参考文献
制御パラメータは主に閉じ込め磁場強度と中性ガス圧の 2 つである.中性ガス 圧を変化させると,イオン-中性粒子衝突周波数と電子密度勾配が同時に変化し
2. 実験結果
PANTA は軸長 4m,半径 5cm の円筒型磁場閉じ込めプラズマである.円筒の真空 容器の片側底面で RF により生成されたプラズマを軸方向磁場で閉じ込める. 64-channel 周方向プローブアレイと 5-64-channel 径方向プローブアレイ(tip 間隔 1cm)を用いて乱流を計測する.プラズマ生成部から 1375mm 離れた位置に SMBI 装置が取り付けられている.1 回の入射で,装置内に満たされている中性ガスと 同程度の粒子数が供給される.
図 1 は SMBI 前後の,平均イオン飽和電流の径方向分布,軸方向分布(r = 4 cm),低周波数揺動(2.8-5.0 kHz)と高周波数揺動(5.4-13 kHz)の振幅の径方向 分布を表す.ここでイオン飽和電流は電子密度に比例すると考える.SMBI 前後 で,イオン飽和電流の空間分布はほとんど変化しない.すなわち,He ガスを入 射しても,電離エネルギーが高いためほとんど電離は起こらず,純粋な中性粒子 圧力の増加が起こっていると考えることができる.低周波数揺動振幅には SMBI 2019FP‑19
核融合力学分野 一般研究
後,広範囲に渡っての増加が見られる.一方で高周波数揺動振幅は r<4.5cm で は減少,r>4.5cm では増加となった.中性ガス圧の増加により線形安定モードの 周波数が変化し,それが非線形的に作用して全体の揺動分布が変化したと考え られる.
3. まとめ
直線プラズマ装置 PANTA において中性ガスパフ装置を開発した. 密度分布を一 定に保ったまま中性ガス圧を変化させることにより,揺動の線形減衰機構がモ ードの非線形発展に与える影響を議論した.
研究組織
稲垣滋(九大応力研) ,佐々木真(九大応力研)
図 1. SMBI 前後の(a)イオン飽和電流の径方向分布,(b)軸方向分布(r = 4
cm),(c)低周波数揺動(2.8-5.0 kHz)と(d)高周波数揺動(5.4-13 kHz)の揺動
振幅の径方向分布
準2次元乱流の統計力学的研究
岡山大学 大学院環境生命科学研究科 小布施祈織
【研究の目的】
統計物理学分野において,系の保存量に着目しその系が最終的に実現する分布則を得る手法が知られてい る。たとえば2次元もしくは準2次元完全流体においてエネルギー保存の制約の下にエンストロフィー 最小化問題を考える最小エンストロフィー原理(ME)または選択的減衰原理(selective deacy)[1, 2]や 一般的なカシミール不変量保存の制約の下にMiller-Robert-Sommeria エントロピー最大化問題を考え るMiller-Robert-Sommeria (MRS) 理論[3, 4] などがあり,様々な惑星大気モデルへの応用がなされて いる[5, 6]。
本研究課題では,これらの統計力学的手法の準2次元的プラズマ乱流への適用可能性について調査し,本 格的議論の基盤となる定式化を行うことを目的とした。今回は特に, A. Venaille and F. Bouchet [7]を 基とし,プラズマと中性粒子が結合した系に対する MRS-2 理論を考察した。
【中性粒子効果を取り入れた準2次元プラズマ乱流モデル】
本研究課題では,次の式で記述される中性粒子効果を取り込んだ準2次元モデルを考える。
mini(∂tVi) =− ∇pi+eni(E+ (Vi×B)/c)−miniνie(Vi−Ve)−miniνin(Vi−Vn), mene(∂tVe) =− ∇pe+ene(E+ (Ve×B)/c)−meneνei(Ve−Vi),
mnnn(∂tVn) =− ∇pn−mnnnνni(Vn−Vi).
