第 7 章 タッチする指を識別するインタラクション手法 78
7.6 アプリケーション
7.6.1 大画面向けペイントツール
このペイントツールは大画面指入力インタフェースでの利用を想定している.一般的に,ペ イントツールにはペン,図形描画,画像貼り付け等の多くのモードがある.さらに,描画す る図形の大きさや色等の多くのパラメータを入力する必要がある.よって,従来のペイント ツールではモード切り替えやパラメータ入力のためのGUI操作が必須であった.本ツールで はFSIを適用することにより,GUI操作を必要としない操作体系を実現した.
本ツールの操作には,両手の3本の指(人差し指,中指,薬指)を利用する.合計6本の 指の組み合わせは63通りあり,これらにペイントツールの機能を割り当てる.操作に両手を 用いるようなタスクでは,利き手では細かい動作や高い精度が要求される操作を行い,非利 き手では粗い動作や高い精度が要求されない操作を行うというAsymmetric-dependent Taskが 提案されており[21],それが良いパフォーマンスを示すことも実証されている[27].本ツー ルでもこれを応用し,利き手の指に操作の主となる操作を,非利き手には補助的な操作とし てモード切り替えを割り当てた.
操作の割り当て
具体的な操作の割り当てを図7.8に示す.図7.8の黒丸は該当する指をタッチした状態,白 丸はタッチしていない状態を表す.操作スタイルとして,「非利き手によるモード選択」+「利 き手による操作の実行」という両手を組み合わせた操作を基本とする.以下に,非利き手の 観点から操作体系について説明する.
[Image 1]
fig 1 [Image 1]
fig 2
[Filled Shape]
line
[Image 1]
fig 1 + 2
[Image 1]
fig 3 [Image 1]
fig 1 + 3 [Image 1]
fig 2 + 3 [Image 1]
fig 1 + 2 + 3
[Filled Shape]
rectangle [Filled Shape]
ellipse [Filled Shape]
triangle
[Vivid Color]
yellow [Vivid Color]
magenta [Vivid Color]
cyan [Vivid Color]
red [Vivid Color]
green [Vivid Color]
blue
[Pastel Color]
yellow [Pastel Color]
magenta [Pastel Color]
cyan [Pastel Color]
red [Pastel Color]
green [Pastel Color]
blue
[Image 2]
fig 1 [Image 2]
fig 2 [Image 2]
fig 1 + 2
[Image 2]
fig 3 [Image 2]
fig 1 + 3 [Image 2]
fig 2 + 3 [Image 2]
fig 1 + 2 + 3
[Lined Shape]
line [Lined Shape]
rectangle [Lined Shape]
ellipse [Lined Shape]
triangle
3 2 1 3 2 1 3 2 1 3 2 1 3 2 1 3 2 1 3 2 1
3 2 1
3 2 1
3 2 1
3 2 1 3 2 1
3 2 1 3 2 1
3 2 1 21
3
1 2 3 Finger Touched
Finger Released
Non-Dominant hand
Dominant hand
[Vivid Color]
black
[Pastel Color]
black
図7.8:ペイントツールにおける指の組み合わせと機能との対応付け一覧
第7章 タッチする指を識別するインタラクション手法 90
• 非利き手を使わない(0本の指を使うと考える),利き手の指のみでの操作
非利き手を使わない状態は0本の指を使うと考え,画像貼り付けモードを割り当てた.
各指にはあらかじめ画像が割り当てられており,タッチする指に応じて図7.9のように 画像を貼り付ける操作となる.複数の指をタッチしてもタッチ位置と指の対応は崩れず に検出できるため,図7.9(d)のように指と画像の対応関係を保持したまま画像を貼り付 けることができる.
(a)利き手の人差し指をタッチする操作 (b)利き手の中指をタッチする操作
(c)利き手の薬指をタッチする操作 (d)利き手の人差し指,中指,薬指を同 時にタッチする動作
図7.9:利き手のみでの操作する様子
• 非利き手の人差し指を用いた操作
非利き手の人差し指には,図形描画(塗りつぶし)モード割り当てた.操作時の様子を 図7.10に示す.非利き手の人差し指をタッチしながら利き手の人差し指をタッチする と,それらの指の間に直線を描画でき,利き手を中指にすると塗りつぶし矩形,利き手 を薬指にすると塗りつぶし楕円を描画できる.また,非利き手の人差し指をタッチしな がら利き手の人差し指と中指をタッチすると塗りつぶし三角形を描画できる.
