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多様 な理解 と発展

ドキュメント内 コミュニケーション (ページ 81-100)

言葉の持 つ厳密 さに比較 して、画の表現 はより自由で変化 に富み ます よ り自由 だ とい うこ とは、ある 自覚症状 をいったん描 くことがで きた と して も、完蟹 を期す のは難 しい こと、さらにわか りやす く表現 で きる可 能鮎 のあ る こと、な ども意味 し ます。では、具体 的に どの ような方向で、 よりよい表現 を求め て行 った らいいので しょうか ? これまで著者 らは少人数の グループ作 業の中で、描 くことの試行錯誤 を続けて来 ま した しか し、いつ まで も似 たような メンバーで作業 を続 けていると どうして も描 き方がマンネ リ化 して、新 たなアイデアが出に くくなって しまいます。

そこで この事では、我々が措 いた画 を他者に見 て もらい、他者が示す理解 を通 して、

よりよく描 くことの意味 をさらに考 えてみ ます。

1 他者の理解 をどの ように捉 えるか ?

さて著者 らは出来上 が って きた自覚症状 画 を他者 に見 て もらうための準備 を始め ま したが、 その始めの ところで疑問にぶつ かって しまいま した。一体、 いつの時点 の どの画を見て もらった らいいので しょうか ? なぜ な ら、 自覚症 を描 くことはあ る意味で終 点のない作 業です。 「描 いて、 またそれ を修正 して」とい う作業 を繰 り 返 し、我々の洞察が深 まるにつ れて、画は少 しづつ わか りやす い ものに なって行 き ます。試行 錯誤の過程 で画は次 々に変化 して行 くため、安定 した画 をそ ろえるのは 容易ではあ りませ ん。 しか し、 いづれかの画 を使 う ことを決め ない と、先 に進み ま せん 図には、著者 らが この研 究の初期 に3カ月間の試行錯誤 を通 して描 いた画の

中か ら比較的満足 で きた画 を30種類 を選んで示 します。

3. 3 をj星野と発展 77

16 1

26 27

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29

ここで 「比較的満足で きた」 といって も、その程度 は画によって異 な ります。例 え ば肩凝 り、便秘 などの画は、3か月の試行 錯誤期 間 中、その初期 に一度 出来上が る と、それ以 上のアイデ アが得 られず、描 いた時の完成度が比較 的高い と考 え られま した。一方 、かゆい、吐 き気が す る、な どの画は、一応描いて はみた ものの不満が 残 り、3か月の間 もそ れ以降 も折 りがあれ ば繰 り返 し修正 を加 えて来 ま した。 この ように図は、 よりよい 自覚症状 を求める過程で著者 らが到達 した一つの 中間地点 と で も言える もので、多 くのあい まいさを含 んでいます。 この図 は、他者 の理解 を判 断す る寄 り処 としてはたよりない気 もしますが、これ以上の ものは見あた りません。

3. 3 か理解 と発展 78 そ こで著者 らはこの図 を 「過渡 的な寄 り処」 とした上で、これ を巡 って 、我々の理 解 と他者の理解 との比較 を試み ました。

2 共感できることと共感で きないこと

共感度 か らみた画の理解 、三集団での比較

これまで描いて きた 自覚症状 画を始めて見 て もらったのは、長崎県立 保健看護学 校の29名 の学生、12名の手 話通訳の方 々、及 び7名の聴覚 障害者の 方々です。

これ らの人 々に、図 を印刷 した紙 を渡 し、それぞれの画が どの ような自覚症状 を表 しているか を考 えて もらい、答 えをそれぞれの画の 下の空欄 に書 き込ん で もらいま した。

この三つの集団の うち、学生 はすでに看 護学校 を卒業 した後 、さらに保健婦 とし ての勉強を続けている人々で、 自覚症状 について一般の人 よ りは詳 しい知識 を持 っ ていると考 えられます (以後、保健看護学 生 と記 します) 手話通訳の 方々はいず れ もボランテ ィア‑ と して手話通訳 を している女性 です (以後 、手話通 訳者 と記 し ます) 学 生の場合 は講義時 間 中に、また手話通訳 者の場合 は手話研究 会の会場で 調査 に協力 して もらい ま した。 聴覚障害の方々の場 合 は、ろ うあ協会に協力 してい ただ き、会合 などがあ った折 に、調査表 に記入 して いただ きま した。で きるだけ本 人が調査表 に記入す る という形式 をとったため、調査 に際 して は聴覚障 害 を別にす れば、文章 を読んだ り善いた りす ることは不 自由の ない方のみが参加 して くれま し た (以後、聴覚障害者 (文章力高) と記 します)0

