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実験1(家電量販店:高価格条件における実験)

ドキュメント内 ロイヤルティ・プログラムの消費者行動: (ページ 82-92)

第 5 章 ポイントと現金の支払いに関する知覚コスト(研究Ⅲ)

2. 実験1(家電量販店:高価格条件における実験)

2.1. 実験の手続き

通常のポイント付与率が10%で,なおかつ1ポイント単位でポイントを使用可能な家電 量販店のロイヤルティ・プログラムの会員で,かつ過去1年間に当該店舗の利用経験があ る消費者を対象として,web調査によるアンケート実験をおこなった41。調査は2016年

39 線形・連続におけるポイント使用は,実際にはポイントを全く使用しない支払方法とポイント残高 すべてのポイントを使用する支払方法の中間にポイント数-1の数だけ支払方法が存在する。しかしなが ら,消費者の現金およびポイントの知覚コスト関数が凹関数(逓減型)であれば,消費者の効用最大化の 結果,ポイントを全く使用しない(yij =0)か,ポイント残高すべてのポイントを使用する(yij =1

かの二択しかないことが先行研究では証明されている。Stourm et al. (2015)の脚注2およびDrèze and Nunes (2004)63ページを参照。

40 脚注19Stourm et al. (2015)と同様に,ここでも

ε

ij0

= ε

1ijであると仮定している。

41 調査対象者は,ヨドバシカメラの利用者である。

81

3月18日から3月22日にかけておこなわれた。調査の結果,442名(男性295名,女性 147名)のサンプルが得られた42

2.2. 提示刺激

使用している家電量販店において,ポイント残高が[500ポイント/1,000ポイント/

5,000ポイント/10,000ポイント]において,[10,000円/50,000円/100,000円]の買物 の精算時という想定のもと,精算時のポイント使用意図,支払方法の選択[現金のみ/ポイ ント残高の50%使用/ポイント残高の100%使用]を尋ねた。最後に,3つのポイント使用 割合それぞれの支払いの知覚コストを尋ねた。例えば,500ポイントのポイント残高で

5,000円の買物の精算をする場合の具体的な教示は,以下の通りである43

この質問は、ヨドバシカメラでの買い物を思い浮かべながら回答をお願いします。

※仕事関連での買い物ではなく、プライベートな買い物の場合としてお考えください。

■あなたは、ヨドバシカメラで

500 ポイント

のポイント残高があるものとします。あ なたが、ヨドバシカメラで

5,000 円

の買い物をするときの支払いについて、以下の質問 にお答えください。(以下のQ1~Q5まで,常に上に提示)

Q1.この買い物の支払いにおいて、あなたはどの程度ポイントを使いたいと思いますか?

(1.ポイントをとても貯めたい←→7.ポイントをとても使いたい,の7件法)

Q2この買い物の支払いにおいて、あなたはどのような支払い方法を選びますか?最も近 いものをお答えください。

①現金5,000円,0ポイント使用(→支払後のポイント残高は1,000ポイントに)

②現金4,750円,250ポイント使用(→支払後のポイント残高は725ポイントに)

③現金4,500円,500ポイント使用(→支払後のポイント残高は450ポイントに)

Q3.

現金 5,000 円, 0 ポイント使用(→支払後のポイント残高は 1,000 ポイン トに)

という支払い方法について,あなたの支払いのつらさをお答えください。

(1.とてもつらい←→7.まったくつらくない,の7件法)

42 株式会社クレオのウェブ調査サービス「なるほどMC.net」を利用した。

43 詳細は補章の2.研究Ⅲにおけるweb調査の質問票」を参照されたい。

82 Q4.

現金 4,750 円, 250 ポイント使用(→支払後のポイント残高は 725 ポイン トに)

という支払い方法について,あなたの支払いのつらさをお答えください。

(1.とてもつらい←→7.まったくつらくない,の7件法)

Q5.