描画する図形のサイズも描画時に同時に指定できるため,GUIによるパラメータ指定す る操作なしに図形を描画できる.つまり,モードとパラメータの同時入力が可能である.
第7章 タッチする指を識別するインタラクション手法 91
(a)利き手の人差し指をタッチする操作 (b)利き手の中指をタッチする操作
(c)利き手の薬指をタッチする操作 (d)利き手の人差し指,中指,薬指を同 時にタッチする動作
図7.10:非利き手の人差し指を用いて操作する様子
• 非利き手の中指を用いた操作
非利き手の中指には,色(ビビッドカラー)選択モードを割り当てた.各指にはあらか じめビビッドカラーの色が割り当てられており,指をタッチすることでその色を選択す ることができる.デフォルトの色の割り当ては図7.11に示すように,減法混色をベー スにした割り当てとした.人差し指には黄,中指にはマゼンダ,薬指にはシアンが割り 当ててある.人差し指と中指の組み合わせには黄色とマゼンダの混色,つまり赤が割り 当てられている.同様に,人差し指と薬指には緑,中指と薬指には青,全ての指の組み 合わせには黒が割り当てられている.
• 非利き手の薬指を用いた操作
非利き手の薬指には,キーボードのシフトキーのような振る舞いをするモード,つまり 同時にタッチした指の補助や拡張を行うモードを割り当てた.非利き手の別の指と組み 合わせることで意味をなす操作となる.
非利き手の薬指のみをタッチした場合は0本の指との組み合わせと考える.よって,利 き手の指のみでの操作の拡張となる.具体的には図7.12のように,利き手の指のみで
第7章 タッチする指を識別するインタラクション手法 92
人差し指
中指 薬指
人差し指+ 中指
人差し指+ 薬指
中指+ 薬指 人差し指+
中指+ 薬指
図7.11: 非利き手の中指をタッチしたときに利き手に割り当てられている色
(a)利き手の人差し指をタッチする操作 (b)利き手の人差し指,中指,薬指を同 時にタッチする動作
図7.12:非利き手の薬指を用いて操作する様子
操作した場合に貼り付けられる画像のサイズを大きくすることができる.指と画像との 対応関係は変化せず,画像のサイズのみが変化する.
• 非利き手の人差し指と薬指を用いた操作
非利き手の人差し指を用いた操作の補助機能として,図形描画(輪郭)モード割り当て た.指と機能との対応関係は非利き手の人差し指を用いた操作と同じであるが,描画さ れる図形は塗りつぶしではなく,図7.13のように輪郭のみが描画される.
• 非利き手の中指と薬指を用いた操作
非利き手の中指を用いた操作の補助機能として,色(パステルカラー)選択モードを割 り当てた.指と色との基本的な対応関係は非利き手の中指を用いた操作と同じである が,図7.14のようにそれぞれパステルカラーが割り当てられている.
第7章 タッチする指を識別するインタラクション手法 93
(a)利き手の人差し指をタッチする操作 (b)利き手の人差し指,中指を同時にタッ チする動作
図7.13: 非利き手の人差し指と薬指を用いて操作する様子
人差し指
中指 薬指
人差し指+ 中指
人差し指+ 薬指
中指+ 薬指 人差し指+
中指+ 薬指
図7.14:非利き手の中指と薬指をタッチしたときに利き手に割り当てられている色
操作割り当ての表示機能
上述したように,本ツールでは操作に両手で合計6本の指を操作に使用し,その組み合わせ は63通りある.本ツールでは63の組み合わせ全てに対して機能を割り当てていないが,指 と機能の対応関係をすぐに記憶することは容易ではない.この課題を解決するために,ディ スプレイ上部に対応関係を提示するパネルを表示した.パネルの外観を図7.15に示す.この パネルは操作中に常時表示されており,タッチしている指に応じて表示内容が動的に変化す る.対応関係が記憶できていない場合,ユーザはこのパネルを見ながら操作することで,指 と機能の対応を確認することができる.
第7章 タッチする指を識別するインタラクション手法 94
図7.15:指と機能との対応関係を提示するパネル