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地球惑星システム科学講座

5 研究活動

5.3 地球惑星システム科学講座

1.星の進化とシリケイトダスト進化の関係の实験的解明

本研究は、90年代後半より急速に進展した赤外線観測による星周辺の岩石的粒子の観測の結 果をふまえ、固体粒子形成カイネティクスとその物理的基礎を实験的に理解し、その結果を用 い様々な星周環境における粒子の成長を理論的に予測し、星の進化と粒子進化の関係を解明す ることをめざしている。本年度の成果として:(1)太陽系存在度にほぼ等しい Mg:Si~1:1 で酸 素を含む系の实験をおこない、高温から低温までの領域で凝縮物を得た。温度低下にともない 化学組成、構成物質が連続的に変化する。熱力学的検討とあわせ、フォルステライトの不均質 凝縮に必要な過飽和度を決定することに成功した。凝縮温度1200。Cで約50、もっとも低温は

約800。C、係数は10000と決定された。(2)フォルステライトの蒸発/凝縮が温度、水素圧に

応じ異方性を示すことが明らかとなった。すなわち条件により安定な結晶形状が異なり、赤外 スペクトルを計算すると、条件に応じた特徴的なピーク位置、ピーク強度が出現することがわ かった。星周の赤外線天文観測のピークから、ダスト形成条件の推定を可能とした。(3) 冷却す る原始太陽系円盤中における、ガスと凝縮固体の分離による化学分別を、实験・理論研究の総 集成として検討した。分離するダストサイズとガスの冷却速度の関数として、ダスト分離程度 がことなり、円盤の熱進化タイムスケール(>1000years)では、ほとんどの場合、部分的あるい は完全にダストはガスから分離されることが明らかとなった。隕石がこの分離固体から形成さ れる微惑星であるとすると、冷却タイムスケールが1000年オーダー、分離ダストサイズがミク ロン(度と制約でき、円盤の比較的希薄領域においてダスト分離がおこったことが明らかとなっ た。

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2.晩期星周・原始惑星系円盤ガス中での珪酸塩-金属間の界面エネルギー

研究計画では、金属鉄の表面エネルギーへの雰囲気ガスによる影響により、形成される珪酸 塩-金属鉄組織に違いが生まれるという仮説を立て、金属鉄表面エネルギーおよび金属鉄-珪 酸塩(フォルステライト)間の界面エネルギーの雰囲気ガス(S,O,N など)依存性の決定をお こない、金属鉄が卖独で核形成する環境、または先に凝縮したフォルステライトを核として低 過飽和度でも金属鉄が成長する環境を決定する温度・圧力・ガス組成の条件を決定することを 目的とする。昨年度に引き続き、太陽系元素組成を持つ原始惑星系円盤での金属鉄の平衡凝縮 温度に近い1265Kでの凝縮实験をおこなった結果、過飽和比が4でもコランダム基盤上に金属 鉄が不均一核形成することがわかった。昨年度は過飽和比10以下という結果を得るにとどまっ ていたので、定量値が求められたのは意義がある。金属基盤上への珪酸塩凝縮の实験では、昨 年度おこなった炭素カプセルが還元的雰囲気をつくることがわかったため、イリジウムルツボ を用いて、改めて实験をおこなったところ、低圧条件下での珪酸塩の金属基盤への凝縮は反応 速度論的制約から困難であるという昨年度に得られた結果とは本質的に変わらない結果を得た。

また、酸化物の凝縮効果を見るために金属基板上でのコランダム凝縮实験もおこなっい、過飽 和比に応じて、異なる成長形を示すことがわかった。これらの实験結果は2008年7月に松江市 でおこなわれたMeteoritical Society Meetingや2009年3月にヒューストンでおこなわれたLunar and Planetary Science Conferenceなどで発表した。

3.原始惑星系円盤における鉄の状態分布:惑星の化学的多様性解明に向けた实験的研究

地球型惑星のコア・マントルのサイズ、化学組成、酸化還元度は多様である。これは鉄の存 在度や存在状態(珪酸塩・金属・硫化物)の違いとして捉えることができる。惑星内部の鉄の存在 状態の違いは物質循環や固有磁場の発生を通じて表層や生命圏にも影響を与え、惑星の起源や 内部進化のみならず表層システムの進化や安定性にも重要な要素と言える。惑星間の鉄の存在 度や存在状態の多様性を理解するための第一歩として、原始惑星系円盤での惑星材料物質にお いて鉄の総量がどの程度であったか、存在状態の異なる鉄が惑星形成直前にどのように分布し ていたかの理解が重要である。本研究では、原始惑星系円盤内で鉄の存在状態を変える为要化 学反応である珪酸塩-金属間の鉄の分配(酸化・還元)や金属鉄の硫化反応の速度やメカズムを审 内实験で解明する。また、それらの反応が原始惑星系円盤内で充分に進行しえたかを検討し、

