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子どもを取り巻く環境の変化

第4章 乳幼児期のけんかやいざこざを取り巻く環境

Ⅰ 子どもを取り巻く環境の変化

ここでは、核家族の増加や少子化の進行など、子どもを取り巻く環境について、その現 状を検討する。

1. 核家族化や少子化の現状とけんかやいざこざ

厚生労働省(2012)による国民生活基礎調査の「世帯構造別にみた世帯数の構成割合の 年次推移」から、一部を編集してグラフにしたものが図20である。

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図20 世帯数の構成割合の年次推移

* 厚生労働省大臣官房統計情報部 「グラフでみる世帯の状況」 国民生活基礎調査(平成22年)

「世帯構造別にみた世帯数の構成割合の年次推移」より筆者作成

* 核家族は、上記グラフの親(夫婦または一人親)と未婚の子のみの世帯に、夫婦のみの世帯を合 計したものである。厚生労働省の推計では、夫婦のみの世帯、夫婦と未婚の子のみの世帯、ひと り親と未婚の子のみの世帯とそれぞれに集計している。

1975年より核家族世帯は増加を続け、2007年以降はほぼ横ばいである。一方、三世代世 帯は 2004 年まで急激に減少しているが、その後は、三世代世帯と親子のみの世帯はほぼ 同じ割合で推移している。核家族と三世代の増減は、92年を境に逆転現象が起こっている。

単独世帯は1975年は8.5%であったのが、漸次増加し2010年には24.3%と増加の一途を 辿っている。

次に少子化の現状を探る。わが国の出生数と合計特殊出生率の推移を表したものが図 21 である(厚生労働省,2012)。

図21 わが国の合計特殊出生率の経年変化(厚 生労 働省 「人 口 動態統 計 」,2012)

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内閣府の「日本の将来推計人口(平成 24年1月推計)」によると、わが国合計特殊出生 率は、2010 年の実績値 1.39 から 2014 年まで、概ね 1.39 で推移し、その後2024(平成

36)年の 1.33 に至るまで緩やかに低下し、以後やや上昇して 2030(平成 42)年の 1.34

を経て、 2060(平成72)年には1.35になると仮定している。このような仮定に基づき、

わが国の総人口は、2010年の1億2,806万人から長期の人口減少過程に入り、2030年の

1 億1,662万人を経て、2048(平成60)年には1億人を割って9,913万人となり、50年

後の 2060年には 8,674万人になると試算している。2012年の出生率は1.41、2013年は 1.43となり、予測より微増してはいるものの、それほど大きな変化ではない。

芳賀(2009) は、少子化・都市化によって、家庭においても地域においても、かかわり の経験の絶対量が少なく、多様性を受け入れる経験が少ないことは、様々な人間関係上の 出来事に対する応用力に乏しく、考え方も固定的になりやすいといった現代社会の問題点 を指摘している。矢吹(1959)は、変化の乏しいかぎられた環境に住んでいるとか、きま りきった対人関係(母親とだけの関係)しかもっていない子どもはその自己意識の発達が 乏しいと述べている。

わが国全体を見ると、単独での暮らしと核家族が増加し、三世代家族が減少し、更にき ょうだいの数も減っているなど家族の在り方が変化している。では、家族以外の人とのか かわりは増えているのであろうか。家族内での子どもを取り巻く大人の数が減っている上 に、近所付き合いも減り、人との関係が希薄になってきていることが窺われる。

2.子どもを取り巻く環境

近年子どもを取り巻く環境はどのように変化してきているのであろうか。

「子どもたちの声がうるさい」と神戸市東灘区の保育園をめぐり、近隣住民の1人が、

防音設備の設置や慰謝料100万円の支払いを求める異例の裁判を神戸地裁に起こした。静 かな暮らしを望む住民側と折り合えず、保育園建設が難航するケースも各地で相次ぎ、共 存が大きな社会問題になっている(2014.9.5「朝日新聞」夕刊)。また、「園児うるさい」

と、保育園児の遊ぶ声に腹を立て、斧で保護者を脅したとして 43 歳の男が逮捕された事 件もある。容疑者は5年ほど前から「子どもの声がうるさい」、「保護者のマナーが悪い」

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などと、市に苦情を言っていたという(2014.10.3「朝日新聞」夕刊)。

これらのニュースを受けて、Yahoo!(2014)は2014年10月16日~10月26日の期間 にインターネット上で、子どもの声を騒音と捉えるか否かの意識を調査した。「あなたは、

子どもの声を騒音だと思ったことがありますか?」という設問に対して102,763票の回答 が寄せられ、その結果を図22 に示した。

図22 子どもの声を騒音と思ったことがあるか(n=102,763)

* Yahoo!ニュース 意識調査「子どもの声は騒音か」 より

図22によると、約半数が子どもの声を騒音と思ったことがあり、「ない」と答えた人と ほぼ同数であった。「騒音」とは、騒がしくやかましい音。また、ある目的にとって不必要 な音、障害になる音(広辞苑)とある。では、基準はどうなっているのであろうか。環境 省は環境基本法(1993)に基づき、「騒音に係る環境基準について(1998,2012)」を出し ている。騒音に係る環境上の条件について生活環境を保全し、人の健康の保護に資する上 で維持されることが望ましい基準を「環境基準」とし、以下の基準値を示している(表 31)。

表31 環境省による環境基準値

* 環境省による環境基準値に加筆 昼間(午前6時から

午後10時)

夜間(午後10時か ら翌日の午前6時) AA(療養施設、社会福祉施設等

が集合して設置される地域など特 に静穏を要する地域)

50デシベル以下 40デシベル以下

A及びB(住居用) 55デシベル以下 45デシベル以下

C(相当数の住居と併せて商業、

工業等の用に供される地域) 60デシベル以下 50デシベル以下 地域の類型

基準値

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保育所建設の反対運動は、子どもの声だけではなく、送迎時の立ち話や車・自転車の行 き交いなどへの苦情も含まれているので、子どもの声にのみ反応しているとはいえないが、

子どもの成長を見守り、育んでいこうとする大人が減少していることを指す結果であろう。

子どもが子どもらしく遊ぶことが保障されているはずの公園や幼稚園・保育所で、騒音 規制を掛けられた場合、どこで子ども達は遊んだらよいのであろうか。子どもの声は確か に騒しいが、騒音と捉えるか否かは子どもの捉え方そのものに関係しているといえる。子 どもの声をデシベル(㏈)1換算し、音として比較するのは合理的かもしれない。しかし、そ れは子どもに限らず人間をモノ化して捉えるからこそできる分析ではないであろうか。公 園だけでなく幼稚園や保育園内でも静かに活動をしなくてはいけないことを子どもに強い るような社会では、日本の行く末は危ぶまれる。

「子宝」という言葉があるように、子どもは特別な存在として認められてきた経緯があ るが、この言葉は死語になってしまったのであろうか。共生社会の実現には価値観の多様 性を認めていくことが重要である。しかしその中で、子どもの存在を疎ましく感じる大人 の価値観をも受け入れていくことが、本当の意味での共生社会と言えるのであろうか。