第 5 章 サイズ適応型原発性肝がん検出法 53
5.2 サイズ適応型原発性肝がん検出法の提案
5.2.2 低コントラスト起因の精度劣化の改善
小結節など低コントラストに起因する精度劣化に対しては,大きい腫瘍と小結節に共通す る性質に着目した新たな領域ベースの成長速度を導入すればよい.そこで,両者に共通する性 質として,腫瘍内の画素値は肝実質(周辺)より高輝度値であること,つまり,腫瘍内画素の 周辺に輝度値が低い領域が全方向に必ず存在するという性質を利用する(図5.3).このため,
大きい腫瘍と小結節に共通する性質を持つ画素を強調する新たなフィルタ(Hepatocellular carcinoma (HCC) Filter)を提案し,HCC Filterの出力値に基づいて新たな成長速度項F3 を定義する.
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サイズ適応型原発性肝がん検出法の提案
59Fig.5.3:
大きい腫瘍と小結節に共通する画像の性質
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サイズ適応型原発性肝がん検出法の提案
60具体的な処理の流れを以下に示す.ある画素Pの成長速度項F3を算出するために,画素P を関心画素としてHCC Filterを適用し(Step1,2),算出した値に基づいて成長速度項F3 を算出する(Step3).
Step1 HCC Filterとは,関心画素と周囲画素の輝度値の大小を検出するフィルタである.こ のフィルタでは,まず関心画素の周辺全方向に輝度値が低い領域が存在するか否か探索 する.具体的には,全ての周辺8方向に対して,低輝度画素が存在するか否か判定し,
存在する場合は-1の値を,存在しない場合は1の値をオリジナル画像とは異なる一時 メモリ空間に保存する(図5.4).探索領域は関心画素(x, y)から画素(x±N2, y±N2)
(ただしN2は自然数の定数)までとする.さらに計算を高速化するため,関心画素から 画素(x±N1, y±N1)(ただしN1は自然数の定数,0< N1< N2)までの画素は探 索から除外する.なお,N1を導入することにより,例えばx方向では関心画素から画 素(x±N1, y)までの間に境界が2つ存在し,かつ画素(x±N1, y)から画素(x±N2, y) までに境界が存在しない場合,関心画素を腫瘍と判別しない可能性がある.しかし後述 の実験では,N1,N2を適切に設定する(実験的に値を決定する)ことで,実際にはこ のような場合は生じなかった.
Step2 Step1の判定結果からヘシアン行列を算出し,固有値を算出する(図5.5).Step1に て設定した探索空間により,関心画素が腫瘍内に存在する場合,腫瘍の端/腫瘍の中央 に関わらず,Step1の判定結果の多くは-1に囲まれる.一方,関心画素が腫瘍内に存在 しない場合,Step1の判定結果の多くが1になる.この二つの状態を区別するため,領 域の概形(極値,鞍点など)が判定できるヘシアン行列を利用する[63].具体的には,
注目画素を中心としたヘシアン行列を算出し,その固有値からStep3に示すように関 心画素が極値(すなわち一時メモリ内で-1に囲まれているか否か)か否かを判定する.
Step2の具体的な処理について述べる.まず,Step1にて得られた値を用いて二次微分
を求め,一時メモリ内にある関心画素のヘシアン行列を計算する.次に,ヘシアン行列 から固有値を算出する.
Step3 Step2で算出した固有値から成長速度の値を決定する.・関心領域が周辺より高輝度
(ヘシアン行列の固有値 λ0λ1が共に小さい)であれば,成長速度は小さい値を出力・
関心領域が周辺と同じ,もしくは周辺より低輝度(上記以外)であれば,成長速度は大 きい値を出力具体的には,次式に基づいてF3を決定する.
F3=
0 (ifλ00,λ10,λ0 ≤λ1 <0)
1 (otherwise)
(5.4)
5.2.
サイズ適応型原発性肝がん検出法の提案
61Fig.5.4: Step1
の概要
5.2.
サイズ適応型原発性肝がん検出法の提案
62Fig.5.5: Step2
の概要
5.2.
サイズ適応型原発性肝がん検出法の提案
63なお,一時メモリ空間にて,全ての方向で同じ輝度勾配になるなど,ヘシアン行列が正 則でない場合には,F3= 1とする.また本論文では,F3 = 0の条件(λ00λ1 0) を以下のように定義する.
|λ0| ·(λ1
λ0)γ> T hr3 (5.5)
なお,提案手法ではF3を2次元スライス画像上で計算するが,Sato らが提案した球 状強調フィルタ(Sbrob)[63]を用いて,式(5.4)においてSbrob > T hr3 を満たす時に F3= 0とすることで,容易に3次元ボリューム画像へも拡張が可能である.