2019特2‑6
2. 学会発表リスト
[1]○Y. Jin, T. Nishizawa, N. Sugimoto, H. Okamoto, and K. Sato, “Development of a wide-field-of-view high-spectral-resolution lidar at 532 nm,” 6th International Symposium on Atmospheric Light Scattering and Remote Sensing (ISALSaRS’19), June 2019, Hangzhou China.
[2]○Y. Jin, T. Nishizawa, N. Sugimoto, S. Ishii, M. Aoki, H. Okamoto, K. Sato, “Development of a high-spectral-resolution lidar at 355 nm and 532 nm using a scanning interferometer,” The 29th International Laser Radar Conference (ILRC29), June 2019, Hefei China.
[3]○神慶孝, ⻄澤智明, 杉本伸夫, ⽯井昌憲, ⻘⽊誠, 岡本創, 佐藤可織, ”⾛査型⼲渉計を⽤いた⼆波⻑⾼ス ペクトル分解ライダーの開発(その2)”, 第 37 回レーザセンシングシンポジウム, 2019 年 9 ⽉, 千葉.
[4]○Y. Jin, T. Nishizawa, N. Sugimoto, S. Ishii, M. Aoki, H. Okamoto, and K. Sato, “Continuous measurement of particle backscatter and extinction profiles with a 355-nm high-spectral-resolution lidar,” The 8th International EarthCARE science workshop, November 2019, Fukuoka.
図1 改良型ライダーのブロック図
AOM
Nd:YAG Laser (Injection seeded) Expander
532⊥
532//
Mirror
Interference filter Beam Splitter
Seeder laser
1064
387 Raman
Iodine cell
532HSR1
532 HSR2 Scanning
Michelson interferometer 355
HSR
Iodine cell
Photo diode SHG device
七尾湾における水温急変に関する研究
能登の森里海研究会 大慶則之
目的
七尾湾は日本海側最大の閉鎖的内湾である。七尾湾では古くからカキ養殖が営まれて日本海側で最 大の生産量を誇っているほか、新たな特産品を目指したトリガイ養殖も進められている。七尾湾北湾 では、成層の発達する夏季に 1 日に最大で 5℃に達する水温の急変がしばしば観測される。これらの 変動は養殖貝類の生育に影響を及ぼすと考えられ、その発生機構の解明は水温変動の予測や七尾湾の 環境変動の理解にとって重要である。ここでは、2019 年 8 月に台風 10 号が能登半島沖を通過した直 後に発生した水温の急低下について、台風通過前後の現場観測データと気象データから海洋構造の変 動を整理し発生要因を検討した。
観測および観測資料
水温の連続観測データは、図 1 に示す北湾の St.A に設置された昇降式観測装置で、HYDROLAB 多項 目水質計により 30 分間間隔で観測された 1m 毎の水温データを用いた。定点観測データは石川県水産 総合センターが 2019 年 8 月 7 日に実施した定点観測データ(St.45~St.18 の 12 点)と、台風 10 号 通過前の 8 月 14 日と通過後の 18 日に実施した北湾の横断観測データ(St.A~St.F の 7 点)を用いた。
観測には JFE アドバンテック RINKO-Profiler を使用した。風データは七尾湾周辺の観測点から、海上風を 良く代表していると思われる伏木と舳倉島のデータを用いた。伏木の風データと台風の経路データは 気象庁ホームページ、舳倉島の風データは海洋保安庁ホームページより引用した。
結果と考察
石川県では 2019 年 7 月末から 8 月中旬にかけて晴れて厳しい暑さが続き、St.A では 8 月中旬に各 層の水温が 30℃以上に達していた。台風 10 号は 8 月 15 日に中国地方を縦断して日本海を北東に進み、
