1. 試料
UCN-01, [3H]UCN-01(12 Ci/mmoL), UCN-02, Staurosporine, hAGP(シグマ 社)及びhAGPのcDNAは協和発酵工業(株)から恵与されたものを用いた. hAGP
は SDS-PAGE で単一バンドであることを確認した後に使用し, その平均分子量を
44,100 と仮定した. Sequencing-grade modified trypsin はプロメガ社より購入した.
PNGase F はロシュ社より購入した. クロルプロマジン, プロゲステロン, プロプ
ラノロール及びワルファリンはシグマ社より購入した . プラスミド精製キット
(QIAGEN Plasmid Maxi Kit, QIAprep Spin Miniprep Kit)はキアゲン社より購入し た. 各種制限酵素, アルカリフォスファターゼ(E. Coli C75), DNA ライゲーシ ョンキット(DNA Ligation Kit Ver. 1), DNAポリメラーゼ(Premix Taq [Ex Taq Version])はタカラ酒造より購入した. DNAシーケンス用試薬(Dye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit)はパーキンエルマー・アプライドバイオシステム 社より購入した. Pichia Expression キットはインビトロゲン社より購入した. その 他の試薬, 溶媒類はすべて市販特級品を使用し, 溶媒としての水はイオン交換水 を使用した. 緩衝液は20 mM Tris-HCl buffer(pH 7.4)を使用した.
2. UCN-01-hAGP結合実験
試料を, 4 ˚C, 225000 × g, 24時間遠心分離した後, hAGPの存在しない位置(上
から 1 cm)からサンプリングを行い, HPLC により, 非結合形薬物濃度を測定し
た. 非結合形薬物濃度は, 以下の(1)式を用いて補正した.
[Df]=[Df](1cm)×C0
C (1)
[Df] : free concentration of UCN-01
[Df](1 cm): free concentration of UCN-01 at 1 cm from the top after centrifuging C0 : control(reserved at 4 ˚C for 24 hours, no hAGP)
C : free concentration of UCN-01 at 1 cm from the top after centrifuging(no hAGP)
結合率は補正後の非結合形薬物濃度より, 以下の(2)式を用いて算出した. 各種 hAGP 及びUCN-01の濃度は20 µM で行った.
bound (%) =[Dt] - [ Df]
[Dt] ×100 (2)
[Dt] : total concentration of UCN-01 [Df] : free concentration of UCN-01
結合定数はUCN-01濃度が3.2-8 µM に調製した hAGP溶液(4 µM)を, 結合率 と同様に, 非結合形薬物濃度を測定した. 結合パラメータはScatchardの式(3)に 従って算出した65).
r
Df =nK −rK (3)
n : number of binding sites K : binding constant Df : free drug concentration
r : moles of bound ligand per mole of total protein
[HPLC条件]
カラム : YMC AM-312(ODS, 6mm I.D. × 150mm, YMC Co., Ltd. ) 検出器 : 日立F-1050型蛍光検出器
ポンプ : 日立L-6000ポンプ
移動相 : 0.1%トリエチルアミン/0.05 Mリン酸緩衝液(pH7.3):アセトニトリル=50: 50(v/v)
流速 : 1mL/min
検出 : 励起波長310 nm, 蛍光波長410 nm 注入量 : 20 µL
3. 修飾 hAGPの調製 Trp修飾hAGPの調製
Trp 残基の修飾は Fehske らの方法 66)に従って行った. すなわち, HNBB-エタノ ール溶液を酢酸溶液(pH 4.5)に溶解したhAGP溶液に加え, よく撹拌した後, 4 ˚C で2時間撹拌した. 反応後, 3000 rpm, 30分遠心分離し, 上清を40時間透析後, 凍 結乾燥した. hAGP と修飾剤のモル比は, hAGP:修飾剤=1:100 で行った. 修飾率 は以下の(4)式を用いて算出した.
modified (%) = A410 × 44100 × 0.4980
13800 (A280−0.167 × A410) ×100 (4)
A410 : Trp修飾hAGPの410 nmにおける吸光度 A280 : 未修飾hAGPの280 nmにおける吸光度 44100 : hAGPの分子量
Lys修飾hAGPの調製
Lys 残基の修飾はフェニルイソシアネートを使用して行った 50). フェニルイソシ アネート溶液をリン酸緩衝液(pH 7.4)に溶解したhAGP溶液にゆっくりと滴下し, 4
˚Cで2時間撹拌した. 反応後, 10000 rpm, 30分遠心分離し, 上清を40時間透析 後, 凍結乾燥した. hAGPと修飾剤のモル比は, hAGP:修飾剤=1:300で行った. 修 飾率はε=14500及びA325(Lys修飾hAGPの325 nmにおける吸光度)を用いて, Trp 修飾hAGPと同様に算出した.