この系ではエネルギーE、エンストロフィーS に加え,ポテンシャル渦度q = (
1−ρ2s∇2⊥)
(eϕ)/Te− (ν∗/cs)(r/ρs) が保存する。ここで ν∗ = csρs(−(∇⟨ni⟩)/⟨ni⟩ −Pn′/(⟨n⟩Te)) であり, 右辺第二項目
−Pn′⟨n⟩Te は中性粒子の存在からの寄与である。以下ではポテンシャル渦度保存の式を一般的な形で書 き表し,次の方程式系を考えることにする。
∂q
∂t +u· ∇q= 0, q= ∆ϕ−ϕ/R2+h. (1)
【中性粒子効果を取り入れた準2次元プラズマ乱流モデルにおけるMRS-2理論】
本研究課題では,式 (1) で書きあらわされる中性粒子効果を取り入れた準2次元プラズマ乱流モデルに 対するMRS-2理論を考える。すなわち,エネルギーE, 循環C =∫r
d rq(: 1次のカシミール不変量),エ ンストロフィS(: 2次のカシミール不変量),保存の下での MRS エントロピー最大化問題を考える。こ れはエネルギーおよび循環保存の制約条件の下でのエンストロフィー最小化問題と同値となることが
Naso et. al. [8] によって示されているため,実現される平衡状態は次の条件を満たす状態である。
S(E,Γ) = max
q {S | E =E,C[q] = Γ}. 取り扱いを簡単化するため,ここで(2)を
F(β,Γ) = min
q {F =S+βE[q]| C[q] = Γ}, (2) と書き直し,さらにC[q]の線形性を用いてq˜:=q−q1e1, q1 =
( Γ−∑
i≤2qi⟨ei⟩)
/⟨e1⟩ を定義する。
2019FP‑20
核融合力学分野 一般研究
研究では, ˜qを用いて変分問題(2)を書き直したものを考えることにより,式 (1)で定義される準2次元 プラズマ乱流モデルの予想される平衡状態を考察した。
ラプラシアンの固有モードのうち,空間平均がゼロとなる固有モードをその固有値の絶対値が小さい方 から順にe′i,空間平均がノンゼロとなる固有モードをその固有値の絶対値が小さい方から順にe′′i, i∈ N とする。また,e′iに対応する固有値およびhの成分をそれぞれ −λ′i, h′i とし,µ′i:=λ′i+R−2 を定義す る。さらに (2) をq˜を用いて書き直したものにおいてF の2次の作用素部分に起因する線形作用素Q を考え,Q[e′′i] = 0を実現するモードのうち最小の固有値を有する固有モードとその固有値µ∗を考える。
このとき,E, S,Γ空間における平衡状態のフェイズダイアグラムには次の場合に対応する3つのクラ
スが存在することが分かった。
(i) µ∗< µ′1: 平衡解の存在条件は{Eβ |β > µ∗} (ii) µ∗ > µ′1かつ h′1= 0: 平衡解の存在条件は{
Eβ=µ′1+α2/(2µ′1) |α∈ R} (iii) µ∗> µ′1 かつ h′1̸= 0: 平衡解の存在条件は{Eβ |β >−µ′1}
ここで Eβ はf(β) :=∑
i≥i
(µi⟨ei⟩2/(µi+β))
を用いて次のように定義される。
Eβ(Γ) :=Aβ[h] +Bβ[h]Γ +
(1/2f(β)2)) ∑
i≥1
(µi⟨ei⟩2/(µi+β)2)
.
