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対話型授業の実践開発研究校による実践研究の検証

ドキュメント内 グローバル時代の対話型授業の研究 (ページ 165-178)

第5章 グローバル時代の人間形成を希求する対話型授業の提唱

3 対話型授業の実践開発研究校による実践研究の検証

本項では、前項で設定した「グローバル時代の対話型授業の要件」の有効性・

妥当性につい協力校で研究授業を実施し、検証する。

3-1. 調査・検証方法

3-1-1. 対象校および配慮事項

調査対象校は新たな協力校を依頼し、対話型授業の実践に取り組んでいる3校 とした。対象校はそれぞれ,国語科・算数・持続可能な開発のための教育の実践 研究に取り組んでいる下記とした。( )内は検証授業の教科名である。

対話型授業の研究校(国語)東京都の区立S小学校 対話型授業の研究校(算数)栃木県の町立MM小学校

持続可能な開発のための教育の実践研究校(図画工作)東京都の区立Y小学校

客観性をできるだけ担保するため複数以上の観察者(協力者)の参加を原則と した。各学校の分析にあたっては、大学院教授1名、大学院生2名、各校の研究 主任、研究推進委員2~4名が参加し、実施し、また確認してきた。

新たな協力校における論者の立場は、各学校の実践研究の観察・分析者である とともに、それにとどまらず、研究実践への介入者、協働者の立場と位置付けて いる。論者自身が3年以上の長期にわたり調査対象校の実践研究に継続的に参加 し、教職員との信頼関係を構築してきた。

調査・分析にあたっては、実践研究の実相・学習現場で生起した事実とそ意味 を正確に捉えるため、授業の計画段階から参加し、また授業参観し、事後の検討 会にも出席してきた。授業者の慰労会など非公式な会にも参加し,率直な語り合 いを心がけた。

なお、本研究への掲載については、各学校の校長・授業者の同意を得ている。

3-1-2 調査方法

具体的な調査・分析の方法は次によった

授業参観視をした。検証授業の学習案の企画段階から参加し、検証授業を参観し、ま た授業後の研究協議会にも参加した。

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校長・研究主任・授業者・研究推進委員への聴き取り調査を行った。実践の意味を明確 にするため、実践直後のみでなく、一定の期間を置いての聴き取り調査も行った。

文献調査として、研究委員会・研究協議会の記録、学習指導案、授業構成メモ、授業記 録・観察記録 児童の学習の記録、授業者の省察文を調査・分析した。

た。また電子メールでの往信・電話での情報交換を頻用し、授業の事実をできる限り正 確に把握するように努めた。

3-1-3 調査・検証の視点

前掲した 12 の要件を調査・検証の視点とする。各視点について授業計画の段階で指導上 の工夫をなし、授業で実践し、児童の反応を参観、記録し、有効性を検証する。

3-2. 研究授業による調査・検証

グローバル時代の対話型授業の12の要件を活用した検証授業を実施し、設定した 12の要件の妥当性を考察した。。

3-2-1. S小学校

⑴ 検証授業の対象校の概要

S小学校(仮称)は、東京都の区立小学校,学校規模は 21 学級 児童数 650 名(調査日)

である。東京の山の手地区にあり、文人墨客の住居跡が多数ある。私立中学への進学率が 高い学校でもある。

同校の研究テーマは、「仲間と共につくる豊かな学びー『対話』を通して思考力を深める 授業づくり」であり、各教科における対話型授業の実践研究に取り組んできている。

論者は研究協力者として、平成 24(2012 )年~27(2016 )年度まで4年間に同校の対話型 授業の実践研究に参加してきた。また、実践授業後に以下の表の通り聞き取り調査を実施 した。

表 5-2:S 校での聞き取り調査の概要

年月日 時刻 調査対象者 場所 主な聴き取り内容 2015.9.18 16-18 授業者 校長室 国語科の検証授業後の省察

グ ロ ー バ ル 時 代 の 対 話 型 授 業 の 12 の要件の妥当性・有効性

⑵ 検証実践事例の概要

4年生国語科の「夕鶴」の読解の授業(2015 年 9 月 11 日 5 時間目)である。

授業者R教諭は国語科教育を専門としている、実践研究に真摯に取り組む教職経験 15 年の教諭である。以下はR教諭の学習指導案からの抜粋である。

① 対話を活用した授業の基本サイクル

サイドラインを引き考える。(自己内対和)グループで話し合う。(他者との対話)

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学級全体で話し合う。(他者との対話)・再組織化した自己の考えを書く。(自己内対話)

