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第3章 振動台実験

3.4 実験結果

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図3.13 加速度計における応答倍率

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図3.14 三次元画像計測における加速度応答倍率

図3.15にJMA-Kobe NS波における振動台加振方向に対する頭部の前後方向の伝達関数

を示す。固有振動数は調和正弦波の場合、入力波の振動数に大きく影響され、検出すること が困難であるため、JMA-Kobe NS波を用いる。参考までに図3.16にJMA-Kobe NS波の 加速度応答スペクトル(h=0.05)を示す。図3.15をみると2.6~7.0Hzにピークがいくつかみ られ、この内の何れかが固有振動数であると推測される。しかしながら、JMA-Kobe NS波 入力時は、試験体が破損した後であるため、正確な値であると判断するのは難しいと考えら れる。また、共振振動数と考えられる 1.4Hzのところにピークが見られないことから、固 有振動数を判断する上で、信頼性は低いと考える。

三 重 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 図3.15 固有振動数

図3.16 JMA-Kobe NS波の加速度応答スペクトル(h=0.05)

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三次元画像計測から得られた結果を用いて、それぞれの加振での変形モードを図3.17に 示す。変位2mm-0.8Hzの調和正弦波入力時において、足元と胴下で変形量が大きくなって いる。加振終了時にひび割れは確認されていないが、試験体内部でひび割れなどが起きたこ とで、結果に影響が出たのではないかと考える。

三 重 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 図3.17 変形モード

既往の研究 13)により、剛体角柱における転倒可能性のある加速度領域は、剛体角柱の形 状(高さHと幅 Bの比)により求められている。振動数の低い領域において静的な転倒限界 である加速度一定の(1)式、振動数の高い領域においてはエネルギー一定則より算出される 速度一定式に(2πf)を乗じて加速度とした(2)式、以上であるとされている。図 3.18 に示す

(1)式と(2)式との交点を境界振動数f0とし、(3)式に示す。振動時の運動形態は、静止、滑動

(スライド)、ロッキング振動、転倒の組み合わせで表すことが出来る。また、ロッキング振 動の種類には、図3.19に示すような、1次の固有振動である同位相ロッキング、2次の固有 振動である逆位相ロッキング、比較的安定しているサブハーモニック・ロッキングがある。

4)~8)図3.18において、低い振動数領域である領域Ⅰでは同位相ロッキングからの転倒、高い

振動数領域である領域Ⅱでは逆位相ロッキングからの転倒が起こるとされている。

𝐴𝑐𝑟1=𝐻𝐵𝑔 (1) 𝐴𝑐𝑟2= 𝑉𝑐𝑟∙ (2𝜋𝑓) = 10𝐵√𝐻𝐻 (2𝜋𝑓) (2)

𝑓0=20𝜋√𝐻𝑔15.6√𝐻 (3)

ここで、Acr1、Acr2、Vcrは転倒限界加速度及び速度、fは振動数、gは重力加速度である。

図3.18 転倒限界加速度

Maximum acceleration(Gal)

Frequency (Hz)

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図3.19 ロッキング振動の種類

(同位相ロッキング、サブハーモニック・ロッキング、逆位相ロッキング)

調和正弦波による実験結果を図3.20および表3.12に示す。図3.20は横軸に入力波(調和 正弦波)の振動数、縦軸に入力波加振時の最大加速度を取り、プロットしたものである。ま た、図中の2本の直線は(1)、(2)式に示した転倒限界加速度を示したものである。本実験に おいて、調和正弦波入力時において、速度一定22.5mm/s-1.0Hz時を除き、転倒限界加速度 以下に結果が収まっており、転倒の危険はないことが確認された。速度一定

22.5mm/s-1.0Hz時は転倒限界加速度の値を越えているが、表3.12に示すように回転角から考えると、

静的限界回転角以内に収まっているため、転倒の危険はないことが言える。表3.12の転倒 限界回転角は、試験体前後方向(Bx/H=0.607)の静的な転倒限界時の回転角である。

