161名で、1982年長崎豪雨災害の337名、1993年の平成5年8月豪雨(鹿児島)174名に次 ぐ多さとなっている。

出所: 国土交通省、平成30年の土砂災害発生件数が確定しました

図5.4 土砂災害発生件数推移

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② 評価

a. 被災状況全般

西日本を中心に、洪水浸水想定区域や土砂災害警戒区域で避難行動を促す情報が発令さ れていたにもかかわらず、人的被害が多く発生し、その多くが高齢者だった。

b. 防災要因別

(a) 土砂災害警戒情報の発令状況

死者発生場所の全てにおいて土砂災害警戒情報が発表され、避難勧告も概ね発令されて いたが、必ずしも認知されず、また切迫性が伝わらなかった。

発表から発災までの時間(リードタイム)が短い場合や長時間に及んだ場合は、避難勧 告を発令できていない市町村があった。リードタイムが長かったケースでは、深夜・未明 における避難所までの避難時に遭難するリスクを回避するため、あえて避難勧告の発令を 避け、土砂災害警戒区域等に絞っての自主避難の呼びかけに切り替えた事例があった。

(b) 土砂災害警戒区域の設定について

2017年度末現在、土砂災害警戒区域、土砂災害特別警戒区域指定のための基礎調査は約 9割完了しているが、指定は約8割にとどまり、指定の手続きに時間を要している都道府県 があった。

死者の約 9 割は、警戒避難体制の整備が義務づけられている土砂災害警戒区域内で発生 していた。土砂災害警戒区域の中でも、土砂災害の恐れがあることが認識されていない場 合があり、リスクに対する相当程度の認識の違いがあった。

(c) 避難行動

先進的な取り組みを行っている自治体や、防災活動に熱心な地区がある一方、その取り 組みが他の近隣の自治体にまで広がっていない例があった。

避難しようとした時には、すでに周辺の状況が危険になっていて避難場所には到達でき ない場合や、避難途中で被災したと思われる事例が数多くあったと推定される。

人的被害のあった地区では、避難場所までの移動経路に危険な状況がある場合があり、

地区防災計画も策定されていなかったが、地域における共助により避難が行われ難を逃れ た事例があった。

自宅以外の場所へ避難しなかった理由としては、「自宅の土砂災害の危険性は低いと思っ ていたから」などであり、災害リスクを理解していないことにより、避難行動をとってい ない可能性があった。

インフラ・ライフラインの被害や下流の市街地に広範囲に土砂が堆積(戦後まもなく建設 されたものをはじめとする古い石積砂防施設が被災)し、救助活動、復旧活動の妨げになり、

地域の社会経済にも長期間影響を与えた。

③ 修正行動

修正行動として、国交省(「実効性のある避難を確保するための土砂災害対策のあり方に ついて委員会報告」)は次のように指摘している。

78 a. 全体

現在進めている取組をまずは早期に完了する努力が求められる(注2)。公助と共助及び自 助を有機的に機能させるためにも、先ず土砂災害に対する危険性の認知度を高める。その 上で、住民主体の「地区防災計画」を「地域防災計画」と整合させ、より大きな防災力を 生み出すことにより避難の実効性を高める。

b. 個別

平成30年7月豪雨(広島)による土砂災害の特徴を踏まえて 以下の対策を実施することに より、土砂災害による人的被災を無くすことが可能となる。

(a) 情報発信

市町村長が避難勧告を適時・適切に発令できるように土砂災害警戒情報の精度向上や 土砂災害警戒情報を補う情報の改善などの技術開発・支援体制の強化を進め、危険度を 時系列的に表示し市町村や住民が危険度の推移等を把握できる様にする。

(b)住民情報認識

土砂災害警戒区域等の指定を早期に完了させ、土砂災害の被害実態を蓄積し区域指定 の精度向上を図る。土砂災害警戒区域等の認知度を向上させる取組みを進め、明示する 看板等を現地に設置するなど住民が常日頃からリスクを意識できる取組みを行う。

(c) 防災力向上支援

地域防災力の向上のため、市町村の防災担当者や自主防災組織等の防災リーダーが土 砂災害に関する知識等の取得を支援する体制を強化する。

(d) 地区防災計画

土砂災害に備えた避難計画を準備していた地区においては円滑な避難がなされていた ことから、要配慮者への対応も含め、地区の住民自らが地区や個人の実情を踏まえた上 で、ハザードマップや地区防災計画の作成・見直しを通じて警戒避難体制の強化を図り、

実効性のある避難を確保する。

(e) 砂防施設の整備

地区や個人の実情を踏まえた地区防災計画の策定を推奨し、それを活かして効果的に 被害の防止・軽減や避難路、避難場所の安全度を向上させるための砂防施設等の整備を 積極的に進める。

(f) その他

土石流や土砂・洪水氾濫等によるインフラ・ライフラインの被害や市街地の被害を踏 まえ、これらを予防するための施設整備を強化する。

5.4 先行研究と国の修正行動