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4時

には、学級の追求課題 を解決す るための調査内容 を話 し合つた後、希望す る調査施設 ごとにグ ル ープ編 成 を行 つた。そ して、教師 も加 わって グループ ごとに調査内容 を検討 した。その際に、本時まで の ビデオ映像 、文章や グラフ資料な どか ら、自分 な りに疑間をもつた こと、こだわった ことを もとに して の課題 づ くりを行 つた。そ して、それ を解決す るために具体的な計画 を立て、グループ単位 での調査活動 に入 つて いつた。

5時

の調査活動は放課後 に実施 している。 調査の ときに、 ビデオやカメラを使 つて高齢者 の姿や施 設 の様 子 を撮影 し、次時の発表の場 で生 かす こ とができ るよ うに配慮 した。

・ 調査対 象

市役所長 寿課

 

特別養護老人 ホーム

 

中央地域福祉セ ンター

 H病

 

新聞記 事収集

 

該 当ア ンケー

6時

には、各グループの調査内容についての発表会 を行つた。質疑応答の後、課題 に対す る自分の 考 えを学習プ リン トに記入 し、次時の討論で明確な立場が とれるよ うに した。

7時

の導入 として、生徒一人一人が第

1時

に描いた 「

50年

後の 自分の顔」を黒板に貼付 し、クイズ 形式で誰 の顔の絵か考える活動 をした。次に、老後の現実に目を向けさせ、本時の追求課題へ と迫つてい くために、脳梗塞で倒れた夫 とその介護に専念す る妻の様子 をビデオで紹介 した (5分間)。 視聴後、「こ の老夫婦の老後は豊か といえるか」 と問いかけ、討論に入つた。

生徒にはちまき (高齢者は豊かな老後を送ることが 「できる」→黄、「できない」→橙

)を

巻かせ、自 分 と同 じ立場の者 を確認す るよ うに指示 し、座席 を教室の左右に分けて対峙 させた。生徒には、学習プ リ ン トにま とめた自分の考えをもとに意見を述べ合つた。また、教師は本時に至る学習の過程で、生徒一人 一人が抱いていた疑問や こだわ りを討論の対立点 として取 り上げた。

本単元の最後の時間にあたる第

8時

には、自分な りの福祉社会のあ り方について考えていくよ う促 し、

レポー トにまとめさせた。レポー トの書き方については、あえて制約せず各 自の発想にまかせて、自由な 形式・ 内容で記述 させ るよ うに した。

(2)実

践 を終えて一福祉に対す る生徒の意識は どう変わったのカー67

本単元の導入 として、生徒が今まで見た ことない特別養護老人ホームの様子をビデオで視聴 させ ると ともに、高齢化社会が切迫 してきている事実を文章資料などで把握 させた。R・

Kは

「高齢化社会につい

ての問題 は 自分を含 めたすべての人の問題。だか ら、勉強す る価値があると思 う。高齢化社会について は、確 かに周 りを見ても、そ うだ と思えることが多い」と感想 を記 している。高齢者福祉 に関心を抱き、

高齢化社会 を支える自分たちに とつても切実な問題であることをとらえている。

2時

では、福祉先進国であるデンマークの福祉政策の様子を映像や統計資料で学んでいった。「ホー ムヘルパーに対するシステムが 日本 とまった く違 う。どう見ても、デンマークの方がいい と思 う。日本も デ ンマー クを見習つて、もつ と福社に対するシステムを レベルア ップさせ るべきだ と思 う」とR・

Kは

授 業感想 に書いた。生徒は、デ ンマークの進んだ福祉政策・サー ビスに驚嘆する一方で、日本や地方公共団 体の福祉政策 と現状について知 りたい とい う気持 ちになった。以降、デ ンマー クの先進的な福祉 システ ム と日本や地方公共団体の福祉政策の現状 とを常に比較 0検討 しなが ら、よ りよい福祉社会のあ り方を 調査や討論を通 じて模索 していくことになつた。

