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対策工法の選定は,堤防の整備状態,対象施設の変状の種類や程度を踏まえ行う。複 数の対策工法がある場合は,ライフサイクルコストの観点より最適な工法を採用する。

【解説】

対策工法の選定は,変状原因究明のための調査・分析を行った上で,対策対象の部 位や,変状の状況,堤防の整備状態に応じて適切な対策工法を選定する。また,堤防 変状の発生部位や原因によっては,予防保全として行う対策工法と事後保全として行 う対策工法が異なってくる場合もあり,供用期間の延命化に与える影響,ひいてはラ イフサイクルコストも異なってくる場合があることから,どの段階でどのような対策 を行うかはライフサイクルコストの観点より最適な工法を採用する。

なお,対策工法の選定にあたっては,新技術・新工法の適用性も検討することが望 ましい。

対策工の選定にあたっては,以下の検討フローに基づき,基本事項(施設性能の劣 化要因,要求性能)を十分に把握し,各種対策工法,材料の特質を十分検討し,対策 目的に最も適した工法,材料を選定する。また,今後の維持管理の基礎資料とするた めに,対策後の経過を記録する。

1.5.1 施設要求性能の設定

建設時の性能水準を整理し、技術基準の更新や新たな外力、環境条件を考慮して、施 設に求める性能を設定する。

【解説】

建設時の性能水準を整理し,土圧の増加や河床洗掘の進行などの新たな外力や環境条 件(耐震性能の必要性)等を追加して,施設に求める性能(施設要求性能)を設定する ことが重要である。

表 1.5.1 施設要求性能の設定上の留意点

外力条件 留意点

基準 技術基準の更新 計画規模 設計対象流量

計画断面の変更(単断面,複断面,直高,水深,法面勾配)

地盤条件 土質定数

上載荷重 背後地盤の形状

堤防天端の道路荷重条件

流体力

流速(実績最大流速)

河道平面形状(湾曲)

砂州の形状・経年変化

樹木・植生の状況及び経年変化 基礎高 最深河床高の経年変化

根固め工の有無

構造物 河川横断構造物の有無(堰や落差工,橋梁)

分合流・取排水施設の有無 耐震性 背後地の土地利用(資産)

堤防形状,平水位等 その他 関連する改修計画の有無

供用すべき期間の設定

1.5.2 維持管理方法の分類

健全度評価、施設性能低下の要因、施設要求性能等を踏まえ、維持管理方法を選定す る。

【解説】

健全度評価,施設性能低下の要因,施設への要求性能(回復すべき性能)・供用期 間 などを踏まえ、継続監視,補修,補強,改修の対策の種類の選定を行うことが必要であ る。

図 1.5.1に維持管理方法の選定フローを示し、表 1.5.2に維持管理方法の種類と内容 について示す。

図 1.5.1 維持管理方法の選定フロー

表 1.5.2 維持管理方法の種類と内容

建設時の水準と比べて

種類 内容

同等 以上 監視 現状を監視することで施設性能を維持 ○

補修 耐久性を回復もしくは向上させること。 ○

補強 構 造 物 の 耐 荷 性 ( 耐 久 性 を 含 む ) や 剛 性 な ど の

力学的な性能を回復,もしくは向上させること。 ○ 改修 補 修 ・ 補 強 で は 対 応 不 可 も し く は 経 済 的 に 不 利

となる場合に選択 ○ ○

施設要求性能

継続監視

監視 No

Yes

健全度評価

補修・補強で性 能回復が可能か 改修

No

施設水準の 向上が必要

補修 No 補強

Yes

Yes

1.5.3 対策工法の選定

要求性能を確保できる工法を実現性,施工性,経済性(LCC),環境,維持管理等の観 点から比較し,対策工法を選定する。

【解説】

要求性能を確保できる工法を実現性,施工性,経済性(LCC),環境,維持管理等の観 点から比較し,最適な工法を選定する必要がある。護岸の変状としては,護岸本体,基 礎工,天端工(天端保護工を含む),隔壁・小口止,吸出防止材等の各部位の変状状況 に応じて,次のような補修等の対策を行うことが一般的である。

ただし,水際部が生物の多様な生息環境であること等に鑑み,補修等に際しては,可 能な限り河川環境の保全・整備に配慮し,工夫や改良を行うことが望ましい。

図 1.5.2 ブロック積み護岸の構造

また変状の発生部位や原因によって,予防保全として行う対策工法と事後保全として 行う対策工法が異なる場合もあり,供用期間の延命化に与える影響,ひいては LCCも異 なってくる場合があると考えられる。このような場合,どの段階でどの程度の対策を行 うかは,LCCの観点より最適な工法を採用することが望ましい。

護岸本体 吸出防止材

天端工

基礎工

隔壁・小口止

表 1.5.3 変状現象と対策工法(案)

