第5章 グローバル時代の人間形成を希求する対話型授業の提唱
4 対話型授業の実践研究校の実践研究の検証結果と分析
4-1. 検証授業の結果の集約
国語科における対話型授業、図画工作科における対話型授業、算数科における対 話型授業を「グローバル時代の対話型授業の12の視点(要件)」から検証・分析し た。
各 学 校 の 分 析 一 覧 表 の 内 容 を 考 察 す る と 、 3 つ の 検 証 授 業 す べ て が 12の 視 点 (要 件)に関わる学習指導の手立てをなし、それが児童の反応に表れ,学習効果につな がっていることが明示されている。また、後述するY校の検証授業後の検討会での
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多様な発言にみられるように、12の視点をさらに有効に生かすための工夫も示さ れている。
検証授業の立案段階から12の視点(要件)を考慮して、計画・実施した3校の検 証授業に共通して、重視されていた事項を「環境設定」「多様な他者との対話や 異質の活用による共創」「自己成長・自己変革」「思考の深まり」に集約して記す。
⑴ 環境設定
3 つ の 検 証 授 業 は そ れ ぞ れ に 対 話 の 活 発 化 の た め の 環 境 設 定 を 工 夫 を し て い た。S小学校では、朗読を通して雰囲気づくり、Y小学校では 素材(段ボール)
を 触 る こ と に 素 材 へ の イ メ ー ジ づ く り と 自 由 な 発 想 が さ れ や す い ス ペ ー ス と し ての体育館での学習、MM小学校では「問いと見通し」をもたせることによる学 習意欲の醸成をしている。また、全員が参加することへのそこはかとない配慮を 基調として、人数、役割分担、学習場所、掲示物の工夫など交互に意見や感想を 出し合い学ぶ雰囲気づくりをしていた。
対話の活性化に影響を与える「環境設定」が重視されていることが、3校の検証 授業に共通していた。
⑵ 共創
3校の検証授業で重視されていたのは、多様な他者との対話や異質の活用によ る新たな智の「共創」であった。S小学校では、異なる意見を生かした文学作品
「夕鶴」の深い読解、Y小学校では 高い塔づくりにむけての個の発想と集団と し て の 相 互 啓 発 M M 小 学 校 で は 算 数 の 多 様 な 解 法 を 出 し 合 う こ と に よ る 論 議の深まりは、多様性・異質性の活用の方向と効果を示している。
それぞれが、教科は異なっても、自己と他者との対話の往還を通して、新たな 知の世界を共創していく点では一致していた。このための手立てとして,沈黙・
混沌の時間の活用、対話のグループ編成になどを行っている。
⑶ 自己成長・自己変革
一人ひとの学習者の自己成長・自己変革の機会の保証も3校に共通していた。S 小学校では、作品への理解度や、授業への参加を振り返る。Y小学校では、自分の 作品や、友だちの作品を鑑賞する。MM小学校では 学習ノートに本時の授業で気 がついたことを書く活動が行われていた。
上記の他、終末場面でのワークシートへの書き込み、学習ノートの記載事項の再 読など、自己成長・変革が重視されていた。
⑷ 思考の深まり
S校の国語の授業では「読解を深める場面では、意図的に『ゆさぶり』をかけた」、
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Y校の図画工作の授業では「結論が一応はでた学習課題を更に探究させる。活動の 中盤・終了後に自分たちの結果だけにこだわらせないよう、みんなが工夫したこと を直接見せる」、MM校の算数の授業では「ノートを見直したり、友だちと話した りしながら新たな解法を見つけようとする姿勢が見られた」との記述がある。これ から、学習に於いて、一定に結論に留まらず,次々と新たな思考を深めていく方向 が見とれる。
4-2.「グローバル時代の対話型授業の12の要件」の妥当性・有効性
授業者の授業後の聴き取り調査や、授業者の省察文には、12の要件により授業を 立案・実施することが有効性について率直な感想が述べられている。
MM校のA 教諭は授業後に「グロ ーバル時代の人間形成 を希求する対話型授業 の実現を強く思い ます。 12の要件は、広く 大きな視野から考察さ れ、集約された と解釈いたしまし た」と述べ、さらに 「 さまざまなアィディア がでてくるこの ために 12の視点は 有効であることが検証授 業を通して分かりまし た。本校では 12 の要件を、基礎・ 自立・探究・協働の4つ に分類して、今後実践 研究を推進して いくことにしました」と記している。
さらに「対 話型授業のよさは分か っていても、その具現 化に難しさを感じてい ました。 12の要件 を授業づくりに活かすた めには、具体的な方法 を学校全体で考 えてみたいと思います」と今後の方向を記した手紙を,郵送してきた356。
この授業者の省察文・手紙文から、MM校において、12の要件の有効性が確認さ れ,今後も活用されていくことが認められる。
また、以下は、Y小学校の検証授業後の12の要件についての検討会の記録である
357。この論議には、12の要件の有効性が教育実践者としての立場から語られてい る。
・ 12の要件があることにより、授業のねらいを達成するための具体的活動が組み たてやすくなった。
・ 図工科の特色として、対話とは言語使用は少なくなる。よって今回はタブレッ トで作品を紹介する手法により他者との対話をすすめた。
・ 塔をつくる活動では、いろいろな意見ややり方が出た。そこで対立や葛藤がみ られたことは、むしろよかった。授業の最後の場面で、その成果を確認すること が必要ではなかったか。
・ 途中で沈黙の時間をとると、アイディアが出やすかったのではないか。
・ 子供たち一人ひとりに主体的な参加を促すため、教師が声かけをしているのが 効果的と思った。
・ 作品を一応創り上げた子が、退屈した、ようすも見られた、もっとよい作品に なるようにさらに追求させる手立てが必要なのではなかったか。
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・ 図工科としての基本のスキルは習得させていたが対話スキルの必要性を感じた。
・ 今日の授業で課題になったことを、次の低学年の算数や4年生の総合の授業で 生かしていきましょう。
研究協力校3校の検証授業の結果を分析・考察すると、本研究の理論研究および 実践研究から抽出した「グローバル時代の対話型授業の12の要件」の妥当性・有効 性が担保されたといえよう。また、12の要件を提示し、教師集団の共通理解を深め ておくことにより」、学校全体での「グローバル時代の対話型授業」の授業研究が 効果的に進展していくことも確認できた。