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学部留学生の日本語教育の問題点

第 3 章では、今回のアンケート調査のデータを用いて共分散構造分析を行った。その結 果、学部留学生の日本語コミュニケーション能力、および学習スキルの実態が明らかにな り、パス解析のモデル図によって、各能力間の因果関係が見られた。そこで本章では、学部 留学生の学習環境の現状や彼らの大学の日本語教育への意見や要望を分析し、また、学部留 学生の事例観察を通して大学の日本語教育上の問題点を指摘したい。

第 1 節 学部留学生の学習環境について

本章では、学部留学生の大学の日本語教育に対する意見や要望を把握するため、彼らの学 習環境について調査した。

4‐1‐1 データ集計

今回のアンケート調査の対象である国立、公立、私立の 10 校において、日本語の授業内 容、および学部留学生の日本語学習環境について調査した。

その結果、まず、「大学学部の日本語授業は必修科目ですか」という質問に対して、「必修」

と答えたのは、全体の約 77%を占めていることが分かった。それ以外に、「選択履修」や「選 択必修」と答えたのはそれぞれ約 15%と 7%である。その他は 1%である。つまり、今回の被 調査者である学部留学生の大半が日本語授業を必修科目として履修することになっている。

「大学学部で何人の日本語教師に習っていますか。」という質問に対して、4 人と答えた のは約 26%で一番多い。3 人また 5 人以上と答えたのは、それぞれ 24%である。その他、2 人と答えたのは約 14%で、1 人しかいないと答えたのは 10%である。もちろん、大学によ って在学している留学生数にも差があるが、実際に学部留学生の日本語教育を実施してい る日本語教師の人数を考えると、この極端な人数差は大学によって、学部留学生の日本語教 育に対する重視度に差が存在すると言えるであろう。

また、「大学の日本語授業でレポートや論文の書き方、要約の仕方、発表の仕方などを教 えてもらいましたか」といった学習スキルに関する質問をしたところ、「教えてもらった」

または「教えてもらっている」と答えたのは全体の約 79%を示している。それに対して、「教 えてもらっていない」と答えたのは全体の約 17%である。その他は約 4%である31。つまり、

大学の日本語教育の中で、学部留学生の専門分野における学習・研究活動のために日本語授 業のカリキュラムに専門分野での学習スキルを高める学習内容が組まれるところが多い。

それに対して、未だに日本語授業のカリキュラムに専門分野での学習スキルに関する内容

31今回の調査対象は私立大学が多いため、国立・公立・私立大学間の比較は割愛する。

が組み込まれていない大学もある。

「大学学部の日本語授業では、具体的にどういう授業が行われていますか」という質問に 対して、「作文(レポート作成を含む)」と答えたのは約 72%で一番多い。その次、「日本事 情」と「読解」はそれぞれ約 62%と約 64%である。「会話」と「聴解」はそれぞれ約 58%

と約 53%である。その他に関しては、2 人が「言語表現法」と答えた32。つまり、大学の日 本語授業の内容は、特に書く能力に力を注いでいるように見受けられる。そして、大半の大 学では、「日本事情」、「読解」、「会話」、「聴解」といった内容を学部留学生の日本語授業の 中で実施していることが分かった。

さらに、「大学学部の日本語授業は必要だと思いますか」という質問に対して、全体の約 94%の人は「必要」と答え、それに対し「必要ない」と答えたのは全体の約 6%である。大学 における日本語授業の必要性に関連して、学部留学生に「大学学部の日本語授業に対する満 足度」について質問したところ、「やや満足する」と答えた人は、全体の約 35%で、一番多 い。次いで、「やや満足しない」は、全体の約 25%である。「どちらでもない」と答えたのは 約 21 %である。そして、「非常に満足する」および「非常に満足しない」と答えた人は、そ れぞれ約 11%と約 8%である。全体からみると、満足している人は約 46%に対し、満足してい ない人は約 33%である。他の 21%の人は日本語授業に対して、不満はないけど、満足してい る様子も見受けられない。今回の調査は、被調査者である学部留学生の日本語教育を担当す る教師の了承を得た上で実行したため、日本語授業に対する満足度という質問に関しては、

多少学生の担当教師に対する遠慮も考えられる。そのため、満足していない人は、得られた データ以上に存在しているのではないかと考えられる。

以上の調査結果は、以下のようにまとめられる。

・今回の被調査者である学部留学生の大半は、日本語授業を必修科目として履修している

(調査対象者は 1 年生が多い)。

・大学によって、日本語教師の人数に格差が存在する。

・すべての大学の日本語教育において、専門分野での学習スキルに関する内容が教えられ ているとは限らない。

・調査対象大学の大半では、「作文」、「日本事情」、「読解」、「会話」、「聴解」といった内 容が日本語授業のシラバスに組み込まれている。

・ほとんどの学部留学生は日本語授業が必要だと感じている。

・履修している日本語授業の内容に対して、満足していないと思う学部留学生は少数では ない。

32複数回答可のため、総数は 100%ではない。

第 2 節 学部留学生の具体的なコメント

調査用紙の最後の「自由コメント」欄に被調査者たちに意見や要望を求め、271 人の中約 半数である 129 人からのコメントが寄せられた。そのコメントの中から、いくつかを紹介す る。(用字・用語などは原文通りで、意味が分かりにくい文については括弧に説明を入れて いる。また、文頭のアルファベット文字は被調査者の識別番号である。)

