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むぎや祭

ドキュメント内 Microsoft Word 実習報告書 (ページ 63-115)

4-1. むぎや祭の概要

寺田  未佳 羽鳥  良斉

  ここからは、毎年9月第3月曜の敬老の日の前の土日曜に開催されるむぎや祭について 報告するが、まず、祭りの概要を紹介したい。

3.1.1.  むぎや祭の歴史

  むぎや祭は麦屋節に由来する祭りである。麦屋節はもともと城端の東に位置する山間地 集落五箇山に伝わる民謡であった。1925 年、東京の日本青年館の開館記念に、五箇山 麦屋節保存会の17名の青年が出演し、その後に城端でも披露したことがきっかけとな って、城端旧町の一つ、新町の若連中が麦屋節を演じる「新声会」という会を結成した。

そうして、新町の地蔵祭りである宥音塚の祭りで踊るようになった。一方、当時の五箇 山は道路の舗装が十分でなく、冬季は通行不能な時期が続くほど交通の便が悪かった。

五箇山では麦屋節を全国的に知らしめたいという希望があったが、外部との交通の便が 悪い五箇山よりは城端で宣伝をおこなう方が効果的だということで、五箇山の平村の村 長と城端の商工会の商業部長とが相談して、城端で麦屋節の宣伝を行うこととなった。

1950 年、上述の新町新声会や、西下町にできていた城声会による麦屋節を演じたとこ ろ、他の町からも踊りたいという声が挙がった。翌年の1951年、城端商工会の中の優 良店会が主催者となって、同年の9月15日に第1回むぎや祭りが開催された。この祭 りが定着して、以来、毎年、祭りがおこなわれるようになった。2000 年からは、麦屋 節をよさこい風にアレンジした「じゃんとこいむぎや」が祭りに加わるようになる。調 査をおこなった2011年 9月17日、18日に開催されたむぎや祭は通算で第61回の祭 りである。なお、「じゃんとこいむぎや」については、この章の3節の報告において詳 述する。

 

3.1.2. 参加町と運営組織

  むぎや祭に参加する町は次の九町である(表1)。   

   

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表1.むぎや祭の参加町 栄町 

新町  出丸町  西上町  西下町  西新田町  野下町  東上町  東新田町 

  むぎや祭の運営は、城端むぎや祭協賛会によって行われいる。協賛会には城端地区の 各町内のほか、商工会や観光協会も含まれる。商工会や観光協会は事務局として、祭り 全体の運営や広報事業などを行っており、南砺市も共催のかたちで協力している。各組 織の運営の分担は以下の通りである。

1  南砺市城端行政センター

  ・関係機関への各種届出・申請及び連絡調整   ・行政側連絡窓口(スタッフの動員要請など)

2  南砺市商工会城端事務所   ・総務・会計事務

  ・協賛金募集に関する事及び協賛金に関わるあんどん、ぼんぼり、入船札に関する事   ・「じゃんとこいむぎや」、総踊り、パレード、踊り講習会に関する事

  ・商店の道路使用許可、通行許可申請に関する事 3  南砺市観光協会城端事務所

  ・庶務に関する事(誘客、広報など)

  ・踊り競演、街並み踊り、麦屋節コンクールに関する事   ・町内や出演団体との調整

  ・その他、祭全般のスケジュール調整 4  南砺市観光課

  ・むぎや祭の予算、実績報告の受理に関する事   ・その他担当課として連絡調整窓口

3.1.3. 会場と祭りの流れ

以下の図1は、第61回むぎや祭りパンフレットに記載の会場地図である。この図を もとに、2011年の祭りの流れの概略を記述する。

61 9月17日(土)

  13:00〜14:00  むぎや踊り講習会   14:00〜21:15  むぎや踊り競演会   14:00〜21:30  町並み踊り

  14:30〜22:00  「じゃんとこいむぎや」2011

13時から14時まで、むぎや踊り講習会がじょうはな座前で行われる。その後、14 時から、むぎや踊り競演会と町並み踊りが始まる。むぎや踊り競演会はじょうはな座会 場と城端別院会場で行われる。ここでは、むぎや祭に参加している全ての団体の踊りが 披露され、各町の踊りのほかに越中五箇山麦屋節保存会や南砺総合平高校郷土芸能部な ど城端地区外から参加している団体の演技も行われる。町並み踊りでは、町の各地に設 けられた会場で、主として各町の踊りが披露される。会場は駅前会場、出丸町会場、浄 念寺会場、坡場の坂会場、瑞泉寺会場の計5か所である。各町の踊り手は午後2時から 夜の9時頃まで各会場を回っていく。また、14時30分から、「「じゃんとこいむぎや」」 が大工町通りから西町通りの間で開催される。

図 1.  第61回むぎや祭り会場地図

62 9月18日(日)

