藤村 沙樹 1. はじめに
城端でフィールドワークを開始した頃に、強く印象を受けたことがあった。それは城 端が「人と人の結びつきが強い町」であるということだった。具体的には、同じ町内に 住んでいる人の名前や家族構成や、仕事を詳しく知っているだけでなく、離れた町に住 んでいる人のことも良く知っていたのだ。私が住んでいる金沢市の住宅街では、隣近所 にどんな人が住んでいるのか詳しく知らないのが普通で、大半の人は少し離れた町の住 民とは全くと言っていい程関わりを持っていない。
また、曳山祭りの調査中には、町の住人が一丸となって祭りを行っているという印象 を受けた。本番に向けた準備や本番では城端内の町内外の人で協力し合って祭りが支え られていた。さらに、本番が終わってからの打ち上げは、様々な人々が参加して交流す る。「住民同士が互いによく知りあっている」コミュニティが基盤にあるから、町内の 人同士が協力し合って祭りを支えていけるのではないのだろう。また、このような祭り が毎年あることで、そのコミュニティがさらに強化されていると同時に、地域全体の人 との交流の場として機能しているのだろう。
しかし、曳山祭りに直接参加し、中心となっているのは男性や子どもであった。それ では、城端の女性が地域の中でコミュニケーションをとる場や行事はないのだろうか。
女性たちが親交を深める特定の行事は城端にはないが、城端には、約4割の世帯の女性 が会員となっている、「城端婦人会」という組織があることがわかった。この「婦人会」
の活動は、城端に住む女性の間の連帯やコミュニケーションをはかる組織として機能し ているのだろうか。このように考えて、「婦人会」の調査をはじめることにした。
調査をはじめてわかったのは、婦人会の活動は単に会員の女性同士が親睦をはかる機 会を提供するだけではなく、地域に対する愛着や活動をすることで生まれる楽しみを会 員にもたらしているということであった。また、それぞれの町や城端全体に対して貢献 する活動も行っていることがわかった。そこで、この報告では、「婦人会は地域に対し てどのような役割を果たしているのか」、「会員にとって婦人会とはどのような組織なの かという点について、調査成果をもとに明らかにしたい。
112 2. 調査方法
5月から9月の4ヶ月間の主に平日の日中に城端地区の民家を訪ね、聞き取り調査に よって語りを集めた。また、月に一度行われる婦人会の会合に5 月と8 月の 2回参加 して、婦人会活動について情報収集をするとともに、会員同士の関わり方を調査した。
さらに、9月からはある町のむぎや祭の練習に参加し、祭りでの仕事を調査し、聞き込 みも行った。パレード練習とパレード本番に参加し、むぎや祭に参加しない町の会員の 調査も行った。
調査対象は主に 20 代から 80 代までの女性で、年齢、地域、執行部(後述)の経験 の有無が偏らないように工夫して聞き込みを行った。
3. 城端婦人会の概要
まず、城端婦人会の概要を見てみたい。
3-1. 婦人会の組織構成
婦人会とは、東京にある全国地域婦人団体連絡協議会を中心として、「地域婦人団体 の連絡協議機関としてその共通の目的である男女平等の推進、青少年の健全育成、家庭 生活並びに社会生活の刷新さ っ しん、高齢化社会への対応、地域社会の福祉増進、世界平和の確 立などの実現につとめること」を目的に掲げる組織である。各都道府県に婦人会が置か れ、またそれぞれの市町村ごとにも婦人会が置かれている(図1)。この報告でとりあ げるのは、南砺市婦人会の下部組織である城端婦人会である。さらに、城端婦人会は 13 町に分かれている。13 町というのは旧町(概要の「旧町」を参照)と呼ばれる 10 の町に大宮野と川島と南町を足した地区区分である。
図1. 全国地域婦人団体連絡協議会と城端婦人会の位置づけ
113
3-2. 城端婦人会の仕組み
城端婦人会は女性の会員によって構成されているが、会員にはいくつかの役職があり、
毎年交代する仕組みとなっている。
3-2-1. 会員
基本的に城端地区の世帯ごとに65歳までの女性一人が会員となる。「家主」の妻がな ることになっており、城端在住の息子が結婚すると息子の妻が会員となって、姑は引退 する。ただし、息子が結婚して数年間は姑が会員を続け、それから息子との妻に会員を 交代する場合と、息子が結婚した年に交代する場合とがある。息子がいなかったり、い ても城端在住でなかったり、あるいは息子がまだ結婚していない場合は、年齢制限の上 限まで務めることになる。制限年齢は数年前に60 歳から現在の 65 歳に引き上げられ たが、人手不足の町では70代の女性も婦人会の会員として仕事を続けている場合もあ る。こういった場合は、65 歳から所属することになる老人会と婦人会の二つの組織に 所属することになる。なお、婦人会会員の各地区における割合や、会員になる理由など、