続いて、本単元の追求課題 を「高齢者は豊かな老後を送ることができているか」とし、調査に対する目 的意識 をもたせた うえで、追求に移つていつた。調査では中央地域福祉セ ンターを始め とした岡崎市内 にある福祉関係の施設を見学 した。一部の生徒は整つた施設を見た り、説明を担 当者 に聞いた りす るこ

67加納 隆 「中学校社会科公民的分野の単元 「高齢者福祉 を考 える」の授業記録

‑1994年

度 の実践一 」 木村博一・ 岡崎社会科授 業研 究サー クル編著『「高齢者福祉」 を学ぶ授業の探求』黎明書房、2∞2

pp.29‐35

65

とによつて、高齢者は豊かな老後を送ることができていると判断 した。一方、施設に入れない高齢者や介 護者の切実な声、介護体験、福祉先進国デンマークの状況の比較検討などか ら、まだまだ豊かな老後を送 ることはできていない と考える生徒が出てきた。

ROKは

、「初めの うちは、想像以上に福祉は進みつつ あるのか と思つた。施設は増え、国か らの補助金 も増え000。 しか し、結論はまだた りないだつた。財 源が足 りないのだ。結局、福祉はあま り進んでいなかつた。それがわかつたことは大きい」と感想を記 し た。調査の後、R・

Kは

一貫 して 「豊かな老後を送 ることはできない」の立場 をとっていた。

各班での調査・発表を終えたのち、「高齢化社会が到来す るなかで、高齢者は豊かな老後 を送 ることが で きるか」 とい う課題のもと、討論会 を開いた。討論会では、① 「在宅介護」か 「施設介護」か、② 「高 福祉・ 高負担」か「低福祉・低負担」か、③ 「豊かな老後」とは、とい う

3つ

の対立点が生まれた。 どの 問題 も、生徒がそれまでの学習において疑問や こだわ りをもつていた内容である。第

7時

の授業記録、

あるいは授業感想か ら、生徒にとつては問題 を焦点化 しなが ら、本課題 に迫 つていけたのではないか と 考 える。

本単元の総括 として、「自分な りの『 新0日本型福祉社会』を提唱 しよ う」のテーマで レポー トを書き、

高齢者福祉に対す る自分の考えをまとめた。R・

Kは

、「日本はスウェーデンやデンマークをめざすべき」

としなが らも、「世の中を変えたいのな ら、周 りを変えたいのなら、まず私たち人間一人一人の考えを変 えなくちゃいけないと身に しみて感 じた。私たちは、これか ら高齢者 を背負 う身になる。そ して、背負わ れ る身に000。 今の世の中 じゃ背負 うことも背負われ ることも大変。いつたい誰が変えてくれ るのだろ