現金 4,500 円, 500 ポイント使用(→支払後のポイント残高は 450 ポイン トに)

という支払い方法について,あなたの支払いのつらさをお答えください。

(1.とてもつらい←→7.まったくつらくない,の7件法)

このように,支払方法の選択については,単に支払う現金と使用するポイント数を提示 するだけでは,現金の支払いの重さだけに焦点が当たってしまうため,支払い後のポイン ト残高も合わせて提示している。

2.3. サンプルの割り付け

買物の精算時のポイント使用意図および支払方法の選択については,提示刺激による 4×3被験者間要因配置である。すなわち,4水準のポイント残高(500ポイント/1,000 ポイント/5,000ポイント/10,000ポイント)と3水準の支払金額(10,000円/50,000

円/100,000円)が割り付けられている。1つのセルにつき,33から40のサンプルが割

り付けられている(Table 14)。支払いの知覚コストについては,3水準のポイント使用 割合(現金のみ/ポイント残高の50%使用/ポイント残高の100%使用)すべてについて 尋ねている。したがって支払いの知覚コストについては,上記の4×3被験者間要因配置に ポイント使用割合3水準の被験者内要因配置を加えた混合計画となる。

Table 14 サンプルサイズ(家電量販店)

10,000 50,000 100,000

500P 36 36 35

1,000P 39 33 33

5,000P 40 38 40

10,000P 38 38 36

支払金額(円)

2.4. 質問項目

ポイント使用意図の質問項目としては,Kwong et al. (2011)の7件法(1=とてもポイ ントを貯めたい,7=とてもポイントを使いたい)を用いた,支払いのつらさの質問項目

83

としては,秋山(2010)の支払いへのつらさ評定の7件法を用いた。

2.5. 実験結果

2.5.1. ポイント使用意図に関する実験

ポイント使用意図がポイント残高と支払金額によってどのように異なるかを検討する。

各水準ごとのポイント使用意図の平均値と標準偏差をTable 15にまとめている。

Table 15 ポイント使用意図の平均と標準偏差(家電量販店)

ポイント残高 購買金額 平均 標準偏差

10,000 4.19 2.08 50,000 3.92 2.01 100,000 3.00 2.06 10,000 4.26 2.21 50,000 4.18 2.04 100,000 4.91 2.10 10,000 5.80 1.59 50,000 5.47 1.72 100,000 5.50 1.71 10,000 5.32 1.77 50,000 5.39 2.05 100,000 5.94 1.72 500

1,000

5,000

10,000

ポイント残高と支払金額を要因とする,2要因・3水準(購入金額:10,000円,50,000

円,100,000円)×4水準(ポイント残高:500ポイント,1,000ポイント,5,000ポイン

ト,10,000ポイント)の分散分析をおこなったところ,ポイント残高条件の主効果(F(3,

430)=24.953, p<0.001,ES:

η

2=0.148),ポイント残高と支払金額の交互作用効果(F(6, 430)=2.163, p<0.05,ES:

η

2=0.029)が有意であった。支払金額の主効果は有意ではな かった(F(2, 430)=0.230, p=0.794,ES:

η

2=0.001)。

ポイント残高と支払金額の交互作用効果が有意となったので,ポイント残高および支払 金額の各水準におけるポイント使用意図についてまとめたのが,Figure 18である。ポイ ント残高の単純主効果検定をおこなったところ,支払金額が10,000円,50,000円,100,000 円のすべてで差がみられた(F(3, 430)=6.573, p<0.001,ES:

η

2=0.044;F(3, 430)=6.415, p<0.001,ES:

η

2=0.043;F(3, 430)=16.190, p<0.001,ES:

η

2=0.101)。そこで,支払 金額別にポイント使用意図の主効果について,Bonferroni法による多重比較をおこなった ところ,支払金額10,000円の場合には,ポイント残高5,000ポイントが500ポイントお

よび1,000ポイントよりも高かった。支払金額50,000円の場合には, ポイント残高が

5,000ポイントおよび10,000ポイントは,500ポイントよりも高かった。支払金額100,000

円のときには,ポイント残高が1,000ポイントおよび5,000ポイントおよび10,000ポイ

84 ントは,500ポイントよりも高かった(いずれの多重比較においても,

MS

e

= 3.704

5% 水準)。

Figure 18 ポイント使用意図(ポイント残高および支払金額;家電量販店)

また,支払金額の単純主効果検定をおこなったところ,ポイント残高が500ポイントの ときに差がみられた(F(2, 430)=3.730, p<0.05,ES:

