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第 5 章 サイズ適応型原発性肝がん検出法 53

5.3 実験

5.2.4 Level Set Methodの改良

前項までに検討した改善項目を踏まえ,様々なサイズの腫瘍検出を実現する,新たなLevel

Set Methodの処理を以下のように定める.

Step1 原画像に対し,5.2.1で述べたBilateral Filterを適用する.

Step2 グラフカット法を用いて抽出した肝臓領域を初期曲面とし,式(2.6)に基づき,補助 関数ψを初期化する.

Step3 式(5.1)に基づき,成長速度F を算出する.

Step4 式(2.11)に基づき,Step3にて算出した成長速度F を用いて補助関数ψを更新する.

Step5 補助関数ψの変化が閾値以上である場合,Step3に戻る.閾値より小さい場合は,処 理を終了する.

なお、GAC法は濃度値Iの1次微分を用いるが,本手法は腫瘍領域の形状特性を考慮し,

2次微分まで用いる点が特徴である.

5.3 実験

提案手法の有効性を示すため,臨床で実際に撮影した24症例のCT画像を用いて腫瘍の検 出性能を評価した.本実験では,日立製作所の倫理審査委員会にて認可された,匿名化CT検 査画像を用いた.本実験で用いた画像仕様を表5.1に示す.本実験では,まず5.2にて提案し た改善手法の効果を,実画像を用いて定性的に評価した.定性評価では,検出領域を白黒以外 の色(赤,青,緑など)で表示する.更に提案手法を定量的に評価するため, True positive

(TP,検出された肝癌の数),False positive(FP,誤検出された領域の数),Sensitivity(True positive/正解腫瘍の数)を算出し,提案手法(式(5.1))と,式(2.31)) (C-V)に加えて,以 下に示す2種類の手法を比較した.

F(κ) = (F1(I) +F2(∇I) +F4(V EF ilter))·F0(κ) (5.7)

F(κ) = (F1(I) +F2(∇I)×F3(HCCF ilter))·F0(κ) (5.8) 式(5.7)はGAC にF4(V EF ilter)を追加,式(5.8)はGAC に F3(HCCF ilter)を追加し たものである.式(5.1)と式(5.7)を比較することで,低コントラストに起因する検出精度の

5.3.

実験

66

改善を実現する新たな成長速度項F3(HCCF ilter)の効果を確認することができる.また,式

(5.1)と式(5.8)を比較することで,血管に起因する検出精度劣化の改善を実現する新たな成

長速度項F4(V EF ilter)の効果を確認することができる.さらに、式(5.1)と式(2.31)を比較 する事で,C-V法との優位性を確認することができる.

Table.5.1:

画像仕様

スライス厚

5mm

(ただし,

6

症例は

2.5mm

) スライス間隔

5mm

(ただし,

6

症例は

2.5mm

スライス枚数

5mm

の場合

40〜50

枚,2.5mm の場合

80〜90

画素サイズ

0.645mm

造影条件 イオパミロン

300

(濃度)もしくはイオパミロン

370

(濃度)

100cc

30

秒で注入,動脈相撮影は注入開始後,約

35

秒後に撮影開始

なお本実験で用いたBilateral Filterh(x)を以下に示す.

h(x) = k1

D

I()c(, x)s(I(), I(x))d (5.9) ただし,Dxの近傍領域,

k(x) =

D

c(, x)s(I(), I(x))d

c(, x) =e

1 2(k−xk

σd )2

s(I(), I(x))) =e

1

2(kI()−I(x)kσγ )2

Iは画素の濃度値である.また,実験では式(5.6)の関数gとして以下の式を用いた.

g(x) =max(0, min(1,(x−C3)/C4)) (5.10) ただし,C3C4は定数である.さらに定量評価では,パラメータを調整した性能を評価する ため,最も検出性能に影響を与えるC2に関するFROC (Free-response Receiver Operating Characteristic)曲線を用いて比較した.ただし,式(5.1)ではC2が含まれないため,2種類

(式(5.7),式(5.8))の比較手法を用いた.本論文で用いた処理パラメータを表5.2に示す.表

5.2に示したパラメータは,先に示した24症例とは異なる15症例の学習データ(画像仕様は,

5.3.

実験

67

スライス厚とスライス間隔は全て5mm,残りは表5.1と同じ)を用いて,実験的に値を決定 した.この学習データは,2010年までに取得したデータセットを用いた.またテストデータ は2011年以降に取得したデータセットを用いた.また,前述したように,F3の算出時のみ2 次元平面の処理とした.これは,本実験で扱う画像は等方ボクセルではないため,パーシャ ルボリューム効果により,特にStep1において必ずしも輝度値が低い領域が存在しないケー スがあるためである.

