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第2節  学習情報の記載内容の制限

 本節では、 「学習者が、歴史的内容を自らの力で発見し、それを知識として獲得する」

ために、カードに記載する学習情報にどのような工夫をすればよいのか、について検討す る。その理由は、資料データベースを基本とする本教材では、複数のカードを比較分析さ せることが、高度な「歴史的内容」を発見する上で、有効と考えるからである。その際、

比較分析の対象となるカードの記載情報は、極めて重要な意味を持つことになる。

 この課題を考えるあたっては、次の2点について考察する必要がある。

①学習者に獲得させたい「歴史的内容」とは、具体的に何なのか。

②その獲得の為に、学習情報をカード記載する上で、どのような工夫が必要なのか。

 以下、この2点について検討を行う。

■生徒に獲得させたい歴史的内容

 本項では、学習者に獲得させたい歴史的内容について整理を行う。この作業にあたって は、まず、歴史教育において学習者に獲得させるべき内容を、 「歴史意識」 「歴史認識」

「歴史的思考力」について述べた文献2》をもとに抽出する。その中から、本教材において 実現可能なものを選択する。この作業により、学習者に獲得させたい「歴史的内容」とし て以下のものが抽出・選択できる。

①歴史事象の説明

 歴史事象の事実内容を述べたもので、その内容は人名・年号・事件・制度・地名といっ た歴史の構成要素によって組み立てられる。あくまで事実を記述したものであり、価値や 解釈といった内容は含まれない。

②歴史的因果関係

 歴史事象の因果関係に関するもので、原因・理由あるいは、結果・影響などの表現で呼 ばれるものである。

③歴史的変化・発展

 歴史事象が、時の経過とともに、どのように変化し、あるいは発展していったのかを理 解するものである。

④歴史的意義

 その歴史事象が現在から見た場合どんな意味をもっているのか、について考察するもの

である。

 その時代の歴史事象をもたらした、その時代に特有の社会的・文化的なルールあるいは、

特徴をいえるものは何か、といった事に対する考察である。

2学習情報の記載法の検討

 本項では、前項で取り上げた各「歴史的内容」について、まず、教材内における位置づ けを検討する。その上で、それらの「歴史的内容」を学習者自らに発見させるためには、

カードへの記載に際しどのような工夫が必要なのかを、それぞれの場合において具体的に 検討する。

(1)各「歴史的内容」の位置づけ

 ここでは、前項でとりあげた5つの「歴史的内容」の位置づけについて整理する。

 まず、①の「歴史事象の説明」については、本教材の性格上、学習者自らに発見させる 事は不可能である。そこで、本教材では、この「歴史事象の説明」は、学習者に提示する 情報と位置づけている。すなわち、これまで述べてきた「資料データベース探索」部分お よび「詳細内容」部分のカードに記載する「解説文」の内容が、この「歴史事象の説明」

となる。学習者は、カードに記載されたこの情報を比較・分析することで、他の「歴史的 内容」を発見していくことになる。つまり、この「歴史事象の説明」 は、他の「歴史的内 容」を発見させるため学習者に提示する素材と位置づけることができる。

 これに対し②の「歴史的因果関係」から⑤の「歴史的意義」については、①の「歴史事 象を記述」したカードを比較分析することで、学習者自身が発見し、知識として獲得でき

る内容と考えられる。よって、これについては文中でその内容を明記せず、学習者が「探 究テーマ」として設定し、考察する中で自ら発見することを期待するものである。

 以上のことを踏まえて、それぞれの「歴史的内容」について、学習者に気づかせるには どのように記載すればよいのかについて検討する。

(2)各「歴史的内容」の具体的記載方法

以下、それぞれの「歴史的内容」ごとに、工夫点を具体的に述べる。

①「歴史事象の記述」に関する方針

 「歴史事象の記述」は、各カードの「解説文」に記載する。その記載方法は第皿章で述 べた通りである。すなわち、まず、「資料データベース探索」部分のカード1枚に簡潔に、

なかった情報を詳細に載せるのである。

 「資料データベース探索」部分の記載を、簡潔に1枚におさめる理由は、主にディスプ レイ上での表示を配慮したことによる。「歴史事象を記述」の提示に際しては、分かりや すいことが最低条件となる。ところが、ディスプレイ上の文字を読む作業は、紙上のそれ と比べた場合、かなりの負担となる。また、複数のカードに記載されていると、紙のカー

ドなどと違い1枚分の情報しか視認できない。そこで、文字をある程度減らし、またカー ドも1枚に限定することにする。

 しかし、本教材では、この「歴史事象の記述」からなる複数のカードを、学習者に比較 分析させることにより、高度な「歴史的内容」の獲得をはかることを目的としている。つ まり、この「歴史事象の記述」が、学習者に様々な「歴史的内容」を自ら獲得するための、

