第 6 章 サイバーパトロールシステムの実環境への適用
6.2 実験条件
第 6 章 サイバーパトロールシステムの実環境への
管理者 作業者 A 作業者 B
インターネット・ホットラインセンターが公表する 違法・有害情報の基準のガイドラインを常時確認
基準のガイドラインを 一読のみ
熟練者 初心者
図6.1 本実験に参加する被験者
本実験には,図6.1に示す合計3名の被験者が参加する.うち1人はサイバーパトロー ルの成果を確認・管理する管理者役を担い,残り 2 人はサイバーパトロールの作業者役を 担う.実験では,2人の作業者役がそれぞれ同じ環境下で実験をし,その成果を管理者役が 確認するという流れで進行する.実験をするにあたって,実験の参加者の違法・有害情報 に関する知識レベルに差を付けるため,管理者役と一人の作業者役に違法・有害情報を判 定する基準であるガイドラインを常時確認させ,他方の実施者役には違法・有害情報を判 定する基準であるガイドラインを一読させるのみとした.これにより,初心者と熟練者の 関係を再現した.
6.2.2 実験データ
(1) 実験対象の条件
本実証実験にて対象とする違法・有害情報は,インターネット・ホットラインセンター が作成したホットライン運業ガイドライン[20]の規定にある「売春目的の誘引」あるいは「出 会い系サイト規制法違反の禁止誘引行為」に関連した情報とする.これは,ホットライン センターへの通報件数が特に多い「わいせつ電磁的記録媒体陳列」や「児童ポルノ公然陳 列」などとは異なり,「売春目的の誘引」あるいは「出会い系サイト規制法違反の禁止誘引 行為」はコミュニケーションによって他者に悪影響を与える類の違法・有害情報であり,
本研究で対象とした掲示板やSNSなどのコミュニティサイトに投稿されやすい特徴がある ためである.
ホットライン運用ガイドラインより,本実験で対象とする「売春目的の誘引」と「出会 い系サイト規制法違反の禁止誘引行為」を次に引用する.このガイドラインに則って,本 研究では実験を進めるものとする.
売春目的等の誘引
次のア又はイのいずれかの項目に掲げる要件のすべてを満たす場合には、売春目的等の 誘引の構成要件に該当する情報と判断することができる。
ア 売春目的の誘引
(ア) 「ゴムあり本番、60 分 3 万円」等の売春を意味する表現が連絡先(電話番号等)
等とともに記載されていること
(イ)「メールください、都内で会える人」等、売春の相手方となるよう誘引している 趣旨が窺われること
イ 売春周旋目的の誘引
(ア) 「ゴムあり本番、90 分 5 万円」等の売春を意味する表現が連絡先(電話番号等)
等とともに記載されていること
(イ)「女の子多数、チェンジあり」等の周旋目的の誘引であることを意味する表現が 記載されていること、その他周旋目的の誘引である趣旨が窺われること
出会い系サイト規制法違反の禁止誘引行為
次の共通の要件のすべて、及びアからウまでのいずれかの項目に掲げる要件のすべてを 満たす場合には、出会い系サイト規制法違反の禁止誘引行為に該当する情報と判断するこ とができる。
(共通の要件)
○ 面識のない異性との交際(以下「異性交際」という。)を希望する者を対象としてい ること
○ 異性交際に関する情報を電子掲示板に掲載していること
○ 当該情報を閲覧した異性交際希望者が、情報を掲載した異性交際希望者と電子メー ル等により1対1の連絡ができること
ア 性交等の誘引(法第6条第1号及び第2号関係)
(ア) 具体的な18歳未満の年齢、「女子中学生」等の児童を意味する表現が記載され ていること
(イ) 「Hしたい」、「口で」、「手で」等の性交等を求める表現が記載されていること イ 対償の供与等を示した異性交際の誘引(法第6条第3号及び第4号関係)
(ア) 具体的な18歳未満の年齢、「女子中学生」等の児童を意味する表現が記載され ていること
(イ)「一緒に遊んでくれませんか」、「お茶したい」等の異性交際を求める表現が記載 されていること
(ウ)具体的な金額の提示、「援助してあげる(ほしい)」、「お小遣いあげる(ほしい)」 等の対償を供与する又は受けることを意味する表現が記載されていること
ウ 異性交際の誘引(法第6条第5号関係)
(ア) 具体的な18歳未満の年齢、「女子中学生」等の児童を意味する表現が記載され ていること
(イ)「一緒に遊んでくれませんか」、「お茶したい」等の異性交際を求める表現が記載 されていること
(2) 実験対象データおよび収集方法
本実験において,違法・有害情報が投稿されやすいと思わしきWebページを収集するた めに用いるキーワードの一例を表 6.1に示す.
表 6.1 Webページを収集するために用いたキーワードの一例
使用したキーワード
援交 サポ キメセク 掲示板 ウリ 掲示板 プチ 割り切り 掲示板 セフレ 出会い 少女 出会い 掲示板 サポ 掲示板 JK 出会い 掲示板 セフレ 掲示板 近所 掲示板 神待ち 掲示板 家出 少女 掲示板 出会い 掲示板 SM 出会い 掲示板 サポ 掲示板 即ヤリ 掲示板 割り切り 出会い 人妻 出会い 掲示板 逆円 掲示板 JD 出会い 掲示板 援助 出会い 優良 出会い 掲示板 ホ別 掲示板 セフレ 穂別
割り切り 掲示板 ハメ 掲示板 ゴ有 掲示板 支援 割り切り 掲示板 円光 掲示板 サポ 神待ち ヤリ友 掲示板
表6.1のキーワードで得られたYahoo! JAPANの検索結果の上位50ページ分のURLを収 集し,チェック対象リストに登録する.本実験条件では,重複含め1,000 件超のURLが登 録されたリストを構築した.実証実験においては,このチェック対象リスト中のWebペー ジを対象に,違法・有害情報が含まれるかどうかを確認する.
なお,本研究にて使用したサイバーパトロールシステムの学習データやその際に用いら れたパラメータは,第3章と第4章の実証実験のものと同じデータ,同じ値を用いた.
(3) 実験対象ユーザ
本研究で開発するシステムの利用者は,警察庁のサイバー犯罪対策課の専門捜査官だけ でなく,民間の学校や教育委員会,あるいはボランティアなどでサイバーパトロールに関 与する人である.そのため,実験担当者として,ガイドラインを一読しただけの初心者と,
ガイドラインを詳細に読み込んだ熟練者の確認結果とを比較する.これは,前者は知識を 持たない一般ユーザ,後者は知識を持った専門の捜査官のシステムへの反応を分析するた
めである.このことにより,システムの改善点を洗い出し,一般ユーザにも普及を図れる ようにシステムの発展方策を明らかにすることも,本実験の狙いである.
なお,本実証実験においては,どちらのユーザに対しても,同一の実験条件下で,同一 の実験対象データを用いて実験を行った.