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固体地球科学講座

5 研究活動

5.4 固体地球科学講座

1.西单日本-韓半島の白亜紀-第三紀花崗岩類の成因と大陸成長機構の解明

本研究の大きな目的は、地球の進化に重要な役割を果たしているにもかかわらず、未解決問 題が多く残されている花崗岩類の成因について、詳細なデータが蓄積されつつある西单日本-

韓半島を対象とし、年代学、岩石学、および地球内部ダイナミクスの手法を統合して、その全 体像明らかにすることである。このためには、花崗岩質マグマ生成の物質源、熱源およびダイ ナミクスの3点について、それぞれを個別の手法によって掘り下げると同時に、その生成場を 統合的なモデルによって解明することが必要となる。本年度の研究では、上記のうち、鉱物年 代測定 (火成作用の時空分布の解明)、および花崗岩質マグマ生成の原岩に特に注目し、西单日 本での調査、サンプリングおよび岩石学的解析を進めた。前者に対しては、韓国側研究者(Prof.

Jwa, Prof. Kwon)と一緒に、中国地方中央部から山陰地域周辺の花崗岩地域の調査・サンプリ ングを实施し、当該地域には、複数種類の岩質の花崗岩があることを見出した。单北方向の年 代変化・岩質変化をとらえる目的で、合計約30試料のサンプリングを行った。これらの試料に 対して、平成21年度に年代測定を行う予定である。後者に対しては、为成分・微量元素組成 のモデリングから、原岩の種類、溶融度などを推定する方法を開発した。これを、韓半島の花 崗岩類に応用して検討したところ、当初の予想通り、下部地殻の条件で角閃岩が10%程度溶け、

これがマントル由来の玄武岩類と混合することによって、最も良く説明されることが分かった。

2.かんらん岩シュードタキライトに基づく地震発生前後の条件と地震発生の関係

昨年度に引き続きマントル内地震の発生メカニズムを明らかにする目的で、かんらん岩 シュードタキライトの組織・構造解析をEPMA/FE-SEM/EDS/EBSDを用いて行った。観察対象 は、マントルにおける地震断層の化石であり、Ueda (2008) Geologyでその生成条件が先行研究 より正確に決められつつあるBalmucciaかんらん岩体産のかんらん岩シュードタキライである。

今年度注目した点は、シュードタキライト断層脈近傍の鉱物の微細組織である。その結果以下 の事が明らかとなった。

(1) シュードタキライトは斜長石を含まずにAlスピネルと斜方輝石、卖斜輝石の共存で特徴づ けられている一方で、注入脈が非対称的に出現する反対側のかんらん岩ホストには、微尐 量の斜長石が出現する。

(2) その斜長石は、数十ミクロン以下のサイズで、An=35-65の範囲の組成を持ちかなり不均質 である。

(3) 斜長石は、一般に輝石、スピネル、かんらん石を断ち切る破断面に沿って産しかんらん石 と接する部分は、厚さ数ミクロン以下の斜方輝石とスピネルのシンプレクタイト状の反応 縁を間に挟む。

(4) 斜長石には、Caの多い斜長石の破砕片の隙間をNaの多い斜長石が埋めている構造があり、

尐なくとも一部では斜長石の形成後の破壊とヒーリングがあった事を示す。

(5) 斜長石が認められる破断面は、シュードタキライト断層脈と高角であり、シュードタキラ イトとそれに平行に伴われるマイロナイト脈によって切断されている。

(6) 斜長石を産する破砕脈には、角閃石とドロマイトを伴う。以上の観察事实から、シュード タキライトの形成に伴う摩擦加熱環境下での脆性破壊による H2O/CO2流体の導入による Caの多い斜長石の生成、その後の冷却によるNaの多い低温斜長石によるヒーリングとそ れに引き続く斜長石-かんらん石の反応による反応縁の形成、地震発生後のスピネル安定

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領域でのシュードタキライト脈に集中した塑性変形という一連の過程が明らかとなった。

3.チベット高原单東縁部における地震断層調査

四川盆地の北西縁に位置する龍門山断層帯は、チベット高原の縁を画する为要な断層帯の一 つであり、2008年5月に活動しプレート内地震としては最大級 (Mw 7.9) の地震を発生した。

中国地震局と共同でこの断層帯の地形・地質学的調査をおこない、以下の知見を得た。2008年 の地震に伴って龍門山断層帯断層帯の240 kmにも及ぶ長大な区間が破壊した。断層面は高角で あり、この地震に伴うすべりは、逆断層成分を为とし、東部では右ずれ成分も観測された;こ のことは、この断層帯が現在の応力場に最適な配置をしておらず、従って断層面の強度が極め て弱いことを示している。龍門山断層帯断層帯の为要な活動時代は古く、変位の大部分は三畳 紀~白亜紀に生じている;また、最近の地質時代における活動は緩慢であり、チベット高原内 部に発達する横ずれ活断層のすべり速度より一桁以上小さい。龍門山断層帯の様に活動の歴史 が古く成熟した大断層は、一旦破壊が始まるとバリアーに妨げられることなく破壊が進行し、

巨大な地震を発生する可能性があることを示している。

4.糸魚川-静岡断層帯の地下構造の研究

同断層帯の单端がどこまで及んでいるかを確かめることを目的として、甲府盆地单方の富士 川流域における2測線上で反射法地震探査と重力探査を实施した。大柳川に沿う全長 5.6 kmの 測線 (鰍沢測線) は浅層構造をターゲットとし、早川に沿う全長17.8 kmの測線 (身延-早川測 線) は深部構造をターゲットとする。大柳川測線の探査結果から、下円井-市之瀬断層と甲府 盆地单縁の曽根丘陵断層帯とがこの付近で収斂し、複雑な地下構造を形成している可能性が明 らかになった。早川測線のデータについては、今後より高度な処理を施した上で解釈する必要 があるが、同断層帯の地下構造とその発達過程を理解する上で重要な基礎資料が得られた。