η

2=0.017)。そこで,ポイント使 用意図の主効果について,Bonferroni法による多重比較をおこなったところ,支払金額が 100,000円のときに10,000円よりも低かった(

MS

e

= 3.704

5%水準)。

以上をまとめると,支払金額の単純主効果検定において有意となったのは500ポイント のときだけで,しかも仮説5とは反対に,支払金額が高くなるほどポイント使用意図は低 くなっている。さらには,ポイント残高が1,000ポイント,5,000ポイント,10,000ポイ ントのときには,支払金額が高くなってもポイント使用意図は高まらなかった。したがっ て仮説5は支持されなかった。一方で,ポイント残高の単純主効果検定において支払金額

が10,000円,50,000円,100,000円のすべてにおいて有意であり,ポイント残高が多く

なるほどポイント使用意図が高くなっている。したがって仮説6は支持された。ポイント 使用意図の要因として大きいのは,支払金額ではなくポイント残高であると言える。

2.5.2. 支払方法の選択に関する実験

次に,ポイント使用意図ではなく,実際の支払方法の選択に対して,ポイント残高や支 払金額が与える影響をみていく。購買の精算時に,①すべて現金による支払い,②ポイン ト残高の半分だけポイントを使用する(残りを現金による支払い),③ポイント残高のす べてを使用する(残りを現金による支払い)の3つの選択肢うちから選択する設問を被験 者に尋ねた44。この選択結果について,順序ロジット・モデルにより分析をおこなった。

44ポイント使用意図という態度ではなく,買物の精算時の具体的な選択を尋ねている点が2.5.1.との違 いである。

85

以下,順序ロジット・モデルの説明をおこなう45。ランクが

J

個の場合,

1,2,, J

と振る

場合の指示関数を設定する。

*

i i i

y =bx +e (28)

ここで

e

i は標準正規分布に従うと仮定する。未知の閾値

α α

1

,

2

, , α

J1を考える。例え ば本実験のように

J = 3

である場合,観察される

y

i は,

* 1

*

1 2

* 2

1 if 2 if 3 if

i i

i i

i i

y y

y y

y y

α

α α

α

= ∞ < ≤

= < ≤

= < ≤ ∞

  -   

(29)

である。係数

b

と閾値

α

jを同時に推計する。

y

iがある値をとる確率は,(30)式のように表 される。

( ) ( ) (

1

)

ij P yi j xi F j bxi F j bxi j = 1,2,3

π

= = =

α

− −

α

−    (30)

ここで

F ( ) −∞ = 0

F ( ) ∞ = 1

である。また,閾値を決めるために説明変数には通常,

定数項は含めない。確率分布関数としてロジスティック分布(

Λ ( ) e

)を選べば,順序ロ

ジット・モデルとなる46。すなわち,順序ロジット・モデルでは,確率関数は(31)式のよ うに表される。

( ) ( )

( ) (

1

)

ij i i i

1

i

j i j i

P y j x P y j x

bx bx j = 1,2,3

π

α α

= = − = −

= Λ − − Λ −

     

(31)

順序ロジット・モデルの対数尤度関数は,以下の(32)式で表される。(32)式に対して最 尤推定をおこなうことで不偏推定量を得ることができる。

1 1

log log

N J

ij ij

i j

L d π

= =

= ∑∑

(32)

被験者に提示するポイント残高および支払金額と得られたサンプルサイズは,2.5.1.と 同じである(Table 14)。順序ロジット・モデルによる推定結果を,Table 16にまとめて いる。分析の結果,ポイント残高のみが有意であり,支払金額およびポイント残高と支払 金額の交互作用項は有意ではなかった。したがって,支払いの選択はポイント残高に影響 を受けることが確認された47

45 ここでの説明は,北村(2009)第9章を参考にしている。

46 確率分布関数として正規分布(

Φ ( ) e

)を選べば,順序プロビット・モデルとなる。

47 順序プロビット・モデルでも推定をおこなったところ,ポイント残高のみが0.1%水準で有意となり,

支払金額およびポイント残高と支払金額の交互作用は有意ではなかった。

ドキュメント内 ロイヤルティ・プログラムの消費者行動: (ページ 82-92)