第 6 章 ペンを握る動作を利用したインタラクション手法 52
6.3 gripping の実現
第6章 ペンを握る動作を利用したインタラクション手法 55
表6.1: grippingと筆圧,バレルボタンの比較 入力値 操作場所
gripping 連続値/離散値 空中/平面上
筆圧 連続値/離散値 平面上 バレルボタン 2値の離散値 平面上(実装)
い状態のどちらでも入力を行うことができる一方,筆圧とバレルボタンはペンとディスプレ イが接している状態でしか入力操作が行えない.バレルボタンは実装次第でペンとディスプ レイが接していない状態でも操作可能であるが,筆圧はペン先とディスプレイ面にかかる力 であるため,操作時に必ずディスプレイと接触している必要がある.
筆圧やバレルボタンと比較したときのgrippingの利点は,ペン先の状態,つまりペンがディ スプレイに接しているか否かに関わらず,連続値と離散値の両方を入力できることである.
第6章 ペンを握る動作を利用したインタラクション手法 56
感圧センサ
加速度センサ
図6.2:改良したPressure-Sensitive Stylus
図6.3: Pressure-Sensitive Stylusのグリップ部 6.3.2 ワイヤレスPressure-Sensitive Stylus
6.3.1節で紹介したPS StylusはPCとケーブルで繋がっており,操作の邪魔になることも考
えられる.そこで,ケーブルなしでPCと接続できる,ワイヤレス版のPS Stylusを開発した.
使用したモジュールを図6.4に示す.図6.4の左から,PCと無線通信するためのBluetooth モジュールであるBlueSMiRF WRL-00582,感圧センサから値を読むためのAVRマイコンで
あるArduino Pro Mini 328 5 V 16 MHz,およびバッテリのリチウムイオンポリマー電池であ
る.BluetoothモジュールはArduinoがAD変換した後のセンサ値を,Serial Port Profile(SPP) プロファイルを用いてPCに送信する.
これらを小さなボックスの中に入れ,それをペンの上部に付加した.ボックスを取り付け たワイヤレスPS Stylusの外観を図6.5に示す.ワイヤレスPS Stylusは全長175 mm,グリッ プ部の太さは20 mm,重量は95 g,ペン先から120 mmの位置に重心がある.
第6章 ペンを握る動作を利用したインタラクション手法 57
図6.4:ワイヤレスPressure-Sensitive Stylusに利用したモジュール
図6.5:ワイヤレスPressure-Sensitive Stylus
6.3.3 デバイスの設計
人間は指先に強い力を長時間加え続けると,その検知能力は徐々に低下し,力の制御がう まくできなくなる.これは,触圧の検知を行う指先の機械受容器が一定時間の順応後,信号 の発火を止めることに起因する[34].よって,ペンを強く握らなければならない設計は避け るべきである.また,ペン自体にも重量があるため,ペンの保持にも最低限の力が必要とな る.そこで,PS Stylusは30〜500 g重の力を検出するように設計した.この力は三つのセン サから検出した圧力の平均値を用いて算出している.
検出した圧力は1024の分解能で処理される.センサの特性上,センサの出力値と実際にか かる力の関係は線形ではなく対数特性を持つため,ソフトウェアで特性が線形になるように 補正した.これにより,センサの出力値と実際の圧力は概ね比例するようになったが,完全 な線形特性には補正できていないため,かかる力が弱いときに出力値がやや大きくなる傾向
第6章 ペンを握る動作を利用したインタラクション手法 58 がある.また,PS Stylusの時間分解能は20 msであるため,操作に対する遅延をほとんど感 じずに操作することができる.これらはPS Stylus,ワイヤレスPS Stylusともに共通である.