翌 16 日に能登半島沖を通過した。台風通過前後の風と St.A の水温構造の変化を図 2 に示した。舳倉 島では 16 日朝方から 15m/s を超える南南西~南西の強風が連吹した。伏木では 15 日夜半頃に南寄り の風が強まり、16 日昼前から夕方には 6m/s前後の南西~西の風が観測された。St.A では 16 日未明 から 17 日にかけて、各層の水温が底層から表層へと変動を繰り返しながら低下した。変動幅は底層で 大きかった。台風の通過前後に実施した横断観測の結果をみると(図 3)、台風通過後(18 日)は 20 m以深の層が台風通過前(14 日)に観測されなかった低温・高塩分水で占められ、等温線の分布水深 はおよそ 15m 上昇した。また、台風通過前に海面から 15m 深付近までに分布した水温 29℃以上、塩分 33.7 以下の高温低塩分水は、台風通過後には分布域が表層数メートルに減少し、層の厚みは観測線北 西側で薄く、南東側で厚くなっていた。これらの結果から、以下のとおり水温変動の機構を推察した。
台風の能登半島沖通過にともなって、七尾湾付近は 15 日夜半から 16 日夕方にかけて、風向が南から 西へと時計回りに変化する強風の影響下にあったと推察される。St.A が位置する七尾湾北湾の海岸線 は南南西から北北東に伸びていることから、横断観測で台風通過前に表層に分布した高温低塩分水は、
岸にほぼ平行な南から南西の強風が引き起こすエクマン輸送とその後の西風により沖合から湾外へと 移送されたと考えられる。この結果、沿岸湧昇が生じて底層の低温高塩分水が上層に移行し、湾外の 低温高塩分水が底層に進入したと考えられる。湾外の水塊の流入は、8 月 7 日に実施した定期観測時 の湾内の水温、塩分分布で、水温 24℃以下塩分 34.0 以上の水塊が St.18 の位置する湾口部に分布し ていることからも裏付けられる。七尾北湾では、成層期に陸岸に沿った風が引き起こす沿岸湧昇が、
顕著な水温低下を引き起こす要因と推察された。
2019AO‑13
地球環境力学分野 一般研究
図1 観測点の位置
図2 台風10号通過前後の風と水温の変動
図3 St.A~Fの横断観測で得られた水塊構造
(a):8/14水温、(b):8/18水温、(c):8/14塩分、(d):8/18塩分
水深 [m] 水深 [m]
水深 [m] 水深 [m]
図4 8月7日の定点観測(St.45~18)で得られた水塊構造 (a):水温、(b):塩分
-20 0 20
-10 0 10
14 12 10 8 6 4 2 0
31 30.5
30.5 30
29
29
28.5 28
28 30
27 26
8/13 8/14 8/15 8/16 8/17 8/18 8/19
水深[ m ]
水温変動(St.A)
風速[ m/s ]
伏木アメダス 舳倉島灯台
2019
能登半島 舳倉島
伏木 富山湾
30' 40' 50' 137°E 10' 20' 30' 40' 50' 138°E 30'
40' 50' 37°N 10' 20' 30' 40' 50' 38°N
0 10 20Km 37°N50' 55' 137°E 5'
5' 10' 15'
0 5 10
穴水
七尾 能登島
富山湾 18
26 16 15 44
43 42
5 45
9 48 14
43 A
BC DE
F
Km
等密度面モデルを用いた陸域海洋統合物質循環モデルの構築
京都大学・総合生存学館 山敷 庸亮 1. 研究目的
本課題では陸域から沿岸域にかけて起こる水循環、つまり河川から海洋への流れ・物質輸送が再現でき る数値モデルの構築を目指す。豪雨に伴う河川流出は陸域環境での洪水や濁流増加とともに沿岸域の海 洋環境を激変させる。山岳地域から平地、そして干潮水域を経て海洋に至る領域でそれぞれ流れを支配 する力学レジームが劇的に変化するため、河川モデルは通常それぞれの領域の流況に特化したモデルを 別々に使用している。特に河川海洋接合部は、モデルにおける擾乱の伝搬速度の違いによりこれまで十 分な解析ができなかった領域である。また豪雨時は土地利用形態ごとに異なる濃度の懸濁物質流出が発 生しており、懸濁物質に伴って栄養塩そして農薬や汚染物質などが流出している。これらの物質輸送は 沿岸、そして海洋環境に大きな影響を与える。流出イベントによる淡水輸送・物質輸送を予測するには 流況モデルに懸濁物質流出モジュールを融合することで、河川沿岸環境に影響を与える水循環・物質循 環のどちらをも追跡するモデルを開発する必要性がある。さらに懸濁物質の影響を河口から沿岸域へと 運ぶ過程を追跡できる粒子追跡モデルが組み込まれた海洋モデルの開発を進めることで、陸起源のもの が沿岸から海洋へと放出するプロセスを明らかにできる。