婦人会への加入に関する詳細は後述する。
3-2-2. 婦人会の構造
婦人会は、大きくわけて、執行部、三役
さんやく
、「ハシリ」という3つの役職とそれ以外の 会員から構成される。ただし、川島では、役員候補が見つからず2011年度から事実上 婦人会活動が休止している。
執行部は会長、2名の副会長、会計、書記、総務などの役職から成る城端婦人会の中 枢部である。各年度の最後に、次年度に三役を行う役員の中から投票で選ばれるが、得 票数の多い人物から順に、会長、副会長、会計、書記、総務となる。執行部は、全国や 富山県から南砺市連合婦人会を経由して伝わってきた伝達事項を城端地区に伝えると ともに、城端地区全体での婦人会行事の運営の中心的役割を果たす。また、会長は南砺 市連合婦人会の会合に参加する。
三役とは、13町におかれる婦人会の役員である。町ごとに 3 名が選ばれ、各町での 行事の運営や執行部との連絡の受け渡し等を行う。選ばれた3人は会長、副会長、会計 の役職に振り分けられる。1つの町は6つの「群」に分けられ、6群のうち奇数群から 計3名、偶数群から計3名が毎年交互に選ばれている(図2)。ただし、近年婦人会会 員数の減少が進んだため6群に分けるほどの人員がおらず、別の選出方法を採る町もあ り、また2名のみを役員とすることで役員を確保している町もある。以上に挙げた執行 部と三役を務める会員は基本的に「役員」と呼ばれる。
114
図2. 三役の選出方法
「ハシリ」とは、名前のとおり、「使いっ走り」として三役の補助として各町内の三 役以外の会員が手伝いをする役員である。当番と呼ばれることもある。前年に三役を務 めた者が、務める場合や次年に三役を務める予定のある者が務める場合があり、町ごと に選出方法は違う。
以上に述べた執行部、三役、ハシリの関係を図3に示した。
○○町
○○町
1郡 2郡 3郡
1郡 2郡 3郡
4郡 5郡 6郡
6郡 5郡
4郡
○○町
○○町
1郡 2郡 3郡
1郡 2郡 3郡
4郡 5郡 6郡
6郡 5郡
4郡
115
図3. 執行部、三役、ハシリの関係 3-3-3. 会合
執行部のみの集まりが毎月第3水曜日、執行部と13町の役員の集まりが第4水曜日 に行われる。町からは三役のうち一人が参加する。会合は、会社勤めをしている役員が いることに配慮して、19時半から21時までの夜間に行われる。会合では、執行部が中 心となり、連絡事項を伝える。
3-3. 年間活動
婦人会の活動について見てみよう。表1に年間の活動を示したが、1年の間には多く の行事がある。婦人会の活動には、婦人会内で行う行事のほかに、城端全体の行事への 参加、南砺市全体の行事への参加などがある。また、城端婦人会会員全員で参加する行 事もあれば、三役だけが参加する行事もある。
表1. 城端婦人会の年間活動
(平成23年度、城端婦人会だより第81号「年間行事予定」より作成)
城端婦人会年間行事 4月 昆布販売
城端婦人会だより第81号発行 5月 ちふれ化粧品販売
6月 遊休品即売会
7月 敬老会
資源回収①
ウィメンズセミナー 9月 むぎや祭参加 10月 研修旅行
城端婦人会だより第82号発行 11月 資源回収②
・・・・・・
116 2月 次年度役員選出
新旧委員会 きらら訪問
城端婦人会だより第83号発行
3月 総会
4. 婦人会への加入につて
ここまでは、婦人会の概要について見てきたが、どれくらいの割合の女性が会員とな っているのかということと、会員になる理由とならない理由について、資料や語りから 述べていきたい。
4-1. 各町ごとの婦人会加入率
各町の世帯数における婦人会会員数の割合を図4に表した。もっとも加入率が高いの は、大工町で約 56 パーセント、次いで多いのが西上町で 55 パーセント、次が東新田 町の52パーセントである。これらの地域以外では、婦人会への加入率は世帯数の半数 以下である。先にも触れたが、川島地区は、今年度から休会という形となっているので 会員はいない。
図4. 2011年度の婦人会加入率
『城端婦人会だより第81号』、『行政区別住民基本台帳人口および世帯数(平成23年4 月1日)』より作成