基礎情報になる。そのため、その記載情報は、出来るかぎり豊富であることが望ましい。

そこで、 「詳細内容」カードでは、出来るだけ詳しい「解説文」を付随させ、これに対応 する。具体的には、 「詳しい事実経過(事件・政策の場合)」 「詳しい履歴(人物の場 合)」などが下位階層に位置つく情報となる。

②「歴史的因果関係」に気づかせる方策

 「歴史的因果関係」を気づかせる方策として、次の2点の工夫を施す。

  ・カードの説明文の内容は、あくまで「歴史事象の記述」にとどめることとし、「原    因」 「結果」等の歴史的因果関係に属する説明は、同一カード中には記さない。

  ・それを補うため、「人物」カードを効果的に利用する。

 これにより、学習者は、ある歴史事象ついて調べる時、そのカードのなかから、なぜ起 こったか、その結果どうなったか、についての情報を得ることができなくなる。しかし、

それによって、学習者に「なぜか」という疑問を感じさせることができ、因果関係を探究 するという学習者自身による「テーマ設定」が生まれる可能性がある。こうして、解答を 求めて検索を駆使して関連するカードを抽出・分析することにより、学習者自らが因果関 係を発見していく。そうして獲得した内容は、知識として定着することが期待できる。

 しかし、記載情報を制限するあまり、学習者が因果関係そのものの存在について気づか なくなることは避けねばならない。その対策として、因果関係を暗示する文脈を、学習者 が検索し易いカード、具体的には「人物」カードに記載することで対応する。「人物」カ ードを利用する理由は、次の通りである。「因果関係」への疑問は、その概念の性格上、

発生年代の明確な「出来事」のカード(カード属性でいう「事件」 「政策」のカード)に

る記述を入れることはできない。そこで、その手掛かりを入れるカードとして、この「出 来事」のカードに最も関連の深いカードを考え、「人物」カードを選ぶ。そもそも、「出 来事」とは、人間の意図の結果である。よって、 「出来事」の因果関係を人間の意図を詳 細に述べた「人物」のカードで示すのは、「解説文」としても極めて自然な形である。ま た、これにより、因果関係の原因に相当するカードが存在しないケースにも対応が可能と なる。この方策により、学習者は、このカードに関連する事項を探るなかで、事件の主体

となった「人物」のカードにたどり着く。そして、その履歴を知ることで、「事件・政 策」を起こした理由を、自らの作業によって発見することができるようになる。

 以上の内容について、図皿一22の場合を例に、具体的に紹介する。取り上げるカードは、

「事件」カードの1つ「承久の乱」と、その関連人物に関するカード「後鳥羽上皇」 「北 条義時」である。いずれも、「資料データベース探索」部分に属するカードである。

 図皿一22の(a)は、「事件」カード「承久の乱がおこる」である。ここでは、 「12 21年、朝廷と鎌倉幕府の蘭に起こった争乱」と概略を述べた上で、 「後鳥羽上皇は、流 鏑馬ぞろいと称して諸国の兵を招集。その武力で、京都守護を討ち滅ぼしついで、北条義 時追討の院宣と、諸国の守護・地頭に京都に馳せ参じるよう命じた宣旨を発布した。」と 乱の勃発時の状態を述べる。次に「これに対し、北条政子・北条義時のもと団結した幕府 軍は、総勢19万人ともいわれる大軍で京都へと進攻した」と、対する幕府側の対応を紹 介する。そして「上皇軍は、尾張の木曽川、ついで宇治川で防戦したが大敗した。幕府軍 の京都進撃により上皇軍は壊滅し」と戦争について触れる。最:後に「乱は、約1ヵ月で、

幕府軍の大勝のもとに終わった。」とその勝敗を述べる。その内容は、あくまで事件の事 実経過に限定したものである。なお、このカードには「詳細内容」カードが付属するが、

その内容も、以上の事実内容をさらに詳細に述べるにとどめている。

 これに対し、辞書などの「承久の乱」の説明では、原因や結果に関する記述が付随して いる。例えば、原因について、 「鎌倉幕府の成立によって、打撃を受けた公家勢力は、1

199年、源頼朝の死後、頻出した有力御家人の反乱など、幕府内部の混乱に乗じ、公家 勢力の回復を企画した。」3)といった説明が入る。また結果・影響として、「乱緩、幕府 は後鳥羽・土御門・順徳の3上皇の配流、朝廷方公家・武士の所領の没収と新補地頭の配 置、京都監視の為の六波羅探題の設置などの施策によって、著しく権力を強化、公家政権 の勢力は急速に衰えた」等の解説がある。本教材の「承久の乱がおこる」カードでは、こ の原因・結果に関する説明は完全に欠落している。そして、この対応として、 「後鳥羽上 皇」のカード(図皿一22のb〜d)において、次の様な記載を施す。まず、 カード本体

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