2. 解析手法
陸域から海域を繋ぐ海洋河川一体型モデルとして等密度面モデル(Kida & Yamashiki, 2015)をベースに、
土地利用モジュールを導入することで、陸域の土地利用変化による透水係数や粗度、貯留量などについ てパラメータを導入可能なものとし、一般的な水文モデルと同等の発展的構築を進めている。
本年度は領域スケールの河川海洋一体型物質循環モデルの構築を目指し、九州に焦点をあてたモデル の構築と再現性を検証する。観測データや河川モデルの出力結果を比較するとともに、同時に複数の河 川、そして集中豪雨・台風時など複数の降雨シナリオに対する再現性の精度検証を進める。
流出イベントとして2015年の7・8・9月の降雨イベントに着目し、降雨量・降雨の起きる時間スケー ル、が異なる際のモデルの再現性を検証した。出力結果は国交省による観測流量データ(www.river.go.jp) が存在する一級河川を中心に比較し、河川モデルとの比較も行う。河川モデルは9月のイベントに最適 化したものを用いる。さらに現実的な流量・物質循環の再現を目指すため、河川モデルで用いられてい るような陸面過程モデルをモデルコードに導入する。
3. 解析結果
2015年7月17日~23日、8月23日~27日、9月4日~8日の3つの流出イベントを再現した。出力 結果は国交省の観測データとの比較が可能な6本の一級河川(嘉瀬川・菊池川・肝属川・六角川・筑後 川・大淀川)のピーク流量・ピーク時間、そしてこれらと流路延長・流域面積・河川勾配との関係性を 検証した。
再現されたピーク流量とピーク時間は観測値とくらべ100~150%、そして0~8時間ほどの違いがあ るものの、降雨に伴う河川流量の増加と減少を6つの河川で同時に再現することに成功した。再現性は 一部のイベントを除き、全ての河川で同程度であった。降雨イベントの違い(強い雨、豪雨、数日間に わたる強い雨)による再現性の違いは確認できなかった。モデルで再現された全河川の平均流速を検証
2019AO‑14
地球環境力学分野 一般研究
ことが明らかになった。例えば嘉瀬川で8月の降雨イ ベント一回に対して二回の流出イベントが観測され ている。これはおそらくダムなどによる流量操作の結 果であろう。河川モデルで行われているチューニング は、このような人為的な要素が含まれた観測データに 基づいて行われている可能性があるため、出力結果が 物理法則にどこまで忠実かは注意が必要である。より 詳細な検証は流路に沿って進める必要がある。
再現性が高かったのは熊本県の菊池川と鹿児島県 肝属川である。2回に分かれた発生した降雨イベント への応答も再現できていた。一方、筑後川のように洪 水がおきやすい地形をもつ河川ではモデル内で洪水 が発生しており、本来は川に沿って流れるはずの水が 陸面へと溢れていた。今後、一体型モデルの再現性を 高めるには堤防や流路幅の変化など、より現実的な地 形を解像する必要性を示唆している。
4. 考察
河川海洋一体型モデルで再現された流出イベントはピー ク時間が観測より遅れる傾向がすべての川で確認され
た。これは流速に大きな影響をもつ底面摩擦係係数・流路幅・河川の最大水深の値に改善が必要なことを示し ている。流路延長や流域面積とモデルの再現の関係の解析によりモデルの再現値が物理的に不自然ではない ことも確認できたことから、河川海洋一体型モデルが多様な陸面過程をシームレスに再現することができている ことを示唆している。本年度は高度化された陸面過程も実装した。今後、現実的に土地利用データを用いて再 度数値実験を行うことで陸面過程が流出イベントに与える影響を明らかにする予定である。
5. 研究成果 学会発表
日本地球惑星科学連合大会, 2018,「九州の河川海洋一体型モデル開発」, 堤隆浩・木田新一郎・黒木龍 介・山敷庸亮
海洋学会秋季大会,2018,「九州の河川海洋一体型モデル開発」, 堤隆浩・木田新一郎・黒木龍介・山敷 庸亮
九州の河川海洋一体型モデルの開発、堤隆浩、九州大学総合理工学府、修士論文
6. 研究組織
代表者 京都大学総合生存学館 教授 山敷庸亮 協力者 東京大学大気海洋研究所 助教 松村義正 協力者 東京大学大気海洋研究所 特任研究員 干場康博
図1:2015年9月8日0時の河川水の流出 ベントの再現。色は淡水層の厚みを示してい る。陸域では流路に沿った河川の形成、そし て海域では河口付近にプリュームが形成さ れている様子がわかる。(堤2020)