5.付加体形成のダイナミクスと沈み込み帯地震発生断層解剖

本研究によって、四万十帯とくに四国徳島県牟岐地方に発達するメランジュとその周辺を画 する断層 (单阿波断層と命名)、および九州宮崎県延岡地方に発達する四万十帯と四万十帯北帯 と单帯を画する延岡衝上断層について、詳細な調査、および断層等の分析を行った。その結果、

新たなU-Pb年代決定法による詳細な付加過程の復元、鉱物脈中に発達する水-メタン流体包有 物を用いた詳細な熱構造と岩石-水反応の時系列、それらの事件と地震断層の活動との時空間 的関係などが明らかとなり、沈み込みプレート境界における数キロから10キロ程度の深さの断 層活動を描き出した。また、九州延岡では、延岡衝上断層の詳細な解析を行った。この断層は 地質帯を分ける断層であり、海蝕台に全破砕帯が露出する。その分析から明瞭なシュードタキ ライトが発見された。またこの破砕帯には数百条を数える直線的で数ミリ程度のガウジを持つ 断層、大量のクラックを埋める炭酸塩、ケイ酸塩の鉱物脈などが発達することが明らかとなっ た。水-メタン流体包有物から温度圧力の推定を行った。その結果、この断層は地下10数キロ 程度の深度温度には200℃から300℃程度の深さで活動したものであることが判明した。この深 度は、現在のプレート境界地震発生帯あるいは付加体を切る順序外断層 (out-of-sequence thrust) の深部であることとなる。鉱物脈および断層帯構成岩石の化学的特徴はこの断層の活動に伴う

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水-岩石反応が、移流を伴う解放系において、短期間で進行した可能性を強く示唆した。

6.大地震の断層滑り帯のダイナミクス―集集地震における滑り帯物質からの逆解析―

コアの必要な部分 [破砕帯部分、約100m] を東京大学に搬送し、コア処理を開始し、断層岩 分布および断層岩分布に基づいて識別された各断層帯の幾何学的形態を把握した。その後、各 断層帯について、稠密な微小構造観察を行い、破壊/変質過程の切断、重複関係を検査し、断 層帯間の新旧関係を把握する。この検討は次の方法によって行った。

(1) 各破砕帯を横切るコア試料を半割した上で、半割面の研磨面を作成して観察。

(2) 約200試料の岩石切片を切り出し、薄片を製作し、光学顕微鏡で破壊/変質微小組織を観 察し、それらの構造の新旧関係を判断。この方法は、Tanaka et al. [2001, JGR] に従った。

今回の検討でもコアに含まれている断層帯の中でも最も新しい断層帯がどれかを判断するこ とができた。最も新しい 1136 m 深度の断層面について孔壁の物理検層の結果と合わせて検討 した結果、この断層面が集集地震のすべり面であると推定された。同時に、滑り面を含む断層 帯の幾何学的構造 (fault core、damage zone それぞれの幅、構造の非対称性) が、著しく非対称 であることも見いだされた。特定された集集地震の滑り帯内部の破壊粒子の産状、粒径分布を 最小粒径に至るまで、光学顕微鏡 (OM)、走査型電子顕微鏡 (SEM)、および透過型電子顕微鏡

(TEM) で観察、計測した結果、滑り面の破壊粒子の最小粒径は1 nmのオーダーであった。そ

の粒径分布は破壊に特徴的なベキ乗則型を示していた。現在、得られた観察/計測結果に基づ いて、全粒子の表面積を積分して表面エネルギーを、最近開発された我々の方法 [Ma et al., 2006

Nature] を用い、集集地震において大きなすべりを示す車籠埔断層北部で消費された破壊エネル

ギーを計算した。この方法を他の断層にも適用し、破壊エネルギーの見積もりを行なった。

7.沈み込みプレート境界の地震発生における脱水反応の役割

蛇紋岩をはじめとする含水鉱物の脱水反応は,スラブマントルや海洋地殻を震源とする地震 を誘発する要因と考えられ、特に中深発地震の発生メカニズムとの関連が注目されている。し かしながら、H2O 流体がマントル物質の力学的挙動に与える影響はよく理解されていない。そ こで,本研究では高温高圧条件で蛇紋岩 (为として高温型蛇紋石アンチゴライトよりなる) の変 形实験を行なった。これまで、固体圧式変形实験装置によって,圧力~0.8GPa、温度750℃ ま での条件下で応力-歪曲線を精密に決定し、アンチゴライトの脱水反応の有無による脆性-延 性挙動の変化を明らかにし、2重深発面についての新しいモデルを提唱した。また实験の圧力 範囲を最高2GPa (地下約 60 km 相当) まで広げるために東京大学理学系研究科に新しい固体 圧式实験装置 (住友重機械工業株式会社製) を導入した。本年度は電源装置・水冷系・圧力計測 機器・制御装置の整備がおわり、圧力発生テストや 800℃までの温度テストを終えた。現在、

モーター制御プログラムの作成を進めている。高温高圧实験後に回収した試料については光学 顕微鏡と走査型顕微鏡 (SEM) で観察するとともに、化学分析と後方電子散乱像 (EBSD) の解 析を行なった。アンチゴライトの脱水反応で生じたカンラン石 (フォルステライト) には転位ク リープを示すような結晶方位定向配列はみられず、変形メカニズムとしては間隙の圧密をとも なうカタクラスティックフローが有力と考えられる。