Tyr修飾hAGPの調製
Tyr残基の修飾はSokolovskyらの方法52)に従ってTyr残基をニトロ化した. すな
わち, TNM-エタノール溶液をトリス緩衝液(pH 8.0)に溶解した hAGP 溶液に添
加し, 4 ˚Cで 2 時間撹拌した. 反応後, 60 時間透析し, 凍結乾燥した. hAGP と 修飾剤のモル比は, hAGP:修飾剤=1:500 で行った. 修飾率は以下の(5)式を用い て算出した.
modified (%) = A428
4100×c×m × 100 (5)
A428 : Tyr修飾hAGPの428 nmにおける吸光度
4100 : ニトロチロシンの428 nmにおける分子吸光係数 c : 蛋白質濃度
m : hAGP中に存在するTyr残基の数
His修飾hAGPの調製
His 残基の修飾は DEP を使用して行った 51). DEP-エタノール溶液を酢酸緩衝液
(pH 6.5)に溶解したhAGP溶液に加え, よく撹拌した後, 4 ˚Cで20分撹拌した. 反 応後, 40 時間透析後, 凍結乾燥した. hAGP と修飾剤のモル比は, hAGP:修飾剤
=1:10で行った. 修飾率は以下の(6)式を用いて算出した.
modified (%) =
A240× 3mL
mL of test solution
∆ε × c × m ×100 (6)
∆ε : ジエチルピロカルボネートの分子吸光係数(3.6)
c : 蛋白質濃度
m : hAGP中に存在するHis残基の数
A240: His修飾hAGPの240 nmにおける吸光度
4. 蛍光スペクトル測定と蛍光消光法
蛍光スペクトルは, 励起波長295 nm, 蛍光極大波長340 nm近傍におけるTrp残 基由来の hAGP の蛍光強度を測定した. 蛍光消光は, 薬物滴下により, 蛍光スペ クトルと同様に測定し, 蛍光強度をプロットして得られた. 2 mLのhAGP(1 µM)
に0.25~3 µMになるように薬物を滴下した.
5. CDスペクトル法
CD スペクトル測定は日本分光製 J-720 分光偏光計を利用して行った. 測定は 25
˚Cで, hAGPは10 µM 濃度で行い, 遠紫外領域(200~250 nm)では0.1 cmセルを, ま た近紫外領域(250~350 nm)では1 cmセルを用いた. 平均モル楕円率([θ])の算 出法としては, 糖蛋白質の糖鎖部分(平均分子量約45%に相当)は CD スペクトル に影響を示さないので, ペプチド部分の平均残基分子量を 119 として, 式(7)と
(8)に従い算出した.
[θ]=100× θobs
l×Cr (7)
θobs(deg): 見かけの楕円率
l : 透過距離(セル長, cm)
Cr =[hAGP](%)×10×(1−0.43)
119 (8)
Cr : 平均残基モル濃度(mol/L)
6. アシアロ hAGPの調製
アシアロhAGPはOkaとWeigelの方法67)に従って, hAGPをClostridium perfrigens 由来のノイラミニダーゼ(Type VI-A, シグマ社)で処理して調製した. hAGP 溶液
(0.1 M酢酸緩衝液, pH 5.0, 10 mg/mL)にノイラミニダーゼ(緩衝液5 mL中に0.2
unit)を加え, 37 ˚Cで約20時間撹拌した. その後, 8 µm のフィルターでノイラミ
ニダーゼを取り除き, そのろ液をイオン交換水で透析後, 凍結乾燥した. 調製した アシアロ hAGP の脱シアル酸含量は, 透析前の反応溶液をチオバルビツール酸法で 算出した68). その結果, 除去されたシアル酸はhAGP 1モルあたり約15モルと算出 され, 少なくとも90%以上のシアル酸が除去されたことが確かめられた. また, ア シアロhAGPの分子量は40, 000と仮定した.
7. hAGPバリアントの調製
Herveらの方法69)に従って行った. すなわち, iminodiacetate-sepharose gel(Chelating Sepharose Fast Flow, Pharmacia, 17-0575-01)カラムをイオン交換水で洗浄後, 0.2 M CuCl2水溶液を流し, Cu++をキレートさせる. 次に0.1 M pH 3.8 酢酸ナトリウム緩衝 液を流すことにより過剰なCu++イオンを除去する. Cu++イオンを除去後移動相を流し 安定化後, サンプルをインジェクトする. インジェクト終了後, 約6 時間後に保持 されずに溶出する F1*S variant を分取する. F1*S variant を分取後, イミダゾール
(最終濃度20 mM)を加えた移動相を流し, 約14時間後に溶出されるA variantを 分取する. 分取した各variantをイオン交換水にて透析後, 凍結乾燥する.