4‐2‐1 4 技能に関するコメント

(CHGU_13)「聴くと会話の練習はあんまりしてなかったです。日本語授業には、これについ てはもうちょっと増やして欲しいです。」

(TMU_14)「聴解と文法の練習を増やしたい。」

(TECH_20)「新聞の記事を解読させて欲しい。(新聞を用いた読解授業がほしい。)」

(MEIJI_1)「日本語の授業は文法、外来語についてあまり教えてもらっていません。だから 文法外来語についてもっと教えてもらいたいんです。」

(CHGU_9)「電子辞書があるから、言葉はわからないとき調べれる(調べられる)。でも文法 と辞書中ないの(ない)言葉(流行の言葉)もっと勉強したい。」

(TMU_14)「聴解と文法の練習を増やしたい。」

(SEN_6) 「日本人のクラスメートと会話する授業(がほしい)。」

(SEN_48)「言葉だけではなく、もっと日本人らしい話し方を教えて欲しい。」

(TECH_3)「会話の練習をもっとやらせてほしい。」

(SEN_43)「話す機会が多いけど、書くのが弱い。」

以上のコメントから、学部留学生は自分が有する日本語能力の問題点についてよく理解 していることが分かる。さらに、学部留学生は大学学部の日本語教育にバランスよく 4 技能 を向上させるような授業を求めていることが見受けられる。

4‐2‐2 専門分野における日本語教育への意見や要望

(SEN_2)「特に専攻と関わる日本語の授業が必要。専門用語やカタカナ用語の授業は必要。」

(MEIJI_10)「大学に入るとレポートや発表するのはたくさんあるが、日本語学校で勉強し たもの別のものになったから。(大学と日本語学校での勉強内容が違う。)」

(HTBS_1)「レポートや発表まったく要領が分からない。日本語授業の目標を明確的にして ほしいです。表現能力、口頭表現能力、書面表現能力(について教えて欲しい。)」

(HTBS_2)「大学生の立場に立って、大学生活、授業にとって必要な日本語の聴解、読解、

文章表現などの技術を教えて欲しい。」

(TECH_6)「講義のスビードははやしすぎて(速すぎて)ときどき聞きとれない場合がある。」

(TECH_9)「専門的な日本語を習うほうがいいと思う。」

(TECH_19)「専門用語が多いので分からない。発表が弱いです。」

(SEN_63)「実用的な知識をもっと学びたい。大学の授業にむけて授業して欲しいです。日 本語学校で勉強した日本語は生活のため、進学のためであったが、大学に入ってか ら日本語の勉強は学生をもっと日本人学生れべる(レベル)に縮むためだと思いま す(日本人学生レベルに近づきたい)。なので、普通授業をもっと理解するための 補導(指導)が必要です。また、留学生がゼミに入る時は自分が慣れるまで頑張る しかないので、大学の日本語授業でゼミのための準備を指導してほしいです。」

(KKSK_10)「専門語(専門用語)と外来語に対して迷惑をします(困難を感じる)。」

(CHGU_14)「専門性の言葉(専門用語)が少ないです。」

(TECH_3)「専門用語がたらないかんじがする。(足りないと感じる。)」

(SEN_43)「話す機会が多いけど、書くのが弱い。専門用語が多いので、覚えるのが難しい。」

(KMZW_4)「できれば、学部による専門に基づく日本語の授業があればいいかなと思う。」

(SEN_45)「学部の留学生は、それぞれの学部に所属するが、専門知識についての日本語も 教えてもらいたい。」

(CHGU_16)「(授業や講義)一つの単語が分からなかったら、次の話をきでない(聞き取れ ない)。①つまない話(つまらない話)が多すぎる。②つまない内容(つまらない 内容)をやめて欲しいです。」

以上のコメントから、学部留学生が自分の本務である学習・研究活動に必要な日本語能力 が欠けていることを実感していると見受けられる。特に、専門用語や外来語の不足、専門ゼ ミナールでの学習や研究に対応できる学習スキルの不足、および専門講義への理解力の不 足などが挙げられている。さらに、彼らは、それぞれ自分が不足していると感じる日本語能 力の養成を大学の日本語教育に強く求めている。

4‐2‐3 敬語やその他に関する意見や要望

(KMZW_9)「日本人らしいの話しはまだ不足だと思う。(敬語について)日本人と世間話をす る時の話す力(は)まだまだだ。日本語学校で習った知識はまだまだだから。」

(HTBS_3)「レポートの作成や日本語(の)敬語についてもっと勉強したいと思います。」

(CHGU_16)「敬語を使い場合じゃないとも使わない。(敬語の使い分けはできない。)人によ って話し方が変る。」

(TECH_19)「事務連絡について指導してほしい。敬語の指導を受けたい。生活上の注意を理 解することについて指導を受けたい。病院のことなどよく分からない。日本人のよ うに日本語を使えることを目指したので、必要と思います。(日本語授業は必要で