さて、調査 において は、対象 者は一番 か ら30番 までの画 を順次眺め ていって、

それが何 に見 えるのか を書 き込 んで行 きます (対象 者の解釈)。一方、 それぞれの 画は、 もと もとこの画が@@ に見 えて欲 しい、 とい う画の作成 者 (著者 ら)の解釈 を持 ってい ます (作成 者の解釈 ) では、 この二つ の解釈 は どの程度一致す るので

しょうか ?

まず人の側か ら解釈 の類似鮎 を見 てみ ま しょう 対象者に よって、3 0の画のす べ てについて作成者の解釈 と同 じ解釈 を した人 もい れば、1/ 4くらいの画につい て作成者 と異なる解釈 を した人 もいます。対象者 ご とに一致 した解釈の数 を求め、

さらにその平均値 (+標準偏差) を各集団について計算す ると、学生の場合 は28.

0

(+2.2)、手話通訳 者の場合 は25. 5 (+2.4)、聴 覚障害者 (文章力高) の場

3. 3 多顔 を潮 字と発展 79

合 は

25.6

(+2.I) とな りま した。学 生の場合 に最 も一致の程度 が高 く、手話通 訳者 と聴覚障害者は学 生 よりも多少低い値 を示 します。いづ れ に して も平均 的に見 ると、一人 の対象者が 下 した 3 0の解釈の 8 5‑ 9 3%が作成 者の解釈 と一致 した 訳で、解釈の類似鮎 はかな り高い といえます。

人の側か ら見 た ときに解釈 の類似件が高 いことはわか りま したが、画 の側か らみ るとどうで しょうか ? 一つ一 つの画につ いて対象 者の解釈 と作成者の解釈 とは ど の程度似 ているので しょうか ? そこでそ れぞれの集団につい て、1番 目か ら30 番 目までの画ごとに、共感度 を定義 しま した (「あ る画の共感度」

「その画につい

て、作成者 と同 じ解 釈 を示 した対 象 者人数

」÷

「対 象者 集団 全体 の 人数

× 10 0) ある画について、集団全員が作成者と同 じ解釈 を示せば共感度 は100%に、

また全員が異 なった解 釈 を示せ ば共感度 は0%にな ります。30の画に対す る共感 度 を高い順 にならべ、横 向 きの棒 グラフに したのが 図です。保健婦学生 の場合 は、

30の画の うち 2 5の画につい て棒 グラフが 8 5% の線 を超 えてお り、画が異 なっ て も共感度 は高い水準 を保つ こ とが明 らかです。一 方、手話通 訳者 と聴 覚障害者の 場合、共感度が 8 5% を超 える画の数が 19ない し 2 1ある半面で、共 感度が 50

%以下の画 も3ない し4認め られ、画によって共感 度 に差があ ることが 認め られ ま す。

0 20 IO (0 80 10 0 0 20 10 eO 100 o 20 10 60 80 100

図.画 と共感度

聴覚障害者 (文章力嘉)

異 なる理解の中身

次 にどの ような絵 において、解釈の差が見 られるのか をさらに具体的 に調べ ま し た。三つの集団のそれぞれについて、共感度が低 い順 に5枚の画 を示 します。

3. 3 多様 を腰解 と発展 80

保健 看謙学 共感度

手 話通訳 14

共感度 (33.3%) (50.0%)

13

14 19 ′23 (82.8%) (82.8%) (86.2%)

27 1j (50.0%) (50.0%) (61.7%)

26 27

(文章力高)

共感度 (42.9%) (42.9%) (57.1%) (42.9%) (57.1%)

取 り出された5枚の画 を見 る と、13番 と14番 の画は3群 のいずれ に も共通 し て認め られ ま した。 また 26番 と27番の画は、手 話通訳者 と聴覚障害 者 (文章力 高)の群 に認め られま した。特 に13番 と14番 の 画は、著者 らが描 くときに もな かなか思い通 りに描 け なかった ものです。描いた と きのあいまい さが解 釈の一致度 の低 さとして現れた と考 えられました。