うか」 と問題点を記 した。

生徒が、授業後に書いた授業感想や課題 に対する考えの記録、第

7時

の授業記録な どか ら、次のこと が読み取れた。

①単元全体 を通 して意欲的に発言 し、興味・ 関心をもつて福祉の問題に臨むことができた。

②追求課題 について、自分で調査 して明 らかに したいとい う意欲的な姿勢が見 られた。

③調査によ り、課題 に対する自分の考えが深 ま り、討論会で 自分の立場をはつき りさせ ることができた。

④ 「高齢者福祉」を身近な問題 として とらえ、今後の福祉のあ り方について考えを深めることができた。

⑤討論によつて、 自分の考えを練 り直 し、新たな考えに到達できた。

⑥授業で生まれた問題意識を大切に して追究を進めていった ことで、子 どもの追究意欲の持続 を図つた り、思考 を深めた りす ることができた。

⑦家庭で も学習 したことを話題 にす るなど、思考の継続性 と広が りを見ることができた。

以上の ことか ら、単元を通 じて生徒が現在の 日本の抱える高齢者福祉の諸課題に主体的にかかわ り、

多面的な情報を処理 しなが ら、福祉政策に対す る自分な りの価値判断を行 うことができた と考える。

しか し本実践では大きな課題 を残 した ことも事実である。R・

Kは

「いつたい誰が変えてくれ るのだろ うか」 と第

8時

のレポー トに記 していた。義務教育の最終学歴にあたる中学校第

3学

年公民的分野にお いて、本実践では 「生徒の主権者 としての意識 を育てる」ことが十分にできなかった。

66

(3)授

業の分析

授業者 である加納は次のように自らの反省点を述べている。

北欧諸 国 の福祉 を見せて しま うと、生徒の考 えがその福祉 のシステムの素晴 らしさに流 されて しま い、 日本 の福祉 を どうしてい くのか とい う点 に生徒 の思考が発展的につながっていかなかった。68

この こ とか ら、「北欧の福祉 は素晴 ら しく日本 の福祉 はだめだか ら、 日本 も早 く北欧型 の福祉 を見習え ば よい とい う意見が主流 になつて しま うことによ り、 自身 の問題 として 日本 の福祉 のあ り方 を創造的に 考 えてい こ うとす る観点が小 さくな り、国民主権の担い手の

1人

で ある とい う意識 を育む ことが難 しく な って しま う」 とい う本質的な問題 につながってい る。

また、この問題 提起が発端 とな り、それ までにあった「高齢者福祉」の授業づ くりに対す る疑問点が明 確 になつた として加納は次のよ うに述べ ている。69

・諸外国の進んでいるとい う福祉の様子を、子 どもに見せることが本当に大切なのか。

・北欧諸国の高齢者福祉は、本当に うまくいっているのか。

・「高齢者福祉」 と一 日とい うけれ ど、子 どもに何を見せた ら本当の理解 につながってい くのか。

・ 日本のめざしている福祉の姿をどのようにとらえればよいのか。

最初 に問題 としたのが、北欧の先進的な高齢者福社 を授業で どのよ うに扱 うのか とい うことである。

加納の授業実践ではデンマークの高齢者福祉 を取 り上げていた。 日本では考えられえないような福祉 シ ステムが政府の手によつて確立 していることに驚 きを示 し、 日本 もデンマークのように していけばよい のでは と考える生徒が多 くを占めていた。

さらにカロ納の授業実践の生徒の反応か ら、「北欧の福祉 システムが国民の高負担の上に成 り立っている」

とい うことを実感 として理解できていないのではないか、とい う問題点が見えてきた。中学生には、税金 を取 られて給料が少なくなつていく感覚が理解できていない とい うことである。私たち 日本人には 「税 金 を取 られ る」とい う感覚が強いが、これは「税金を負担する」とい う感覚 とは微妙に異なつている。つ ま り、私たち 日本人には税金を取 られ るのはやむを得ないが、その税金が何に使われ るのか分からない とい う感覚が深 く根付いている。 この感覚 を 日本人が持ち続 けている限 り (それを払拭できるような国 家にな らない限 り)、 例 えば消費税の税率を上げて国民に高負担を求めるのは難 しい とい うことになる。

このことか ら、「税金の重さ」 と「税金に対する日本人の感覚」を生徒にどのように実感 させていくのか が、大きな課題 として浮上 してきた。70

他方で、杉 田らは北欧諸国の福祉 を支えている人々の心性 と社会構造を子 どもにみせていく必要があ るとして、その教材 として 「北欧諸国 と日本の貯蓄率の差」を挙げていた。71

日本では貯蓄す る人が多いのに対 して、ス ウェーデ ンやデ ンマークの人にはほとん ど貯蓄がない。ス ウェーデ ンでは老後が国によって保障 されているため、貯蓄をす る必要がない と考える。それに対 し、日 68木村 博一・ 岡崎社会科授 業研究サー クル編著『「高齢者福祉」を学ぶ授業の探求』黎明書房、2∞2

pp.36‐37 69同掲 書 p.37

℃ 杉 田吉男 「どうすれば 「高齢者福祉」の授業 を改善できるか」木村博一・岡崎社会科授業研究サーク ル編著『「高齢者福祉」を学ぶ授業の探求』黎明書房、

2002 p.39

71同 上

67

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