微惑星形成直前の原始惑星系円盤内での鉄の存在度・存在状態の空間分布を描き、惑星形成の 化学的初期条件の決定をおこなう。現有の赤外線真空炉を用いた予察的实験により、現有装置 の改造をおこない实験を進める方が効率的であることが判明した。そのため、現有装置に、流 量制御機能を備えた硫化水素ガス導入機構および排気ガス中の硫化水素除去のための活性炭 フィルターを作成に関する検討をおこなった。また、試料の重量変化を高精度で測定するため

に、0.01μgで測定可能な電子天秤を購入した。第一原理電子状態計算を用いて、珪酸塩中の元

素拡散の活性化エネルギー予測、金属鉄の表面エネルギーの不純物依存性を求めるため.基礎研 究を開始した。装置開発状況や实験結果の一部は 2008 年 7 月に松江市でおこなわれた Meteoritical Society Meetingや2009年3月にヒューストンでおこなわれたLunar and Planetary Science Conferenceなどで発表した。

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4.巨大衝突後のシリケイト大気:揮発性物質散逸の可能性の検討

地球や金星は、複数回の巨大衝突を経験して、現在の大きさまで成長したと考えられる。衝 突・集積の過程で天体は高温(〓4000-10000K)に加熱され、天体上にシリケイト大気が形成され ると考えられる。

H、O、C、Mg、Si、Fe、S, Ca、Al、Na、Ti、Nの12 元素、276種の化学種を考慮した化学

平衡計算をおこない、巨大衝突後に天体上に形成される静水圧平衡シリケイト大気の構造と散 逸の可能性について推定した。

シリケイト大気は、凝縮している成分のダストオパシティによって光学的に厚くなり、対流 による熱輸送が卓越し、断熱的な構造になり、珪酸塩鉱物の凝縮温度によって3 層に区別でき ることが示された。

(1) 高温領域(下層大気)は珪酸塩鉱物が凝縮するよりも高温であり、光学的に薄い。断熱温度 勾配は、珪酸塩鉱物の凝縮潜熱が効かないため、比較的急になる。

(2) 珪酸塩鉱物凝縮温度領域(中層大気)は、珪酸塩鉱物が凝縮し、光学的に厚く、対流が激し くなる。また、珪酸塩鉱物の潜熱によって、断熱温度勾配はゆるやかになる。

(3) 低温領域(上層大気)は、圧力が低下するため、光学的に薄くなる。珪酸塩凝縮温度以下で、

断熱温度勾配は再び急になり、大気放射が減衰する。大気放射が減衰する領域は、断熱温 度勾配からずれており、下層からの放射によって等温的になっている。大気放射計算の結 果、巨大衝突後のシリケイト大気は数年から10年程度で冷却することが分かった。

また、火星サイズの天体上の大気は、大気上層から散逸することが分かった。地球サイズの 天体上の大気では、大気の散逸は起こらず、H のような軽い元素も他の重いガス種に妨げられ て散逸できないことが示された。円盤からの散逸まで考慮すると、火星と地球のアルカリ金属 元素量の違いを説明できる可能性がある。一方、隕石と地球・火星の水、及びアルカリ金属元 素量の違いは巨大衝突に伴う散逸では説明できず、巨大衝突以外の要因が必要となることが分 かった。

5.海惑星と陸惑星を分ける条件

生命が存在し得る惑星の条件として、液体の水を持つことは非常に重要である。地表に液体 の水を持つ惑星を陸惑星、有陸海惑星、無陸海惑星の三つに分け、それぞれを分ける条件を決 定することを目指した。

まず、パーコレーション理論を用い、全球的に繋がった海洋を持つ条件が惑星表面で水の占 める面積比がおおよそ半分になることであることを示した。

そのような臨界面積比を占める水量も、陸地が完全に水没する水量も、ともに地形の起伏の 大きさに依存する。よって、地形の起伏を制限することを考えた。惑星表面を弾性体と考える と、存在可能な地形は振幅/波長がおおよそ1/10以下のものであることが分かった。地形が重力 によって潰れることを考慮し、そのタイムスケールを求めた。地形の粘性緩和はアイソスタシー の回復と、地殻の厚みの均等化という二つのモードで成り立っており、地球の場合、前者のタ イムスケールは~1kyrから~100Myrで波長に反比例し、後者のタイムスケールは~1Gyrとなった。

以上から、一定水量を仮定することで、陸惑星が海惑星にならないために必要な地形形成イベ ント発生頻度、陸地が水没しないために必要な地形形成イベント発生頻度が、水量の関数とし

&求められ、(1)陸惑星になりやすい惑星、(2)有陸海惑星になりやすい惑星、(3)無陸海惑星にな りやすい惑星、(4)陸地が存在できない惑星に分類できることが分かった。

地球を考慮したパラメータ設定では(2)のタイプの惑星になる水量の範囲が卖位面積当たりで