解釈の相違 と絵の修正

画に関 して、対象者 の理解 が どの ように作成者の理解 と異 な るのかが 明 らかにな れば、それ を手がか りとして さ らに画を改 良するこ とが可能 に な ります 。特 に3、 13、14番の画 に関 しては、 あ らか じめ画の完成 度が低い と考 え られ たため、こ の三つの画について、個別に よりよく描 くことを検 討 しま した。

3番の画について

3. 3 多補 を忍 野と発展 81

この3番 の画に関 して、対象 者が示 した作成者の解釈 とは異 なる解釈 の うち、比 較的多かったのは 「腰 痛」です手が腰 の部分に描 かれ、腰 の イメージが強調 され す ぎているために、この ような解釈が生 まれたと考 えられま した。そこで、手の位 置を腰 から体の他の部分に移動 させ ることを考えま した。 「一方の手で他方の手 を 掻いている ところ」、 「体の前面 を両手で掻いてい るところ」などの改 善策 を図に 示 します。

14番の画について

14

14番 に関 して、一致 しない解 釈の中で多 かったの は 「寒気が する

で した。原図 では吐 き気 を示すため に、左肩 の ところに波線 を描 いていたの ですが、 これが 「寒 くて震 えている」 とい う解釈 につながった と考えられま した。 そ こでこの波線 を消 すことで震 えのイメージを取 り除 き、さらに手の位置 を変えて、 「吐 き気」のイメー

ジ強調 を試みました。

3 共感できない背景 を探 る

前節で出会 った三群 の対象者 は、画に対 す る理解 が著者 らと比較的近 いことが指 摘で きました。画をよ り解 りやす くする作 業 も手の位置を移動 した り、体の向 きを 変えて描 くことで対処 で きま した。 しか し、よりコ ミュニケー シ ョンの 困粍な状況 におかれていた り、著者 らと異 なった環境 に身をお いて来た人 々はどの ように画 を 見 るで しょうか ?

3. 3 多雌 を理解 と発展 82

画の理解 か ら生活環境へ

聴覚の障 害があ り、 さらにそ れに加 えて文章 を読 んだ り青 い た りす る ことに慣 れ ていない人 の物の見 方 を知 るに は、前節の ような記 入式の調査 表 は使 え ませ ん。そ こで手話通 訳者 に協力 して もらい、生 まれ た ときか ら聴覚の障 害 を もっ ている二人 の方 (Aさん とBさん) に面接 して、画が どの ように見 えるか を教 えて もらいま し た。 6の 画 をAさん に見 て も らって も、制作者 の 意図 をまった く理解 して もらえ ませ ん。そ の画の どの部分が どの ように解 らないの か を手話通 訳 を介 して詳 しく教 えて もらった結果 、Aさんは6の ような縦 型の体 重 計 を見 た こ とが なか った ことが わか りま した。 Aさん は、生 まれた時か ら聴覚の障 害があ り、 家の中に いることが 多 く、学校 に もあま り行 く機 会が なか ったそ うです そのため 、学校の 保健室や銭 湯 にあるよ うな体重計 に接 して いないのです。体 重 計の イメー ジを使 わ ないで 「体 重の変化」 を表す ことが大切 だ と考 えた著者 らは、 6改の ような画 を措 きま した。

6改 1

学校で健康 診断 を受 け る機会 な どが なかったのです か ら、30番 の ような画 も理解 す るのが困難 なことは当然です 。視力の低 下 を、視 力検査 の イ メージを使 わないで 描 く必要があ ります。

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月.rJ

i.東月什

Aさんは 7の画 につ いて、 「は しを忘れ て食事が で きない」 と言いま した。 また Bさんは29の画 につ いて、 「イヤ リング を してい る ところ」 と言いま した。 この 画では 「耳鳴 り

を表 す ため に、耳の中の鐘が鳴 り響 いてい る イメージ を画 に した のですが、 この 「鐘の イメー ジ」が小 さす ぎて、わ か りに くか ったのだ と考 え られ ます。 このBさんは先 ほ どの30の画 につ いては、 「手鏡 を見 なが ら化 粧 している ところ」 と説明 しま した。視力検査 で片 目を隠すための被 いが、手鏡 に見 えて しまっ

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