図3.20 加振における最大加速度と転倒限界加速度

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表3.12 頭部および足元の最大回転角

また、調和正弦波における実験結果を図3.21、3.22および表3.13に示す。図3.21は時 刻歴波形であり、試験体の回転角を頭部(No.6 or No.7)と足元(No.15 or No.16)の変位量か ら算出した結果である。図3.22は、頭部の変形量の時刻歴波形である。全ての加振におい て、ロッキング振動は生じることはなく、転倒までに至らなかった。静的な転倒限界回転角

は31.27°であり、最大の回転角であっても3.37°に留まっているため、転倒の危険はない

ことがいえる。

本試験体の底面は剛体であると仮定をした上で、本躰の回転角をR1、底面の回転角をR2

とし、その差分を変形角Dとする(図3.23参照)。また、変形角Dに試験体の総高を乗じて 頭部の変形量を算出した。図3.22を見ると、今回の加振において、残留変形は生じていな いことがわかる。調和正弦波 速度一定 22.5mm/s-1.0Hz の加振で、変形量は最大で

59.75mm、変形角ではおよそ1/17radであり、木造の安全限界変形角 1/30radは越えてい

ることがわかる。図3.21、3.22を見ると微小な振動が見受けられる。これは、部材の変形 によるものだと推測され、試験体が振動時に変形していることに相違なく、R1は部材の変 形角Dによる回転角を含んでいる可能性が考えられる。

振動数

Hz rad ° rad °

0.2 - - -

-0.4 0.0009 0.05 0.0033 0.19

0.6 - - -

-0.8 0.0049 0.28 0.0051 0.29 1 0.0073 0.42 0.0073 0.42 0.8 0.0016 0.09 0.0019 0.11 1.0 0.0056 0.32 0.0041 0.23 1.2 0.0091 0.52 0.0072 0.41 1.4 0.0167 0.96 0.0116 0.66

1.6 - - -

-1.8 - - -

-2.0 0.0055 0.32 0.0048 0.28 0.5 0.0193 1.11 0.0126 0.72 1.0 0.0588 3.37 0.0391 2.24 転倒限界

回転角 0.5459 31.27 0.5459 31.27 最大回転角

変位5㎜

頭部 足元

変位2㎜

速度22.5mm/s

最大回転角 調和正弦波

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図3.21 回転角時刻歴波形

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図3.22 頭部変形量の時刻歴波形

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表3.13 最大回転角一覧

図3.23 回転角

既往の転倒限界加速度と調和正弦波の比較を行うため、卓越振動数の設定を行う。波の卓 越振動数を表す一つの指標である最大加速度値Amaxと最大速度値Vmaxから(1)式により算 出される等価振動数Feを用いることとする。

𝐹𝑒=2𝜋∙𝑉𝐴𝑚𝑎𝑥

𝑚𝑎𝑥 (1)

表3.14に等価振動数と最大加速度を示す。この等価振動数を用いて転倒限界加速度との 比較を行った結果を図3.24に示す。全てが転倒限界加速度を超えない結果となっており、

転倒の可能性はないことがわかる。

振動数 [Hz]

最大回転角 R1[°]

最大回転角 R2[°]

最大変形角 D[°]

最大変位 δ max[mm]

0.4 0.05 0.02 0.06 1.10

0.8 0.28 0.02 0.28 4.99

1.0 0.42 0.01 0.42 7.64

0.8 0.09 0.03 0.09 1.66

1.0 0.32 0.03 0.30 5.44

1.2 0.52 0.04 0.48 8.73

1.4 0.96 0.06 0.92 16.57

2.0 0.32 0.02 0.35 6.21

0.5 1.11 0.07 1.05 18.96

1.0 3.37 0.11 3.32 59.75

変位一定5mm

変位一定2mm

速度一定22.5mm/s

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図3.24 転倒限界加速度と等価振動数における最大加速度

表3.14 等価振動数及び最大加速度

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