ただし Aβ[h]および Bβ[h]の詳細は本報告書のスペースの関係上省略する。
【参考文献】
[1] F. P. Brethertona and D. B. Haidvogel, J. Fluid Mech.,78(1) pp.129-154, 1976 [2] C. E. Leith, Phys. Fluids,27pp.1388-1395, 1985
[3] K. Miller, Phys. Rev. Lett.,65, pp.2137-2140, 1990
[4] R. Robert and J. Sommeria, J. Fluid Mech.,229, pp.291-310, 1991
[5] H. Brands, P. H. Chavanism, R. Pasmanter, and J. Sommeria, Phys. Fluids, 11pp.3465-3477, 1999
[6] F. Bouchet and A. Venaille, Zonal Jets, Ed. B. Galperin, Cambridge University Press, 2019 [7] A. Venaille and F. Bouchet, J. Stat. Phys.,143, pp.346-380, 2010
[8] A Naso, P. H. Chavanis, and B. Dubrulle, Euro. Phys. J. l B,77, pp.187–212, 2010
【学会発表】
·青木大輔, 小菅佑輔 ”Neutral effects on the structure of minimum enstrophy flows”, The 28th International Toki Conference on Plasma and Fuion Research, P1-72, Nov. 6 2019, Ceratopia Toki, Toki City, Gifu, Japan
·青木大輔,小菅佑輔 ”エンストロフィーを最小化する流れ構造に対する中性粒子の影響”,プラズマ核融 合学会第23回支部大会、D-3、2019年12月22日,別府国際コンベンションセンター B-ConPlaza
【研究組織】
研究代表者: 岡山大学 大学院環境生命科学研究科 小布施祈織 所内世話人: 九州大学 応用力学研究所 小菅佑輔
確率項を含むプラズマ乱流モデルの解析
Analysis of plasma turbulence model including stochastic terms
富山大学・人間発達科学部 成行 泰裕 研究目的:
プラズマ乱流の性質を理解する場合、その乱流を形成している擾乱間の非線形相互 作用の解明が重要になる。一方で、プラズマ中には速度分布に起因する微視的不安定性 や熱的ノイズなどが存在するため、コヒーレントな波動間相互作用が卓越するとは限らない。
本年度より、これまでの共同研究の成果を踏まえて、粗視化スケールの揺動を確率項 として含むプラズマ乱流モデルの解析を行う。本年度は、実験室プラズマ中のドリフト波の捕 捉モデル (M. Sasaki et al, 2017; 2018) などに対し確率項を導入し、実空間・波数空間のエネ ルギー輸送との関係を議論する。
研究方法:
本研究の推進に当たっては、それぞれの研究グループが理論的・数値的に発展させ た結果について、定期的に筑紫キャンパスに参集して議論を行うことを基本としている。
研究成果:
本 年 度 は 、 実 験 室 プ ラ ズ マ 中 の ド リ フ ト 波 の 捕 捉 モ デ ル (M. Sasaki et al, 2017;
2018)[1,2] として用いられた wave-kinetic equation を用いて議論を行った。ただし、ここでは 実空間 (x) ・波数空間 (k
x) における波の作用の移流を表す項を除くと、波数空間の拡散項の みが有効な状況を考える。また、ここでは wave-kinetic equation に対応する x,k
xの確率微分 方程式を数値的に議論する。数値積分には Eular- 丸山法 [3] を用いている。また、測地線音 波揺動は先行研究 [1] と同様に単色で与えており、平均流は 0 としている。以下に示す計算 においては、初期値はすべての擬似粒子に対し x=k
x=0 とし、擬似粒子の数は 1000 個で ある。
Figure 1(a)(b) は k
xと x の分散の時間発展を示している。 k
xの方程式には波数空間の拡 散項に対応するガウス白色ノイズを与える項があるが、 x の方程式にノイズ項は含まれてい ないことに注意されたい。 Figure 1(a) が示すように、拡散係数に対応するノイズ項の係数が 大きくなるほど、 k
xの分散の時間発展のトレンドが大きくなる。 Figure 1(a) の振動は、測地線 音波揺動の振動周期に対応した k
xの平均値の振動に関係している。
一方で、 Figure 1(b) が示すように x の分散もノイズ項の係数が大きくなるにつれて大き な時間変化を示すようになる。 x の方程式にはノイズ項が含まれないため、この実空間の拡 散は波数空間の拡散により駆動されたものといえる。このような現象は、ジャイロ角にノイズ 項でモデル化されたランダム効果のある磁気流体波中のピッチ角散乱でも見られる [4] 。た 2019FP‑21
核融合力学分野 一般研究
だし、ここで見られる実空間の拡散は、時間に対し比例するブラウン運動的な拡散(古典拡 散)よりも大きな拡散係数を持っているが、この結果は位相空間上の捕捉が生じる系の場合 は自明なものではない。実際、ノイズ項の係数を大きくしていくと、実空間の拡散は減少に 転じる。今後は、初期値やパラメータに対する依存性等の精査を行い、詳細を明らかにする 必要がある。
Figure 1 (a) k
xと(b)x の分散の時間発展。図中のグラフはノイズ項の係数が大きくなるほど拡 散も大きくなる。ノイズの影響がほとんどない場合は分散がほぼ 0 であるため、マーカーで表 示している。
参考文献: [1] M. Sasaki et al, Sci. Rep., 7, 16767 (2017). [2] M. Sasaki et al, Phys. Plasmas 25, 012316 (2018). [3] D. J. Higham, SIAM REVIEW, 43(3), 525–546 (2001). [4] Y. Nariyuki, Phys. Plasmas 26, 112903 (2019).