[HPLC条件]
カラム : IDA-Cu++gel, 26mm φ × 55 cm(300 mL ca)
検出器 : JASCO UV-970型UV検出器 ポンプ : JASCO PV-980ポンプ
移動相 : 0.02 Mリン酸緩衝液(pH 7.3, 0.5 M NaCl)
流速 : 1 mL/min 検出 : UV 280nm 注入量 : 1 mL
8. 光アフィニティラベル
50 µM hAGPと0.08 µM [3H]UCN-01を氷上で1時間インキュベート後, 水銀灯
(100W black lamp)により30分間光照射し, 光アフィニティラベルを行った. free の薬物を除くため, アセトン沈殿により蛋白質のみを回収後, 20 mM Tris-HCl buffer
(pH 7.4)に溶解した.
9. 光アフィニティラベル法による置換実験
50 µM hAGP と0.08 µM [3H]UCN-01を氷上で1時間インキュベートする際, それ ぞれの置換剤を250 µM 添加し, 光アフィニティラベルを行った.
10. SDS-PAGE
Laemmli の方法に従って行った70). SDS-PAGE は, 10%ポリアクリルアミドゲル を用いて行った. 蛋白質の染色には, CBBを用いた. 分子量マーカーとしては, 下 記の蛋白質を用いた. α-lactalbumin(分子量:14, 000), trypsin inhibitor(分子量:20, 100), ovalbumin(分子量:45, 000), albumin(分子量:66, 000), phosphorylase b(分子量:97, 000).
11. Tricine SDS-PAGE
Schaggerとvon Jagow の方法に従った71). 濃縮ゲル(4% T, 3% C), スペーサー ゲル(10% T, 3% C), 分離ゲル(16.5% T, 3% C)を用いて電気泳動を行い, 蛋白 質の染色には, CBB を使用した. 分子量マーカーとしては, 下記の蛋白質を用い た. insulin(分子量:3, 000), bovine trypsin inhibitor(分子量:6, 200), lysozyme(分 子量:14, 300), ß-lactoglobulin(分子量:18, 400), carbonic anhydrase(分子量:29, 000),
ovalbumin(分子量:43, 000).
12. Electroblotting
電気泳動後, ゲルをtransfer buffer(25 mM tris, 193 mM glycine, 10% methanol)に 浸し, ATTO社製の blotting 装置(AE-6675P)により, ゲル中に存在するペプチド をPVDF膜に転写した.
13. hAGPの糖鎖切断
光ラベル化したhAGP をアセトン沈殿後, buffer 100 µL に溶解し, 1% SDS と ß-メルカプトエタノールをそれぞれ10 µL加え, 100 °Cで 10 分間加熱し還元した. 次 に, 10% MEGA-8を10 µL, 水を50 µL加え, PNGase Fを用いて, 室温で24時 間インキュベートして脱糖を行った. その後 4-ビニルピリジンを加え, 窒素置換 を行い, 遮光した状態で, 室温 30 分間インキュベートした. サンプルは脱塩のた めマイクロ透析法を用いて0.1 M炭酸水素アンモニウムでマイクロ透析を行った.
14. 脱糖 hAGPの酵素消化
脱糖した hAGP を酵素消化するため, トリプシンを用いて消化した. トリプシ
ンとhAGPの割合が1:20 (w/w)になるように加え, 37 °Cで6時間インキュベートし
た.
15. 逆相 HPLCによるトリプシン消化 hAGPの粗精製
トリプシンで消化した脱糖hAGPのペプチドを分離するために, 逆相HPLC を用 いて粗精製した. 測定条件は以下の通りである.
カラム : PROTEIN & PEPTIDE C 18 (VYDACTM) 検出器 : Waters 2487 Duel λ Absorbance Detector ポンプ : WatersTM 600 Pump
移動相 : A: 0.1% TFA/water B: 0.085% TFA/acetonitrile
グラジエント条件
min A (%) B (%)
0 10 15 20 25 26
95 55 55 0 0 95
5 45 45 100 100 5
流速 : 1mL/min 波長 : 210 nm 注入量 : 20 µL
分離したペプチドを 30 秒毎に分取し, 液体シンチレーションカウンターで放射 活性を測定したところ, 2 つの fraction で強い放射活性が観察された. そこで, こ
の2つのfractionを分取し, エバポレーターで溶媒を濃縮した.
16. Capillary HPLC によるペプチド分離
逆相 HPLC により粗精製したペプチドを Applied Biosystems 社製の ABI 173A microblotter capillary HPLC system72)により, さらに細かい分離を行った. 測定条件 は以下の通りである.
カラム : C 18, 5 µm, 120 A 150 × 0.5 mm BROWNLEE COLUMNS (Perkin Elmer) 検出器 : Perkin Elmer Series 200 UV/VIS Detector
ポンプ : ABI 140D Solvent Delivery System
移動相 : A: 0.1% TFA/water B: 0.085% TFA/acetonitrile