Table.5.2:

処理パラメータ

A 0.1

σ

d 3

σ

r 10

C1 130

C2 40

α

1

r1 0.1

r2 0.1

v 3.0

Thr 20

N1

(画素)

32

N2(画素) 64

γ

1

Thr3 4

β

1

C3 60

C4 60

また,正解腫瘍の定義を以下のようにする.『医師が複数スライスを3次元的に視認し,凡 その腫瘍領域を検出したと認めたもの.ただし,「血管(門脈,下大静脈など)と腫瘍の連結」

「肝実質と腫瘍の連結」のように他組織と結合した結果は,誤検出として扱う。』これは,複 数スライスを3次元的に視認する読影医師の業務を考慮したためである.すなわち,読影医 師は複数スライスを3次元的に視認する際,他組織を最初に認めると,腫瘍が含まれていて も誤検出と認識する.このため,今回は他組織と結合した結果も誤検出として扱う.

5.3.

実験

68

5.3.1 白色雑音起因の精度劣化改善手法の定性評価

5.2.1で述べた白色雑音の除去フィルタに起因する精度劣化の改善を定性的に示すため,実

データを適用して評価を行った.図5.7に,1スライスしか見えない小結節を含む画像に対 して,(a) 3次元Median Filterと(b) Bilateral Filterを適用し,提案手法(式(5.1))を成 長速度とするLevel Set Methodを適用した結果を示す.(a)では,小結節のため前後スライ スは肝実質となり,未検出となる.(b)ではエッジ成分は保持したまま白色雑音の除去をする Bilateral Filterを適用しているため,小結節も検出できる.本例より,Bilateral Filterを適用 することで,白色雑音除去フィルタに起因する検出精度の劣化を改善できることを確認した.

Fig.5.7:

ノイズ除去フィルタによる小結節検出の改善例

5.3.2 低コントラスト起因の精度劣化改善手法の定性評価

5.2.2にて提案した低コントラストに起因する検出精度の改善を実現する,新たな成長速度

F3(HCCF ilter)の効果を定性的に示すため,実データを適用して評価を行った.図5.2に示

5.3.

実験

69

したコントラストが低い画像に対して,(a)C-V((2.31) )を適用した結果と(b)(5.7) を適用した結果と(c)提案手法(式(5.1))を適用した結果を図5.8に示す.(a) (b)では検出に 失敗しているが,(c)では正しく検出している.本例より,5.2.2にて提案した新たな成長速度

F3(HCCF ilter)により,低コントラストに起因する検出精度を改善できることを確認した.

Fig.5.8:

コントラストが低い腫瘍の検出例

5.3.3 血管起因の精度劣化改善手法の定性評価

5.2.3にて提案した血管に起因する誤検出や不適切な形状検出の改善を実現する,新たな成

長速度F4(V EF ilter)の効果を定性的に示すため,2種類の実データを適用して評価を行った.

始めに,血管に起因する誤検出削減効果について述べる.図5.9に,(a)比較手法(F4を用い ない場合,式(5.8))と(b)提案手法(式(5.1))を適用した結果を示す.(a)では,肝臓内血管 を誤検出しているが,(b)では誤検出が見られないことが分かる.

次に,血管と連結している腫瘍を含む画像に対して,(a)比較手法(F4を用いない場合,

5.3.

実験

70

Fig.5.9:

血管に起因する誤検出削減例

式(5.8))と(b)提案手法(式(5.1))を適用した結果を図5.10に示す.(a)の検出結果では,

腫瘍と血管が連結して検出されており,腫瘍と血管が同一領域として検出されている.一方 (b)の検出結果では腫瘍のみが検出されており,血管と連結していない.本例より,5.2.3にて 提案した新たな成長速度F4(V EF ilter)により,血管に起因する誤検出の削減,および,血 管と連結する腫瘍検出精度の改善が実現できることを確認した.

5.3.4 提案手法の定量評価

提案手法の効果を定量的に示すため,24症例を用いて,比較手法(3種類)と提案手法の TP,FP,Sensitivityを比較した.なお,表5.3に本実験で用いた腫瘍サイズの分布を示す.

Table.5.3:

腫瘍サイズの分布

最小値

5.87mm

最大値

44.9mm

平均値

17.5mm

標準偏差

8.90

評価結果を表5.4に示す.低コントラストに起因する検出精度の改善を実現する新たな成 長速度項F3(HCCF ilter)の効果を確認するため,まず始めに式(5.7)と式(5.1)を比較する.

5.3.

実験

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Fig.5.10:

血管と連結する腫瘍(30.46mm)の検出精度の改善例

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