  9:00〜14:45  麦屋節コンクール全国大会

  13:00〜14:00  むぎや踊り講習会   14:00〜21:30  むぎや踊り競演会   14:00〜21:30  町並み踊り

  15:00〜15:20  むぎや新歌詞表彰・披露

  19:00〜20:00  パレード   20:00〜22:30  総踊り

  この日は講習会や競演会、町並み踊りが続けられるほかに、麦屋節コンクール全国大 会と麦屋節の新歌詞の表彰と披露などが行われる。また、夜の7時からのパレードでは 城端の婦人会が中心となって、出丸町通りから大工町通りまで踊り歩く。婦人会とむぎ や祭の関わりについては5章で詳しく述べられる。午後8時からは、西町通りで総踊り が行われる。総踊りは、祭りの最終日に祭りの締めくくりとして行われるイベントであ り、観光客も踊りに加わることができ、多くの人でにぎわう。

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4-2. むぎや祭をとおして変化するコミュニティ

  寺田  未佳

1. はじめに 

私は、実習を行う前から、コミュニティをテーマにして調査を行いたいと考えていた。

なぜなら、地域の中で人々がつながりあい、協力しあって生み出す力に強い魅力を感じ ていたからである。そこで、調査対象として城端の町が支えている「むぎや祭」を選択 することにした。

  近年、地域の祭では少子化や人口流出に伴う人手不足が問題となっている。城端のむ ぎや祭においても、人手不足は深刻な問題であり、むぎや祭に参加している町内のほぼ すべてが、町外の人々に頼んで踊り子として参加してもらっている。私が調査を行った 野

下町

げ ま ち

も、子どもの踊り子の約3分の1が町外からの参加者であった。

祭に地域外の人たちが参加するということは、もともとは地域のコミュニティで行わ れていた行事に、新しい人々が加わるということである。祭りは参加者の共同によって 成り立つので、祭りをおこなうためには、もともとの町内の参加者と地域外からの新し い参加者の間に緊密なコミュニケーションがなければならない。このようなコミュニケ ーションを通して、地域のコミュニティとは異なる祭りのコミュニティと呼ぶべき新し い集まりができているのではないだろうか。言い換えれば、むぎや祭は、城端地区の住 民にとって新しいコミュニティを生む機会となっているのではないだろうか。

このような問題意識をもとに、この報告では、まず祭の練習や祭り当日の様子などの 説明を通して、祭が地域コミュニティにおいてどのような役割を果たしているかを明ら かにする。次に、祭りの参加者や城端住民への聞き取りから得た語りをもとに、地域外 の人々が参加する祭りによって、どのような集まりが形成されているのかについて考察 したい。

2. 調査方法と調査地の概要

調査は野下町でおこなったが、祭りにかかわる人々への聞き取り調査だけでなく、参 加者の視点からも祭を調査したいと考えた。そのために、野下町の踊り子としてむぎや 祭に参加し、踊りの練習を観察するとともに、祭を実体験した。実際に祭に参加するた めには毎日の練習が欠かせないため、祭りの前の2週間は城端に泊まりこんだ。夜は毎 日踊りの練習に参加して野下町の祭に参加する人々を対象に聞き取り調査を行い、日中

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は主に城端地区の他の町内で聞き取り調査を行った。

野下町は城端地区の南側に位置している。北端は城端別院善徳寺あたり、南端は城端 中学校にまで広がる南北に長い形をした町である(図)。野下町は城端地区の中でも広 い面積を持ち、人口も多い。野下町の世帯数は平成23年9月時点で106世帯、人口は 男性164人、女性161人の計325人である。

3. 祭りの運営  

野下町の祭の運営で中心となるのが「区長」、「区長代理」、「会計」の町内三役と呼ば れる人々である。町内3役の役職は運営委員に含まれる。その他にむぎや祭実行委員、

舞台演出委員などの役職があり、表1のように多くの人々が運営に関わっている。

表1.野下町のむぎや祭役員と人数

役職 役割 人数

顧問 祭の運営、監督 11人

運営委員 運営の中心 8人

むぎや実行委員 祭の運営 16人

祭り競演会推進委員長 競演会の企画 1人

企画委員 祭の企画 2人

踊り指導者 踊り指導 12人

地方指導者 地方指導 2人

舞台演出委員 舞台の演出、出演 13人 じょうはな座委員 じょうはな座公演での運営、管理等 8人

屋台運営委員 屋台準備 10人

児童指導委員 児童の踊り子の指導 3人

行灯準備委員 行燈の準備 2人

化粧衣装委員 踊り子の化粧、衣装の着付け 16人 実行委員婦人部 飲食物準備、衣装準備等 3人

会計委員 祭の会計 2人

  各役職に人数が割り当てられているが、いくつかの役職を兼任している人も多い。練 習の指導や舞台演出の中心となるのは舞台演出委員である地方

じ か た

のメンバーである。地方 というのは、踊りの際に曲を演奏する人々のことであるが、後で詳しく述べる。なお、

婦人部は踊りの衣装の準備のほかに踊り子の確保も役割としている。

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