種類 変状現象 対策工法(案) 対策上の留意点

脱石・ブロック の脱落

局部的に脱石やブロックの脱落が生じた場合は,張り直す か,又は,コンクリートを充填する。

空洞化,はらみ 出し及び陥没

石積(張)やブロック積(張)の構造に変化がなく,背面 が空洞化している場合は,裏込め材,土砂等の充填を行い必 要に応じて積(張)替えを行うことを基本とする。充填した 箇所を保護するために,必要に応じて天端保護工等を施工す る。はらみ出しや陥没が生じている場合は,原因を分析した 上で構造を検討し,必要に応じて対策を実施する。

変状発生に伴い堤体土砂が吸出され空洞を生じている怖れ があるため,十分に確認のうえ,空洞部にモルタル注入,前 面に張りコンクリートを行う。変状が著しい場合は一定範囲 の撤去復旧を行う。撤去復旧の際には,吸出し防止材を設置 する。場合により根固工等の併設を行う。

変状箇所だけを補修するのは,あま り効果が期待できない。対策範囲は,

十分確認のうえ,設定する。また施 工は,仮締切等の仮設工が必要とな る。

不同沈下 (目地開き)

変状発生に伴い堤体土砂が吸出され空洞を生じている怖れ があるため,十分に確認のうえ,空洞部にモルタル注入を行 う。変状が著しい場合は一定範囲の撤去復旧を行う。

高水護岸の変状は,流水や越波,雨 水浸透による吸出しの他,堤内残留 水位による場合などもある。

ふくらみ

堤体の沈下や裏法覆工部からの堤体土砂吸出しの怖れがあ るため,十分に確認のうえ,吸出し部はモルタル充てんや堤 体土の補充後,復旧(積み直し)を行う。

裏法面の変状は,雨水浸透による吸 出しの他,堤内残留水位による場合 などもある。

欠損

欠損部は,ブロック張を復旧する。復旧の際には,吸出し 防止材を設置する。また,老朽化が著しい場合は,これまで の対策と同様に全面的な対策を講じることが考えられる。場 合により根固工等の併設を行う。

欠損箇所だけを補修するのは,あま り効果が期待できない。対策範囲は,

十分確認のうえ,設定する。また施 工は,仮締切等の仮設工が必要とな る。

ブ ロ ッ ク 積み ブ ロ ッ ク 張り等

鉄筋やコンクリ ート破損

連結コンクリートブロック張工等で,鉄筋の破断やコンク リートの破損あるいはブロックの脱落等を生じた場合には,

状況に応じて鉄筋の連結,モルタル等の充填,あるいはブロ ックの補充等を行うことを基本とする。

ひび割れ

部分的なひび割れの場合は,樹脂やモルタル注入を行う。

大きなひび割れ部分に対しては,十分に確認のうえ,一定範 囲の撤去復旧を行う。

ひびわれ部の対策後の強度は期待せ ず,鉄筋やコンクリートの劣化を抑 制,あるいは外観上の修復を目的と する場合のみ可能である。

沈下・陥没

変状発生に伴い堤体土砂が吸出され空洞を生じている怖れ があるため,十分に確認のうえ,空洞部にモルタル注入,前 面に張りコンクリートを行う。損傷が著しい場合は一定範囲 の撤去復旧を行う。場合により根固工等の併設を行う。

堤体前面の形状は,隣接区間との調 和を考え,部分的な変断面区間とな る場合も,これによる波力や流水力 の集中等で弱点とならないようにす る。なお,堤体盛土中に隔壁を設け,

吸出し部が隣接部に拡がらないよう にする方法等もある。

剥離・損傷

剥離・損傷部の断面復旧を行う。損傷が著しい場合は一定 範囲の撤去復旧を行う。

剥離・損傷部の対策後の強度は期待 せず,鉄筋やコンクリートの劣化を 抑制,あるいは外観上の修復を目的 とする場合のみ可能である。

洗掘

基礎が洗掘等により露出した場合には,洗掘防止のための 根固め工の設置や根継ぎ工を実施し,根入れ深さの確保を行 う。上部の護岸への影響を抑止することを基本とする。

天端部の侵食

洗法覆工の天端付近に生じた洗掘を放置すると,法覆工が 上部から破損されるおそれがあるので,埋め戻しを行い十分 突固める等の対応を行うとともに,必要に応じて天端保護工 を施工する。

天端被覆工の破

変状の程度によっては天端コンクリートが破損し,法覆工 が上部から破損される恐れがあるので,被覆工のオーバーレ イや原型復旧を行う。

目地ぎれ

局部的に目地に隙間が生じたため合端が接していないもの は,すみやかにモルタル等で填充することを基本とする。な 基礎工

天端工 隔 壁 ・ 小 口止工

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