• 検索結果がありません。

土地政策について

ドキュメント内 ―歴史的・制度的な比較分析を通して― (ページ 47-50)

1.土地政策の目的及び根拠とその概要

土地政策の目的は最適な土地資源の利用と土地資源による社会的効用を促すことにある。

不動産市場は土地資源の稀尐性等を原因として、地価高騰等、多くの問題を生み出してき た。そのため、土地の再分配や取引、貸借の制限等、不動産市場の機能を補う諸政策が必 要となってきた。

土地政策は世界的にも農地政策と、市街地の商業地や宅地住宅に関する政策等に大別さ れる。日本では国土亣通省が農地と山林以外の市街地等への国土行政を所管することもあ り、農地政策・農業政策と区別して、土地政策は宅地、商業用地等の市街地と住宅等の建 築物に関する政策として、規定されることが多く、本論文もそれに倣う。先進国において は一般的に宅地・住宅と商業地に対する土地政策として、都市整備等の都市計画や公的な 住宅供給、住宅融資、土地税制等が行なわれてきた。116

2.土地政策の分類

地価高騰期を中心に研究者や行政機関等から地価対策、宅地政策として多くの政策が提 言された。中でも土地法学や都市計画の専門家は積極的な提言を行なってきたと言える。

しかし、現在に至るまで日本の住宅土地の状況が好転しないのは、宅地の供給流動化と地 価下落を主目的とする最適な総合的土地政策が行われてこなかったからである。総合的土 地政策においては、諸政策を適正に分類することが前提となる。イスラエルの都市計画研 究者である

H

・ダーリン・ドラブキン(

Darin-Drabkin, Haim

)は土地政策を以下の三つに 分類している。117

1.

個人の土地利用に関する決定に影響を与える法律的手段

2.公共機関による直接的関与

3.個人の土地利用に関する決定に影響を与える税制

また、国土亣通省で国土整備政策に携わった周藤利一は土地政策を以下のように区分す る。118

1.計画的手法−土地利用計画、規制(強化と緩和)

2.直接的手法−公共による土地取得と供給による市場への直接介入 3.経済的手法−税制、金融、補助金

116周藤利一「我が国の土地政策の課題と提言」大浜編著、前掲、2002、62-65頁。周藤は日本において、土地の絶対的所 有権の弊害面を指摘し、所有権重視から利用権重視への転換の必要性を説いている。

117ダーリン・ドラブキン、前掲、184-185頁。ダーリン・ドラブキンはゾーニングを法律的手段に分類しているが、当研 究では都市計画におけるゾーニング等の土地利用規制は法的手法による土地政策に、また、都市計画における都市整備 事業等は直接的手法(国公営事業・公共事業型手法)による土地政策に分類する。

118周藤利一、2002、66-67,80頁。周藤は手法論に関連して、主体論も重要な論点であると指摘している。

周藤はさらに日本に特徴的な手法である事業制度(土地区画整理事業、再開発事業、土 地改良事業等)を加えた場合は、4種類になるとする。ドラブキンの定義する

1、3

の政策 区分は周藤の

1

3

の政策区分にほぼ一致し、またドラブキンの

2

の公共機関による直接的 関与は周藤の

2

及び

4

の政策区分にほぼ一致する。これらの土地政策の区分を総合して、

当研究では以下のように土地政策を分類する。

1.

法的手法(規制的手法)による土地政策

2.直接的手法(国公営事業・公共事業型手法)による土地政策 3.

経済的手法による土地政策

1

の法的手法(規制的手法)による土地政策とは、ドラブキンと周藤の定義する

1

の土 地政策の区分にほぼ一致し、

2

の直接的手法(国公営事業・公共事業型手法)による土地 政策とは、ドラブキンの

2

と周藤の

2

及び

4

の政策区分にほぼ一致する。また、

3

の経済 的手法による土地政策とは、ドラブキンと周藤の

3

の政策区分にほぼ一致するものである。

これらの三種に分類した各政策の定義と内容、その特徴について、以下、説明を加える。

3.各土地政策の内容と特徴

3.1 法的手法(規制的手法)による土地政策

全ての土地政策は何らかの法的根拠に基づいているが、「法的手法による土地政策」とは ドラブキンの分類に沿って、土地の所有権と用役権への法的制限を主とする政策として規 定する。具体的には、土地の所有権や用役権への制限、収用、借地借家関連法による借地 権・借家権の強化と緩和、都市計画におけるゾーニング等による土地利用規制と建築への 規制、建築基準法による容積率制限や用途制限等が挙げられる。

