第 3 章 背景モデルの適応的探索法 15
3.3 実験設定
3.3 実験設定
• SegTrack v2:本実験では約20枚から30枚の画像で構成されるgirl
を用いた.HOP-KINS 155 DATASETよりもカメラの動きが速く,モーションブラーを含み,シー
ンに含まれるテクスチャが少ない.
• PETS2005:複数台の車を上空から撮影したシーンである.本実験ではegtest01の
1番目から700番目までの画像を用いた.地面は平面であるためホモグラフィで背 景の動きを近似することは可能である.しかし,テクスチャが少ないシーンである ため,KLTによる対応点探索が困難である.
• ChangeDetection dataset 2014:本実験ではcontiniousPanの570番目から1150番 目までの画像を利用した.カメラの移動が左右の回転のみで構成されるため,シー ンに複数平面を含んでいたとしてもホモグラフィによって背景の動きを近似可能で ある.また,移動物体として車を含み,画像の大半の領域を移動する車が占める画 像が存在する.
• MICC:本実験ではbackyardの480番目から830番目までの画像を利用した.
con-tiniousPanとは異なり,カメラの移動に上下左右の回転を含むシーンである.
表 3.1: 実験で用いたシーンの画像数.
シーン 画像数 シーン 画像数
people1 40 girl 21
people2 30 egtest01 700
cars1 19 continuousPan 597
cars4 54 backyard 350
cars6 30
3.3 実験設定
3.3.2 比較手法およびパラメータ設定
再投影誤差に基づく背景モデルの探索範囲を適応的に変更する点の有効性を評価する ために,探索範囲を固定した手法と比較する.この手法をFixedWindowと呼ぶことにす る.FixedWindowの探索範囲は(2S+ 1)×(2S + 1)とし,前景検出閾値を固定すること を除き,前景検出処理や背景モデル更新処理は提案手法と同様である.また,再投影誤差 に基づいて前景検出閾値を変更する点の有効性を評価するために,提案手法の処理のうち で探索範囲のみを適応的に変更する手法を比較手法として用いる.本論文では簡単のため に各手法を以下のように呼称する:
Ours1 : 3.1節で述べた全処理を含む手法;
Ours2 : Ours1 のうち探索範囲は適応的に変更するが前景検出閾値は固定する手法.
また,先行研究との比較のために,DM SGM [20],PTZ-SOBS [19],GBS [48]を用い る.DM SGM [20]は周辺を探索せず矩形領域ごとに背景モデルを構築する手法である.
DM SGMでは,入力画像を一定の間隔で分割した矩形領域ごとにガウス分布による背景
モデルが構築され,カメラの移動による見かけの動きはホモグラフィによって表現され る.一方,PTZ-SOBS [19]は2次元のニューロンモデルを構築するSOBSによる背景差 分法 [49]をパンチルトズームカメラに拡張した手法で,画素ごとに背景モデルを構築す る.DM SGMと同様に,ホモグラフィを用いて,カメラの移動による見かけの動きを表 現する.DM SGMとPTZ-SOBSは,画素値のみから背景モデルを構築した手法であるの に対して,GBS [48]は画素値に基づくアピアランスモデルに加え,オプティカルフロー に基づくモーションモデルの二つのモデルを構築している.1時刻前の画像で検出された 前景領域から,前景モデルと背景モデルを構築し,前景と背景の情報を同時に利用して前 景領域を検出している.GBSでは,最初の2枚の画像ではエピポーラ拘束を用いて,カ メラの動きに従わない領域を前景領域としている.
背景モデルの探索範囲と前景検出閾値を再投影誤差に基づいて適応的に設定する点の
有効性を評価するために,探索範囲の変動範囲Sと検出閾値の上限値Rを変化させたと きの前景検出精度の比較を行う.本実験ではS = 1,2, . . . ,10,R = 10,20, . . . ,100とし たときの100通りの組み合わせを評価した.付録Aにおいて述べたViBeのパラメータ は文献 [11]で述べられている値を参考に,N = 20,♯min = 2,背景モデルの更新頻度を 制御するパラメータϕ = 16を利用する.また,その他のパラメータは実験的にs = 1.0,
σs = 1.25,σR = 1.0,eth = 1.0とした.提案手法は背景モデルとしてViBeを利用して いるため,初期の画像に移動物体が含まれている場合,精度良く背景モデルを構築できな い.そこで,本実験では1番目の画像に移動物体が含まれている場合,背景画像を手動で 作成し,背景モデルの初期化に用いた.
DM SGMの実験では公開されている実行ファイルを用い,提案手法と同様に,背景モ
デルの初期化には手動で作成した背景画像を用いた.また,PTZ-SOBSとGBSはそれぞ れの著者らによって報告されている結果[19, 48]と比較した.
3.3.3 評価項目
本実験で前景検出精度の評価に用いた項目はPrecision, Recall,その調和平均である
F-measureを用いた.また,各評価項目を計算するために,手動で移動物体領域を示した
正解画像(GT)を画像ごとに作成した.各項目は以下の式で定義される.
Precision = TP
TP + FP (3.9)
Recall = TP
TP + FN (3.10)
F-measure = 2×Precision×Recall
Precision + Recall (3.11)
TP (True-positive)は正しく前景と検出できた画素数,FP (False-positive)は誤って前景 と検出した画素数,FN (False-negative)は誤って背景と判定した画素数をそれぞれ意味
3.4 実験結果