第 6 章 サイバーパトロールシステムの実環境への適用
6.4 実験結果と考察
めである.このことにより,システムの改善点を洗い出し,一般ユーザにも普及を図れる ようにシステムの発展方策を明らかにすることも,本実験の狙いである.
なお,本実証実験においては,どちらのユーザに対しても,同一の実験条件下で,同一 の実験対象データを用いて実験を行った.
表 6.2 実験結果
違法・有害情報 初心者 熟練者
記事数 ページ数 記事数 ページ数 売春目的等の誘引 201 41 12 9 出会い系サイト規制法違反
の禁止誘引行為 0 0 5 2
合計 201 41 17 11
初心者の実験結果では,Webページ41件が「売春目的等の誘引」に該当する違法・有害 情報を含むと判定され,そこから違法・有害記事 201 件が抽出された.一方,熟練者の実 験結果では,Web ページ 9 件が「売春目的等の誘引」に該当する違法・有害情報を含むと 判定され,そこから違法・有害記事12件が抽出された.また,Webページ2件が「出会い 系サイト規制法違反の禁止誘引行為」に該当する違法・有害情報を含むと判定され,そこ から違法・有害記事5件が抽出された.以上より,次の3項目が明らかとなった.
実際の違法・有害情報が含まれるWeb ページ数は,検索結果量に対して極めて少ない こと
実験で用いたキーワード群31件で得られた検索結果に対し,違法・有害情報が含まれて いるWebページは僅かであったといえる.
違法・有害記事が一部のWebページに集中して投稿される傾向があること 全体から見れば僅かなWebページに違法・有害記事が集中して投稿されていた.
初心者の判定基準と熟練者の判定基準には大きな違いがあること
同じガイドラインに則って違法・有害情報を判定したにも関わらず,初心者と熟練者の 判定基準が大きく異なっていた.
以上の実験結果に対する考察は,次項で行う.
本実験により得られた違法・有害情報の一部を表 6.3と表 6.4に示す.表 6.3には「売 春目的等の誘引」について,表 6.4 には「出会い系サイト規制法違反の禁止誘引行為」に ついての違法・有害情報の事例をそれぞれ整理した.また,表 6.3 と表 6.4 に置いて,◯
はガイドラインに沿って判定された項目,△は違法・有害情報であるが異なるガイドライ ン基準として判定された項目,空欄はガイドラインに沿っていないと判定された項目をそ れぞれ示す.
なお,これらの表においては,著作権保護の観点から,情報をそのまま引用するのでは なく,一部の記述を改変する.また,プライバシーに関わる情報や卑猥な語句については,
その一部を●で伏せるものとする.
表 6.3 実験で得られた「売春目的等の誘引」に該当する違法・有害情報
No. 初心者
の判定
熟練者
の判定 記事
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表 6.4 実験で得られた「出会い系サイト規制法違反の禁止誘引行為」に該当する違法・有 害情報
No. 初心者
の判定
熟練者
の判定 記事
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3 △ ◯
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5 △ ◯ JC2です。ホ別ゴ有TU佐保希でお願いします。
ミドリ前10時
6.4.2 考察
本章の実験結果より,1,000件の実験対象ページから,初心者の観点で41ページの違法・
有害情報を含むページを発見できた.本実験結果と,第 5 章の実験結果を併せて,本研究 システムは,知識を持たない一般ユーザが使用しても人的コストが大きく低減させること ができることが明らかになった.以上より,一般へのサイバーパトロール導入に対する障 害をひとつ取り除くことが出来たものと考えられる.
しかし,表 6.2 より,初心者と熟練者では,本システムにより抽出された違法・有害情 報に対する判定結果には,大きな数の開きがあった.インターネット・ホットラインセン ターの2014年6月の統計情報[70]を確認すると,2014年6月にホットラインセンターに寄 せられた通報件数は全10,731 件であり,その中でも違法・有害情報を含む事例は 2,751 件 であった.一方,それ以外の8,477件は,ガイドラインの対象外として判断されている.こ のことから,初心者が目視にて発見したデータのうち,おおよそ3分の1から4分の1は,
ガイドラインの対象外となる場合があることが分かる.これは,本実験で得られた結果と も合致する推論である.
その理由を推測するため,表 6.3と表 6.4の実験結果で得られた判定基準の違いについ
て,第6.2.2項(1)にて引用したガイドラインと照らし合わせながら考察する.
表 6.3 を参照すると,初心者の判定結果と熟練者の判定結果で,大きく結果が異なるこ とが分かる.これは,ガイドラインに掲載されている金銭の授受規定が十分に考慮されて おらず,「売春目的等の誘引」の要件を満たしていない情報に対しても有害と判定したため であると考えられる.このように,一般的な判断基準とガイドライン判定要件の間のズレ が,初心者と熟練者の判定結果の違いに大きく関与していることが想定される.
表 6.4 を参照すると,初心者,熟練者共に違法・有害情報と判定されたが,初心者の分 類では,ガイドラインには合致していないことが分かる.これは,ガイドラインに掲載さ れている年齢規定が十分には考慮されておらず,単純な「売春目的等の誘引」に関する違 法・有害情報と判定されたためであると考えられる.この違いは,違法・有害情報を通報 や削除申請する際に大いに影響するため,実際のサイバーパトロールにおいては明確な区 別が必要になる.
以上の考察結果より,実用的なサイバーパトロールシステムを実現するためには,一般 ユーザに対して,ガイドラインの判定基準を明確に提示することが望ましいことが分かる.
そこで,本開発システムの発展計画として,適用するガイドラインに併せて,記述のどの 部分が抵触するかをひと目で分かるようにするなどの対策が必要と考えられる.