土地の所有権への制限は、商業用地等の宅地が農地に比して、大面積を必要としないこ とから、世界的にも宅地に対して、面積制限等の直接的な制限を課すことは稀である。し かし、法的手法による土地政策は都市計画法や建築基準法が関わる都市計画の計画、規制 において不可欠なものである。

3.2

直接的手法(国公営事業・公共事業型手法)による土地政策

直接的手法(国公営事業・公共事業型手法)による土地政策は国土計画と都市計画にお ける開発整備事業、公的な住宅供給策等の行政による施策を中心とするものである。それ は土地利用状況や土地所有構造の抜本的な変革なしに、地域的にも施行が可能である。直 接的手法による土地政策は行政の裁量の範囲が広く、地方自治体の独自の政策をも可能と する。有効な計画と施行次第で大きな成果を得るが、同時にそれらを誤れば、大きな弊害 ももたらしうる。そのため、前提として、中央政府と地方自治体の土地政策の計画と施行 において、民主的プロセスの確立が必要である。

3.3 経済的手法による土地政策

経済的手法による土地政策は主に土地税制と土地・住宅に関する金融的処置からなる。

また、住宅融資や家賃統制、住宅補助金等も金融的処置として分類できる。金融的処置と

して、

1990

年に行われた大蔵省の不動産融資に対する総量規制は最終的に地価高騰に歯止 めをかけるものであった。しかし、バブル期の地価狂乱への主要な対策は税制によるもの であった。それは土地税制が個々の課税客体の経済状態等に対応して、多くは段階的な税 率に基づき、税負担が課されるので、法規制に比べ、導入への抵抗が小さいからである。

また、金融的処置も国家全体の経済状態や不動産市場の市況に応じて、迅速に対処しうる 柔軟性の高い政策である。土地税制と金融的処置は強化や導入と同様に軽減や解除等の調 整も比較的に容易であるが、また、不徹底なものとなる危険性も併せ持つ。しかしながら、

経済的手法による土地政策は適正な計画と施行によって、法的手法を上回る成果を収める ことも可能である。

3.4 土地政策の体系と分類

農地政策を除く、以上に説明した土地政策の体系と分類を図示すると以下のようになる。

土地政策 法・政令・条例・

指示・指導等 主体:国・自治体・

公的機関

(広義の法的手法 による土地政策)

土地に関連する 各種計画:

土地利用計画

(国土計画、

都市計画等)、

入植計画、

国公有地払い下 げ計画等

土地利用規制

(狭義の法的手法に よる土地政策)

土地に関連する

各種事業:

土地整備事業、住宅供給 事業、入植事業、国公有 地払い下げ事業等

事業主体:国公営

(直接的手法に よる土地政策)

事業主体:民間

土地税制、家賃地代統制、不動産金融等

(経済的手法による土地政策)

事業主体:国公営 事業主体:民間

土地政策は法・政令・条例・指示・指導等が国・自治体・その他の公的機関から、制定・

発令される。それらは純粋な法規制と行政による強制的処置としての他、その対象が都市 計画等の土地に関連する各種計画と土地税制等の「経済的手法による土地政策」に大別さ れる。さらに土地に関連する各種計画は、土地利用規制と土地に関連する各種事業に分か れるが、通常、計画に基づき、一体化して運用されている。土地に関連する各種事業の事 業主体は国公営と民間によるものに分かれ、「経済的手法による土地政策」の対象となる事 業主体も同様に官民に分かれる。そして、事業主体が国公営による土地に関連する各種事 業を「直接的手法による土地政策」の対象と分類できる。

「法的手法による土地政策」は全ての土地政策を規定する法令・政令等の広義のものと、

土地利用計画下の土地利用規制としての狭義のものとに分かれるが、「経済的手法による土 地政策」と同様に、研究上、質的に同じ土地政策として分類し、「経済的手法による土地政 策」と「直接的手法による土地政策」を除いたものとする。一方、「直接的手法による土地 政策」は質的分類ではなく、国公営を事業主体とする土地に関連する各種事業であるが、

他の土地政策の手法同様に法令上、公的計画上の厳密な分類ではなく、研究と政策策定の 為に有効な分類として扱う。

ドキュメント内 ―歴史的・制度的な比較分析を通して― (ページ 47-50)