② 読解の授業で対話を生かす配慮事項

・読みの浅い傾向にある児童には自己内対話の際に個別指導を行い、叙述に気づかせる。

・グループの対話の際に、個々の考えを生かせるよう、助言を行う。

・全体での対話の際に、一定の結論にとどめず、再度全体をゆさぶる手立てを工夫する。

・他者の意見に啓発されることにより、読解が深まっていくことを児童自身が感じられる ように工夫する344

R教諭は、対話場面の工夫で工夫した点について「初発の感想で『よひょう』について 批判的な意見が大半の中、Y児だけが『よひょうがかわいそう』との感想を記した、授業 者はこのY児の感想を生かして深い読み取り」を進行させることとした。そこで全児童の初 発の感想を印刷して配布し、さまざまな読み方があることを知らせてから授業を展開させ た」と語っていた345

このY児の他の児童とは異なった意見を活用することにより,論議が活発化したよう すを授業記録から紙上再現する。( )内はR教師の語る工夫点である。

〇 対話場面「約束をやぶってしまったよひょうと布を織るつうの気持ち」を話し合う。

対話を深めるための対話場面の前の工夫として,次に二つの学習活動をさせた。その一 は、約束を破ったよひょうと布を織り続けるつうの心情がわかる叙述にサイドラインを引 き、表にまとめるさせたことである。(自己内対話)、その二は、班で話し合ってホワイト ボードに考えをまとめる。(他者との対話)ことである。

この作業に後に、全体で話し合いを行った。(他者との対話)

全体での意見の出し合い(主な発言)

T よひょうとつうの気持ちを深く考えてみよう。気がついたことを出し合おう C:よひょうは好奇心でのぞいた。どうやって織っているのか知りたかったか。

C:何度ものぞいちゃだめと言われたら、のぞきたくなってしまう。

C:早く都に行きたくて待ち遠しかったからという気持ちもあると思う。

C:いや、つうがだんだんやせ細っていくのを見て、心配だったと思う。夜中になっても織 り続けているから。

C:自分の思いがつうにわかってもらえなくて、いらいらしてしていたこともある。

T つうの気持ちどうだったのかな、のぞかれたのを気付いていたのかな(沈黙の時間)

C:気づいていたけど、よひょうのために最後の力をふりしぼって織り続けていた。

C:もう最後とわかって織っていた。最後まで織って最後の恩返しにしようと思っていた。

C:「いつもより心をこめて織った」と書いてあるよ。別れの気持ちをこめていたと思う。

T:つうはなんで鍵をかけなかったのだろう?(揺さぶり)

C:よひょうを信じていたから。

C:見られても織り続けようと思っていた。

T:つうがいなくなってしまって、よひょうは何を感じただろう。(揺さぶり)

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C:探し続けているから、切ない、よひょうはまだつうを大好きだと思う。

C:約束を破ってしまって反省やすごい後悔の気持ち。さびしくてしかたなかった346。 この授業記録には、自己内対話と他者との対話の往還、沈黙や教師による揺さぶりに効 果によって、論議が深まっているようすが見て取れる。

⑶ 12 の要件の有効性の検証

R 教諭の授業終了後、授業研究協議会が開かれ、「授業計画の段階に工夫した手立て」「実 際に授業場面での児童の反応」について話し合われた。

表 5-2 は、授業後の検討会での論議をまとめたものである。

表 5-3 S小学校の検証授業(国語)の分析

学習指導の手立て

児童の反応・効果

授 業 後 の 検 討 会 で の 論 議 に 集約

➀ これまでの学習場面を朗読 して物語の世界に入りやす くする。全児童の初発の感 想を印刷して配布し、さま ざまな読み方があることを 知らせてから授業を展開さ せた

集中して教師に範読を聴きながら、

本文を読んでいた。

朗 読 に 効 果 が あった。

初 発 の 感 想 の 配 布 に よ り 論 点 が 明 確 に な った。

② 多様な話し合いの形式で論 議させた。

小グループでの話し合いが、学級全 体の論議につながっていた。

二 人 組 の 話 し 合 い が 重 要 で はないか。

③ 主人公「よひょう」につい ての「よひょうがかわいそ う」との異見を活用し、論 議を深めるようにした。

学級の多くの児童がY児の意見を 受け入れていき、よひょうを好意的 にとらえる読みが広がっていった。

よひょうは金のためにつうへの気 持ちを変えたと初めの感想に書い ていた児童が、「よひょうのつうへ の愛情は変わりない」ということに 気づいた。

Y児が、自分の 意 見 を き ち ん ともち、その理 由 を 語 っ て い たことが,論議 を深めた。

④ サ イ ド ラ イ ン を 引 き 考 え る。再組織化した自己の考 えを書く等の「自己内対話」

とグループで話し合う。「学 級全体で話し合う」の「他

サイドラインを引くことで自分の 考えが明確になり、また他者との対 話により、考えが変化していくよう すが見られた。

深 い 自 己 内 対 話・他者との対 話 を 往 還 さ せ つつ、教材と対 話 さ せ る こ と

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