公表状況:なし 研究組織:
成行泰裕(富大・人間発達) 、佐々木真(九大・応力研) 、羽田亨(九大・総理工)
種々の熱入射法による材料表面の高エネルギー 密度入射損耗解析法の開発
糟谷 紘一A、B,コチャエフ オレグB,島田 義則B,井澤 靖和B,徳永 和俊C,川路 均D
A応用ながれ研究所,Bレーザー技術総合研究所,C九州大学応用力学研究所,
D東京工業大学フロンティア材料研究所
概要 表記の課題に関連する、最近の共同研究 結果について、下記の諸項目についてその概要を 述べる。(1)これまでの表面損耗研究、(2)レーザ ー誘起超音波法による鋼管肉厚測定、(3)最近の 核融合炉関連材料表面の損耗に関する論文調査 結果、(4)今後進める予定の実験のための準備、
(4)その他の関連調査項目。
目的 応用力学研究所の電子ビーム熱負荷発生 装置を用いて、諸材料表面を照射し、各種計測装 置により、表面損耗量(喪失総質量)等を測定す る。これらの結果を生かして、極限状態材料の損 耗破壊監視計測法の確立を目指す。これらが本共 同研究の最終目標である。本研究では、近く再開 する電子ビーム照射のために、関連計測装置の準 備と新規な方法の調査・提案を行った。
これまでの表面損耗研究 本研究に関係が深 い筆者らの損耗研究結果の最近状況は、参考文 献 1 から 5 と、さらに最新のものは、文末の URL に詳しく書いてある。
レ ー ザ ー 誘 起 超 音 波 法 に よ る 鋼 管 肉 厚 測 定 レーザー励起超音波法については、 筆者等
の所属する研究機関(レーザー技術総合研究所 の主な研究グループ構成員が、これまでに各種 インフラ整備を主目的として、長期間実績を積
み上げている(参考文献 6 から7に最新のもの)。
第 1 図は測定法の原理図である。これによるサ ンプル鋼管測定結果の 1 例を第 1 表に示す。
最近の核融合炉関連材料表面の損耗に関する論 文調査結果 筆者らが実験により表面損耗研 究を続けてきた一方で、極めて最近、ITER-BA グ ループが、DEMO 機におけるタングステンダイバ ーター表面の減損率(材料表面の損耗率から堆 積率を差し引いた値)評価の重要性を、むしろ 計算により明らかにした(参考文献 8 から 9)。
今後進める予定の実験のための準備 鋼管の 代わりにサンプルの種類(炉材料)を色々換えて 実験を行った。計測用オシロスコープの信号波 形の1例を第2図に示す。サンプルの実厚さと 計測厚さの一致は、予想通りであった。
その他の関連項目 (1)複合材料と厚さ計によ る損耗破壊監視計測については、より安価で高 性能な厚さ計が市販される状況になった。(2)
関連分光分析のための計測器の整備と初期テス トのために、より明るい近赤外半導体レーザー 等を用意した。(3)放射のアップコンバージョン 法を利用する新しい計測法の予備試験に使える 可能性のある新たな材料(開発と市販)品を見 つけた。
2019FP‑22
核融合力学分野 一般研究